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100人の愛人を囲い、現金3トンをため込む…中国で横行する「想像を絶する腐敗」の実態

プレジデントオンライン / 2023年11月2日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/nipastock

中国で横行する汚職は、日本人の想像を絶する。ジャーナリストの櫻井よしこさんは「1999年以降の20年間で、土地のリースによる汚職が横行した。習近平は地方政府の汚職追放に力を入れたが、その追放や改革はルールに基づくのではなく、習氏につながる人脈を保護する形で恣意的に行われているにすぎない」という――。

※本稿は、櫻井よしこ『異形の敵 中国』(新潮社)の一部を再編集したものです。

■「七一勲章」授与式で習氏が語ったこと

習氏は「七一勲章」授与式に臨んだ。七一勲章とは市井の暮らしの中で自分の職務に忠実に黙々と奉献する平凡な英雄に贈られるもので、中国共産党の最高の勲章とされる。七一勲章を受けた「人民」の中に、尖閣諸島などで跋扈(ばっこ)する海上民兵が含まれていた。尖閣奪取は台湾併合と背中合わせの中国共産党の宿願である。授与式で習氏は次のように国民を諭した。

「全党の同志はマルクス主義に対する信条、中国の特色ある社会主義に対する信念を生涯追い求め」なければならない。「永遠に党を信じ、党を愛し、党のために働き、各持ち場で必死に頑張り、崇高な理想のために奮闘する実践を絶えず前に推し進めていかなければならない」。

党への絶対的信頼、絶対的服従、熱烈な愛を要求している。その党の根本を導くのが習氏自身の思想だと言っている。国民に要求する絶対的信頼や永遠の愛は全て習氏に集中されるべきだという理屈だ。毛沢東への個人崇拝の再来である。

■「習近平思想」への自負

2021年7月の建党100周年の記念講演で習氏は語った。

「100年前、中華民族が世界の前に示したのは一種の落ちぶれた姿だった。今日、中華民族は世界に向けて活気に満ちた姿を見せ、偉大な復興に向けて阻むことのできない歩みを進めている」

なぜ中華民族は力強く蘇ることができたのか。その理由は、毛沢東が中国を「立ち上がらせた」、鄧小平が「豊かにした」、自分が「中国を強くした」からだとする。その上で自分の唱える中国の特色ある社会主義だけが中国を発展させることができる、と幾度も強調し、繰り返す。

「カギとなるのは党だ」「中国共産党がなければ新中国はあり得ない。中華民族の偉大な復興もない」「中国共産党の指導が中国の特色ある社会主義の最も本質的な特徴だ」。

自分の思想があって初めて中国は成り立つ。中華民族の偉大さも「習近平思想」ゆえに実現されると信じて疑わない。絶対的支配者の自画像である。

上記の二つの演説に習近平氏の描く中国の未来の路線が明確に示されている。或る意味、わかりやすい。中国が少しでも開かれた民主国になり、穏やかな大国になってほしいとする日本、米国など大方の希望とは根本的に異なる路線だ。中国人民が中国共産党を唯一の政党として信頼し、その頂点に立つ指導者の自分を敬い慕い続ける国を習氏は目指している。

■研究者が明らかにした「腐敗の実態」

外交専門雑誌「フォーリン・アフェアーズ」は21年7・8月号で「中国は台頭し続けられるか」として特集した。その中に興味深い論文があった。ミシガン大学政治学部の准教授、ユエンユエン・アン氏による「北京のドロボー貴族」だ。

アン氏は中国の汚職は鄧小平のときに進化したと断ずる。鄧は中国を豊かにするためにひたすらカネを生み出す現実路線をとったが、党に忠誠である限り、腐敗も許したというのだ。

結果、想像を絶する腐敗が横行した。彼女が挙げたなかに鉄道担当大臣の実例がある。彼は350室の大マンション1棟と一緒に1億4000万ドル(約154億円)の賄賂を受け取っていた(※2021年7月時点)。他にも100人の愛人のハーレムを持ち、現金3トンをためこんでいた高官もいた。3トンの現金とはいったいどれほどの額なのだろうか。劇画のヒールそのものである。

中国陜西省西安の中級人民法院で汚職の罪で共に禁錮17年の実刑判決を受けた中国共産党地方幹部のチャン兄弟
写真=AFP/時事通信フォト
中国陜西省西安の中級人民法院で汚職の罪で共に禁錮17年の実刑判決を受けた中国共産党地方幹部のチャン兄弟。右側のチャン・シャオチュアン被告が党重慶市書記時代にテレビ局役員を兼任し、55万元(約730万円)以上の賄賂を受け取ったという(=2005年7月13日) - 写真=AFP/時事通信フォト

■地方政府の借金は「440兆円」

摘発によってこのハチャメチャな汚職の実態は中国国民の知るところとなった。そして汚職の形態はやがてもっと進化し、土地のリースが主軸となった。中国では国土は全て国が所有し、誰も買い取ることはできない。しかし借りることはできる。そこで地方政府などは元々タダの国土を法外な値段でリースし始めた。

99年以降の20年間で、地方政府の歳入は土地のリースによって120倍にふえ、共産党のコネを利用した土地のリースが横行した。共産党が糸を引けば金融機関から無尽蔵の融資が受けられる。一部の者が天にも届くカネを手にし、実体経済とかけ離れた好景気が続いた。結果地方政府の借金は4兆ドル(440兆円)に達し、破綻地獄に近づいている(※2021年7月時点)

習氏はこうした汚職追放に力を入れたが、その追放や改革はルールに基づくのではなく、習氏につながる人脈を保護する形で恣意(しい)的に行われているにすぎない。これでは中国経済の真の立て直しは困難だというのがアン氏の見立てで、少なからぬ専門家が共有する解釈でもある。

■毛沢東を見習う習氏の根本的な弱点

毛沢東は戦略に優れていたが、最後は文化大革命の暴力に溺れて死んだ。毛沢東を見習う習氏にも根本的な弱点がある。その弱点は悉くわが国の国柄の対極にある。誰に尋ねても中国共産党の国よりも、わが国の方が人民、国民を幸せにすると言うだろう。ここがわが国の強味である。

櫻井よしこ『異形の敵 中国』(新潮社)
櫻井よしこ『異形の敵 中国』(新潮社)

わが国の為政者や経済人は果たしてそのことに気づいているか。わが国のよき点、国柄に示されている国民中心のあり方をしっかりと理解している指導者ならば、祖国日本への信頼を基盤にして、中国の弱点を逆手にとる賢い政策で対応できるはずだ。両国の対照的国柄を明確にして、国益につなげていける局面だが、それができているとは思えない。日本人は政治家、経済人、国民一人一人に至るまで、果敢に価値観の闘いに挑むための、知識と勇気を身につけるときだろう。

中国はいま、ウイグル人ジェノサイドを指摘されている。歴史から見れば一瞬の短さではあろうが、中国が弱さの中にあるのは間違いない。この隙を突いて、日本国の弱さを克服することを考えよう。その一例として眼前の尖閣の危機がある。尖閣を守る手立てを講ずるのだ。何よりも、自衛隊の強化と憲法改正に向かって走るときだろう。

■コロナ禍の東京オリンピック

3年程前の2020年、習近平中国国家主席はウイグル人ジェノサイドに関してだけでなく、武漢ウイルス発生に打つべき手も打たず、国際社会に通告することもなくその蔓延を許したことで非難されていた。同年初頭から、日本にも中国人によって武漢ウイルスが国内に持ち込まれ拡散された。安倍晋三首相は感染者が増え続ける中、東京五輪をどうするか判断を迫られた。

20年3月24日、国際オリンピック委員会のバッハ会長と会談し、安倍首相は五輪開催の1年延期、21年夏までの開催で合意した。同決定について「朝日新聞」を筆頭に反対論が巻き起こった。朝日の反対は想定の範囲内だった。だが、東京五輪は朝日の非難とは正反対に大成功をおさめた。外国から多くの選手や関係者が来日して武漢ウイルスが広がるなどと言われたが、それも起こらなかった。振りかえればあの厳しい状況下で、日本国は政府も国民も、大いなる努力と我慢で危機を乗り切ったのだ。日本人として大いに誇ってよい。

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櫻井 よしこ(さくらい・よしこ)
ジャーナリスト、国家基本問題研究所 理事長
ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業。「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局員、日本テレビ・ニュースキャスター等を経て、フリー・ジャーナリストとして活躍。『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』(中公文庫)で大宅壮一ノンフィクション賞、『日本の危機』(新潮文庫)を軸とする言論活動で菊池寛賞を受賞。2007年に国家基本問題研究所(国基研)を設立し理事長に就任。2010年、日本再生に向けた精力的な言論活動が高く評価され、正論大賞を受賞した。著書に『何があっても大丈夫』『日本の覚悟』『日本の試練』『日本の決断』『日本の敵』『日本の未来』『一刀両断』『問答無用』『言語道断』(新潮社)『論戦』シリーズ(ダイヤモンド社)『親中派の嘘』『赤い日本』(産経新聞出版)などがある。

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(ジャーナリスト、国家基本問題研究所 理事長 櫻井 よしこ)

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