人間の感情の中で嫉妬は最も怖い…医大名誉教授が実践する「嫉妬の猛攻撃」をかわすシンプルな方法
プレジデントオンライン / 2023年11月11日 17時15分
※本稿は、高田明和『孤独にならない老い方』(成美堂出版)の一部を再編集したものです。
■最も怖い嫉妬の猛攻撃を受けないために
モラリスト ラ・ロシュフコー
人間の感情で最も怖いのは嫉妬です。
一世を風靡(ふうび)したあるコメディアンが、こう言っていました。
「人間は金、地位、健康の一つを失うくらいでちょうどよい。みな持っていたら、嫉妬の猛攻撃を受ける」
「あの人は成功者だ。しかし、病気で苦しんでいる」とか、「すばらしい学者だけど貧乏だ」「ひと財産つくったが、しょせん成り上がり者」などと言われるくらいが安全だというのです。
その通りだと思います。多くの人が嫉妬に苦しんでいるからです。
私は浜松医科大学でも妻と共同研究を続けていました。しかし、私が教授になった一方、妻は助手のままでした。
そんな時、医学部の看護学科に生理の教授職ができることになったのです。教授になれる絶好の機会だと思って応募させました。
■人は嫉妬を覚えると、人生を破壊するような行動に出る
ところが、それを慶応大学の先輩に相談すると、「夫婦で教授など、とんでもない」と大反対でした。
幸い浜松医大には好意的な先生方もいて、妻は教授になることができました。
妻や私が名誉教授になった時も同様です。名誉教授になるための年数が足らず、先輩方に相談しましたが、全員反対でした。この時も、学長が学則の付則を活用したりして、夫婦ともども名誉教授になれるようにはからってくれました。
直接的な利害関係のない先輩方が反対した理由は、嫉妬以外には考えられません。嫉妬はなんと恐ろしいものかと、私は身震いしました。
なぜなら、妻は、あの機会を逃せば、一生助手のままだったと考えられるからです。私も名誉教授になれなければ、その後の職はありませんでした。
つまり、人は嫉妬を覚えると、ちょっと恥をかかせるなどというのでなく、人生を破壊するような行動に出るのです。
![写真を破る女性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/e/1200wm/img_be31e2fbed1fd7dfbee24d0d2c87f62295036.jpg)
もちろん、私どもに対する批判がすべて嫉妬によるなどとは思っていません。私にも間違ったところや欠点が多々あるからです。しかし、嫉妬の恐ろしさを知ってからは、他人がある行動に出た時、裏に嫉妬がないかと警戒するようにはなりました。
ねたみで幸せになる人間は誰もいません。
嫉妬心をうまくかわすのは、自分の幸福、相手の利益です。
■嫉妬されても平穏につき合う
アラブの格言
私は自分に自信が持てず、劣等感に満ちた若い日々を送りました。
歌人、石川啄木(たくぼく)の「友がみな われよりえらく 見ゆる日よ 花を買い来て 妻としたしむ」という歌を見ると、今でも、つらい日々がよみがえります。
劣等感を克服し、他人にばかにされないために、私は必死に努力しました。研究に没頭し、本を書き、講演もしたのです。
そのように「自分はまだダメだ」と努力していると、周囲の人には脅威に映り始めるようです。
私は、知らないうちに嫉妬の対象になっていました。
人は、自分が望んでもいないことや、努力していない分野でも、成功した人、努力を続けている人には強い嫉妬を抱くのです。
しかし、ある程度有名になってからは、嫉妬を分析できるようになりました。そして、人は思わぬことを嫉妬するのだから、嫉妬されても、その人を遠ざけないこと、嫉妬されていることを知りつつ、つき合うことが大事だと思うようになりました。
■女の嫉妬は小さな長所、男の嫉妬は全人格に向かう
講演会で、福岡の料亭の女将(おかみ)だった高名な女性と一緒になったことがあります。彼女は、世間に名が知れるにつれてご主人の態度が変わり、結局、離婚した経験を持っています。
こう言っていました。
「女の嫉妬は顔がきれいだとか、スタイルがよいなどという小さな長所に向けられる。しかし、男の嫉妬は、全人格に向かうから怖い」
嫉妬による攻撃に悩まされた私には、この言葉が非常によくわかるのです。
嫉妬には、男女差もあります。
男性は男性にすごい嫉妬を持ちますが、女性は男性の成功に嫉妬を持つどころか、尊敬の念を抱くのです。
男性社会だと、嫉妬で身動きできなくなることがしばしばです。しかし、女性が同数になると、男性的な嫉妬以外の感情でものごとが進むので、うまくゆくようになると、私は考えています。
女性同士の嫉妬という別の問題もありますが、まずは女性をもっと登用することが、閉塞(へいそく)している日本に風穴をあけるに違いありません。
嫉妬は誰にでもあるので、いちいち関係を断ってはキリがありません。
■ネットの世界にうかつに深入りしない
劇作家 シェイクスピア
私は、いわゆるSNSをやりません。何かを発信することは、批判されることだと思っているからです。
誰もが成功を目ざしますが、成功すれば批判が増えることを知るべきです。世間には嫉妬という悪魔が住んでいて、成功者や有名人が失脚するのを見たがっているのです。
![モニタの中から飛び出して悲しむ男性を指差す腕](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/e/1200wm/img_be22a3807a5d64f30074939287e8d753274176.jpg)
世間との蜜月を続けられればいいでしょう。しかし、世間から批判され始めると、どんな弁解も聞いてもらえなくなります。「説明責任を果たせ」と言われて弁明しても、「かえって疑問が増えた」などと反発されたりします。
そうなっては遅いのです。もう黙っているしかなくなります。
だから、私は不特定多数の人と意見の交換をしてはいけないと考えるのです。
SNSでの発信が評判になり、本を出したり、メディアで売れるようになる人も少なくありませんが、そのような成功は、破滅の危険もはらんでいます。
米国には「Easy come, easy go.」という言葉があります。ラクに手に入れたものは、すぐになくなるのです。
派手な職業ほど、世間の嫉妬に攻撃され始めると、ひとたまりもありません。
成功者や有名人が急に社会から消えることがあるのは、そのためです。「実るほど 頭(こうべ)を垂れる 稲穂かな」という古くからの教訓は、ネット社会の現代、ますます重要になると思われます。
■優劣のつかない部分の評価が大切
ところで、私は「成功者」「有名人」といった言葉を使いますが、一方で、そういう判断基準にこだわるのは危ないとも思っています。
人間は、業績、地位、経済力などの優劣だけでは測れないからです。人柄や、どれだけ後進を育てたか、周囲の人に慕われたかといった、優劣のつかない部分の評価が大切だと思います。
![高田明和『孤独にならない老い方』(成美堂出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/0/a/1200wm/img_0adf4cf38b098e061bbbc1f691e64bb861854.jpg)
男性は判断基準が一つになりがちです。長く競争に明け暮れ、なんでも優劣や勝敗、上下で見てしまうようになるからです。
よく、夫婦で団体旅行をすると、妻はすぐに周囲の人と話に花を咲かせるが、夫はとかく手持ちぶさたにしているといわれます。その理由も、男性は判断基準が少ないからです。
世間を渡るには、いろいろな物差しを使うことが必要です。そうでないと、物差しで測れない人とつながりを持てなくなります。
ネットの世界では、根拠も責任もなく、
相手をののしる「ノイジー・マイノリティ」も、
攻撃対象を探しています。
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浜松医科大学名誉教授 医学博士
1935年、静岡県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。米国ロズウェルパーク記念研究所、ニューヨーク州立大学助教授、浜松医科大学教授を経て、同大学名誉教授。専門は生理学、血液学、脳科学。また、禅の分野にも造詣が深い。主な著書に『HSPと家族関係 「一人にして!」と叫ぶ心、「一人にしないで!」と叫ぶ心』(廣済堂出版)、『魂をゆさぶる禅の名言』(双葉社)、『自己肯定感をとりもどす!』『敏感すぎて苦しい・HSPがたちまち解決』(ともに三笠書房≪知的生きかた文庫≫)など多数ある。
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(浜松医科大学名誉教授 医学博士 高田 明和)
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