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なぜ「おごらない男」に腹が立つのか…婚活中の40代女性ライターが「悔しくて泣いた」という秋葉原の夜

プレジデントオンライン / 2023年11月1日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuri2000

■48歳バツイチ、年収700万円、公務員の伸一さん

3度目の婚活個室パーティ参加で、私は公務員の男性とマッチングした(個室パーティの手順や内容の詳細は、第3回を参照してほしい)。

初回と同様、新宿で行われたパーティで、男女10人ずつの参加者を募っていた。しかし平日開催だったためか、実際は男女ともに8人ずつの参加。

マッチングした男性の名は「伸一さん」といい、48歳でバツイチ、年収は700万円。

バツイチ同士、そして伸一さんにも別居している子どもがいるということで、パーティ上で話が弾んだ。初婚の女性は難色を示すかもしれないが、私は婚活市場において「再婚で子持ちの男性」のほうが話をしていて落ち着く。彼らは女性にも結婚にも幻想を抱いていない。だから素の自分で接することができる。初婚の男性相手ではそうはいかない。会話の端々で、彼らが私の性格や生活にチェックを入れているのを感じるのだ。

伸一さんとは後日ランチに行く約束をして、その日は会場から別々に帰った。

■デート前から男性側に「割り勘」を提案された

しかし彼は郊外に住んでいて、お互いの中間地点で会うにしても私の家からは電車でたっぷり1時間かかる。仕事が忙しくなかなか時間がとれない私は、伸一さんにこんな提案をした。

〈都心まで出てきてくれたら、おいしいコーヒーとケーキをご馳走します!〉

すると〈いや~、それじゃご馳走になるのを期待しているみたいだから、割り勘でいいですよ〉と返信が。たしかに私は「ご馳走します」と書いたが、デート前から男性側に「割り勘」を提案されたことはない。しかも低収入な人ならともかく、安定の公務員なのだ。

何となく違和感を覚えながらも、伸一さんとの約束の日。

おしゃれなカフェで軽食を楽しみながら先日の話の続きをした。だが新卒から公務員一筋という人のため、いつしか話題が「行政の取り組み」に……。私も社会問題に興味があるので、だんだん議論のような雰囲気になってきて、いかんいかんと思い直した。今日は「仕事」ではなく、「婚活」に来ているのだ。話題を変えようと思った。

「どうして離婚されたのか、聞いてもいいですか?」

■当初同情していたが、嫌気がさしてきた

遠慮がちに私はたずねた。すると伸一さんは堰を切ったように離婚に至るまでを語り出した。私はそれから1時間、彼の話を聞き続けたのだった。結婚当初から元妻が心の病気を患っていたこと、何とか支えたいと思い結婚生活を15年続けてきたこと、しかし自分や子どもたちへの暴言が止まらないこと……。

そして最後は、「子どもたちにとっては僕はずっと父親ですから。これからも僕は子どもが一番なんです」と言って涙ぐんだ。

私は当初同情していたものの、次第に「なぜこの人の話を親身になって聞かなくてはいけないのだろう」と嫌気がさしてきた。

「あ、もう1時間も経ってしまいましたね」

帰りたいという気持ちをこめてつぶやくと、「もう一件行きませんか?」と伸一さん。

「もう一件、喫茶店?」と私がたずねると、うんうんと彼は首を縦にふる。まぁせっかく来たし……と思い直し、「じゃあ近くの喫茶店に移動しましょうか」と了承した。

■200円は「いいですよ。2件目で調整してくれれば」

こういう場合、男性はさっと伝票をつかむものだ。先日、年上の眞一郎さん(第4回参照)はそうしてくれた。しかし伸一さんは手をださない。私は仕方なくカバンから財布を出し、とりあえず千円札をテーブルに置いた。伸一さんがそれをつかんだ時、自分がサンドイッチとコーヒーセットで1200円だったことを思い出し、

お財布から千円札を会計に出す女性の手元
写真=iStock.com/Rossella De Berti
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Rossella De Berti

「あ、ごめんなさい。1000円じゃたりないですよね」

という言葉が口をついて出た。だが心の中では200円くらい、「いいよいいよ」と出してくれるだろうと踏んでいた。ところが伸一さんは「いや、いいですよ。2件目で調整してくれれば」と私に告げたのだ。

調整? 「200円の借りをつくった」という体裁が嫌で、私は財布の中から500円を取り出した。

「じゃ、これで」 

伸一さんは何も言わずに私が手渡した1500円を握り、レジに向かう。そして会計後に「おつり」の話しはなく、2件目に。

■仕方なく私が二人分のコーヒー代を出すと…

次の喫茶店は席に着く前に、代金を支払うスタイルだった。伸一さんは、メニュー表で一番安い600円のコーヒーを指差す。私はそれより200円高いカフェオレを頼みたいけれど、もしかすると先ほどおつりをくれなかったし、おごってくれるのかもしれない、それなら高くなると感じが悪いと思い、同じ600円のコーヒーを注文した。

だが伸一さんは注文後に私の後ろにそそくさと隠れ、動かない。

仕方なく私が二人分のコーヒー代1200円を店員さんに渡す。

「あの……」

伸一さんが私の服の裾をひっぱるので振り向くと、彼は手のひらを差し出した。その上には600円が。おしゃれなカフェのレジ前で小銭の出し合いをしたくなかったので、「大丈夫ですよ」と私は言う。

そして再び1時間、私は彼の元妻の話を聞き続けるのだった。

帰宅すると伸一さんから「今日は楽しかったですね。ぜひ今度はおいしい居酒屋さんを案内してください(ニッコリマークの絵文字)」というショートメールがあった。私のほうが年下なのだが、これではまるで男女、年齢ともに逆転の立ち位置ではないか。がっかりしてしまう。

■秋葉原で「男性は43~55歳で年収600万円以上」

私はケチなほうではない。飲食する相手が男性でも年上でも、自分の分は払いたいと申し出てきた人間だ。けれどその大半は「仕事」がからんでいたからかもしれないと改めて思った。

仕事ではない生身の男と女で接した時、「お金を出してほしい」という気持ちが芽生えた。私にお金を出してくれないということは、「女性として価値がない」と言われているように感じて、寂しい気持ちになったのだった。

気を取り直して翌週、飲み会に行くことにした。第2回に記したような婚活パーティの合コンスタイルである。前回は銀座に行ったが、今度は秋葉原を選ぶ。堅実な会社員が多そうなイメージだったからだ。参加対象は銀座開催より年齢の幅が広がり、男性は43~55歳で年収600万円以上、女性は41~53歳で恋愛に前向きな人。参加費は男性が7400円、女性が3900円。

夜の秋葉原
写真=iStock.com/fotoVoyager
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fotoVoyager

しかし当日、参加した男性4人を目にして、申し訳ないが一瞬で帰りたくなった。どの人もくたびれた、冴えない雰囲気だったのだ。しかしもしかすると、中身は楽しい人かもしれないと思い直し、席に着く。

婚活事務局のスタッフは銀座開催の時よりも雑な確認で、出欠と本人の身分証を確認した後に「私は次のパーティがあるので」と、さっさと退席してしまう。

■あまりにしつこい「ドラキュラ男」

「もしかすると」という期待は見事に裏切られた。銀座の合コンで出会ったスマートな男性たちとは全く違う。ひとことでいえばガツガツしていて下品なのだ。

「ねー、LINE交換しようよ」
「このシウマイ、俺の息子なみにでかい」

……まったく笑えない。早く帰りたいと思った。しかし取材時の習性で、つまらない、くだらないと思っていても微笑んでしまう。

リーダー格風の50代男性は、会費に含まれていないビールを「注文するから飲もう。俺がおごるから」と誘ってくる。あんまりしつこいので飲むことにした。すると、店員がやってくるたびに「(婚活パーティ参加費の)オーバー分は俺が払うから」と親指を立て、自分を指さす。その男性は浅黒い肌で、笑う時に口がカッと横に開く。襟を立ててシャツを着ている様子がドラキュラに見えたので、私は心の中で「ドラキュラ男」と命名した。

「ひろこさん、2次会に行こうよ」

ドラキュラ男がまた何度も言う。まったく気が進まないが、私の隣に座るくるんくるんの巻き毛のショートカットの女性、アミさんも微笑んで「2次会に行きましょ」と耳打ちしてくる。アミさんはドラキュラではない別の男性がタイプらしい。

私以外の3人の女性が2次会に行くというので断れなかった。場の雰囲気を壊したくなかったのだ。

■次々に運ばれてくる料理を性器にたとえる

2次会はドラキュラ男の行きつけの居酒屋。彼は私の正面に座り、顔を近づけてくる。

「近いですよ」

座敷だったので座ったまま後ずさりする。「ひろこさん、いい男がいないとか思っているんでしょ」とドラキュラ男。図星だが、さすがにそうとは言えない。でも心から帰りたい。

「女性のみなさん、今日は男性陣がおごりますから、どんどん飲んでください」

ドラキュラ男は立ち上がり、そう宣言すると、次々に運ばれてくる料理を性器にたとえて、また下ネタを連発する。本気で吐きそうになった。

ジョッキに入ったハイボールで乾杯
写真=iStock.com/Yuzuru Gima
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yuzuru Gima

やがて空になったグラスにドラキュラ男はみなが使ったおしぼりや割り箸などを詰める。

「それなんか嫌だな。おじさんっぽいし、見た目が汚い」

私がそうつぶやくと、突然ドラキュラ男が真顔になった。

■「住む世界が違うんだよ」「この世間知らずが」

「どういうこと? 何がいけないの?」

怒りに燃えた目をしている。聞きたいのはこっちだ。何が彼の態度を豹変(ひょうへん)させたのだろう。

「俺は飲食店で働いた経験があるんだよね。こうしたほうが店の人が一番ラクなのを知ってんの。お前は何を知っているんだよ。何も知らない奴がなんでこれを否定するんだよ」

私のたった一言で、なぜ彼がそこまで怒るのか不明だが、どうやら地雷を踏んだらしい。

「住む世界が違うんだよ」「この世間知らずが」など、ドラキュラ男は私に毒づく。その時、ほかの男性陣はというと、一人はうたた寝、一人はトイレ、もう一人はアミさんを口説いていて、助けてくれる人はいなかった。斜め前に座る女性だけが心配そうな顔でこちらを見る。

どうして2次会まで来てしまったんだろう。帰ろう、と思った。

「ご気分を害したみたいなので失礼しますね」

■私が置いた1万円を、ドラキュラ男はこっそりしまった

私はドラキュラ男の目の前に1万円札を置いた。それが社会人としての礼儀のつもりだった。1万円札を見ても、彼は何も言わない。

そして店を出たが、誰も追いかけてこなかった。激しく後悔した。私はハイボール1杯さえ飲んでいない。食べたのは焼き鳥の皮、一本だけなのだ。なんで1万円も払ってしまったんだろう。

翌日、アミさんとのLINEで、私が1万円を置いていったことをドラキュラ男は誰にも言っていないことを知った。

自分が2次会に誘い、しかもおごるって言ったくせに、私の1万円を懐に入れて支払いを済ませたのか――。見下されたようで、悔しくて涙がこぼれた。泣いている私に、娘は「5000円にすればよかったのに。1000円でもいいくらいだよ」と言う。その通り。そこで堂々と1000円を出せないところ、高いお金を出して解決しようとするところに、自分の自己肯定感の低さが現れていると気づいた。(続く)

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荒川 ひろこ(あらかわ・ひろこ)
フリーライター
雑誌を中心に記事を執筆。40代後半のバツイチで成人した子どもがいる。

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(フリーライター 荒川 ひろこ)

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