無理してタワマンを購入した人は絶対に後悔する…勝間和代が「住宅ローンは組まないほうがいい」というワケ
プレジデントオンライン / 2023年10月25日 10時15分
※本稿は、勝間和代『勝間式 超ロジカル選択術』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■「勝間式 超ロジカル選択術」3つのポイント
忙しい読者のために、勝間式 超ロジカル選択術の3つのポイントを最初にお伝えします。
②ベターな選択をしやすいように仕組み化する
③常にバックアッププランを用意する
それぞれについて説明します。
①選択肢を増やす
選択術と聞いたとき、多くの人は、与えられた選択肢の中から、よりよい答えを見つけるための方法論を想起するのではないでしょうか。
それも大切ですが、勝間式 超ロジカル選択術で重きを置くのは、そもそもどうしたら選択肢を増やせるのかということです。
よりよい決定をするには、4つ以上の選択肢から選ぶことが望ましいと考えています。
2つか3つしかない選択肢から選ぼうとすると、どうしても妥協しがちです。かといって選択肢が10も20もあると選ぶのが大変です。
4つ以上の選択肢があれば、まず3つの選択肢を検討する中で、自分の選択基準や優先順位が明確になります。その上で4つ目以降の選択肢と比較することで、より納得のいく選択ができます。
例えば車を買うときは、4台以上の車種に試乗してみることをおすすめします。自分が優先するのは車のデザインなのか、それとも広さ、安全性や燃費なのか、わかるからです。
■数学者が実証した「36.8パーセントの法則」
このことはアメリカの数学者マーティン・ガードナー氏の研究によって実証されています。
「36.8パーセントの法則」と呼ばれるもので、例えば結婚相手を選ぶ際、候補者全体の36.8パーセントを超えるまではお見合いを続け、その後、それまで会った人と比べて一番いい相手を選ぶのがよいという結果が出ています。仮に候補者が10人いるとすれば、まず3人と会ってみて、その中で一番いいと思った人を基準として、4人目以降の候補者から選択するのがよいということになります。
私は普段の買い物でも、時間が許す限り、大きいスーパーマーケットまで足を延ばすようにしています。最寄りの店は小さいので、例えばカレールーを買うにもわずかな選択肢しかないからです。大きな店に行けば、それこそ数十種類もの商品が並んでいますから、たくさんの選択肢の中から自分の好みのものを選べます。
結婚や就職、住宅購入といった人生の大きな岐路においてさえ、2つか3つの選択肢から選ぼうとする人がいますが、危険と言わざるを得ません。そうした状況で、なかなか決められないと悩んでいる人は、目の前に2つや3つの選択肢しかない場合には、その中から無理に選択するのではなく、まず選択肢を増やす努力をしてみてほしいと思います。
■筆者が調理家電を推奨する理由
②ベターな選択をしやすいように仕組み化する
多くの人は、本来とるべき選択肢を頭ではわかっていても、手軽さにつられて別の選択をしてしまいます。
例えば、コンビニ弁当で済ませるよりも自炊したほうが安価でおいしく、体にもいいことは、誰もが知っています。ただ、それでもコンビニ弁当を選ぶのは、そのほうが手軽だからです。
私はシャープ ヘルシオのホットクックやウォーターオーブンなどの調理家電を推奨していますが、それは簡単に自炊ができるからです。
![シャープが発売する水や火を使わず電気で調理できる電気無水鍋「ヘルシオ ホットクック」](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/d/1200wm/img_2d8eaa3092ce023de9ef4112425add66578717.jpg)
よく自宅でスパゲティを作りますが、調理には必ずホットクックを使います。巨大なパスタ鍋で何リットルものお湯を沸かし、コンロの前で火加減を調節し、吹きこぼれたお湯を拭いてと考えると、それだけでいやになりますが、ホットクックに1リットルの水と材料を入れてスイッチを押すだけなら大した手間ではありません。
スパゲティは100グラムごとに結束してあるものを常備しています。わざわざ自分で量るのは面倒で、やらなくなるのが目に見えているからです。一束あたり50~60円ですから、パスタソースや光熱費を入れても、一食あたり200~300円でデュラムセモリナ粉100パーセントのゆでたてスパゲティが食べられます。コンビニで売られている量の少ないスパゲティを電子レンジで温めて食べる気にはなれません。
こうした工夫を積み重ねることで、本来とるべき選択を容易にできる仕組みをつくるのが勝間式 超ロジカル選択術の2つ目のポイントです。
■住宅ローンは失敗のダメージが大きすぎる
③常にバックアッププランを用意する
100パーセント正しい選択はない以上、選択にあたっては、バックアッププランを準備しておくことが大事です。もし間違っても、後戻りできる道を残しておけば、失うものは最小限にとどめられます。
私は住宅ローンに反対ですが、それは多くの人にとって、失敗したときのダメージが大きすぎるからです。
手に入れた住宅が不良物件だったり、転勤したり離婚したりすることになっても、住まいを手放してローンを清算できる人はわずかです。すぐに買い手がついたとしても、購入価格を下回れば、ローンの残債を返済し続けることになります。
その結果、転職や独立をしたいと思っても泣く泣くあきらめることになる他、子どもの教育や趣味に使えるはずのお金や時間が犠牲になり、将来の選択の幅を狭めてしまいます。
収入の20パーセント以内で住宅ローンを組むのであれば別に止めません。バックアッププランを準備する余裕ができるからです。ただ最近では、共働きのカップルが世帯収入の35パーセント、40パーセントでローンを組むケースも増えています。離婚した瞬間に破綻するパターンです。
選択そのものは何度でもやり直せますが、後戻りできない選択は避けるべきです。将来の選択の幅を狭めてしまうからです。その大きな要因は、時間とお金です。
4つ以上の選択肢を用意する。本来とるべき選択を容易にできるようにしておく。加えて、必ず後戻りできるようにしておく。これが勝間式 超ロジカル選択術の鉄則です。
■現状維持は生物の本能に由来する
選択を先延ばしにしてはいけないと頭ではわかっていても、不安や恐怖などの否定的な感情に支配されて、なかなか踏み出せないことがあります。
これまでやっていたことをやめたり、新しい環境に挑戦したりすることに対する不安は誰にでもあります。実際にやってみると意外と大したことはなかったと思うものですが、選択しようとすると、言い知れぬ不安に襲われてしまうのです。
![オフィスでうなだれる疲れたサラリーマン](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/e/4/1200wm/img_e460cd22b5330c48ced53bb29c07e9fa148607.jpg)
そもそも人間は現状維持が大好きで、変化したがらない生き物です。これは生物の本能に由来するものです。
いま自分が生きているということは、この場所に、とりあえず生存するための最低限の条件が備わっているということになります。別の場所に行けば、おいしい果実がたわわに実っているかもしれませんが、猛獣や毒蛇がいて死んでしまうかもしれません。であれば生存戦略上、現状維持が有利だと本能は判断します。私たちの意識には、変わりたくないという欲求が遺伝子レベルで刷り込まれているのです。
■意識しない限り変わることはできない
ブラック企業から転職したいけれども踏み出せない人は、この現状維持バイアスに囚われていることがあります。「辞めたいけれども、次に行った会社の条件がもっと悪くなったらいやだし、新しい環境で一からやり直すくらいなら、我慢できないことはないから、もう少し様子を見よう」と考えるわけです。
現状に不満タラタラだとしても、変化の痛みにさらされたくないので、「このままでいいか」と決断を先送りにしてしまいがちです。まさにゆでガエルで、熱湯に入れるとびっくりして逃げ出しますが、水から徐々に水温を上げていくと逃げ出すタイミングを失ってしまうわけです。
転職などの大きな選択に限った話ではなく、日常生活の中でも、意識しない限り、なかなか変わることができません。
私は最近、自家用車を買い足しました。日産のスカイラインに加えてさらにアリアという電気自動車を買ったのですが、納車までの間、わざわざ追加しなくてもよかったんじゃないか、乗り慣れたスカイラインから替える必要があるのだろうかと迷っていました。ところが新車に乗り始めると、これが最高で、買うのを迷っていた気持ちももはや思い出せないほどです。やはり人間、現在のことはディスカウント(割引)して考えるものだなとつくづく感じました。
■現状を3割減、未来を3割増で考える
現状維持は生物の本能ですが、私たち人間には、生き延びるだけではなく、よりよく生きたいという欲求があります。そのためには現状維持バイアスを意識的に外す必要があります。
行動経済学の実験では、私たちが持っているものに対して感じる主観的な価値は、実際の価値の約2倍になることがわかっています。そのため何かを変えようとしても、現状がよほど悪くなるか、新しい選択肢が魅力的なものでない限り、なかなか踏み切れません。
![勝間和代『勝間式 超ロジカル選択術』(SBクリエイティブ)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/e/1200wm/img_2ea2d0e038163876d7499b8b9ddb0862126426.jpg)
物事を選択するときには、このことを加味する必要があります。つまり「現状は3割増・未来は3割減」に見えるので、現状を3割減、未来を3割増で考えるほうが、フラットな比較ができるということです。
生物は本能で危険を察知することしかできませんが、私たち人間は、将来起こり得るリスクを予測し、備えることができます。これは「計算されたリスク」(calculated risk)といい、リスクマネジメントの基本です。
もしブラック企業を退職するかどうか迷っているのであれば、退職した場合のリスクを計算します。自分が生きていくためのミニマムコストを算出し、現在の貯金や自分のもつスキル、仮に無収入になった場合、何カ月間なら食べていけるかということをすべて定量化します。もし半年、1年は暮らせるだけの貯金ができれば、一気に選択肢が増えます。よりよい人生に向けてリスクをとれるようになるのです。
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経済評論家/株式会社監査と分析取締役/中央大学ビジネススクール客員教授
1968年東京生まれ。早稲田大学ファイナンスMBA、慶應義塾大学商学部卒業。アーサー・アンダーセン、マッキンゼー・アンド・カンパニー、JPモルガンを経て独立。少子化問題、若者の雇用問題、ワーク・ライフ・バランス、ITを活用した個人の生産性向上など、幅広い分野で発言を行う。著書に『勝間式食事ハック』(宝島社)、『勝間式超ロジカル家事』、『勝間式超コントロール思考』『ラクして おいしく、太らない! 勝間式超ロジカル料理』(以上、アチーブメント出版)などがある。
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(経済評論家/株式会社監査と分析取締役/中央大学ビジネススクール客員教授 勝間 和代)
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