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幼稚園児が使う給食トレイを小便器で洗う…中国で繰り返される"食の衛生問題"のとんでもない実態

プレジデントオンライン / 2023年11月5日 13時15分

青島ビール(写真=David290/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)

■ビール原料に放尿する従業員、動画は世界中に拡散した

大切な商品に向かって放尿する従業員の信じがたい姿が、中国の監視カメラに収められた。汚染された商品は、1日の労働に疲れた国民の喉を潤すはずの、ビールだった。

不祥事が発覚したのは、中国第二のビールメーカーである「青島ビール」だ。従業員がビールの原料タンクに小便をする様子が撮影され、動画がネット上に拡散。当局の調査を受ける事態となった。

動画の内容は衝撃的だ。制服を着てヘルメットをかぶった作業員が、高い壁を乗り越えてタンクに入り、原料の容器内に向かって小便をする様子が映し出されている。事件は国際的な関心を呼び、英BBCなどが報じた。

中国のSNSウェイボーに投稿された動画
中国のSNSウェイボーに投稿された動画

香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙によると、青島ビールは、「現在、問題の麦芽ロットは完全に封鎖されています。社は引き続き管理手順を強化し、製品の品質を確保して参ります」と述べ、問題の発生を認めた。

■学食の食事からネズミの頭がゴロリ

青島ビールに厳しい批判が寄せられる一方で、不祥事の発生は中国として初めてではない。国内では食品安全に関する問題が再三混乱を巻き起こしてきた。

今年6月には、専門学校の給食からネズミの頭が発見されている。米CNNの報道によると江西省にある専門学校の学生が、学生食堂の料理からネズミの頭を見つけたとソーシャルメディア上で主張した。これが急速に拡散し、大きな問題に発展している。

学校側は当初、見つかった物体は「カモの首」であるとの虚偽の説明を行った。その後、地方政府がこの問題の調査に乗り出し、実はネズミの頭であったと結論付けた。

食堂には事業許可取り消しの制裁が下され、運営会社には食品衛生法に基づく最大限の罰則が科された。さらに、学校と市場監視局の役員にも罰が科せられる事態に発展している。

CNNは「この騒動はまた、ネガティブなニュースを隠蔽(いんぺい)しようとする試みがしばしば裏目に出てきた中国の地方政府に対して、国民の深い不信感を露呈した」と指摘する。

■わずか4カ月でまた起きたネズミ事件

ネズミ騒動は続く。今年10月には別の学校の給食からもネズミの頭が発見された。国営英字日刊紙のグローバル・タイムズが報じている。

記事によると北中国科技大学の学生がソーシャルメディア上で、学生食堂の食事からネズミの頭を見つけたと発言した。食事に混入していた異物の写真を投稿し、「ネズミの頭」だと断言している。投稿は拡散され、学校内外に広く食の安全への懸念を巻き起こした。

投稿を拡散した別のユーザーは、「見てください。口、毛、ひげが確認できます」とコメント付きで件の写真を学校のコミュニティ掲示板に再投稿している。

大学側は食堂の業者との契約を解除した。事件後しばらく大学では、一部のフードスタンドのみが営業を続ける形となった。繰り返す学校での食の不祥事に、信頼回復と改善の難しさが浮き彫りになっている。

■カビたパンに腐敗したゲソ…「まるでゾンビ肉」

中国の学校では、以前にも食の安全性に懸念が寄せられていた。2019年には名門・成都第七実験高校で発生しており、問題の根の深さを物語っている。

英BBCが写真入りで報じたところによると、同校ではカビの生えたパンや腐ったゲソなど多数の食材が劣悪な衛生環境で保管されていた。

植樹祭に参加した親たちが2019年3月11日、食堂に誤って迷い込んだところ、パンや肉、そして魚介類など、大量の腐った食材を見つけたという。親たちはすぐさまソーシャルメディアにその様子を投稿し、批判を受けた学校側は2台のトラックを手配し腐った食品を運び出す騒ぎとなった。

事件後、学校は謝罪し、食材供給業者との契約を解除すると発表している。一方で問題を発見した親たちは、今回の事象が単発の事件ではなく、同じ業者が20以上の学校で、10万人以上の生徒に食材を供給していると指摘している。

腐敗した食材を目にした保護者の一人は、BBCの取材に対し、「臭くて気持ち悪い。豚の糞のようだ」と嫌悪感を露わにした。また、別の保護者は昨年11月にも、多くの生徒が腹痛や便秘などさまざまな体調不良で苦しんだ事件があったと言及している。この保護者は「冷凍庫で何年も保管されたようだ。まるでゾンビ肉だ」とコメントした。

豪公共放送のABCによると本件により、保護者らの怒りが爆発。学校前を埋め尽くすほどの親たちが押し寄せ、閉鎖された校門フェンスを挟んで機動隊と衝突する事態に発展している。当局が学校側に問題はなかったとコメントする一方、衝突事件により数名の親が逮捕され、さらに波紋を広げた。

■食器を小便器で洗っていた幼稚園職員

幼稚園でも衛生環境の不祥事が発生した。中国江西省の幼稚園で今年6月、園児たちの給食トレイをトイレの小便器で洗っていたことが発覚。大きな批判を呼んだ。

サウスチャイナ・モーニングポスト紙が取り上げる動画には、トイレの地面に溝が掘られたタイプの小便器が映されている。女性職員がその前にしゃがみ込んでホースを使い、食品を直接盛り付けるとみられる区画付きのトレイを洗う姿が映っている。

この事件は、中国全土で学校や大学で頻発している食品安全問題を再び浮き彫りにした。動画を撮影した母親は極度の衝撃を受け、子供を別の幼稚園に転園させたと明らかにした。

動画を見たネットユーザーからは、5万件以上もの怒りのコメントが投稿されたという。サウスチャイナ・モーニングポスト紙は、怒りに燃える視聴者のコメントを取り上げている。「子どもたちは、家庭では両親にとても愛されているのに、幼稚園ではまるで家畜のように扱われるのです」

動画は中国版TikTokのドウイン(国際版ブランドのTikTokに対し、同じくByteDance社が運営する中国版動画プラットフォーム)などを通じ広く拡散されている。

中国版ティックトックに投稿された動画
中国版ティックトックに投稿された動画

■期限切れ食材の提供に、当局がお墨付きを与えたケースも

事件は枚挙にいとまがない。安徽省蕪湖市の幼稚園では2018年9月、子供たちに期限切れのソーセージなどが提供された。国営英字日刊紙のチャイナ・デイリーが報じた。

同紙によると、これで同市における食品問題は、わずか1カ月で3回目を数えるという。以前の事件では、監視当局が幼稚園に対し、カビの生えた生米や腐った鶏の足の調理・提供を許可。こうして調理された食事が、実際に子供たちに振る舞われていた。

チャイナ・デイリーはこの問題について、「市内で1カ月に3回も子どもたちが食の安全に関する不祥事の犠牲になっている事実は、法律が抑止力として機能していないことを示している」と嘆く。

■野良猫を捕獲し、豚肉と偽って売りさばく

最後に、今年10月24日に衝撃的なニュースが報じられている。安いファストフード店は猫の肉を使っているのではないか、との笑えないジョークがあるが、中国では実際に猫が食肉として売りさばかれているという。CNNによると、猫1000匹がソーセージにされる寸前で救出された。

中国の警察が、猫の肉を豚肉や羊肉として売りつける違法ビジネスを摘発。食肉処理場へ向かうトラックから約1000匹の猫を救出したという。

警察の介入がなければ、捕獲されたネコは屠殺され、豚肉や羊肉の串焼き、ソーセージとして食用にされる可能性が高かった。CNNは、こうした違法ビジネスが「新たな食品安全への不安を引き起こしている」と指摘する。

もともと墓地の近くで、釘の打たれた木箱に閉じ込められた猫が大量に発見され、活動家グループが張り込みを開始したという。屠殺場へ輸送し始めたところでグループが介入し、警察に通報した。

活動家の通報を受けた中国・江蘇省張家港の警察は、猫を運んでいたトラックを止め、計画を阻止した。救出された猫たちは保護され、近くのシェルターに運ばれたという。CNNは現地メディアの情報をもとに、通常、加工後の猫の肉は豚肉や羊肉に偽装され、1ポンド(約450g)あたり約4ドル(約600円)で販売されると報じている。

白いネコ
写真=iStock.com/real444
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/real444

■中国の「食の衛生観念」はまだまだ途上国並み…

中国全土を席巻している食品安全問題は、その深刻さ、広範さから、食の安全への意識の低さを浮き彫りにしている。広大な国土を持つこの国の至るところで、国際的に著名な製造業者から、学校やおそらくは町角の小さな露店に至るまで、食品の衛生問題と安全問題が無視できない問題として潜んでいる。

数々の事例を見るに、この問題はすでに一部の組織の固有の問題ではなく、国全体としての大きな課題とさえ言えよう。

青島ビールは不祥事に関し警察への協力姿勢を打ち出しているが、国内外の消費者から厳しい視線を受けることは避けられない。学校や幼稚園でも不祥事が続出しており、目に見えない場所で行われた作業をまったく信頼できないのが現状だ。

言うまでもなく、食品の衛生は人々の生活と直接関わる問題であり、消費者の健康を直接左右する。幼稚園のトイレでのトレイ洗浄事件や猫肉の偽装未遂事件などは、品質への意識不足を雄弁に物語る実例だ。

途上国を対象とした技術協力や経済援助で国際的なプレゼンスを高める中国だが、国内では食という最も基本的な環境の改善が長年の課題となっており、いまだ解決の糸口を見出せていないようだ。

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青葉 やまと(あおば・やまと)
フリーライター・翻訳者
1982年生まれ。関西学院大学を卒業後、都内IT企業でエンジニアとして活動。6年間の業界経験ののち、2010年から文筆業に転身。技術知識を生かした技術翻訳ほか、IT・国際情勢などニュース記事の執筆を手がける。ウェブサイト『ニューズウィーク日本版』などで執筆中。

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(フリーライター・翻訳者 青葉 やまと)

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