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頭のいい人は"悩みの方向"が違う…和田秀樹が受験指導で「模試の偏差値と合格可能性は見るな」という理由

プレジデントオンライン / 2023年11月15日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tevarak

悩むことから抜け出すにはどうすればいいか。精神科医の和田秀樹さんは「模擬試験を受けたときに、仮に『偏差値53』『合格可能性D判定』という結果が出て「ああ、これじゃあだめだ」と悩んでも、百害あって一利なしだ。解決できない変えられないこと、過去、失敗した結果を悩むのは時間のムダである」という――。

※本稿は、和田秀樹『「すぐ動く人」は悩まない!』(祥伝社)の一部を再編集したものです。

■「過去」はいくら悩んでも変えられない

悩みには解決できることと、できないことがあります。一番まずいのは解決できないことを悩むパターンです。

その典型が「過去」を悩むこと。これは、悩めば悩むほど深みにはまりますし、同じことを何度も繰り返し悩むことになります。

たとえば、いまの会社の仕事にやりがいを感じられない、自分に向いていない、といった感じを持っていると、その会社に入ったことが悩みになるかもしれません。

「ああ、あのときあっちの会社を選んでいたら、もっと充実感を持って仕事に向き合うことができたのになぁ」と。

あるいは、恋愛がうまくいかなくなったときには、「そもそも彼女(彼)と付き合ったこと自体が間違いだったんだ。付き合う相手を慎重に選んでいたら、こんなことにはならなかったはずなのに……」と思うこともあるかもしれません。

しかし、過ぎ去った過去の時間は戻ってきませんし、自分がそこに立ち戻ることは絶対にできません。いくら悩んだところで、その会社に入ったという事実、その相手と付き合ったという現実は変えようがないのです。

■会社が嫌なら、嫌な状況から脱することができるか考える

解決の糸口が見つかることなら、悩む意味もありますが、糸口がないことを悩んだら、悩みの堂々めぐりをするばかり。解決できないまま、悩みは深まり、同じ悩みにとらわれ続けることにもなります。

こういった場合、そもそも悩む方向が違うのです。過去ではなく、解決できる悩みに目を転じましょう。

会社が嫌なら、入ったことを悩むのではなく、どうしたらその嫌な状況から脱することができるか、そのことについて悩めばいい。

そうすると、解決の糸口をいくらでも見出せるようになってきます。

取引先の中途採用がどうなっているかを調べる、友人、知人と会って彼らが勤めている会社に転職できないかどうかを聞いてみる、転職情報サイトをとことんあたる、起業について勉強する……。

すぐにはいまの状況が変わらなくても、悩みは行動に直結しています。行動すれば、必ず結果が出ますから、その結果に応じて、さらに解決のための糸口を探ることができます。

行動は、悩みの解決に向けての確かな一歩になるのです。そうして一歩ずつ、歩みを進めていけば、いつかは現状脱出にいたるはずです。

ノートパソコンを操作するビジネスパーソン
写真=iStock.com/Nattakorn Maneerat
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nattakorn Maneerat

恋愛も付き合ってしまったことをいくら悩んでも仕方がありません。修復する手立てはないか、すっぱり別れるか、別れた後どうするか……。悩みどころはそこです。

それらの悩みなら、一度じっくり話し合ってみる、腹を括(くく)って別れ話を切り出す、新たな出会いのための方策を講じる、などの行動につながります。

これもまた、「悩み→行動→(結果に応じての)悩み→行動……」という方式で、必ず解決することができるのです。

■悩みの方向を「変えられること」へ向ける

過去と同じように、変えられないことを悩むのも、悩みを深めることにしかなりません。

たとえば、人前に出ると顔が赤くなる人がいます。それが、人前に出るのが恥ずかしい、人付き合いがうまくできない、という悩みにつながっています。

しかし、その人が顔が赤くなることをいくら悩んでも、顔が赤くならない人になることはできません。顔が赤くなるのは体質、あるいは生理現象ですから、当然です。つまり、その悩み方では解決できないのです。

一方、悩み方の方向を、人前で赤くなっても恥ずかしくないようにする、人付き合いがうまくできるようになる、というふうに変えたらどうでしょうか。これは解決策が見つかりそうです。もっとも端的なのがこれ。

「僕は人前に出ると顔が赤くなってしまうんです。気にしないでくださいね」

そう率直に告げられたら、相手は悪い印象を持つどころか、好感を持って受けとめるのではないでしょうか。

相手が受け容れてくれたらこちらが恥ずかしいと感じることもありませんし、顔が赤くなることがその人と付き合ううえでハンディキャップになることもありませんよね。

「私は尊敬する(大好きな、偉い、立派な)人の前に出ると、顔が赤くなっちゃうんです」

これはさらに上級な言い方。相手の心をのぞけば、「そんな、そんな、私ごときで顔を赤くしていただいて、かえって照れるじゃないですか」といった感情が渦巻いているに違いありません。それがこちらに対する好感度をグングン上げることは疑いを容れません。

人前に出るのが恥ずかしい、人付き合いがうまくできない、という悩みはアプローチの仕方によってあっさり解決できるのです。

■変えられない容姿を悩むより、丁寧な言葉遣いを磨く

容姿に自信がないという人も、そのことを悩んだからといって、容姿が変わるものではありません。もちろん、整形手術を受ければ多少の“好転”は望めるかもしれませんが、あくまでちょっとした修正にすぎません。

それよりは、いまの容姿のままで人とどうかかわっていくか、どのようにしてよい印象を持ってもらうか、いかに異性に好かれるか、といったことを悩むほうがいい。これならば、いくらでも解決策があります。

美しい、丁寧な言葉遣いを心がける、きめ細やかな配慮をする、他人に対する思いやりを深める、やさしさに磨きをかける……。それらはどれも“やる気”一つですぐにでも実践できることです。

誰もが振り返らずにはいられないような容姿端麗(ようしたんれい)の人でも、言葉遣いがぞんざいだったり、乱暴だったりしたらどうでしょう。おそらく、その魅力は大幅にダウンとなるはずです。

それに対して容姿はそれほどでなくても、美しい、丁寧な言葉遣いをする人の魅力は、言葉を交わすほどにアップしていきます。

10人が10人とまではいいませんが、前者より後者に好印象を持つ人は、少なくないのではないでしょうか。好印象にとどまらず、惹(ひ)かれるという異性も絶対にいます。配慮、思いやり、やさしさについても同じことがいえます。

変えられないことを悩み続けてもラチがあきませんが、変えられることを悩んだら、必ず解決にまでたどり着くのです。

どちらの悩み方が賢いか、考えてみるまでもありませんね。

クリップボードを持って悩むビジネスウーマン
写真=iStock.com/xalanx
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/xalanx

■「失敗は成功のもと」とは必ずしもいえない

「失敗は成功のもと(母)」という言葉は誰でも知っているでしょう。しかし、その意味は、失敗をすれば次は無条件で成功に導かれるということではありません。

工学博士の畑村洋太郎(はたむらようたろう)先生は『失敗学のすすめ』(講談社)という著書の中で、失敗は断じて成功のもとなんかではない、という意味のことをいっています。

まったく同感。失敗を成功のもとにするには、整えるべき条件があるのです。「分析」と「戒(いまし)め」がそれです。

なぜ失敗したか、どこで失敗したか、ということをきちんと分析する。また、同じ失敗は二度と繰り返さない、と強く自分を戒める。その二つの条件が整ってはじめて、失敗は成功のもとにも、母にもなるのです。

私は受験指導にも携(たずさ)わっていますが、模擬試験を受けたときには、偏差値や合格可能性は見るな、と常々伝えています。

仮に「偏差値53」「合格可能性D判定」という結果が出たとして、「ああ、これじゃあだめだ」と悩むことになったら、百害あって一利なしだからです。

すでに出た結果は変えられない。前述したように、変えられないことは悩んでも何の役にも立たないのです。

ならば、なぜその問題を間違えたのか、どの部分の勉強ができていなかったのか、どこを補っていけばいいのか、どのようなミスをしたのか……そこを悩む(分析する)べきです。

■仕事も恋愛も失敗したことに悩むのではなく、改善点を炙り出す

そのうえで、二度と同じ轍(てつ)は踏まないぞ、と自らを戒める。それで次の模擬試験では確実にステップアップがはかれます。悩んだことが活きてくるのです。

悩み方の違いはわかりますね。失敗した結果をただ悩むのか、改善点を見出そうとして悩むのか。どちらの悩み方をするかで、次の結果は大きく変わってくるのです。

そして、これは何も受験勉強にかぎったことではありません。仕事も恋愛も同じです。

失恋して、「またフラれちゃった」と悩んでいるうちは、次に恋愛をしても同じような結果になる公算が高い。だから、ここは次のように悩まなくてはいけません。

「フラれたのは、誠意が足りなかったのかな。それとも、時間にルーズすぎたからか。相手のやさしさに甘えすぎたところもあったかもしれない」

悩んで炙(あぶ)り出されたところは改善点です。そこを改めていけば、次の恋は成就する確率がドンと跳ね上がるでしょう。もう、同じようなフラれ方をする自分とは訣別(けつべつ)できます。

屋外でコーヒーを飲む男女
写真=iStock.com/Masaru123
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Masaru123

■同時にいくつものことを悩むことはできない

悩むことばかり多くて、心が安まる暇がない。そんなふうに感じている人が少なくないかもしれません。誰もが知識をたくさん持ち、豊かさにひたって生きているいまは、悩み多き時代だという話はすでにしました。

「(石川や浜の真砂(まさご)は尽きるとも)世に盗っ人の種は尽きまじ」といったのは、かの石川五右衛門(いしかわごえもん)とされていますが、それにならえば、現代は、「世に悩みの種は尽きまじ」の時代ということにでもなるでしょうか。

しかし、森田療法の森田正馬はこんなことをいっています。

「人は同時にたくさんのことを悩めない」と。

つまり、一つの悩みの渦中にいると、そのことばかりに心が占領されて、ほかに悩むべきことがあっても、それが見えないということだと思います。

たしかに、そういうことがある。精神的に落ち込んでいて、そんな自分を悩んでいるとき、ふっと異性がやさしい言葉をかけてくれたりすると、相手に恋愛感情を持ってしまったりすることがあります。

本来、恋愛とか結婚は、相手がどんな人間であるかをきちんと見極めたのちに成立するものであるはずです。

ですから、はじめに人物判定があってしかるべきなのですが、落ち込んでいる自分に悩んでいると、それなしに、すなわち、相手が恋愛するにふさわしい人か、結婚しても大丈夫な人かといったことについて悩むことなしに、そこに飛び込んでしまったりするのです。

■悩んでいると、近視眼的になったり視野狭窄に陥る

一概にはいえないかもしれませんが、一時的な“気持ちの落ち込み”と“恋愛、結婚”をはかりにかければ、人生にとってより重大なのは後者でしょう。だとすれば、真剣に悩むべきはそちらだということになりませんか。

和田秀樹『「すぐ動く人」は悩まない!』(祥伝社)
和田秀樹『「すぐ動く人」は悩まない!』(祥伝社)

ところが、一つの悩みにとらわれていることで、本当に悩むべき大事なことが見えなくなるのです。

実際、心が弱っているときに、とんでもない異性に引っかかってしまった、という事例はいくらでもあります。

森田正馬の言葉は肝に銘じておく必要がありそうです。悩んでいると、近視眼的になったり、視野狭窄(しやきょうさく)に陥(おちい)ったりしがちなのです。

その悩みが自分にとって大事なことなのか、ほかにもっと大事なことがありはしないか。常にそう自分に問いかけていくことを、ぜひ、忘れないでください。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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