もっと早くこうすればよかった…いじめられっ子だった弁護士が今でも後悔する「いじめから身を守る方法」
プレジデントオンライン / 2023年10月27日 15時15分
※本稿は、菅野朋子『いじめられっ子だった弁護士が教える自分の身のまもり方』(草思社)の一部を再編集したものです。
■元いじめられっ子だった弁護士の後悔
私は中学の終わりから高校2年まで、学校で陰湿ないじめを受けました。いじめのせいで、摂食障害やうつ病を患い、生きていることがつらいと感じるようになりました。
20代で出産を経験し、30歳を目前に控えたあるとき、一念発起して司法試験への挑戦を決意。5回目の試験で合格することができ、それ以降は弁護士として仕事を続けています。
今、いじめを受けていたころの記憶を思い返すとき、「あのとき、こうすればよかったな」と考えることがあります。一番強く思うのは「もっと早く大人に相談していたら」ということです。勇気を持って早めに助けを求めていたら、いじめをやめさせることができ、学校にも普段どおり通い続けられたかもしれません。
この本は、そんな私自身の経験と弁護士としての知識をもとに、いじめに立ち向かい、自分の身を守るための方法をお伝えするために書きました。今この本を手に取った人の中には、現在進行形でいじめに悩む人や、その親御さんがいると思います。
残念ながら、人間がいる限り、この世界からいじめがなくなることはありません。いじめはなくなることがベストですし、なくすために努力もすべきです。しかし、完全になくすことは不可能です。
ですから、いじめをなくすための方法を考えていくだけでなく、いじめが起きたときの対策を考えておくこともとても大切です。
■話を聞くのをあとまわしにしてはいけない
ここからは、いじめを受けている子のお父さんやお母さんに伝えておきたいことをまとめます。
まずは、お子さんの話に必ず耳を傾けましょう。どんなに忙しくても、話を聞くのをあとまわしにしないでください。
子どもがいじめについて話そうとしているときは、覚悟を決めて、勇気を振り絞りながら行動しているときです。
そのタイミングを逃すと、子どもは話すのをあきらめてしまうかもしれません。そして、もう親に助けを求めるのをやめてしまう可能性があります。
どうしても、子どもが話しかけてきたタイミングでは対応できないときも、「あとで聞くよ」などと軽く返さないようにしてください。
「あとで必ず時間をつくってじっくり話を聞くからね」と伝えた上で、改めて時間を取るようにしましょう。
■子どもの不安を取り除く言葉
お子さんからいじめについて相談されたときには、まずは共感することが大切です。
「ああ、それはつらかったね」と共感した上で、「何があってもあなたの味方である」というメッセージを伝えてください。
いじめられているとき、子どもは疑心暗鬼に陥っています。本当に親が自分を守ってくれるのか不安に感じています。
ですから、お子さんの不安を取り除く言葉をどんどん口にしてあげましょう。
「とってもつらかったと思うけど、でも大丈夫だよ。お父さん/お母さんがついているからね」
「お父さん/お母さんはあなたの味方だからね」
このように伝えることで、お子さんは安心できると思います。
注意してほしいのは、子どもを励ますつもりで突き放してしまうパターンです。よくあるのが「なんでそんなことで悩んでるの? くだらないことじゃないの」「そんなのほっときなさい」といった言葉かけです。
あるいは、「いじめられたら、同じようにやり返しなさいよ」と子どもをけしかけるような言葉をかける親もいます。
こうした言葉は子どもにプレッシャーを与え、絶望感をもたらします。あくまでも子どもに共感して味方をする言葉がけを意識してください。
![膝を抱えてベッドに座っている子ども](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/b/1200wm/img_db6cf66ca753db739d37e1fbbdee0d43234079.jpg)
■共感しても同調はしない
そしてもう一つ大切なのは、子どもに共感しても同調はしないということです。
「つらいよね」と共感するのはよいのですが、子どもと一緒になって落ち込んだり、「どうすればいいんだろう」と迷ったりしていたのでは、子どもはいつまでも救われません。
親がうろたえると「やっぱり言わなければよかったな」「親を心配させて悪かったな」と子どもが後悔してしまうおそれもあります。
自分の子どもがいじめを受けていると知ったら、びっくりするのは当然でしょう。
怒りを覚え、感情的になってしまうこともあると思います。
実際に、私のもとに相談に来る親御さんの中には、当事者であるお子さん以上に怒っている方がいらっしゃいます。
「相手の子を停学にさせたいんですけど、どうすればできますか?」
開口一番、このような相談を受けることもあります。
「それはお子さんが本当に望んでいることですか?」と尋ねると、果たして親御さんだけが先走っているとわかることがあるのです。
親御さんには、いじめ問題に関してどんと構えていただきたいと思います。どこまでもお子さんの味方であり、共感もしてほしいのですが、客観的視点を失ってはいけません。
■客観的な記録を残す
お子さんの言い分は当然信用すべきですが、その一方で「相手方の話や周りの子の話も聞いた上で判断される問題である」という視点も持っておく必要があります。
右から光を当てたときと、左から光を当てたときでは、同じものでも違って見えます。それと一緒で、もしかしたら当事者同士で誤解が生じているかもしれないですし、その誤解を解くだけで問題が解決することもあります。
ですから、感情的にならないでください。あくまでも冷静な立場で、自分が解決に向けてできることを考えていくことが大切です。
例えば、お子さんがいじめの証拠を記録できるようであれば、証拠を残すようにアドバイスをするのもよいと思います。客観的な記録があれば、解決に向けて前に進むこともできるようになります。
■黙っておくはNG
また、親御さんが自分だけで解決しようとしないことも大切です。私から見て、お母さんが問題を抱え込み、ひとりで対処しようとするケースが多いと感じています。
お母さんが「いじめられているのは恥ずかしいこと。なるべく黙っておいたほうがいい」と考えるのは逆効果です。
お父さんがいるならお父さんに相談すべきですし、学校で起きたことは学校に相談して解決するのが基本です。さらに、事件性がある場合は警察への通報も必要でしょう。
その上で、弁護士や法務局の人権相談窓口などに相談する方法もありますので、とにかく「誰かに相談して解決する」ことを心がけましょう。
■学校に行かせるべきかどうか
お子さんがいじめを受けているとわかったとき、親御さんは「このまま学校に通わせてよいのか」という悩みに直面すると思います。
いじめを知った瞬間に「もういい。学校なんか休みなさい」と積極的に休ませようとする対応が多く見られます。しかし、これには手放しでは賛成できません。
![菅野朋子『いじめられっ子だった弁護士が教える自分の身のまもり方』(草思社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/c/1200wm/img_8caaaec858611372647a579999c98ec2302820.jpg)
私は、学校に行けるのであれば、行くに越したことはないと考えています。一度学校から離れてしまうと、復学するハードルはどんどん高くなっていきます。
少しでも登校できる余地があるのなら、登校したほうがいいと思うのです。
ただし、本人が「どうしても学校に行くのは無理」と言う場合は、登校を強制すべきではありません。学校はそこまでして通わなければならない場所でもないからです。
最悪なのは、嫌がる子どもを引きずるように学校に向かわせる行為です。これだけは絶対に避けてほしいところです。
休学や転校などは、本人の意思を尊重しながら、慎重に判断していただきたいと思います。
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弁護士
1970年生まれ。立教大学社会学部を卒業後、結婚や出産、離婚を経て、東京大学法科大学院在学中の2007年に5回目の挑戦で旧司法試験に合格した。2009年に弁護士登録。企業内弁護士や法律事務所で経験を積み、2011年に独立。企業のコンプライアンス、離婚・相続や学校問題、いじめ事件にかかわる一方、小中学校での法教育やいじめ授業の活動を積極的に行っている。2023年9月から沖縄県宮古島に法律事務所を開設。現在は、東京と宮古島との2拠点で活動している。
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(弁護士 菅野 朋子)
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