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この5つの領域はプロでも厳しい…スモールビジネスで安定・着実に儲けたい人が選んではいけない分野

プレジデントオンライン / 2023年11月2日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/DragonImages

安定・着実な経営を実現するスモールビジネスで成功する秘訣は何か。20以上のスモールビジネスを展開してきた経営者の武田所長は「好きな商材をビジネスにしようと安直に考えてはならない。趣味となるスポーツや音楽、ボランティアがいる地域振興などの領域は、競合が無料でサービスを行っていることもあるため、儲けようとするのはかなり難しい」という――。

※本稿は、武田所長『スモールビジネスの教科書【実践編】』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

■常に新しいものに手をつけ、新しい波に乗り換えていく

参入を検討する際に重視している点については、スモビジオーナーごとに様々なものが挙げられた。

一方でそれ以前に重要なことが「手数」である。

端的に言えば「数多く、高速で」というのが新規参入に成功するポイントだ。

基本的に儲かりそうなものには関心を持ち、特別な理由がなければ一旦手をつけてみる、という動きを意識するとよいだろう。

検討に検討を重ね慎重にプランを作り上げても、検討段階ではそもそも入手出来る情報は限られているのだ。

この限られた情報を用いて高い確率で成功するのはそもそも非常に難しい。

手数を多くし、成功しそうなものを強めていく、駄目そうであればダメージが大きくなる前に撤退する、という動きを常にするべきであろう。

これはスモビジオーナーとしての生活を続けていくためには特に重要である。

スモビジの場合、1つの事業で長期間儲け続けることは難しい。

柔軟に環境に合わせ、新規事業を開発し続ける宿命にあるのだ。

常に新しいものに手をつけ、新しい波に乗り換えていくという動きが必要だろう。

■事業着手の優先度を決める3つのポイント

さて、手数を多くとはいうものの優先度は設定する必要がある。

どのようにすれば限られた情報の中から筋がよい事業を見出すことが出来るのだろうか。

特に重要な点は、

①性格に合っているか
②個人の強みを使えるか
③市場環境が良いか

の3点である。

この観点からスモビジを評価し、参入の検討をするとよいだろう。

詳しく見ていこう。

1 性格に合っているか

例えば人と話すことが苦手な人が、大量に人を管理するということから逃れられないBPO事業(事務手続きなど低単価のアウトソーシングを大量の人員を雇いながら受託する業務)に取り組むと非常に辛い思いをするだろう。

ここで注意するべきは、好きな商材をビジネスにしようと安直に考えてはならないという点だ。

ややこの方針に抵抗を感じる人もいると思うが、多くのスモビジオーナーは失敗する人の特徴として「特定の商材にこだわりすぎていること」を挙げている。

自分が好きであることとビジネスとして成功することには大きな隔たりがあるのだ。

例えば好きな人が多い領域とは趣味やボランティアとして成立している分野だ。

スポーツ、音楽、教育、ヘルスケア、地域振興などの領域を考えると、多くの人が趣味にしていたりボランティアで取り組んでいたりすることが分かる。

ボランティアがいるということはすなわち、競合は経済合理性を無視した非常に強い相手になり得るということだ。

このように競合が無料で行っている領域で儲けようとするのはかなり難しい。

趣味となるものも同様である。

多くの人が趣味としてスポーツをしている。

金をもらってスポーツをしているのではない。

スポーツが好きな人はスポーツに関連するビジネスであればあまり儲からなくてもやってしまおうと考える。

こうすると価格相場は低い水準になり、全員儲かっていない状態になりやすい。

ヨガのクラスでアライメント調整をしているインストラクター
写真=iStock.com/Satoshi-K
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Satoshi-K

好きをビジネスにするのは十分に注意するべきである。

それでもやりたいということであれば本当に情熱的である必要がある。

その領域なら365日、昼夜を問わず働き続けられるくらいならば、突破口も見出せるだろう。

■「スキル」「ネットワーク」「知識」を起点に考える

2 個人の強みを使えるか

特にスモビジは創業者自身が持つ競争力が会社の競争力に直結するため、自分自身が活躍出来るのかという個人の視点で見るとよいだろう。

私も新たな事業を展開する際には他の事業とのシナジーが効くものを当然選択しやすい。

個人が使える強みとは何だろうか。

主に「スキル」「ネットワーク」「知識」を起点に考えるとよいのではないか。

スキルは例えばWebマーケティング、生産管理、法人営業、開発能力など個人が持つものである。

ネットワークとはある業界にとにかく知人が多い、開発会社を多く知っているなどである。

知識とは「とにかくエネルギーには詳しい」などのように、特定の分野に関して人並み以上の知見を有しているといったことである。

ビジネスを続けていくと個人のスキル・ネットワーク・知識は会社としての能力に変わり、顧客基盤も蓄積されていく。

このようにスキル・ネットワーク・知識を活用し連続的にビジネスを立ち上げていくことで、持続的な経営をすることが出来る。

■ヒット&アウェイで戦うのは効率が悪い

3 市場環境が良いか

どのように市場を見極めるか

私が参入時に重視しているのは、

・長期的なトレンドか
・現実的かどうか
・大きなビジョンがあるか

という3点セットが揃っているかどうかである。

小刻みな参入を繰り返し、ヒット&アウェイで戦うというのは、ビジネスにおいては効率がよくないのだ。

長期的な取り組みを続けていくと常に役に立つ顧客基盤や能力を増強していける。

本書でもS氏が挙げていたが、このような観点を重視する人は今後成長が見込まれる産業の黎明(れいめい)期・成長期を意識して狙うとよい。

ほとんどのプレイヤーが手探り段階である黎明期においては、VTuber事務所「にじさんじ」を運営するANYCOLORのような成功例を如何に早く発見しコピーするかが重要となる。

市場予測の方法に関しては多くの著書があるため他を参照頂きたいが、一時的な流行か否かを簡易に判断するには「熱狂的に使っている人がおり、今後その利用者の拡大が見込まれるか」を見るとよいだろう(参照:Sam Altman “How to Succeed with a Startup”)。

逆にメディアでは騒がれているが熱狂している利用者がいないものはかなり怪しい。スモビジとして手をつけるものではないだろう。

スタートアップに限らず、スモビジの場合も多いのがバズワード系のビジネスであるが、この場合は特に注意が必要となる。

バズワードだから売れるわけではない。

バズワード関係に参入する際には何故その商品が利用者にとって従来製品より良いのか、という問いに対して明確に答えられるようになるべきであろう。

過去のAI、Web3、ビッグデータ、ブロックチェーン系のスタートアップがその後どのような運命を辿ったかを知れば、注意すべきであることがよく分かるだろう。

NFTマーケットプレイスのイメージ
写真=iStock.com/ArtemisDiana
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ArtemisDiana

ちなみに、大企業が新規事業を検討する際に必ず登場する指標である「市場規模」にも触れておこう。

市場規模とは、あるサービスの売上を全企業分、合計した数値である。

自分自身のサービスがあまりに革新的で、この市場規模自体を拡大させるという作用がない場合は、市場規模が売上の上限となる。

この市場規模の中で、ある企業が持っている売上の比率をシェアという。

かなり簡易に市場規模を推定する場合には、自分がやりたいビジネスと類似のビジネスに取り組んでいる企業の売上規模(当該サービスの売上)を真っ先に調査し推定する努力をするべきだ。

市場規模は、例えばその企業のシェアを25%と推定するならば、売上を4倍にすればよい。

スモビジの場合、大企業と異なり市場規模に敏感になりすぎる必要はないが、大きな市場には基本的に強い競合がいることに注意しよう。

一方で誤解してほしくないのだが、スモビジにとってマクロな環境分析の意味がないわけではない。

長期的に取り組めるということは持続性のためには重要なのだ。

すぐに潰れるトレンドに身を預けることはスモビジのコンセプトである安定・着実から外れる。

どの企業や政府が具体的に何をするか予測することは難しいが、何かしらポジティブな要因が発生しやすい市場というのは、実はマクロ分析によりある程度特定することが出来る。

追い風がある場所に身を置くことが重要なのである。

■スモビジオーナーの口癖「とりあえず張っている」

成長市場かどうか

ビジネスの基本は成長の波に乗ることであって、自分で波を引き起こすことではない。

1つの会社が情勢を大きく変化させるなどと考えるべきではないのだ。

また、よくビジネスには運が重要だと言われる。

私自身も予想していなかった幸運により業績が一気に上昇した経験は何度もある。

しかしこういった機会を「運よく」掴むことが出来たのは、長期的に見ればこの市場は成長するだろうと見極め、その変化をしっかり待っていたからというケースがほとんどだ。

長期的に成長する市場においては自社の業績を向上させる政策や大企業の方針の変更が頻繁に起きるが、衰退する市場においては逆である。

よくスモビジオーナーは「とりあえず張っている」という言い方をする。

これは現状、具体的な動きを取っているわけではないがコミュニティで情報交換をするなどし、強烈な追い風が吹くことを待っているという意味である。

このように複数の市場に対して待ちを続けていると、追い風が吹いた際にその機会を獲得することが出来るのだ。

このように機会を虎視眈々と狙っているプレイヤーはたくさん存在する。

追い風があったとしても準備ゼロのプレイヤーがその機会を獲得することはかなり難しい。

意識して成長する市場を見極めてチャンスを待ち構えるとよいだろう。

■利用者としての体感を常に得続ける

一次情報で判断せよ

また、成長市場の見極めについてよくある罠としては、メディアで「これが凄い」と言われているような二次情報をもとに判断することである。

これらの情報の信頼度はかなり低いと思ったほうがよい。

5年前の予測記事をGoogleで検索してみると、如何に予測記事や意見というものに意味がないかを感じることが出来るだろう。

ノートパソコン上に表示されたGoogleのロゴを拡大鏡で拡大
写真=iStock.com/brightstars
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/brightstars

先にも指摘したようにメディアで凄いと言われている情報ではなく、実際に熱狂的に使っている人がおり(これは前作でも記載した、未熟な製品でもバーニングニーズを捉えているということである)、その利用者数が拡大しているかという一次情報を取りにいこう。

その上で興味を持ったら自分自身がその製品、サービスを購入して利用してみるとよいだろう。

これについては私も常に実践している。

具体的には、その市場に関する展示会に度々足を運ぶこともあるし、研究活動として新製品(VRゴーグル、ドローンなど)を買って使うこともある。

特に技術をビジネスに活かしたい人は利用者としての体感を常に得続けるとよいだろう。

■誰が・何に・何故・どの程度支払い・どのような効果を得ているのか

信頼度の高い他社の数字を集めよう

シミュレーションは難しい技術ではない。

インタビュー記事、IR資料、コミュニティなどの情報を統合し、エクセルを用いてどの程度儲かるかシミュレーションしてみよう。

ここで注意すべきなのは他社の数字を努力して仕入れることである。

エクセルのシミュレーションはどのようなお花畑シミュレーションでも組めてしまうため、他社の数字がないものはあまり意味がない。

平均販売単価、1件にかかる営業・マーケティングコストなど、可能な限り内部情報を入手するようにしよう。

営業資料やLP(ランディングページ)も参考にはなるが、これらは宣伝であることがほとんどなため、数字は盛られている。

「導入者数*デモ利用含む」のようにして、実際の数値とは乖離(かいり)していても見栄えのする数字を記載する傾向にあるため注意しよう。

「とても儲かっている」と言っている会社の実態が「実はそんなに儲かっていない」というのは珍しい話ではないのだ。

このようなシミュレーションはビジネスを検討する際に組むと同時に、常に頭の中で組めるようにしておくとよいだろう。

そのためには出来る限り多くの数値を頭に入れておく必要がある。

IR資料を見てみると驚くほど多くの数値、具体的な顧客名が開示されている。

誰が・何に・何故・どの程度支払い・どのような効果を得ているのかという事例を、頭の中に百科事典のごとく蓄えると有用である。

■安定・着実に儲かるスモビジで検討すべき4つの課題

シミュレーション結果と課題の検証

このシミュレーションを行ってみた結果、「ダメージは自分が許容出来る金額に抑えられる一方で、満足出来る程度の儲けが見込める」ということであれば手をつけ始めるべきだろう。

スモビジの場合、ダメージを受けたとしても自分が許容出来る範囲にコントロールすることが重要である。

スタートアップと異なりハイリスクであっても限界までスピードを速めていくというやり方ではない(参照:『ブリッツスケーリング』リード・ホフマン/クリス・イェ 著、滑川海彦/高橋信夫 訳、日経BP、2020年)。

スタートアップの戦略とは平たく言うとリスクを許容し、スピードを優先するというものである。

ほとんどが潰れたとしても1つ大成功すればよいのだ。

しかし、安定・着実に儲かる状態でありたいスモビジは異なる考え方が必要になる。

遅くとも1つ1つの課題を順番に検証していくとよいだろう。

例えばあまり知見がない領域で自社ブランドを立ち上げるということであれば、同時に次に挙げるような課題を検証していくことになる。

・CPA(顧客獲得コスト)がX円以下で集客出来るのか
・原価Y円以下で製造出来るのか
・販売単価は年間Z%上げることが出来るのか
・継続率はW%以上に保てるのか

全てが成立しなければ事業が持続不能ということであれば、非常にリスクが高い取り組み方となる。

■類似商品のマーケティングを受託し、その過程で学ぶ

課題の克服

課題の克服には時間と金が必要だ。

原価Y円以下で製造するということであれば工場探し、交渉、継続的な原価低減に向けた取り組みなどに時間と金がかかる。

課題の克服は当然ではあるが無料ではないのだ。

ビジネスを検討しており、克服するべき課題が多数あったとしよう。

そのような困難なビジネスに取り組むには相応の時間、金の準備があることが前提になる。

これがない状態で事業に着手し途中で頓挫すると費やした金と時間は無駄になってしまう。

スタートアップの場合はこれを外部からの資金調達により実現するが、自己資本経営を基本とするスモビジの場合は相当な準備期間を要することになる。

どうするべきなのだろうか。

スタートアップをポップなイラスト図解で示している
写真=iStock.com/Varijanta
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Varijanta

それには複数の課題克服を同時に進めないことが重要だ。

例えばCPAがX円以下で集客するという課題を克服したいなら、類似商品のマーケティングを受託し、その過程で学べばよい。

こうすれば課題の克服をしながら受託で稼ぐことも出来る。

私の所感であるが、課題の克服には当初想定の3倍の時間がかかると考えるのがほどよい目安である(私が楽天的すぎるのかもしれないが)。

多くの課題が立ちどころに解決されていくという期待は、ほとんどの場合裏切られることになる。

繰り返しであるが課題克服には金と時間が必要なのだ。

それを織り込んで計画を立案するとよいだろう。

■新規事業を常にオーナーが1人で立ち上げ続ける

既存事業との併存

ここで「現業が忙しいから新規事業には手をつけられない」と言ってはならない。

既に書いた通り、1事業の寿命は長くないのだ。

現業だけを優先し投資活動でもある新規事業に取り組まないスモビジオーナーは、長期的に見れば自分を追い込むことになってしまう。

既存事業で儲けながら余裕がある間に新規事業開発に取り組む。

常に両輪で取り組んでいくべきだ。

問題はある程度大きな組織になってきた場合だ。

1人でやっている間は、既存事業と新規事業のバランスを取りながら取り組むことは比較的やりやすい。

しかし、これが組織になると途端に難しくなる。

想像してみてほしい。

眼の前に儲かる事業があり、それに取り組めば給料が増えて社内での地位が上がる事業がある。

横には儲かるかどうかも分からないし、失敗すれば社内での地位が下がる事業がある。

合理的に考えて、会社員の立場であればあなたはどちらを選ぶだろうか。

武田所長『スモールビジネスの教科書【実践編】』(実業之日本社)
武田所長『スモールビジネスの教科書【実践編】』(実業之日本社)

これはオーナーが長期的な目線を持って保ち続ける必要がある組織課題なのだ。

スモビジの場合、この既存事業を重視しすぎるという問題は、スモビジオーナー個人の努力で克服するべきだ。

スモビジの立ち上げは基本1人。

それは社員が30名いても変わらないのだ。

新規事業を常にオーナーが1人で立ち上げ続ければ、会社はバランスを保てることになる。

このあたりの詳細については本書の本題から外れるため、興味のある人はぜひ『両利きの経営』(チャールズ・A・オライリー/マイケル・L・タッシュマン著、入山章栄監訳、渡部典子訳、東洋経済新報社、2019年)を参照頂きたい。

この本では絶え間ない事業の改善と新規事業の探索とのバランスを保ちながら、どう持続的な会社経営をするかが解説されている。

■手数多く・高速で儲かりそうな新規事業に取り組み続けなさい!
■取り組む際には自分の性格・強み・市場環境を考慮しなさい!
■参入検討の際に定量的な計算を行いなさい!

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武田所長(たけだしょちょう)
経営者
大学卒業後、戦略系コンサルティングファームに入社。退職後20以上のビジネスを展開し、それぞれ売上年間数百万円〜10億円。トレンディ・ハイリスクなベンチャービジネスではなく「安定・着実」に、「社員数30人以下・営業利益で年間3000万円以上」を目指すスモールビジネスを推奨。強い個人が活躍する時代を作るという狙いのもと、スモールビジネスに関する情報発信を行う。著書に『スモールビジネスの教科書』(実業之日本社)がある。

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(経営者 武田所長)

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