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これで金や経験がなくても相手に「貸し」を作れる…1円もかからず相手に恩義を与える"たった1つ"の方法

プレジデントオンライン / 2023年10月25日 19時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Lukas Hodon

相手との交渉を有利に進めるにはどうすればいいか。教育コンテンツプロデューサーの犬塚壮志さんは「人は与えてくる人を選ぶ心理が働く。この『返報性の原理』を交渉で活かす最大のコツは、自分から率先して『貸し』をつくりにいくことだ。自分にとって大事な条件をいきなり譲歩するのではなく、自分にとってはたいして重要でないけれど、相手にとっては重要なポイントを探るといい」という――。

※本稿は、犬塚壮志『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』(サンクチュアリ出版)の一部を再編集したものです。

■人は与えてくれる人を選ぶ

あなたもこんな経験をしたことがありませんか?

・スーパーの食品コーナーで試食をしたあと、「何か買わなくちゃ申し訳ない」と思い、予定になかったものを買ってしまった
・同じ取引条件2社のどちらかを選ぶ際、打ち合わせのときに手土産でいつも自分の好きなスイーツをくれる担当者の会社を選びたくなる

このように、「他人から恩恵を受けたら、似たような形でそのお返しをしなくてはならない」という心理を「返報性の原理」といいます(Cialdini,1984)。この原理に従うと、人はあたえてくれる人を選ぶ。つまり、先に相手にあたえることで、相手から選ばれやすくなるのです。

また、あたえるものには食品や化粧品、手土産など、物質的なものだけでなく、相談に乗る、仕事を手伝うなどの行為も含まれます。恩恵となるものも金銭的な価値が明確なものだけでなく、笑顔で接する、情報を提供する、何らかの機会をあたえるなどさまざまな種類があります。

たとえば、「自分のSNSで相手の商品サービスを紹介してあげる」という行為でも返報性の原理は働きます。これは自分の時間や労力はもちろんのこと、自分の「信用」も使っているからです。

相手は「○○さんはこんなにもしてくれた。自分も何かお返ししなくっちゃ!」と感じ、その後に交渉があった場合は、こちらの提案する条件を受け入れてくれる可能性が一気に高まるのです。

■自分にとっては重要でないけれど、相手にとっては重要なポイント

返報性の原理を交渉で活かす最大のコツは、自分から率先して「貸し」をつくりにいくことです。具体的に説明しましょう。

前述のように、交渉前に何かをあげたりすることももちろん効果的です。ただ、交渉中に何かものを渡したりすることは難しいでしょう。そのため、交渉中に返報性の原理を生かす最適な方法は、早い段階で譲歩することです。自ら条件面を譲るのです。

ただし、自分にとって大事な条件をいきなり譲歩する必要はありません。自分にとってはたいして重要でないけれど、相手にとっては重要なポイントを探しましょう。

たとえば、私は学校など公的な教育機関で講演をする際の条件では、講演料を重視していません。予算がなかなか取れないことを知っているからです。そこで、依頼する側にとっては頭の痛い問題である講演料の少なさ、つまり相手にとっては重要な条件について、私はすぐに譲歩してしまいます。

すると、私が大事にしたい講演のテーマについてはこちらの意見が通るようになるのです。

自分にとっては重要でないけれど、相手にとっては重要なポイント
出典=『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』

■1円も発生せず、相手に恩義を与える方法

もし、自分が譲歩するものが何もなければ、相手の話をよく聞いてあげるだけでも返報性の原理は働きます。基本的に、人は自分の話をするのが大好きな生き物です。相手は「自分の話をちゃんと聞いてくれた」と恩義を感じます。

ですから、交渉中はたとえ取るに足らない話の内容だったとしても、メモを取る姿をアピールするなど、相手の話をよく聞く姿勢を示しておくことが重要です。

これは1円も発生せず、相手に恩義をあたえることができる行為なので、交渉中ぜひ意識的にやってみてください。

■相手に「借り」をつくると不利な条件を飲まされる

身を守るうえでの大原則は、できるだけ相手に「借り」をつくらないようにすることです。特に、交渉前に相手に借りをつくってしまった状態で交渉に入ると、不利な条件を飲まされてしまう可能性があります。

防衛方法として手っ取り早いのが、相手からのものや行為の受け取りをいっさい拒否すること。ただ、なかなかすべてのものを拒否することは難しいですよね。そのため、相手からあたえられるものを受け取らざるを得ない場合は、以下の方法を組み合わせながら対処しましょう。

・等価のものをあたえる
こちらも、相手があたえてくるものや行為に合わせてあたえ返します。
たとえば、相手が手土産を用意してきそうなら、こちらも手土産を用意しておく。会食での支払いは割り勘にする。このようにすることで、借りがチャラとなり、交渉内容そのものに影響が出にくくなります。

・将来的に返そうと思っておく
相手から何かを受け取っても、すぐに何か返そうと思わないことです。「いつか返せばいいや」程度に思っておけば十分とします。

返報性の原理
出典=『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』

■よくも悪くも非常に強力な武器

・相手からあたえられたものや行為は「策略」だと考える
相手からあたえられたものや行為は、単なる「好意」ではなく、交渉を有利に進めるための「策略」だと思って受け取ります。そうすることで、「策略」に対しては返す必要がないと考えることができます。

犬塚壮志『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』(サンクチュアリ出版)
犬塚壮志『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』(サンクチュアリ出版)

・相手があたえてきたものや行為を低く見積もる
たとえば、相手からあたえられた情報は、相手にとってはたいしたものではないと思うことです。また、相手はその情報を他の人にも同じようにあたえていると考えます。そう思うことで、相手からもらったものや行為に対する返報性は働きにくくなります。

多少、歪んだ捉え方になってしまうかもしれませんが、ビジネスシーンにおいて返報性の原理は、よくも悪くも非常に強力に働きます。だからこそ、不利な条件を飲んで自分や自分の周囲の人に迷惑をかけないよう、過剰なくらい対応策を練っておくことをおすすめします。

・人は好意を受けると返さなければという心理が働く(返報性の原理)
・交渉では相手に先に譲歩したり、相手の話をよく聞いてあげたりすることで返報性の原理が働き、自分にとって有利な条件を引き出しやすくなる

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犬塚 壮志(いぬつか・まさし)
教育コンテンツプロデューサー/士教育代表
福岡県久留米市生まれ。元駿台予備学校化学科講師。大学在学中から受験指導に従事し、駿台予備学校の採用試験に25歳の若さで合格(当時、最年少)。駿台予備学校時代に開発した講座は、超人気講座となり、季節講習会の化学受講者数は予備校業界で日本一となる。2017年、駿台予備学校を退職。独立後は、講座開発コンサルティング・教材作成サポート・講師養成・営業代行をワンオペで請け負う「士教育」を経営する。著書に『あてはめるだけで“すぐ”伝わる 説明組み立て図鑑』(SBクリエイティブ)、『理系読書 読書効率を最大化する超合理化サイクル』(ダイヤモンド社)がある。

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(教育コンテンツプロデューサー/士教育代表 犬塚 壮志)

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