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子供のお年玉を「親が預かる」はやめたほうがいい…頭のいい子が育つお年玉の「正しい扱い方」とは

プレジデントオンライン / 2023年11月9日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/laymul

子供がもらったお年玉は、どのように管理するべきか。『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(SB新書)を書いた文教大学教育学部の成田奈緒子教授(小児科医、公認心理師)と公認心理師の上岡勇二さんが、お年玉の正しい扱い方を解説する――。

■お年玉でおごってもらい、子に「ありがとう」と言う

正月に子どもたちが楽しみにしているのはお年玉という習慣ですよね。

私たち大人も幼い日にもらってきた記憶があるでしょう。が、あれって、なぜもらえるんでしょうか? 皆さんは考えたことがあるでしょうか。

以前、ある方からこんなお話を聞いたことがあります。

「うちの家では、子どもたちが親戚や親の仕事関係の人からお年玉をもらうと、必ず『あなたたちがお年玉をもらえるのは、私たち親のおかげなんだよ』と言って聞かせます。そのお年玉は私たち親が、いかに社会の中で「うまく」関係を築いてきたかの印であって、けっして子ども自身がなんらかの労働の対価として得たお金ではないのだよ、と。そして毎年家族でお正月期間に回転ずしに行き、その時だけは子どもたちが親にお年玉でおごることになっています。もちろん親である私たちはそれに対して『ありがとう、ごちそうさま』と言います。あとは、お小遣いとして子どもたちが貯金するなり、自由に使うなりさせています」

素晴らしい話だと私たちは感激しました。

■なぜお年玉がもらえるのかを伝える

つまり、こういうことです。子どもがお年玉をもらえるということは、親である皆さんがその相手(親戚や仕事関係の人)と良好な関係を1年間、築いてきた結果なのです。

人間関係の維持はそんなに簡単なものではありません。皆さんが気を使って、お金を使って、知力を使ってなんとか社会生活を1年間「うまく」過ごしてきたからこそ、周りの方が「子どもたちへのお年玉」という形で感謝を表してくれているのです。

だからと言って、子どもたちに与えられたお金を親が搾取するのではなく、子が親に食事をおごってあげて、それに対して親が「ありがとう、ごちそうさま」という言葉を伝えているところも素晴らしいところですよね。

ここに、私たち子育て科学アクシスのペアレンティング・トレーニングでお年玉に関してお伝えしたい内容がすべて集約されていると言っても過言ではありません。

■「からだの脳」を家庭生活で構築することが最重要

脳が未熟な状態で生まれた子どもを、学習を含めて社会で活躍する成熟した人間に発達させるためには、子どもの脳に、発達段階に応じた適切な環境刺激を大人がくり返し与えることが重要です。

乳幼児期はなによりも大脳辺縁系、視床、視床下部、中脳、橋、延髄などからなる「からだの脳」を、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)の刺激をくり返し与えて育てることが大事です。

なかでももっとも大事なのが、「太陽のリズムに従う」生活をくり返し視覚から刺激として与えることです。これは、ヒトという昼行性動物(太陽が昇っている間に活動をして、太陽が沈むと眠る動物)の脳を育てる上で必須の環境刺激であり、つまり、「大人が意識して、子どもに十分な睡眠時間を取らせる生活」ということになります。

この生活が確立されてはじめて、ヒトは昼間に食欲が起こり食事をして生命を維持し、自律神経を活性化し環境の変化に合わせられる身体機能を保持する脳を獲得していけるのです。これが、乳幼児期から周囲の大人が自覚をもって子どもに与え続けるべきもっとも大切な役割であると言えます。

ですので、私たちの子育て科学アクシスのワークショップ、ペアレンティング・トレーニングでは、まずこの「からだの脳」を家庭生活からしっかりと構築することが最重要であると考えます。

■子供の成長にお金の話題が役に立つ

そして、「からだの脳」がしっかり育ったなら、次に知識や情報の宝庫である大脳新皮質、すなわち「おりこうさんの脳」を家庭生活の中でしっかり育てます。

例えば、「家庭にお金が持ち込まれるのは、親が社会の中で働き、その対価として得ている報酬だからである」という知識を、子どもにしっかり身に付けさせなければなりません。そして家庭の経済は、親が稼いでくる収入と、家庭生活を行う上で必要となる経費の支出のバランスを取りつつ回っているのだ、ということも子どもは知らなければならないのです。

お年玉
写真=iStock.com/visualspace
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/visualspace

家庭の経済状況という情報も逐一子どもにありのままを伝えましょう。皆さんは、家庭でこのことを実践できているでしょうか? 実は私たちが経験する多くの家庭で「子どもにはお金のことを話したくない」「子どもにはお金の苦労をさせたくない」と、こういう話題を避けている傾向があります。

でも、全く逆です。子どもを社会で役に立つ人間に育てたいなら、ぜひこういう話を普段からしっかりしておいてください。

■お年玉を通じて子供は大人や社会を知る

さらに10歳前後から発達が完成し始めるのは、社会生活を円滑に行うための高度な機能がつまった「こころの脳」、すなわち前頭葉です。ペアレンティング・トレーニングではここでも肝要なのは「家庭生活」であると説いています。

そもそも、皆さんが勤め先の利益につながる働き(物を売る、信用を得る等)をしたから、勤め先に収入が入り、その収入からあなたへの報酬が発生しています。ですからいつもいつも自分のやりたいように仕事ができるわけではありません。

意にそぐわない作業をする時期だってあるでしょう。けれどもそれが最終的に会社における「信用を得る」「物が売れる」ことにつながる。これが「社会生活」そのものです。

このように社会の中で「うまく」人間関係を構築して、仕事を遂行している大人がいて、初めて子どもたちはお年玉をもらえる、ということを考えれば、それを子どもの脳にしっかりと継承していくことが、親の重要な役目であることが理解できると思います。

家族
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

■「ありがとう」「ごめんなさい」が行きかう家庭がいい

社会は子どもの目に見えている世界だけではありません。彼らが大人になったとき、「社会でうまくやっていく」ための練習を社会の最小単位である家庭生活で行っていきましょう。

大人は、相手によりいろんな程度の人間関係の維持を行っています。旅行に一緒に行く、ご飯を食べに行く、だけが関係をもつ手段ではありません。会った時の挨拶だったり、子どもがおやつをいただいたお礼の電話も、見知らぬ人が落とした書類を拾って手渡すことも、人間関係の一つです。

助けてほしいと言ったわけではなくても結果的に助けられた時にはお礼を言います。迷惑をかけてしまったら「ごめんなさい」と声に出します。感謝の気持ちは、今度はその人を気遣う気持ちになります。家庭で子どもに親がその姿を見せ続けることが大事です。

「おかげさまで」「ごめんなさい」「ありがとう」という言葉が常に行きかう家庭生活の中で、子どもの社会性、すなわち前頭葉の高度な働きである「こころの脳」が育っていきます。

■お年玉の金額は子供の成長に関係ない

おわかりいただけたでしょうか。お年玉とはこのように「親の社会生活・人間関係」の「おかげさまで」子どもに与えられる金銭なのです。「あげる・あげない」「いくらあげる」といったマニュアルの話ではありません。

それによってご家庭で「どのように子どもの脳を育てるか」が最も重要なポイントです。

先のご家庭のように「なぜこのお金をあなたがもらえているか」という話をするのはもちろん大事なことなのですが、「ありがとう」を誰に、どのように子どもが伝えるかということも、脳育ての観点からはとても重要です。

例えば、遠くに住んでいるおじいちゃんが、家には来られないけど現金書留で送ってくれたお年玉に対して、皆さんは子どもにどのようにお礼を言わせるでしょうか。親が電話をかけてお礼を言った後、子どもに代わって「ありがとう」と言わせているでしょうか。

これは、ペアレンティング・トレーニングではNGになります。

■お金をもらう「ありがたさ」を伝えよう

社会の脳である「こころの脳」を育てたいなら、常に「家庭は最小単位の社会」ということを考え続けなければなりません。

例えば会社で、取引先からの支払いが確認されたらどうしますか? 電話で「あ、入金されてました~、ありがとうございます~」ですか? まさかそんなことはないですよね。きちんと領収書を切りますよね。

子どもは、家庭生活で繰り返される親の行動や言動から学び、「こころの脳」を育てます。お金に対する価値観はその最たるものです。

親が、「たくさんのお金をいただいたのだから、電話でひとこと『ありがとう』ではだめです。あなたをとても大切に思っているおじいちゃんが心を込めて送ってくれたのだから、電話みたいに消えてしまうものではなくて、自筆のお手紙でお礼状を送ります」ということを繰り返し子どもに伝えていきます。

子どもがそれを実践していれば、自然に「お金をいただくということはとてもありがたいことなのだな。いただいたら形に残るようにお礼を伝えなければならないのだな」という考え方に脳が育ちますから領収書の大切さは身に染みてわかります。

■お年玉を預かるのは絶対にNG

「ありがたい」と強く記憶することができるなら、次の機会に相手にお返しを自発的にするでしょう。そうやって「人間関係」の構築ができていけば、子どもは社会の中で「うまく」「幸せに」やっていけるのです。

成田奈緒子、上岡勇二『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(SB新書)
成田奈緒子、上岡勇二『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(SB新書)

ですから皆さん、面倒だとは思いますが、子育てをしている間だけでも、「おかげさまで」「ごめんなさい」「ありがとう」を丁寧に子どもに伝えていってください。もちろん皆さんも実践してください。

そして子どもが得たお年玉は、先のご家庭のように一部は親に還元したとしても、残りは子どもの管轄に「信頼して」任せましょう。「心配だから」と親が管理をすることは自立を阻みます。

むしろ、家庭という失敗をしても大丈夫な環境にいる間に、「収入と支出」のバランスを取るお金の使い方を毎月のお小遣いとお年玉を含めた額でやりくりさせてみましょう。

失敗は必ずしますが、そこからの学びが「こころの脳」を育てます。これが、ペアレンティング・トレーニングで目指す「正しい脳育て」です。

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成田 奈緒子(なりた・なおこ)
文教大学教育学部 教授、「子育て科学アクシス」代表
小児科医・医学博士。公認心理師。子育て科学アクシス代表・文教大学教育学部教授。1987年神戸大学卒業後、米国セントルイスワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。2005年より現職。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもにいいこと大全』(主婦の友社)など多数。

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上岡 勇二(かみおか・ゆうじ)
公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ
公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ。1999年、茨城大学大学院教育学研究科を修了した後、適応指導教室・児童相談所・病弱特別支援学校院内学級に勤務し、子ども達の社会性をはぐくむ実践的な支援に力を注ぐ。また、茨城県発達障害者支援センターにおいて成人の発達障害当事者や保護者を含めた家族支援に携わる。2014年より現職。

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(文教大学教育学部 教授、「子育て科学アクシス」代表 成田 奈緒子、公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ 上岡 勇二)

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