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健康診断の数値に一喜一憂するのはバカらしい…現役医師が「70歳をすぎたら健康診断は不要」と訴えるワケ【2023編集部セレクション】

プレジデントオンライン / 2023年11月2日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/byryo

2023年上半期(1月~6月)にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2023年3月23日)
健康に長生きをするにはどうすればいいのか。医師の和田秀樹さんは「健康診断で『異常』と判断されただけで薬を飲み続けるのはおかしい。健康を守るためには、70歳をすぎたら健康診断を受けないほうがいい」という――。

※本稿は、和田秀樹『90代になっても輝いている人がやっているトシヨリ手引き』(毎日新聞出版)の一部を再編集したものです。

■「いい医者」と「悪い医者」の違いはどこにあるのか

多くのおトシヨリはもう、なにかしらの薬を定期的に飲んでいるでしょう。

特別な持病がない人は、血圧の薬やコレステロール値を抑える薬などだと思います。処方されるままに1カ月飲んで、なくなればまた病院へ行きます。看護師さんに呼ばれて診察室に入り、丸いすに座り血圧を測られます。

「調子はどうですか」
「いえ、べつに変わりはないです」
「そうですか。薬が効いていますね」
「それでは、いつものように1カ月出しておきます」

医師はパソコンの画面を見たままで、「お大事に」と言われて診察が終了。こういった医師ばかりではないと思いますが、日本では多くの患者を診なくてはいけません。医師に話しかけようと思っても遠慮してしまった、という人もいるのではないでしょうか。

同じ医師に「ちょっとお腹が重くて……」と言えば、「それでは胃薬も出しましょう」となります。薬の追加です。

詳しく検査してほしいと言えば、「大きな病院の消化器内科で診てもらってください」と、別の病院を紹介されてしまいます。そういうものだと思っている人は、おおぜいいらっしゃると思います。

しかし、これは大きな医療界の問題なのです。

それは日本の医師のほとんどは、自分が学んだことがある臓器の専門家にすぎないということです。ほかの臓器のことになると、言葉は悪いのですが無頓着です。

■患者が薬漬けになってしまうワケ

医師が「体にいい薬ですから」という意味は、医師が専門にしている臓器にとっていい薬です、という意味なのです。体全体にとっていいという意味ではありません。

心不全、糖尿病、高血圧、そして高脂血症をもつ私が病院へ行くと、まず高脂血症は内分泌代謝内科に行って薬を3種類出される。高血圧も同じく循環器内科で3種類出される。糖尿病もこれまた3種類出される。これに心不全でも薬を出されたら、あっという間に10種類を超えてしまうわけです。

薬を毎日10種類も飲むというのは、結構なストレスになります。また、複数の薬を併用し、服薬すると、効果が強く出すぎてしまったり、好ましくない症状が出やすくなったりする可能性がありますので、飲み合わせには注意が必要です。

おトシヨリに必要なのは、体全体を診て「これでは薬が多すぎるから、必要なものから5種類選んであげるね」と言ってくれる診療です。これを「総合診療」といいます。

残念ながら、総合診療をするドクターが未だに日本に根づいていません。増えていってほしいのですが、今の大学病院の体質では恐ろしいくらい時間がかかりそうです。

ですから、もらった薬を言われるままに飲んでいたら、寿命を延ばすどころか、縮めてしまうかもしれません。自分の体の調子をいちばんわかっているのは、あなたです。薬を飲んでおかしいと思ったら、しっかりと話を聞いてくれる医師を見つける必要があります。

薬を整理するシニア男性
写真=iStock.com/Daisy-Daisy
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Daisy-Daisy

■「薬が合わない」「薬を減らしたい」と相談すればわかる

それでは、患者の話を聞いてくれる「良い医師」を見つけるには、どうすればいいのでしょうか。まずは、薬について医師と話をしてみることです。高齢者診療の基本は、個人に見合った診療をすることです。70歳を超えたおトシヨリには、とくに必要です。

年をとるほど、体の状態や機能は、個人差がとても大きくなります。たとえば同じ薬を飲んでも、効く人がいるいっぽうで、だるさやふらつき、眠気などの症状が出る人もいます。

おトシヨリの個人差が大きいことを知らない医師や、患者を観察していない医師にとっては、「正常値」に戻すことが正解だと考えるわけです。こういう医師から処方された薬を飲み続ければ、明らかに体がダメージを受けてしまいます。

そもそも薬とは、「体調を良くするためのもの」です。飲んで具合が悪くなるのであれば、薬ではなく、それは毒です。薬をもらって、だるさやめまいなどの症状があったら、遠慮などせず医師に伝えましょう。

「変えてもらった薬ですが、飲むと頭がぼんやりして、だるくなるんです」と言ってみる。

「薬が合わなかったようですね」「量を減らしてみましょうか」「違った薬に変えてみましょう」と対応してくれるのであれば、良い医師です。「かかりつけ医」として長く付き合っていけます。

反対に、「この薬はよく効くはずだから、がまんして飲み続けてください」と患者の訴えに取り合わない医師だったら?

さっさと医師を代えましょう。おトシヨリを診察する基本をわかってないヤブ医者です。付き合えば付き合うほど、あなたの健康が蝕(むしば)まれていくことになります。

■病院との相性は、待合室でわかる

医師の技量も大事ですが、相性も大事です。

おトシヨリになれば、病院や医師はとても身近な存在です。月に1回は通院し、医師と顔を合わせると思います。診察のたびに暗い気持ちにさせられ、気疲れするような医師なら付き合わないほうがいいでしょう。

患者に嫌な思いをさせて気がつかないというのは、観察力がないとも言えます。患者は顧客でもありますから、お金を払ってまで嫌な思いをする必要はありません。病院は、具合が悪いから行く場所です。真剣に病状を聞いてくれて、気持ちよく話せる医師のほうがいいに決まっています。

病院との相性は、待合室に入った瞬間にもわかるものです。待っている患者さんが明るかったら、医師が患者さんとちゃんと向き合っているということです。心理的なケアもしっかりできているから、患者さんが明るいのでしょう。

ホスピスケアでシニア女性に触れる介護者
写真=iStock.com/Pornpak Khunatorn
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pornpak Khunatorn

反対に、患者さんがどんよりと暗かったら、医師が血圧や血糖値を下げる薬を「正常値信仰」で出しているということです。だから、患者さんがヘロヘロになっている。こういう病院は避けたほうがいい。病院の待合室に入ったときに感じる、あなたの直感を信じていいのではないでしょうか。

■健康診断が長生きを邪魔している

毎年1回、会社の健康診断を受けていた人が多いと思います。受けないとやいのやいのと催促される。退職しても、その慣習が体に残っていますから、年中行事のように、年に1回は健康診断を受けている人もいるでしょう。

ここに、不可解な数字があります。日本人の平均寿命が統計上初めて50歳を超えたのは、1947(昭和22)年でした。そのころの男女の平均寿命の差は4歳ほどでしたが、今は6歳に広がっています。

なぜ女性の平均寿命が大きく延びたのと同じだけ、男性はそれほど延びなかったのでしょうか。変だと思いませんか?

原因のひとつに「健康診断」があると私は思っています。法律で事業者に義務化されましたから、会社に勤務する人は、強制的に健康診断を受けていました。一昔前まで健康診断を受けていたのは、圧倒的に男性が多かった。その当時、女性は専業主婦になるのが一般的でした。働くとしてもパートタイマーなので健康診断は受けません。

もし健康診断が長生きに役立つなら、男女の寿命は逆転していたはずです。ところが、寿命の年齢差が広がってしまった。健康診断がその要因になっているのではないかと思います。

■健康な100人のうち5人は「異常」と判断される

健康診断の結果は、すべて基準値をもとにしています。健康診断の基準値の決め方は1000人、1万人という健康な人を集めて検査します。そして検査数値の平均値を挟んで95%の人を「正常」とし、そこから高すぎたり、低すぎたりして外れた5%を「異常」とした統計値です。つまり最大で、健康な100人のうち5人が「異常」となるわけです。

しかし、もともと健康な人を集めた検査です。「異常」でも病気ではありません。しかも、基準値のつくり方を見てわかるとおり、年齢を無視してつくられています。健康診断の数値に一喜一憂するのは、バカらしいと思いませんか。

ただ、数ある検査の数値のなかでも、血圧や血糖値、コレステロール値、赤血球数などは、病気との因果関係が認められます。「血圧を下げましょう」という指導が行われるのは、このためです。

しかし、どのぐらい下げるかは曖昧です。かつては血圧150くらいでも血管が破れることがありましたが、それは日本人の栄養状態がとても悪かったころの話です。現代では、動脈瘤がない限り血圧が200でも破れることはありません。

血圧測定
写真=iStock.com/Casanowe
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Casanowe

今のおトシヨリは、脱脂粉乳を飲んで育ってきましたし、その後も十分なたんぱく質をとっているので、血管は丈夫です。ただ、仮に血圧が180で、頭痛や吐き気、めまいなどがあるなら、その人にとっては高いということです。そのときは、血圧を下げる薬を出してもらいましょう。

異変がなく体調になんの問題もないのに、数値だけで「異常」と判断され、薬を飲み続けるというのはおかしいのです。自分の体の状態に耳を傾けて、変だと思ったら薬を飲む。それが基本なのです。

■血圧、コレステロール値、血糖値は、ちょっと高めがいい

健康診断で「異常」「再検査」と指摘される数値は、コレステロール、血圧、血糖値が多いと思います。そのためこれらの薬を飲んでいるおトシヨリも多いことでしょう。薬を服用して血圧や血糖値を下げたりするのは、心筋梗塞や脳梗塞、脳卒中のリスクを減らすためです。

実際に、健康診断の基準値どおりに血圧や血糖値を下げてしまうと、頭がボーッとしてしまうことがよくあります。やる気も出ません。考えるのもめんどうになってきます。このように、薬には副作用があることを忘れてはいけません。

こんな話を聞いたことがあります。80歳の男性は、毎月病院に行き、血圧やコレステロールの薬を処方されていました。あるとき、娘さんが男性の家を片づけていると、押し入れに手をつけていない大量の薬を見つけたそうです。その男性は、薬を飲んでいませんでした。

でも、娘に注意されるので、病院には律儀に通っていたのです。娘さんが理由を聞くと、「薬を飲むと体がだるくなって、畑仕事ができなくなるから飲まなかった」と答えました。薬を飲まなくても、血圧も血糖値もちょっと高めでも、元気に生活しているのですから、男性の判断は正しかったように思います。

■無理して薬を飲む必要はない

私は、この男性のように体に違和感を覚えて自分で調整している人が、少なからずいると思っています。処方された薬を飲み続けることで、なんらかの不調を感じるのであれば、それをはっきり医師に伝えなければいけません。

「薬を飲むと調子が悪くなるので減らしたい」「飲みたくない」と申し出ましょう。伝えない限り、医師は薬を出し続けますから、無用な薬にお金を払うことにもなり、無駄になってしまうからです。

じつは、血圧の薬を飲んだから長生きできるというデータが、日本にはないのです。どの国でも、薬が効くかどうかを確かめるために、数万人単位の比較調査をします。

血圧なら、血圧をコントロールしたグループと、放置したグループのその後を何年もかけて、違いが出るかどうかを調査します。しかし、日本人を対象にした調査は一度も行われていません。データがありませんから、証明もできないわけです。

和田秀樹『90代になっても輝いている人がやっているトシヨリ手引き』(毎日新聞出版)
和田秀樹『90代になっても輝いている人がやっているトシヨリ手引き』(毎日新聞出版)

逆に、血圧を下げすぎている人のほうが、死亡率が高いというデータがあります。血圧は、年齢を重ねるほど上がってきます。年をとると、血管のなかが動脈硬化で狭くなってきます。狭くなると血液の流れが悪くなり、血圧が高くないと脳に十分な量の血液を送ることができないからです。

昔は、最高血圧の基準値は「年齢+90」と言われていました。私は、これは当たっていると思います。昔の人の知恵は侮れません。

血圧は一日のなかで大きく変動します。ですから、高かった、低かったと一喜一憂する必要はありません。ただ、ずっと200を超えるようならば、ほかの病気が生じる危険がありますから、病院へ行く必要があります。

■70歳をすぎたら健康診断を受ける必要はない

同様に、コレステロール値の基準も、世界基準より低い設定のために、日本では健康診断で「異常」とされる人が多くいます。じつは、血圧と同じで、コレステロール値が高めの人のほうが長生きするというデータがあります。

なぜなら、コレステロールは、男性ホルモンをつくる大事な材料なのです。それをわざわざ薬で減らせば、元気がなくなるのは当然です。免疫細胞の材料でもありますから、免疫機能の低下も招いてしまい、がんになりやすくなる可能性もあります。

このように、健康診断の数値は健康を守ることから大きくズレているのです。私は、70歳をすぎたら、もう健康診断を受ける必要はないと考えています。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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