1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「東大合格者数」で志望校を選んではいけない…中学受験のプロが教える「学力を伸ばしてくれる学校」の特徴

プレジデントオンライン / 2023年10月27日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

中学受験ではどのように志望校を選べばいいのか。教育コンサルタントの渋田隆之さんは「週刊誌の大学合格ランキングは卒業生数や現役・浪人の比率などが考慮されていないことがある。一方、入学時と卒業時の偏差値差が大きい学校は、確実に生徒を伸ばしている学校だ」という――。

※本稿は、渋田隆之『2万人の受験生親子を合格に導いたプロ講師の 後悔しない中学受験100』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■志望校選びはどこに着目するべきか

「行列ができるラーメン屋に『行列ができているから』という理由だけで並ばない」というのは、志望校選択の大原則だと思います。

昨今では、国際化、アクティブラーニング、ICT、英語指導、海外留学への対応などは、強化していない学校はありません。親世代とは違い、「この学校はなんだか新しいことを取り入れていそう」という理由だけで志望校を選ぶのは危険です。

また、校名変更、共学化、付属校化、校舎の移転などを行った学校は、情報の露出が多いことと期待値の高さから、入学難度が高めになりがちなので注意が必要です。また、説明会でのアピールのみで判断するのもおすすめしません。改革前から通っている生徒がいきいきとしているかを確かめるほうがいいでしょう。

■手っ取り早いのは「普段の授業」の見学

学校行事の盛り上がりも志望校選びの参考にはなりますが、行事はあくまで「特別な日」。普段の授業を見学するほうが、学校の空気をつかむのには手っ取り早いです。

先生が教壇の前で解説し、生徒が静かに黒板を写しているだけの授業も時代遅れになってきています。生徒が主体的に授業を受けているかどうか、その学校の学習スタイルがわが子に合っているかどうかを、比較して見極めましょう。

なかなか学校に直接行く機会がなくても、ホームページに生徒の写真や動画などを載せているところも増えています。

一部ではなく、たくさんの生徒が紹介されているホームページは、好感が持てます。

<学校の外で生徒の「素」を見る>

学校帰りの生徒の様子を何校か見に行きました。疲れが出ている学校帰りのほうが、生徒の素の表情が見られると思ったからです。

しつけが厳しいと評判の学校の生徒が、駅で大騒ぎしていたのを見てがっかりしました。逆に、それまで検討していなかった学校の生徒が本当に楽しそうに帰っていた様子を見て、一気にファンになりました。

■数字のみで判断しないことが大切

「進学実績」も重要ですが、数字は客観的に見るようにしたほうがいいでしょう。私は、ランキングに出ている表は参考程度にとらえています。

大学入試後には、週刊誌で大学合格ランキングなどが特集されますが、卒業生数や現役・浪人の比率などが考慮されていない数字の場合もあるので、注意深く見ていきましょう。

東大や国公立大、早慶、上智などの難関大や、海外の大学への合格者数も大事な指標の一つではあります。しかしその一方で、生徒の希望の実現のための大学、学部・学科にしっかりと合格できているか、という例があるかも大切です。また、入り口(入学時)と出口(卒業時)の偏差値差が大きい学校は、確実に生徒を伸ばしている学校だと判断できます。

志望校選びは、いろいろな視点で見ることと、数字のみで見ないことが大切です。

進学後に濃密な6年間を過ごし、一生のつきあいとなる「母校」となります。学校の中にいると「なんか落ち着く」「ほっとする」というのも大事なポイントです。友だち選びや、配偶者選びと同じように考えてみるのも、いいかもしれません。

<家ではできなかった鉄道の話>

入試が近づくにつれ、「志望校や過去問の点数」などの勉強面の相談が多くなるものですが、その子は大好きな鉄道の話をしにくることが増えました(そもそも彼が東京最難関の男子校を志望したきっかけは、「たくさんの電車に乗って通えるから」でした)。

1月後半には鉄道図鑑を開き「先生、どのシートの色が好き?」というレベルまで話がマニアックになっていました。

さすがに止めようと思ったタイミングで、彼はこう話しました。

「先生、今までぼくの話につきあってくれてありがとう。家では勉強以外の話をしにくいムードだから、先生と話す時間が楽しみだった。お礼に合格してくるね」見事、合格を勝ち取っていました。

大学入学共通テストなどの受験シーズンを前に、学問の神様・菅原道真を祭る湯島天神(東京都文京区)では、合格祈願のため絵馬を奉納する人たちの姿が見られた=2023年1月11日
写真=時事通信フォト
大学入学共通テストなどの受験シーズンを前に、学問の神様・菅原道真を祭る湯島天神(東京都文京区)では、合格祈願のため絵馬を奉納する人たちの姿が見られた=2023年1月11日 - 写真=時事通信フォト

■学校説明会や文化祭では「ちょっと質問する」

学校説明会や文化祭、体育祭に行くときは、タイミングを見計らって、誘導をしている先生などに「ちょっと質問する」ことを心がけてください。

おすすめは、「算数が苦手ですが、どのような勉強をすればいいですか」と、勉強方法を聞くことです。もちろん、聞いた人だけが得する裏情報は聞けませんが、「うちは計算と応用問題などの配点がまったく同じなので、計算を重視するといいかもしれません」など、子どもの勉強のモチベーションアップに効果的な情報が手に入ることも多いです。

文化祭では、鉄道研究会に一日中いたり、焼きそばを食べたりしただけではもったいないです。その学校の生徒たちは、学校に後輩が来てくれるのはうれしいことなので、これも生徒たちのタイミングを見て、学校生活について聞いてみるのがいいでしょう。

模試や特訓に時間を取られてしまい、6年生になると忙しくなるので、学校見学は、4年生、5年生のうちに行っておくといいでしょう。また、学校名や校章の入ったタオルや鉛筆などのグッズが手に入るときはお守りとして購入しておくと、子どものモチベーションの維持につながります。

最後に大切なことをお伝えします。

「子どもと一緒に学校見学に行きます。どこを見たらいいでしょうか?」

という質問の究極の答えは、「わが子の目が輝いているか」です。キラキラ輝いている目を見逃すことのないようにしましょう。

学校の廊下を歩く4人の学生
写真=iStock.com/urbancow
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/urbancow

■万人にとって「完璧な学校」は存在しない

「決断する前に、失敗を恐れない」

これは、何かを決定するときの鉄則です。

失敗を恐れる人や決断が遅い人の共通点に「完璧主義」があげられます。志望校を探すときに一番大事なのは、自分の子どもに合う学校はあっても、「万人にとって『完璧な学校』は存在しない」と理解することです。

「どうしても志望校が決まらない」という相談を受けたとき「○○君が行く学校が、一番いい学校になります。彼はまわりへの影響力があるので、どこに入ってもいい学校にしてくれますよ」と力説したこともありました。

「志望校は親が決めるのと子どもが決めるのとどちらがいいでしょうか?」

と質問をされることがあります。まずは、志望校に限らず「中学受験の主人公は子ども」ということが軸足ではないかと思います。ただし、子どもの経験値だけでは、適切な志望校選びが難しいのも事実なので、親子で上手に相談をしながら決めてください。

ちなみに、一番深刻なのは、両親の間で受験の意思が固まっていないケースです。

お母さんが受験勉強を支えてきたのに、お父さんが直前に「公立でもいいんじゃないか」などと言い出す場合は、修羅場となる可能性が高いです。

また、保護者が「受けたい学校を受けさせてくれた」ということに、子どもは思っているより感謝しているものです。

これは、「合否にかかわらず」というのが大事な点です。「最後は自分のことを信頼して任せてくれた」というメッセージを、子どもたちはしっかりと受け取っています。

■「合格者」と「入学者」は違う

「ギリギリの成績で合格しても、入学後についていけなくて大変そうなので、偏差値に余裕のある学校を受けたほうがいいでしょうか」

よくあるこの質問について、中学入試の特徴から説明します。

渋田隆之『2万人の受験生親子を合格に導いたプロ講師の 後悔しない中学受験100』(かんき出版)
渋田隆之『2万人の受験生親子を合格に導いたプロ講師の 後悔しない中学受験100』(かんき出版)

中学入試は、一人で複数回受験し、複数の学校に合格します。以前、願書を出した学校すべてを受験し、1月入試や午前午後入試を含めて11の学校に合格した子もいました。

仮に、偏差値60の学校があり、合格する子は偏差値52~68だとします。偏差値60で合格した子は、入学後は真ん中の成績になると思いきや、実際は上位のことが多いです。なぜなら、中学入試は一人で何校も受験できるため「偏差値の高い生徒は、より上位の中学に進学するケースが多い」からです。合格者と入学者の偏差値には差があるのです。

合格者がどんな成績でも、シンプルに「その学校に合格するだけの力があった」ということなので「入ってからついていけるかどうか」という悩みの先取りをする必要はありません。

■「入試の特徴」は「学校の特徴」と似る

もう一つ、「合格=その学校に合っている」証拠です。

授業で論文を書かせる中学校は入試でも記述の出題が多く、理科の実験観察を重視する中学校は実験観察に関する問題が多く出題されます。また、基本問題を中心に出題する学校は、学習指導がていねいに進みます。これが、「入試問題は学校の顔」とも言われる所以です。

冒頭のような悩みが出てくるのは、合格への不安と戦っているタイミングでしょうから、以下のような志望校の入試問題の傾向を、落ち着いて分析してみるのもいいでしょう。

・基本問題がほとんどだが、合格最低点が高い VS 難問が多いが、合格最低点が低い
・得意教科があれば、大きく差がつく VS 4教科のバランス重視(4教科の配点が同じ)など
・問題数が多く、スピード勝負 VS 問題数が少なく、途中点の稼ぎかた勝負

というふうに、特徴が正反対の学校がたくさんあります。配点も制限時間も問題傾向も、千差万別です。先述の通り、入試の特徴は学校の特徴と似る傾向があるので、合格したら「入学後なんとかなる、なんとでもなる」と思ってください。

----------

渋田 隆之(しぶた・たかゆき)
国語専門塾の中学受験PREX代表、教育コンサルタント・学習アドバイザー
神奈川大手学習塾で中学受験部門を立ち上げ、責任者として20年携わる。毎年、塾に通う受験生全員と生徒面談を実施。保護者向けにも、ガイダンス、進路面談・カウンセリングを担当し、これまで関わった人数は2万人以上。講演会は年に80回以上。ブログ「中学受験熱血応援談」は年間100万件以上のアクセスを獲得している。2022年7月に中学受験PREXを立ち上げ、現在も継続して中学受験の最前線に立ち続ける。

----------

(国語専門塾の中学受験PREX代表、教育コンサルタント・学習アドバイザー 渋田 隆之)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください