2000万円の貯蓄、副業、実家暮らし…安定確実なスモールビジネスの失敗確率を極限まで下げるシンプルな方法
プレジデントオンライン / 2023年11月3日 15時15分
※本稿は、武田所長『スモールビジネスの教科書【実践編】』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。
■受託で学びながら時間の切り売りからの脱却を目指す
ビジネスに不慣れな人が大きく投資を行い、それを回収していくという事業を成立させる難易度は極めて高い。
最初のステップとしてはこのような事業は避け、投資不要で参入出来る事業から始めるべきであろう。
投資不要ということは基本的な構造として受託型の事業になることを意味する。
本書では黒字の安定経営状態にした経験を持つスモビジオーナーの具体例を紹介してきたが、典型的なものはA氏が取り組んでいたコンサルティング業である。
広告業務でも受託してSNSのチャンネルや広告を運用するという事業がある。
これらのビジネスは属人性が高く、自分自身の状態に売上が大きく左右されるため、長期で続けるには不向きとも言えるが学習段階の参入としてはよい方法であろう。
ここで参入時のビジネスに適しているものをいくつか説明しよう。
法人からある事業の一部を切り出してもらい、それを受託して納品するというビジネスのことを指す。
典型的なものには開発、コンサルティング(技術、戦略、PMO、マーケティング、営業など)、広告運用代行などがあり、この事業から着手する場合、必要なのは自分自身に売り物になる経歴があるかという点と営業力である。
最初は何もサービスがない。
何を売り込むのかと言えば自分ないし自分を中心としたチームなど、いずれにせよ「人材」を売り込むことになる。
その中で最も分かりやすい訴求メッセージは自分の経歴なのだ。
売りになる経歴を持っている場合、この参入方法は容易である。
優れた人材というのは常に供給不足なのだ。
売りになる人材がいる場合、人材・コンサル紹介屋にコンタクトしてみよう。
売上をすぐに立てることが出来る。
勿論この事業は時間の切り売りのため、ここでとどまるのはフリーランスであってスモビジではない。
学びながら時間の切り売りからの脱却を目指すのである。
そして脱却の道もいくつかある。
受託以外のビジネスを追求してもよいし、受託を極めるという道もある。
この受託というのはスタートアップの文脈だと下に見られることが多いが、高いスケーラビリティを狙わない受託は、スモビジにおいて儲かりやすいビジネスの1つとして評価出来る。
受託開発やコンサルを極め、徐々に組織化を進めれば、将来的にも十分に儲かるビジネスなのである。
この事業に関しては先行者となるベイカレント・コンサルティングやアクセンチュアなども多く存在している。
必ずしも受託からの脱却を目指すのではなく、徐々にスモビジオーナー自身が時間の切り売りからの脱却を目指すという意識がよいだろう。
■1日5投稿、ひたすら記事を書き続けられるか
K氏、M氏が取り組んだ方法がメディアである。
メディアの利点は、受託と異なり売りになる経歴や営業ネットワークがなくても始められることであるが、ここで最も重要になるのは、そのとき旬なメディア運営の知見および極端に言うと「根性」である。
旬なメディア運営の手法は環境によって全く異なり、あるときそれはキュレーションメディアであるし、あるときはインスタメディアであり、あるときは被リンク(自社サイトのリンクが他のサイトなどに貼られること)重視型メディアなのである。
2年前に旬だった方法を今行っても勝てるとは限らないだろう。
また「根性」であるが、これはメディアから着手したスモビジオーナーの事例を見て頂きたい。
受託と異なり売上と作業量が確実に連動するわけではないメディア業は、成果が出てくるまでに時間がかかる。
M氏のように毎日5投稿する、K氏のようにひたすら取材を行い1人で記事を書き続けるといった「根性」を発揮する体制が必要なのだ。
一週間で成果が出ないとめげてしまうような人にとっては、この参入方法は適していないだろう。
![真剣な面持ちでPCに向かっている女性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/c/1200wm/img_cc7533ca910d21e15daf03d4690798e4458140.jpg)
スモビジの参入において、成果が出るまでに時間がかかるメディア業は対象から外れそうに思えるが、K氏やM氏のようにある程度の時間および金銭的余裕、作業量を投下する覚悟と根性があるという場合においては有効な選択肢となり得る。
自分の強みや武器が「営業」ならば、営業代行から参入するのも定番の方法である。
売れる商材を発見し代理店として売るというモデルだ。
最初に選ぶ商材はマイナーなものより定番なもののほうが取り組みやすい。
知られていない・実績のない商品を売ることは難易度が高いのだ。
このような代理店は、商材が爆発的に普及していく時代には大いに儲けやすく、過去には回線、携帯電話、決済システムなどの商材を扱うビジネスで成功者になった者も多い。
ここでは定番商材の代理店契約を獲得し、成果を出しながら有利な条件交渉を進めていく動きが重要だ。
また、顧客を継続的に取り続ける動きも必要になる。
スモビジの基本的な考えに「ビジネスは多産多死である」というものがあるが、これは営業代行においても認識しておくべき傾向である。
それを踏まえて様々な商材を扱いつつ、その中で最も成果を出しやすい商材を発見し、注力していくという流れにするとよいだろう。
営業というのはスモビジを安定させるための必須スキルである。
営業という言葉だけで嫌な気持ちになる人もいると思うが、大変重要な能力だ。
もし営業力を鍛える機会があるなら積極的に取り組むべきである。
■コピーから入れ
良質なコピーを実現するには先行者の知見を最大限吸収することが重要であるが、これを実現する効率的な方法がインターンや就職である。
短期間で成功している企業の多くは、社員たちが前職で得た知見や実績を持ち出すことによってその成功が実現されている(場合によっては顧客も持ち出しているが、大規模な場合これは揉める)。
そのような修業と独立を許容する会社も近年は現れている。
企業側としても独立を試みるような野心的な人材を獲得したいし、自社のみでは全ての機会を獲得しきれないという問題もある。
それを補完してくれるのが、リスクがある領域にも突撃してくれるような気概があり、自社とも繋がりを持ち続けられる元社員というわけだ。
当然先行者よりも品質やオペレーションの効率は悪く、顧客基盤もないため利益率は低くなるが、売上ゼロという状態にはならないのが利点だ。
売上があれば学習を進めることが出来るし、逆に売上がないと学習の効果は低くなると考えるべきだろう。
実務を経験出来ないからである。
学習段階においては利益率を追求するよりも、売上を作りながら学習を進めるべきなのだ。
ここは事業を運営する過程の学習段階であり、把握するべきことを学ぶのが主な目的であるため、まずは先行者の少々劣化したコピーを作れればよいと考えよう。
A氏にしてもこのように他社が儲かっていることを発見しコピーするという流れを新規参入の基本としている。
独自性を出していくのはこの先にある。
K氏も被リンク中心のアフィリエイトというモデルに移行する前には、通常のアフィリエイト事業をするという長い学習期間を経ている。
■スマホの登場で変革を余儀なくされた「着うた」事業
注意点として述べておくが、ビジネスモデルを変えようとする試みは基本的にするべきではない。
元アップルのエバンジェリストであり投資家・ビジネスアドバイザーとしても活躍する米国のガイ・カワサキ氏も述べているように、技術や販売においては新たな方法はあり得るが、ビジネスモデルというのは多くの人の試行錯誤の結果として現状があるため全く新しいものはほとんどない。
これに変更を加えようという取り組みは非常にリスクが高い試みなのである(参照:The Art of the Start 2.0 ガイ・カワサキ著)。
これはビジネスモデル以外に関しても言えることであるが、競合が提供しているサービスは偶然の結果ではない。
競合・先行者は多くの苦労を経て顧客が受け入れるものを発見し、その結果として現在がある。
これは基本的に正しい。
この先行者に対し挑戦出来る可能性があるのは、環境が大きく変わった場合である。
代表的な例にはスマートフォンがある。
携帯電話市場にスマートフォンが登場することで、市場の構造自体が変化した。このようなケースの場合、たとえ先行者であっても着うたなどを提供していた会社のビジネスモデルは変革を余儀なくされた。
現在ではEV化、エネルギーシフト、半導体サプライチェーンの構築などのトレンドが見られる。
こういった大変革に初心者が賭けていくのは推奨しないが、かなりビジネスに慣れてきて時代の大波に乗る挑戦をしたい人は取り組んでもよいだろう。
■変化を起こす際には余裕を持て
本書で述べている「失敗時の対応」でも見るが、変化を起こすには時間と金を投資(売上が即時見込めない活動)する必要がある。
この変化というのは、原価率であったりビジネスモデル自体であったり様々だ。
当然大きな変化にはより大きな時間と金を必要とする。
他社が変化していない場合、それが何故かといえばそこには投資が必要だからだ。
短期的に見れば現状維持が最適だからそこに落ち着いているのである。
K氏は受託であるフリーランスコンサルから脱却し、投資が必要なメディアビジネスへ移行することが出来た。
これは貯蓄があり、それを投資に当てることが出来たからだ。
収益性が高いフリーランスコンサルティングを行える経歴であったため、2000万円の貯蓄を作ることが出来たのだ。
ただしこれはやや例外的であろう。
余裕がある状態を作るには貯蓄をする以外にも勤め人をしながら副業で立ち上げる、実家に戻り生活コストを極限まで下げた状態で立ち上げ段階に臨むなどの方法がある。
自分を追い込みすぎた状態だと即時現金がほしいという考えになってしまい、持続可能な事業に必要な投資フェーズをくぐり抜けることが難しくなるだろう。
![武田所長『スモールビジネスの教科書【実践編】』(実業之日本社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/f/1200wm/img_6fcfe5cca139d22299cefa28349fc7e2184040.jpg)
M氏の場合はYouTube広告を主力とした会社を創業した。
しかしその直後にYouTubeショックと呼ばれる広告規制の強化が実施され、YouTube広告の出稿量が激減してしまったのだ。
このように意図しないケースのスタートになってしまうことがあるのは仕方がないが、事前調査を念入りに行い、出来る限り回避することが重要だ。
赤字段階が長く続くビジネスをするなら外部からの資金調達を必要とし、融資や株式で調達することになる。
株式での調達を前提とするスタートアップであれば、このような経営をしてもよいのだが、基本的に自己資本運用でプレッシャーの少ない状態での経営を目指すスモビジの場合は、積極的に取りたい選択肢ではないだろう。
■最初から儲かることをやりなさい!
■変化を起こそうとするなら相応の時間と金を準備しなさい!
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経営者
大学卒業後、戦略系コンサルティングファームに入社。退職後20以上のビジネスを展開し、それぞれ売上年間数百万円〜10億円。トレンディ・ハイリスクなベンチャービジネスではなく「安定・着実」に、「社員数30人以下・営業利益で年間3000万円以上」を目指すスモールビジネスを推奨。強い個人が活躍する時代を作るという狙いのもと、スモールビジネスに関する情報発信を行う。著書に『スモールビジネスの教科書』(実業之日本社)がある。
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(経営者 武田所長)
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