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部下との対話を「取り調べ」にしてはいけない…自然とやる気を引き出せる「数値化」という会話テクニック

プレジデントオンライン / 2023年11月23日 10時15分

世古詞一『マンガでよくわかる1on1大全』(かんき出版)

部下のやる気を引き出すために、上司はどんな声かけをすればいいのか。組織人事コンサルタントの世古詞一さんは「1on1の時間を効果的に使ってほしい。その際、『10点満点で今の自分は何点か』など、業務に関する感情を数値化する質問を織り交ぜるといい」という――。

※本稿は、世古詞一『マンガでよくわかる1on1大全』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■「ひとりで解決できる問題」と「解決できない問題」がある

1on1の場で話すテーマについて、1回の話し合いで終わるものもあれば、何度もじっくりと対話して取り組んでいくものもあります。その中でも私は、後者のテーマが1on1ならではのものだと考えます。なぜなら、1回の話し合いで完結する話、特に解決される「問題」については、現場でも話をしている事柄だからです。例えば、部下が解決するためのやり方を知らずに上司がアドバイスをして解決する類のことです。

このような問題を、 ハーバード・ケネディスクールのロナルド・ハイフェッツ上級講師はその著書『最難関のリーダーシップ』(英知出版)で、「技術的問題」と表現しました。技術的問題は今までの経験の活用、知識やスキルの習得で解決できるため、問題は自分の外にあります。

一方で、自分自身のものの見方や、周囲との関係性が変わらないと解決できない問題のことを「適応課題」と名づけました。たとえば、「将来キャリアを描くこと」や、「チームメンバーがモチベーション高く働くこと」など、自分の認知の仕方や、周囲との関係性が変化しないと新たな解が出てこないものです。

■1on1で「すぐに解決する話」をするのは損

このような「適応課題」は、1回話し合っても、すぐに変化が起こるものではないかもしれません。何度か対話を行い、自分自身の物事への捉え方を自覚し、他の様々な捉え方の可能性を見いだせるようになってはじめて、自ら変わろうという認識に至るものです。

1on1で特に扱いたいのはこの適応課題です。まずは、ものの見方や関係性という、目には見えない事柄について極力言語化していきます。そうすることで、お互いにやっとその課題を取り扱えるようになるのです。

1on1では、すぐに問題解決を急がないという理由もここにあります。現場で起こる問題については、部下は足りない情報を上司から得て解決するような技術的問題が多いのです。しかし、1on1でじっくり話すテーマ、たとえばチームや組織に対する不満や問題意識、個人の成長や将来に関すること、業務においてやろうと思ってもできていないことなどは、その人の考え方や思い込みの部分に焦点を当てないと、解決に向かわないことが多いのです。

このような一度で終わらないようなテーマは、1on1の時間に扱うことが最適です。逆に、いつもすぐに解決する話ばかりをしている場合、テーマを見直してみてください。

■相手の言葉を繰り返して想いを代弁する

では、このような適応課題のテーマについて、上司はどのように対話していけばよいでしょうか? ここで、すぐに「問題解決」を急ぐのではなく、部下の話をまず傾聴していく支援型の対応が大切になります。

傾聴の中でもアクティブ・リスニング(能動的傾聴)と呼ばれるものがあります。

相手の話をただ聞くのではなく、相手の話を反映して言葉で返していく聞き方です。もともとは、アメリカの臨床心理学者であるカール・ロジャーズが提唱した技法で、カウンセリングに用いられていました。その技法を元に、ビジネスで簡易的に活用できる形で2つのやり方をご紹介します。

① 繰り返し、反映、言い換え → 相手の話を整理する
② 気持ちや状態の反映 → 相手の状態に理解を示す

①相手の言葉を繰り返して②相手の心の中の想いを代弁していきます。つまり、相手の言わんとすることや相手の心の状態を、正確に描写して言葉で反映していくのです。「うんうん」「なるほど」だけではなく、「こういうことか。だとすると苦しいよね」というように能動的に相手の状態を返します。

上司側は部下の話を整理する中で気づきが生まれることもあります。そこに気づかずにすぐに解決に進もうとすると、上司も答えを見いだせずに苦しくなってしまい、話が「詰んで」しまいます。

このように、「頭ではわかっているけどそうできない」ような適応課題については、まずは相手の話を傾聴していくことが大切です。

■あいまいな「感覚」を点数化して考えを整理する

このように、支援型上司はまず、問題解決を急がずに傾聴を用いて相手の話や状態の理解に努めます。さらに、相手に考えを深掘りしてもらい、思考を整理していく便利な手法があります。それが「スケーリング(測ること)」と呼ばれるコーチングで活用される手法です。自分の「感覚」のような定性的で曖昧な事柄を、定量的に測定していきます。

たとえば、

「今の自分のモチベーションは10点満点中何点か?」
「理想の状態を100%としたとき、今の自分は何%くらい力を発揮できているか?」

といった質問です。自分の奥深いところにある考えや感覚を、通常私たちは自分で整理、把握できていません。それをまずは定量化することで、自分の中にある考えや想いを探索しやすくして、言葉にすることを容易にさせるのです。

出典=『マンガでよくわかる1on1大全』
出典=『マンガでよくわかる1on1大全』
出典=『マンガでよくわかる1on1大全』
出典=『マンガでよくわかる1on1大全』
出典=『マンガでよくわかる1on1大全』
出典=『マンガでよくわかる1on1大全』

■「充実感は10点満点で何点か」と尋ねてみる

これは、業務を通じて感じていることを考えていくときに非常に役立ちます。具体的には、業務を通じての「充実感」「満足感」「成長実感」「貢献感」といった感情です。これをスケーリングで聞いていきます。

上司「業務を通じての『充実感』って10点満点だと、今何点くらいに感じられていますか?」

出典=『マンガでよくわかる1on1大全』
出典=『マンガでよくわかる1on1大全』
出典=『マンガでよくわかる1on1大全』
出典=『マンガでよくわかる1on1大全』
出典=『マンガでよくわかる1on1大全』
出典=『マンガでよくわかる1on1大全』

このような問いを投げられることで、とりあえずの点数を出します。

部下から「最近は、正直3点くらいでしょうか」と返ってくれば、そこから、満たされている点、足りない点に思いを巡らせることで、自分の充実感を高めるヒントがつかめるかもしれません。

上司「足りない7点分はどんなことがあるんだろう?」

部下「やろうと思ってできてないことがたくさんありますね。たとえば……」

そんなふうに、自分にとって緊急性が低く放置していた重要な事柄が思い起こされて、実践していくきっかけになることもあります。また、そもそも自分にとっての充実感を得る基準が何なのかを考えるきっかけにもなります。

■1on1を「取り調べ」にしないためにも有効

同様に、「自分は業務で何が満足できていないのか?」「業務を通じて成長実感をどうやったら高められるのか?」「今の業務はチームや会社、お客様に貢献しているのだろうか?」といった感覚は、部下本人が正解を持っています。これらを整理して、やるべきことを明確にしていくことで、やりがいやモチベーションに影響を与えていくことが可能になるのです。

しかし、整理ばかりに焦点が当たると、話が仕分けされて、まるで取り調べを受けているような感覚になることもあります。ですから、ここに、先述のアクティブ・リスニングを組み合わせて、相手の言わんとすることや気持ちを丁寧に反映していくことにより、支援型コミュニケーションをスムーズに進めていくことができるのです。

1on1を行う上司のみなさんは、ぜひ、このアクティブ・リスニングと点数化を取り入れてみてください。

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世古 詞一(せこ・のりかず)
組織人事コンサルタント
早稲田大学政治経済学部卒。一般社団法人1on1コミュニケーション協会代表理事。 株式会社サーバントコーチ代表取締役。VOYAGE GROUP(現 株式会社CARTA HOLDINGS)の創業期より参画。2008年独立し、コーチ・コンサルタントとして様々な人の人生とキャリアの充実、目標実現をサポート。コーチング、エニアグラム、NLPなど、10以上の心理メソッドのマスタリー。著書に『シリコンバレー式 最強の育て方 人材マネジメントの新しい常識1on1ミーティング』(かんき出版)などがある。

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(組織人事コンサルタント 世古 詞一 漫画:英賀 千尋)

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