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なぜ中国が青森県の土地を「爆買い」しているのか…日本人の支払う電気料金が中国企業に流れる恐ろしい仕組み

プレジデントオンライン / 2023年11月7日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/magicflute002

中国系企業による日本の森林、水源地、農地などの買収が問題視されている。ジャーナリストの櫻井よしこさんは「中国企業は民間企業の形であっても中国共産党の支配下にある。日本の安全保障のために、国土や海を中国に奪われない法整備を実現しなければならない」という――。

※本稿は、櫻井よしこ『異形の敵 中国』(新潮社)の一部を再編集したものです。

■今、世界で一番危険な地域は、わが国の周辺

この数週間、つい視線が向かう地図がある。太平洋を挟んで、右に南北米大陸、左にユーラシア大陸があり、核保有国を赤く塗った地図だ。ロシア、中国、北朝鮮を中心にユーラシア大陸は赤く染まり、北米は米国が赤い色に染まっている。そのまん中、太平洋の左端にポツンとわが国日本が心細げに浮かんでいる。今、世界で一番危険な地域は大西洋・欧州ではなく、太平洋・アジアであり、わが国周辺なのだと実感する。

ウクライナへのロシアの侵略戦争で私たちは日々の戦況報告に気をとられ、世界のパワー・バランスの大変化で日本がどれ程危険な立場にあるかに気がつきにくい。ぼんやりしているわが国には断固とした国防への気概も備えもない。考えは甘く、制度は緩い。米国と協力して、国の命運が懸かる対中戦略の具体策を定め、憲法改正を含めて備えるときだが、そこまでの厳しい認識があるとは思えない。これでは中国が狙うのも当然だろう。

■ウクライナ侵略戦争によるアジアへの影響

オースティン米国防長官は4月25日、ロシアが二度とウクライナ侵略戦争のようなことができないように、「ロシアの弱体化を望む」と語った。その言葉どおり、米国はロシアを衰退させる意図でウクライナにより深くコミットしつつある。

ウクライナの武器装備を補充、強化するための経済支援は、ロシアが全面的侵略戦争に踏み切った2月24日から4月21日までで30億5000万ドル(約3982億円)に上る(※2022年4月時点)。ところが4月28日、バイデン大統領は新たに330億ドル(約4兆3087億円)の追加支援を議会に要請した。2月以降の実績と合わせると総額約4兆7000億円、ロシアの2021年の軍事予算、659億ドル(約8兆6000億円)の半分を超える規模だ。

この侵略戦争で、ウクライナの側に立ち、プーチン氏を憎むのは自然な感情であり、だからこそ米国のウクライナへの肩入れもうなずける。同時にウクライナ戦争がアジアにどんな状況を生み出しつつあるか、日本の立場から憂えざるを得ない。それを象徴するのが日本の危機を表す冒頭の地図なのだ。

■中国は常に米国の弱体化を望んできた

米国がウクライナ問題に深く関わり、経済資源や軍事資源を投入し続けることを一番喜んでいるのは中国である。彼らの大目標は米国との競争に勝ち、地球上の覇者になることで、敵は米国だ。そのため中国は常に、米国の弱体化を望んできた。ブッシュ(父)大統領の湾岸戦争、ブッシュ(子)大統領のアフガン戦争のとき、中国人は、米国が中東地域でどれだけの力を使い果たすか、それによって米国の国力が落ち、地位がどれだけ脅かされるかに強い関心を持った。

米国の消耗を切望し、戦争の長期化、出来れば泥沼化を彼らは願った。今回も同様であろう。ウクライナとロシアの戦争が長引いて米軍がより深くコミットし、大規模援助で消耗し疲弊することを望んでいる。アメリカさえ弱体化すれば、アジア太平洋は中国が制覇できる。

そのような展開は日米双方にとって非常に危険で、そもそもバイデン大統領の戦略にも反する。2021年米国はアフガン戦争からの撤退に踏み切った。バイデン氏は、撤退は真の脅威である中国に集中するためだと明言した。しかし米国がウクライナ問題に深く関わりすぎれば、中国に力を集中することなどできない。日本にとっての重大な危機である。だからこそ、ウクライナ戦争で如何に早くロシアの敗北を実現できるのか、日本もわが事として考えなければならない。

北京で握手を交わすロシアのプーチン大統領(左)と中国の習近平国家主席(=2023年10月18日、中国・北京)
写真=AFP/時事通信フォト
北京で握手を交わすロシアのプーチン大統領(左)と中国の習近平国家主席(=2023年10月18日、中国・北京) - 写真=AFP/時事通信フォト

■日本周辺は核とミサイルの密度が最も高い地域

地政学的に日米が最も懸念しなければならないのは、中国とロシアが手を結び、ユーラシア大陸を事実上中国が支配することだが、いま起きている事態がまさにその中露連携である。バイデン政権は、最大の脅威である中国への対応に集中もできず、中露連携も阻止できていない。ここで戦略的方向性を失いつつあることが最も懸念される。

一方中国にとって、米欧がウクライナに集中している今は戦略的好機だ。彼らは国力の基本としての軍事力構築を脇目もふらずに進めている。

「人民解放軍(PLA)のミサイル部隊と爆撃機は、2030年には中国本土から3200キロメートル以内に位置する850カ所の目標に対して2回、1400キロメートル以内であれば4500カ所を超える目標を2回攻撃できるようになる」と、米シンクタンク、ハドソン研究所研究員の村野将氏は指摘する。

中国の核・非核両用の戦略ミサイルは日本、台湾双方を射程内にとらえ、楽々と複数回攻撃する能力をあと数年で持つ。太平洋の西の端、日本周辺はすでに核とミサイルの密度が最も高い地域だが、その密度はさらに高くなり危険度も増すのである。

■中国はソロモン政府中枢を事実上乗っ取った

バイデン政権が宣言したように、本当の脅威、より手強い敵は中国だ。その中国に最も狙われているのが日本であることは、多くの日本国民がすでに感じとっているはずだ。中国は日本にどのような侵略の手をのばしてくるか。プーチン氏の轍は踏まないだろう。そこで警戒しなければならないのが中国の秘密交渉だ。

4月(※2022年)にソロモン諸島と中国が安全保障協定を結んでいたことが明らかになった。なんとソロモンの国会さえも気づいていなかった。ソロモン議会も気づいていないのであるから、豪州や米国が阻止できなかったのは当然だ。中国はあっという間にソロモン政府中枢を事実上乗っ取ったのである。どれ程の賄賂が渡ったのか。狙いを定めた対象を取り込む中国の手練手管は無尽蔵だ。

■中国資本に狙われる日本の海と海底

日本はソロモン諸島のことを笑えない。2022年5月7日付産経新聞の宮本雅史編集委員による「国境がなくなる日 洋上風力に触手 日本を丸裸」は、中国が日本の洋上風力発電事業を受注し、日本の電力供給の元を押さえる動きに出ていると警告する。たとえ一部といえども電力の供給源を他国、とりわけ中国に握られることは危険だが、それだけではないと宮本氏は語る。

「たとえば富山県入善町の洋上風力発電事業に中国企業が入ることになりました。発電業者は、発電機を設置する海域の風力、海流、海底の地形、地質などを調査することができます。受注企業は最大30年間、その海域を占有し、調査できるのです」

洋上風力発電所のタービン
写真=iStock.com/glegorly
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/glegorly

中国資本による日本の国土買収を20年以上も取材し、日本侵略の魔の手の実態を知る宮本氏はこうも語る。

「森林、水源地、農地などの国土だけでなく、海洋国家日本の、海と海底までが中国資本の手に渡ってしまいかねないのです」

恐ろしい話だ。中国の脅威に立ち向かうには国防力強化だけでは到底足りない。政治家は危機のアンテナを針鼠のように自分の周りに立て巡らし、中国の脅威を米国にも強調せよ。問題を把握し、国土も海も中国に奪われない法整備を実現しなければならない。

■上海電力が買った青森県の広大な土地

23年春、中国人女性が沖縄県島尻郡の無人島、屋那覇島を買い取っていたことが判明した。沖縄の自衛隊や米軍基地から遠くない島を中国人が買い上げることを、日本の法律は許しているのだ。

それから間もなく日本のエネルギー・安全保障上非常に重要な施設が集っている青森県で上海電力が広大な土地を買っていたことが明らかになった。この事案を暴いたのは加藤康子氏だ。氏は「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録を実現した人物だ。氏が語った。

「原子力燃料再処理施設のある六ヶ所村の属する上北郡の隣がむつ市です。むつ市では使用済み核燃料の中間貯蔵施設を建設中です。ところがこの施設のまん前の広大な土地が上海電力に買われていたのです」

釜臥山から見たむつ市街。青森県むつ市で中国企業の上海電力が広大な土地を買っていた
釜臥山から見たむつ市街。青森県むつ市で中国企業の上海電力が広大な土地を買っていた(写真=Snap55/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons)

中間貯蔵施設の前の広大な原野は日本人女性の名前で登記されているが、この土地での事業の申請と認可はSMW東北という合同会社名でなされている。合同会社は複数の会社がかかわっており、実態把握が難しい。しかしSMW東北社を辿っていくと、所在地は上海電力の住所に行きつく。彼らはここで風力発電事業を行うことに、書類上はなっている。

■国民の支払う電気料金が中国企業を潤す

風力であれ、太陽光であれ、再生エネルギー事業は固定価格買い取り制度(FIT)で守られている。一旦認可を得れば生み出した産業用電力は比較的高く設定された固定価格で20年間ずっと買いとってもらえる。旨味のある商売だ。買い取るのは電力会社だが、そのコストは各家庭の電気料金に再生エネルギーのための賦課金として上乗せされ、全てが国民負担となる。

青森県むつ市の事案では、もし上海電力がここで風力発電事業を始めれば、発電した分は全て東北電力が買い取らなければならず、その料金は全て消費者の国民が支払うことになる。

ここでもうひとつ大事なことを忘れてはならない。電気料金は全て上海電力の懐に入るということだ。つまりFITを利用した再生エネルギー事業では、私たち国民の支払う電気料金がそのまま中国企業を潤す仕組みになっているのである。

■点から線に変わった中国の日本買収

上海電力が取得していたのは実はここだけではない。むつ市の陸奥湾に面した海上自衛隊の大湊地方隊の基地近くの一帯も買われていた。登記簿上は日本人が所有し、事業認可はSMW東北という合同会社で会社の住所は上海電力。全く同じパターンである。

産経新聞編集委員の宮本雅史氏は日本の国土が外資に買われる問題を長年取材してきた。氏は、2018年に李克強首相(当時)が北海道を訪れたときから中国人の日本の国土買収のパターンが変わってきたと述べる。かつて点として買っていたのが、今は線として買っているというのだ。

たとえば、青森県三沢基地に近い、岩手県安比高原のインターナショナルスクール、宮城県仙台空港周辺の土地、仙台市の自衛隊基地付近で計画されている大物流センターというふうに辿っていくと奇妙なものが見えてくると言うのだ。ここに列挙した以外の土地取引で「中国資本」「中国系資本」で括ると、青森から東京まで国道4号線沿いの点と点が1本の線でつながり、その線上に自衛隊の基地や、その基地につながる物流センターの所在が浮上するとも宮本氏は指摘した。

■洋上風力発電の名の下に合法的に丸裸にされる

もう一点、氏の指摘で重要なことは、洋上風力発電に関してだった。本稿でも一部触れた点だが、経済産業省及び国土交通省が主導する計画では、再エネ海域利用法に基づいて入札が行われる。その際、公募事業者には海底の資料が全て開示される。その周辺海域の潮流、風向き、海底の地形、地質などだ。

櫻井よしこ『異形の敵 中国』(新潮社)
櫻井よしこ『異形の敵 中国』(新潮社)

以上の情報は応募しただけで入手できる。落札して事業を請け負う事業者だけでなく、応札した事業者全てに情報が開示されるのだ。さらに選定された場合、事業者は区域占有許可を与えられ、30年間にわたってその海域を占有できる。独自に海底調査をすることもできる。

日本列島は洋上風力発電の名の下に、合法的に丸裸にされる仕組みである。

中国企業は民間企業の形であっても中国共産党の支配下にある。中国の企業は全て、親会社としての中国共産党、習近平商店の配下にあることを肝に銘じ、国土の安全保障のために、日本国の政治家はいま迅速に動かなければならない。

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櫻井 よしこ(さくらい・よしこ)
ジャーナリスト、国家基本問題研究所 理事長
ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業。「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局員、日本テレビ・ニュースキャスター等を経て、フリー・ジャーナリストとして活躍。『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』(中公文庫)で大宅壮一ノンフィクション賞、『日本の危機』(新潮文庫)を軸とする言論活動で菊池寛賞を受賞。2007年に国家基本問題研究所(国基研)を設立し理事長に就任。2010年、日本再生に向けた精力的な言論活動が高く評価され、正論大賞を受賞した。著書に『何があっても大丈夫』『日本の覚悟』『日本の試練』『日本の決断』『日本の敵』『日本の未来』『一刀両断』『問答無用』『言語道断』(新潮社)『論戦』シリーズ(ダイヤモンド社)『親中派の嘘』『赤い日本』(産経新聞出版)などがある。

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(ジャーナリスト、国家基本問題研究所 理事長 櫻井 よしこ)

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