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卓球日本代表・張本智和の変化球サーブを打ち返す、50メートル走は6秒8…実はすごい藤井聡太八冠の運動能力

プレジデントオンライン / 2023年11月5日 11時15分

バラで「8」を表現したフラワーボックスを手にする藤井聡太八冠=2023年10月13日午後、名古屋市中村区  - 写真=時事通信フォト

竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖。史上初めて将棋界の全タイトルを制覇する偉業を達成した藤井聡太八冠(21)のプライベートの生活ぶりや素顔はどのようなものか。インタビューや自身の著作で残した名言3つを紹介しよう――。

※本稿は、桑原晃弥『藤井聡太の名言』(ぱる出版)の一部を再編集したものです。

■大谷翔平と藤井聡太の共通点「眠りへの執念」

藤井聡太の名言

対局前でも7時間、十分寝ています。むしろ対局後の方が難しい。

(『挑戦 常識のブレーキをはずせ』藤井聡太・山中伸弥著、講談社)

第5回WBCでMVPを獲得、日本代表チームの優勝に貢献した大谷翔平は「寝るのは得意」と言い切るほどに眠ることに強いこだわりを持っています。

日本ハム時代もメジャーリーグでも外食などに出かけることはほとんどなく、試合以外はトレーニングと寝ることに時間を使うというほどですから、いかに睡眠を大切にしているかがよく分かりますが、それは子ども時代からの習慣のようで、父親の車の中でも寝ていたし、昼寝などもよくしていたといいます。

「寝る子は育つ」といいますが、大谷にとって睡眠は圧巻のパフォーマンスに欠かせないものなのです。藤井聡太は多くのタイトルを保持するだけに、大変忙しい日々を送っているわけですが、やはり眠ることにはこだわっています。

とはいえ、対局で負けた時などは、その日の将棋のことを考えてしまうといいますが、だからこそ眠るようにしています。こう話しています。

「対局後は、やはりその日指した将棋のことを考えてしまうこともあるんですが、今は、悔しい時には、まず寝ることがいちばんかなと思っています。なかなか寝付けないこともあるのですが、負けた後でも一晩寝ると、けっこう気持ちが楽になります」

棋士の中には対局で敗れると、その日のうちに反省をして、あとは寝て忘れてしまうという人もいますが、藤井は負けて悔しい時は、まず先に寝て、気持ちがすっきりした翌日に反省点を考えるようにするといいます。

そして睡眠時間としては、「7時間半から8時間」くらいはとるようにしています。タイトルのかかった対局ともなると、なかには緊張のあまり眠れなくなる人もいるようですが、藤井の場合は「対局前でも7時間、十分寝ています」と言いますから、それほどプレッシャーを感じないタイプなのかもしれません。

そんな藤井でも少し苦手にしているのが対局後、特に2日制の場合です。名人戦などは2日制で行われるだけに、1日目の封じ手の後、対局が行われたホテルや旅館で宿泊することになりますが、藤井によると、「1日目の夜は対局の前より眠れないことが多い」と言います。

そしてそれも「自分として課題」と言うところに、今後、幾度ものタイトル戦を戦う棋士としての自覚が現れています。大谷もそうですが、長丁場を戦う者にとって質の高い睡眠は良いパフォーマンスに欠かせない要素の一つです。

★ワンポイント 良いパフォーマンスのために質の高い睡眠を心がける。

■秀吉でも家康でもなく「自分は信長」と言う理由

藤井聡太の名言

自分は、信長かなと思います。

(『考えて、考えて、考える』丹羽宇一郎・藤井聡太著、講談社)

今や藤井聡太は愛知県を代表する有名人の一人ですが、愛知県というとすぐに思い浮かべるのが織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三英傑です。名古屋の秋を彩る最大の祭り「名古屋まつり」では、三英傑が数百人の人を従えて行列をする「郷土英傑行列」が行われるほどですから、愛知県の人にとってこの三人がいかに誇らしい存在かがよく分かります。

三人の性格はまさに三者三様です。

よく知られているのが「信長がつき、秀吉がこねし天下餅、座りしままに食うは家康」という三人の性格や役割を表した歌です。

また、「鳴かぬなら殺してしまえほととぎす」「鳴かぬなら鳴かせてみようホトトギス」「鳴かぬなら鳴くまで待とうほととぎす」という、こちらも三人の性格を表した歌として知られています。

もちろん現実には徳川家康はただ待っていただけで天下人になれるわけもなく、生死を賭けた戦いを何度も経験し、着実に力を蓄えていくことで初めて天下人となり、戦国時代に終止符を打つことができたわけですが、あくまでも三英傑の対比となると、やはり「待ちの人」ということになるのでしょうか。

同じ愛知県出身の実業家、丹羽宇一郎から対談で「藤井さんはこの三人だと誰が好きですか」と聞かれた藤井の答えは「自分は、信長かなと思います」でした。理由はこうです。

「信長は、チャレンジ精神や積極性がある人物だと思うからです。自分も常識にとらわれず将棋に向かっていく、革新的なところを大事にしていきたいと思っているんです」

狩野宗秀作、織田信長像(部分)
狩野宗秀作、織田信長像(部分)(画像=長興寺所蔵/PD-Japan/Wikimedia Commons)

藤井はプロ棋士になって以降、数々の記録をつくり、過去の記録を更新し続けています。

それだけでは十分に革新的と言えますが、「棋士になった頃から、コンピュータに関係なく面白い将棋を指せるように頑張りたいと思っています」とも考えていました。

藤井が登場する何年か前に、「将棋はオワコンだ」という趣旨の発言をした人がいましたが、たしかに将棋人口の減少など当時の将棋界がいくつもの課題を抱えていたのは事実です。そこに表れたのが藤井であり、藤井の登場によって将棋への関心が一気に高まったわけですから、その意味でも藤井は将棋界の閉塞(へいそく)感を打ち破り、数々の記録を更新する革命児であるのはたしかです。やはり藤井は信長なのかもしれません。

★ワンポイント 常識に縛られることなく、革新的であれ。

■卓球エース張本智和の変化球サーブを打ち返す

藤井聡太の名言

散歩に行った先から帰ってくるのが面倒なんです。最近は家の中で歩いています。

(『Number』1044、文藝春秋)

将棋のタイトル戦で持ち時間が一番長いのは名人戦の各9時間ですが、名人戦は2日制なので、1日計算では4時間半になります。では、1日制ではどうかというと、王座戦の各5時間が最も長くなります。各5時間ということは2人で10時間ですから、かなりの長丁場となります。

「ここ一番」での棋士の集中力はかなりのものですから、そうした集中力を発揮しながら、これだけの長丁場を戦うというのは精神的にも肉体的にも大変なことです。タイトル戦を一局戦うと、体重が減ると言う人もいるところに、その激しさ厳しさがよく表れています。そのせいでしょうか最近は若手棋士で筋トレやランニングをしている人も結構多いようです。こうした傾向について、藤井はこう話しています。

「メンタル的にもいいという側面もあるでしょうが、対局において、フィジカル的な面も要素として必要だからかなと思います。今の自分だと、まだまだ盤上の技術だけで伸びているのかなと、これから健康管理も大事になってくると思います」

藤井は元々中学二年生の時に50メートル走を6秒8で走っていたといいますから、全国平均の7秒8と比べればかなりの健脚です。藤井自身、長距離は苦手と話していますが、50メートルのタイムを見れば、将棋だけでなく、スポーツでもある程度の才能を発揮できたはずです。

実際、新聞用の対談で、卓球の張本智和と話し終えた後、張本からラケットを渡され、張本が打つサーブをレシーブしようと挑戦したところ、10球ほど空振りしたものの、そこから変化するサーブを見事に打ち返すようになったといいます。張本が「藤井さん、すごいですね」と驚いたといいますから、運動能力もかなりのものです。

桑原晃弥『藤井聡太の名言』(ぱる出版)
桑原晃弥『藤井聡太の名言』(ぱる出版)

藤井はまだ若く体力もありますが、それでも多くのタイトルを持つだけに、一年間に渡っていくつものタイトル戦を戦い抜くための課題の一つは体調をいかに万全の状態に保つかです。それを意識してか藤井は自宅で腕立て伏せや腹筋などを始めたといいますし、一時期は体力づくりのために散歩を始めたものの、こちらはすぐにやめてしまいました。

理由は「散歩に行った先から返ってくるのが面倒なんです」というものですが、幼い頃には将棋のことに集中するあまり、「道を歩いているとよく側溝に落ちた」とも言いますから、健康以前に事故を防ぐ意味でも、散歩に出かけるより、自宅の中を歩く方が藤井には向いているのかもしれません。藤井にとって今後も勝ち続けるためには、盤上の技術に加え、メンタルとフィジカルをいかに良い状態で維持し続けるかも大切になってくるのです。

★ワンポイント 勝ち続けるためには技術に加え、心身両面の充実も欠かせない。

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桑原 晃弥(くわばら・てるや)
経済・経営ジャーナリスト
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。著書に、『スティーブ・ジョブズ名語録』(PHP研究所)、『ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学」』『トヨタ式5W1H思考』(以上、KADOKAWA)などがある。

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(経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥)

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