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なぜ不況時こそオフィスの引っ越しをすべきなのか

プレジデントオンライン / 2012年10月31日 14時0分

出典:三鬼商事(東京都心)

■空室率と賃料は景気と連動する

「せっかく六本木に来たのに、どっこも行ってないのよ」

ファーストリテイリング(FR)の女性社員は苦笑いする。

同社は10年3月に、九段にあるビルから、港区六本木にあるミッドタウンに引っ越した。なかなか外出できないのは、初めて社員食堂ができたから。

企業が引っ越して、その後に店子が入らなければ、そこは空室になる。実際、リーマンショック以降の大不況で、東京都心の空室率は、過去最高水準にまで跳ね上がっている。不動産仲介大手の三鬼商事によれば、10年2月末の都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の空室率は8.66%。ITバブル崩壊後の2003年8月の8.57%を上回り、1989年の調査開始以来、最高となった。

オフィスビルの空室率と賃料は、景気との連動性が高い。景気がよくなれば、事業が拡大して人員も増え、より広いオフィススペースが必要になる。不況になれば、その逆のことが起こる。

思い起こせば、80年代の後半、バブル景気華やかなりし頃は、東京が世界の金融センターになるとして、外資系金融機関などが次々と進出した。

さらに99年から00年にかけて起こったITバブルでもオフィス需要は急激に高まった。ソフトバンク、ヤフー、USEN、旧ライブドアなどに代表されるITベンチャーが、オフィス需要を牽引したのだ。むろん、バブル崩壊後は、反動で空室率は大きく上昇した。

特に03年は不況に加えて、六本木ヒルズや汐留地区の大型ビルが竣工し、供給も増えたが、「09年、10年は、供給量はそれほど多くない。そのわりには空室率が上昇している。景況感が悪くて企業の需要は縮小一辺倒という状況ですね。体感的には最悪です」(不動産業者)。

不況にともなって賃料も下がり続けている。坪当たりの平均賃料は10年2月末で1万8434円と、前年同月比では14.7%も下がった。需要に比べて供給が多いため、賃料にも、まだ底打ち感が出てこない。

こうした事情を背景に、企業は借りているフロアの床面積を縮小したり、賃料の安いビルに引っ越すことで、経費の節減を図る。引っ越す場合は、引っ越し費用だけでなく、ビルの原状回復費用もかかるが、2~3年で元が取れれば、移転を決断するようだ。

コスト削減が「守りの引っ越し」だとすれば、一方で「攻めの引っ越し」もある。これまで複数のビルに分散していたオフィスを、1カ所に集めて、業務や事務の効率化を図ったり、社内のコミュニケーションの向上を図ろうというものだ。FR、楽天、マイクロソフトの引っ越しは、これにあたる。

先述のFR社員もこう語る。

「グループ会社が結集したので、グループ会社の仕事が圧倒的にやりやすくなった。海外の会社についても、テレビ会議とか、インフラが充実している」

例えばいまなら「複数フロアに分散していたオフィスを、ワンフロアに大きくまとめても、従来の8掛けくらいの費用で入れる」(不動産関係者)というから、伸びている企業にとっては、賃料が下がったいまは、逆にチャンスというわけだ。

FRが入居する前の借り主は、一時は時代の寵児ともてはやされたグッドウィル・グループ(現ラディアホールディングス)やUSEN(フロア移転)。いまや両社とも往時の勢いは全くない。FR社員は、

「だから、企業の明暗云々、という見方をされることがよくありますね。うちも業績が悪くなれば撤退でしょうね」

※すべて雑誌掲載当時

(プレジデントオンライン編集部 特別編集委員 原 英次郎)

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