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「今度温泉行かない?」と本気でお客様に口説かれた際に評判のいい銀座ホステスが切り返す"プチ調教"の中身

プレジデントオンライン / 2023年11月12日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/NadyaPhoto

相手の誘いを、うまくかわすにはどうすればいいか。コミュニケーション・アドバイザーの森優子さんは「夜の銀座でまれにお客様から口説かれたとき、慣れないホステスはつい真剣な表情で真面目に答えてしまう一方で、人気の高いホステスは表立って誘いを断らず終始笑顔で上手にはぐらかす。さらに上手の銀座ママは魔法のようなトーク術で逆質問し、結果的にお店の売り上げにつなげてしまう」という――。

※本稿は、森優子『相手を立てるのがうまい人 仕事・人間関係がポジティブに変わる!』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■夜の銀座の粋な対処法

前の項目では銀座のママや評判のよいホステスが、お客様を立てるのがプロ級で、「ここぞ」のときにはカツを入れられるホステスが、お客様から一目置かれるということをお伝えしました。

この項目では銀座ならではの、粋な接客術をご紹介しましょう。

これはちょっとしたマル秘術です(笑)。

銀座のクラブに来られる常連のお客様は、めったにホステスを口説きません。

なぜなら、常連のお客様の目的はホステスに会うことだけではないからです。

あくまでも私の知る限りですが、常連のお客様の目的は気持ちよく得意先を接待することや、日々社会の中で戦っている同志として、ママやホステス、ときには黒服の顔が見たくて来店するのです。

ウイットに富んだユーモア溢れる男性の中には、銀座で粋な会話を楽しみたいと思っていらっしゃる方が多いものです。そうした男性は心に余裕があるため落ち着いた雰囲気があり、決してガツガツしていないのが特徴です。

そのため、お気に入りのホステスがいても、まるで娘や妹を応援するかのごとく出勤前に時々、夕飯を食べるくらいで、そこには疑似恋愛のカケラも見えません。もしかしたら見せないように努力しているのかもしれませんが(笑)。

■本気の口説きに真面目に答えてはいけない

そうはいっても、お客様も生身の人間です。めったに口説かないお客様であっても、その「めったに」が起こるときがあるのです。

「○○ちゃん、少しリフレッシュしたほうがいいと思うから、今度温泉行かない?」
「この前、海が好きだって言っていたでしょう。海が見えるプライベートルームで、美味しいもの食べて息抜きしませんか?」
「今度海外に行くのだけれど、よかったら一緒に来る?」

など、ゆっくりした口調ながらも、突然ストレートに誘ってくるので驚きます。めったに口説くことがないだけに、かえって印象も強烈です。その表情からも、並々ならぬ本気度が垣間見えることがあります。

このような突然のアプローチに、慣れないホステスは「忙しくて、ちょっと行けないです」と、つい真剣な表情で真面目に答えてしまいます。

それも無理のないことです。

少し接客に慣れてきたホステスだと、「うわ〜素敵ですね。行きたいけど残念、しばらくは行けないです」と、笑顔でお客様を立てながらさらりと断ります。お客様も「あ、そう」とか「フラれちゃったか」とか言いながら苦笑いですませます。

しかし、ここから上手に別の話題に変えていかないと、しばらくは少し気まずい、違和感のある雰囲気が続いてしまうことがあります。

■終始笑顔で上手にはぐらかす

それでは、人気の高い評判のホステスはどうでしょうか。

心では汗をかいていても、表立ってはお誘いを断りません。

「え、断らないの⁉」と驚きますよね。

まさにそれが、マル秘術なのです!

断りはしないのですが、その代わりちょっと粋な相手の立て方をして、口説きを上手にはぐらかせてクローズさせるのです。

もちろん終始笑顔で、一瞬たりとも顔色は変えません。

笑顔でグラスを掲げる女性
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yamasan

「すごくおモテになるお客様が何をおっしゃいますか!」と、相手がモテることを伝えながら(ここポイントです!)、プチ調教するのです。

すると、大抵のお客様は「モテないよ、僕は」と言ってこられます。

ホステスはさらなる笑顔で「そんなご謙遜を(笑)。お店の女の子は皆○○さんの大ファンですよ。○○さんったら本当に謙虚で素敵ですね」とかわします。

そして「そんな素敵な○○さんに乾杯!」と言って、それ以上その話題にならないような楽しい雰囲気に流れを変えていきます。

ちょっとアグレッシブな乾杯ですが、お客様は完敗です(笑)。

■お客様を仰天させた私の返答

そうそう、アグレッシブといえばあるお客様のことを思い出しました。

常連のとても優しいお客様が酔った勢いで「あなたはいつになったら僕と旅行をしてくれるんですか」と言ってこられたことがありました。

このとき私は「努力が足りない(笑)。あと100回お店に来てくれたら考えます」と言ってお客様を仰天させたのです。

今思うと、ずいぶん強気なことを言ったものです(汗)。

優しいお客様は「あと100回? こりゃ参ったなあ〜」と言いながらママを呼び、「あと100回来なさいって言われちゃったよ」と笑って、話を流してくれました。

えっ? 結果ですか? 

お客様が100回ご来店する前に、私は銀座を卒業しました(笑)。両親の介護があったためです。

■銀座ママの魔法のトーク術

最後に、銀座のママの魔法のようなトーク術を特別にお伝えしましょう。

ママも当然、お客様に口説かれることがあります。

そんなとき、ママは「私のこと、運命の女性だと思ったの?」と逆質問するのです。当然お客様は「そう、ママは運命の人だよ」と答えます。

するとママは「運命の赤い糸?」と聞きます。

「そう、赤い糸だよ」とうれしそうに答えたお客様に、ママはさらりとこう言うのです。

「赤といえば、赤ワイン。じゃあ、お祝いに赤ワインで乾杯なんていかが?」

さすがはママです!

すっかりママの魔法にかかってしまったお客様は、赤ワインを頼まないわけにはいかなかったのです(笑)。

グラスに注がれた赤ワインとは別に包装を解かれたワインボトル
写真=iStock.com/zoka74
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/zoka74

■夜の銀座流マナー「3つの『ない』」

評判のよいホステスの特徴は、何を置いても言葉遣いと所作が丁寧なことです。

丁寧な言葉遣いには品格が感じられますし、ゆっくりと落ち着いた所作は優雅に見えるものです。

「銀座は男性のステイタス」と言われるだけあって、お客様も丁寧で行き届いた接客のもと、ゆったりした気分で会話を楽しみながらお酒を飲みたいのです。

丁寧な言葉遣いは、接客の基本です。

「はじめまして。○○子と申します」「何をお飲みになりますか?」

常連さんには「またお目にかかれて、うれしいです」「いつもありがとうございます」と、おもてなしの言葉をかけます。

相手に粗雑な印象を与えないように、特に語尾には気をつけて、微笑みながらゆっくりと話すため、品格が感じられるのです。

言葉遣いが丁寧な人は、それだけで何倍も素敵に見えるものです。

私が学んだホステスの心構えに、「お客様を立てるために、自分を立てない」がありました。さて、自分の何を立てないと思いますか?

正解は、「腹を」立てない、「音を」立てない、「聞き耳を」立てないです。

■静かに腰を上げ、戻ってきたら静かに座る

最初に、腹を立てないから説明しましょう。

お客様の中にはまれにですが、平気で嫌なことを言ってくる人がいます。

そんなときでも、腹を立てず笑顔でその場を乗り切るのです。

もちろん、あまりにもひどい、程度を越えた暴言の場合はママの出番となりますが、すぐにカッとなって感情的に言い返さないようにしましょう、ということです。

次は、音を立てないです。

水割りなどのお酒をつくるとき、できるだけ音を立てないように気を配り、お客様の手元にもそっと置きます。

カフェでお茶やランチをするとき、お店の人にお水の入ったグラスをコンッと音を立てて置かれると、少し乱暴な印象を受けないでしょうか。コースターぎりぎりに静かに置けば、そんな音を立てずに置くことができます。

テーブルの上にレモンと冷たい水のガラスを置くレストランのサーバー
写真=iStock.com/JulieAlexK
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JulieAlexK

銀座のお客様は、ホステスや黒服の所作をよく見ています。それだけに、音を立てないように動くことは大切なマナーだったのです。

席を立つときは「ちょっと失礼いたします」と言って静かに腰を上げ、戻ってきたら静かに座ります。

歩くときも、ヒールの音をカンカンさせないように、またはドタドタしないでゆっくりと歩きます。

御手洗いやロッカーのドアを閉めるときも、静かに閉めます。「バン!」と大きな音を立てないように、いつも意識していました。

■「耳をダンボ」はお客様の会話に集中できない

森優子『相手を立てるのがうまい人 仕事・人間関係がポジティブに変わる!』(三笠書房)
森優子『相手を立てるのがうまい人 仕事・人間関係がポジティブに変わる!』(三笠書房)

最後は、聞き耳を立てないです。

銀座では、隣のテーブルのお話に聞き耳を立てないことも大切なルールでした。いわゆる「耳をダンボ」にしていては、目の前のお客様との会話に集中することはできません。

うわの空で接客をしているようでは、お客様によい印象を持ってもらうのは無理というものです。

お客様を立てるには、「腹を立てない」「音を立てない」「聞き耳を立てない」。この3つを意識しておけば、接客業のみならず、さまざまな場面で大人のマナーとしても役立つでしょう。

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森 優子(もり・ゆうこ)
コミュニケーション・アドバイザー
マリアージュコンサルタント事務所代表。短大卒業後、西武ライオンズ・西武鉄道のチアリーダーに従事。結婚、離婚を経てシングルマザーになり、(株)リクルート、(株)リクルートキャリアにて求人広告の企業営業を担当。入社2年目には、通期を通して「売上、新規売上、新規社数」の目標を完全に達成した者だけに与えられる「グランドスラム賞」を取り表彰される。ほかにも、月間MVP賞や月間売上トップ賞をたびたび獲得。その一方で、生活のため夜は銀座のクラブホステスとして14年間働く。2013年、両親の介護のためにホステスを引退。2015年より現職。著書に『感じのいい人は、この「ひと言」で好かれる』(三笠書房)、『雑談が上手い人 下手な人』『嫌なことを言われた時のとっさの返し言葉』『会話が上手い人 下手な人』(以上、かんき出版)

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(コミュニケーション・アドバイザー 森 優子)

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