小遣い「1年目は5000円で年1000円ずつ増」「半年で2500円、半年ごと250円増」どっちが得か…答えに大人も愕然
プレジデントオンライン / 2023年11月14日 11時16分
※本稿は、『プレジデントFamily 算数が大得意になる 2023完全保存版』(プレジデントムック)の一部を再編集したものです。
■Q4 直径1cmの乾電池を、2cm×100.5cmの長方形の箱に詰めます。最大で乾電池はいくつ入るでしょう?
(前編Q1~3から続く)
A 普通に考えれば、端からぴったり2本ずつ入れていき、2×100で計200本という答えになるでしょう。でも、驚くべきことに、詰め方を工夫すれば201本入るのです。
これは、数学関係者の間ではよく知られている問題で、パッキングという分野に属します。ある決まった形状の物を、限られた空間に効率よく詰めていく。そのためには、乾電池と乾電池が接するすき間を小さくすればいいのですが、2本ずつ四角のパターン(図表1参照)で詰めていくと、4本の乾電池の真ん中が大きく空いてしまいます。
そこで、乾電池を三角のパターン(図表1参照)で詰めることを考え、その三角のパターンを互い違いに繰り返していくのです。こうすると、最初と最後の部分にはたしかに大きなすき間ができますが、途中部分でのすき間が少ないため、結果的に乾電池が1本多く入るだけのスペースが生まれるというわけです。
ちなみに箱がもっと長く、2cm×1000cmだったら、さらにすき間ができて2011本入ります。これは離散数学という分野で、計算で求めるには三平方の定理と平方根の知識が必要になります。大学、しかも数学科の人しか学ばないような複雑な計算式ですが、中学生ぐらいでも数学が好きな子であれば理屈はわかるはず。
私たち大人は、年齢を重ねるうちに知らず知らず一定の思考パターンに陥っています。でも、こういう常識を覆すような事象を目の当たりにし、「なぜそうなるのか」を知るだけでも刺激になります。子供の頃の自由な発想と、大人の知恵がバランスよく合わさった「しなやかなアタマ」をめざしたいものです。(答え 201本)
■Q5 A国、B国、C国があります。1年間に増える人口を調べたところ、A国は1%、B国は3%、C国は5%でした。毎年同じ割合で増えるとすると、人口が倍になるのは、それぞれ何年後でしょう?
A この問題は、電卓で同じ数に1.01、1.03、1.05をそれぞれかけ続けて最初の数の倍になる数を数えていってもいいのですが、資産運用で元本を2倍に増やすときの、おおよその金利や年数を簡単に導き出す「72の法則」にあてはめれば、あっという間に答えが出ます。
![【図表2】考え方のヒント](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/4/1200wm/img_44fc64309032152e86993222f35b2562281237.jpg)
「72の法則」の計算式は、「72÷金利(%)=年数(年)」。ここでいう金利は、年1回・複利計算です。今の日本ではありえない数字でうらやましい限りですが、たとえば銀行に年利7.2%で預けておけば、10年で元本の倍になる。
72の法則はあくまで概算なので、実際の年数とは少し違ったり、金利によって誤差があるなどの問題もありますが、72という数字は覚えておいて損はありません。
問題は、金利ではなく各国の人口の増え方を求めるものですが、この計算式にあてはめて考えると、A国は約72年(72÷1)、B国は約24年(72÷3)、C国は約14年(72÷5)でもとの人口の倍になるということがわかります。
![『プレジデントFamily 算数が大得意になる 2023完全保存版』(プレジデントムック)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/c/1200wm/img_acf801eca2e596d8cefd9dc90e549e2d150064.jpg)
複利という点がポイントで、わずか数パーセントの違いなのに、年数には大きな開きが生じます。もしもこれが人口ではなくお金、しかも借りる場合だったら要注意ですよ。
というのも、72の法則を使えば、借金をして、まったく返済しないでいたら、何年で金額が倍になるかというような恐ろしい計算も瞬時にできます。たとえば200万円を借りたときには、金利15%だとわずか4.8年、金利20%だとさらに早く3.6年で倍の400万円になってしまう。
この数字を見たら、私は怖くてとてもじゃないけれど借金などできません。自分の身を守るためにも、やはりきちんと計算することが重要ですね。(答え A国=約72年、B国=約24年、C国=約14年)
■Q6 5年生になるタケオくんは、お母さんにこづかいの交渉をしたところ、AプランとBプランを提示されました。どちらでもらうのがトクでしょう? 【Aプラン】1年目は5000円で、毎年1000円ずつ増やす。【Bプラン】半年で2500円、6カ月ごとに250円増やす。
A これはパッと見ただけではわからない問題です。紙と鉛筆を使って、タケオくんがAプランとBプランそれぞれの場合で、半年ごとにいくらもらえるかを書き出してみましょう。
![【図表3】考え方のヒント](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/e/0/1200wm/img_e09ac27051901beb8ef35ed718d82f17308952.jpg)
半年で2500円も、年間で5000円と変わらない。半年で250円アップするということは年500円しか増えない。だから年1000円増えるAプランのほうが得だと考えがちですが、結果はさにあらず。
Aプランの場合、1年目は5000円で、2年目は6000円、3年目は7000円と、毎年1000円ずつ増えていきます。一方、Bプランは半年で2500円ですが、さらに半年後に250円増えて2750円になるので、最初の1年間では5250円になる。
Bプランでも毎年1000円ずつ増え、結果的には最初の半年目にもらった250円の差がずっと続くため、Bプランのほうが毎年250円多いというわけです。
![5000円札の樋口一葉と1000円札の野口英世](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/8/1200wm/img_f80b6391432a9928bc4c4b274d4a0234403929.jpg)
結局、数学において直感はあてにならず、どんなささいな内容でも計算しなければダメなのです。
たとえば「富士山を動かすには何年ぐらいかかるか」「シカゴにいるピアノ調律師の人数は」といったフェルミ推定という問題が、グーグルなどIT企業やコンサルティング会社の入社試験によく出ます。これも単なる直感ではなく、問題をいくつかの要素に分解して理詰めで一つずつ概算していかなければ解けません。思考がワンステップの直感であるのとは異なり、概算はこのいくつかのステップを経て、精度がより高まるのです。
ですから、計算をせず思いつきで答えるのではなく、まず計算式を考え、それに数字をあてはめ、比較するというように、常に三つぐらいのステップをとるといいでしょう。損をしないためにも、きちんと計算するくせをつけることが大切です。(答え Bプラン)
YES International School校長。サイエンス作家。1960年、東京都生まれ。東京大学理学部物理学科卒業。マギル大学大学院博士課程修了。NHK Eテレ「サイエンスZERO」ナビゲーターなどメディアでも活躍。2016年にYES International Schoolを開校。
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サイエンスライター
1960年、東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科(科学史・科学哲学専攻)、東京大学理学部物理学科卒業。マギル大学大学院博士課程修了(高エネルギー物理学理論専攻)。理学博士。大学院を修了後、サイエンスライターとして活動。物理学の解説書や科学評論を中心に100冊あまりの著作物を発刊。物理、数学、脳、宇宙など、幅広いジャンルで発信を続け、執筆だけでなく、テレビやラジオ、講演など精力的に活動している。
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(サイエンスライター 竹内 薫 構成=勝亦理美)
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