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子供に「ごめんなさい」を無理強いしてはいけない…親の必死のしつけが「ごめんなさいを言えない子」を増やす

プレジデントオンライン / 2023年11月16日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

「ごめんなさい」と謝れない子に、どんな声をかけるべきなのか。コロンビア大で博士号を取り、3児の母でもあるベッキー・ケネディ博士は「だからといって『ごめんなさい』と無理に言わせると、謝れない大人になってしまう恐れがある」という。ニューヨーク・タイムズのベストセラー第1位となった著書『GOOD INSIDE 子どもにとってよい子育て』(東洋館出版社)より一部を紹介する――。

■「いつもウソをつく娘」にどう対応すべきか

「うちの長女は、『ごめんなさい』って言わないんです。昨日は、妹のお気に入りのブランケットを隠して、大泣きさせました。自分のやったことを認めようとしないし、ごめんなさいとも言おうとしないので、わたしはかっとなってしまって。このまま意地悪な子に育ってしまったらどうしよう」

「息子はすっごく意地っ張りなんです。算数でつまずいていて、わたしは時間を割いて手伝っているのですが、教えようとすると無視して、そのうち感情を爆発させるんです。本当に腹が立ちます」

「娘はいつも嘘をつきます。たいていは、食べちゃだめと言われたお菓子を食べたのに食べていないとか、小さな嘘なんですが、最近、大きな嘘をついて。学校のサッカーチームから外されたことを、わたしたちに言わなかったんです。本当のことを言わなきゃだめだぞとか、嘘をつくのは悪いことだと言っても、何も変わらないんです」

さて、ここで何が起きているのでしょう。この三つの状況(あやまらない、意地を張る、嘘をつく)のすべての中に、わたしにはシャットダウンしている子どもが見えます。この子たちは、つらい現実を生きることに苦しんでいます。

妹のブランケットを隠してしまったという現実、算数が苦手だという現実、希望通りにならなかったという現実。どの状況でも、親の説明からは、子どもがそのことに向き合うのを避けようとして調整不能にふるまっていることがわかります。これは「自分を恥じる」気持ちの本質です。

■子供にとって「恥」は超危険信号

何をどう恥じるかは人によってちがいますから、まずは、定義を決めておきましょう。わたしの定義では、恥じるとは、「自分のこの部分は、誰にも認めてもらえない――誰も、この部分に触れたくないし、そんな自分と一緒にいたいと思わない」という感覚です。

これはとても強い感情で、自分を恥じているときは、他人との接触を避けようとします。隠れたり、距離をとったり、他人に近づくのではなく、離れていこうとするのです。そして、子どもの究極の恐怖を呼びさまします。アタッチメントが形成できないという考えです。「わたしは/ぼくは内側でもダメな子だ、価値がないし、愛してもらえないし、そばにいてもらえない……ひとりぼっちになってしまう」。

子どもの生存はアタッチメント(愛着)にかかっているため、自分を恥じる気持ちは、体にとって超危険信号です。見捨てられる可能性につながる感情や衝動や行動ほど、子どもにとって調整を失わせるものはありません。それは本当に、生存を脅かす、存在にかかわる危険なのです。

■フリーズ状態は子供の防御反応

こうしたことから、恥じる気持ちはアタッチメントの仕組みと連動する形で、子どもに対して、アタッチメントを得る上で邪魔になる部分を隠すように信号を送ります。恥じる感覚が耐えがたいのは、それがわたしたちの体に、苦痛だけれども重要な情報を突きつけるからです。いまの自分のままでいつづけると、必要な欲求を満たしてもらえず、代わりに、拒絶されるという情報です。

この背景を理解すれば、恥じる気持ちが防御メカニズムの一種として、子どもをその場に「フリーズ」させることが想像つくでしょう。この「フリーズ」状態は、ごめんなさいを言えない、助けを受けいれない、本当のことを言おうとしない態度として表れます。問題は、この反応の鈍い、固まった状態の子どもは、親を怒らせがちだということです。

なぜなら、親は子どもが自分を無視していると考えたり、子どもの行動を失礼な態度または無関心と誤解したりするからです。その結果、恥じる気持ちに対応するのではなく、子どもに怒鳴ったり、一人で部屋に行かせたりします。どのアプローチも、恥じる気持ちをエスカレートさせ、負の循環を繰り返させます。

では、どう介入すればよいのでしょうか。

■「ごめんなさい」と言わない子供にどう対応すべきか

子どもの恥じる気持ちを検知することは、親ならいつでも使えるようにしておきたい、必須スキルです。

子どもに問題が起きているとき、恥じる気持ちを放置すると状況はさらに炎上します。子どもの恥じる気持ちに気づき、どんな状況を恥じているのかを理解し、どんな形の行動として表れるかを理解することが「検知」です。そのあとで、恥じる気持ちを緩和し、子どもがふたたび安心と安全を感じられるようにするのです。まず、検知。次に、緩和です。

妹のブランケットを隠してしまったお姉ちゃんの話を思い出してみましょう。彼女は、妹が明らかに悲しんでいるのに、自分のやったことを認めず、ごめんなさいとも言わなかったんでしたね。あやまるのを拒否することは、恥じている典型的な例です。冷たく、思いやりがないように見えるかもしれませんが、実際には、「自分はダメな子だ」という気持ちに圧倒されて、フリーズしてしまっているのです。

あやまることができないのは、謝罪すれば、自分をひどいことをした人間と「みなす」ことになるからで、愛してもらえないという望ましくない感情に向き合わなくてはならないからです。あやまることは、必然的に、見捨てられる恐怖を直視することであり、その代わりにフリーズして、それ以上の不快感を避けているというわけです。

■「ごめんなさい」を無理やり言わせてはいけない

そう、これだけのことが、「ごめんなさい」と言わないという単純なことの中では起きています。子どもが「身動きがとれなくなっている」ように思えるとき、恥じる気持ちにさいなまれているのかもしれないと考えてみてください。

そうして、検知したら、大切なのは、ちょっと間を置くことです。子どもが恥じる気持ちに圧倒されているとき、わたしたちは本来の目標である、謝罪の言葉を引き出すこと、感謝させること、正直に話させることを脇に置き、緩和に集中しなくてはなりません。

先ほどの、ブランケットを隠してしまったお姉ちゃんにこう言っても、緩和はされません。「『ごめんなさい』は? なんで妹にもっとやさしくできないの?」。このとき、お姉ちゃんは「ダメな子」の役割を押しつけられ、自分はダメな子だという自己認識を植えつけられ、さらに恥じる気持ちが強まりフリーズしてしまいます。

緩和を目的とした声かけは、たとえばこうです。

■「謝るのは難しいよね」と子供に寄り添う

「うーん……『ごめんね』って言葉がなかなか見つからないんだね。ママ/パパにも、そういうときがあるよ。あなたが見つけられるまでのあいだ、ママ/パパが代わりに言ってあげるね」

そして、親であるあなたが、妹のところへ行き、「ブランケットを取ってごめんね。いやだったよね。どうしたらいい気分になれる?」と言います。それから、ここが重要なところなのですが、責めるような目つきはせず、説教じみた言い方もせず、「ほら、簡単でしょ!」というそぶりもしないで、先に進みます。ただ伝わったと信じて――そう、ただ信じて――この話はおしまいにしましょう。

その日、しばらくたって、子どもがいつものごきげんな様子に戻っていたら、こう言うといいでしょう。「あやまるのは難しいよね。ママ/パパだってなかなか言えないときがあるよ。大人なのに!」。または、ぬいぐるみを使って、どちらかのぬいぐるみがいやな思いをした状況を再現し、あやまることの難しさを表現してもいいでしょう。それに対して子どもが何か言ってきてくれたら、耳を傾けましょう。

子供の手を包み込む母親
写真=iStock.com/Cunaplus_M.Faba
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Cunaplus_M.Faba

ただし、こうした振り返りも学びも成長も、恥じる気持ちがまだ存在しているときは不可能だということに注意してください。子どもが恥じる気持ちに飲みこまれているときには、親としての意図はいったん脇に置き、「公平」だと感じられることは一時停止しなければなりません。

行動を修正するという目標から、子どもが自分は内側ではよい子だと感じられるようにするという目標にシフトしなければなりません。そうすることで、子どもの「フリーズを解く」ことができます。このステップを飛ばすことはできません。体が、そういうふうにできているからです。

■「謝れない大人に育つ」は思い過ごし

あやまることについての例を読んで、「甘すぎる」と感じましたか? わたしも、以前はそう思っていました。子どもに「ごめんね」と言わせることなく、親が代わりにそう言うことで、子どもがあやまらないことを許してしまっているのではないかと。そうやって心配するとき、多くの親が考えます。「いつまでも親が代わりにあやまってくれると思っていたら困る。自分であやまれるようになってもらわなきゃ!」。

ベッキー・ケネディ『GOOD INSIDE』(東洋館出版社)
ベッキー・ケネディ『GOOD INSIDE 子どもにとってよい子育て』(東洋館出版社)

さて、ここで深呼吸をして、子どもの(そして親の)内側にあるよい部分についてもう一度考えてみましょう。思い出してください。子どもは、内側ではよい子です。やさしい子にするために、訓練する必要はありません。やさしさの邪魔をしている壁を乗り越える手伝いをすればいいだけです。

その壁は、表面的には意地悪な行動のように見えますが、実際には、子どもを守るために出現しています。恥じる気持ちを緩和すること(「〜が見つからないんだね」)や、無理強いしないこと(代わりにあやまる)をわたしが勧めるのは、それが子どもの「気分をよくする」ことだからではありません。わたしがこうするように勧めるのは、子どもがやがて、自分のしたことはまちがっていたと反省し、自分からあやまる可能性がもっとも高くなるからです。

■やがて恥じる気持ちに自分で対応できるようになる

子どもが経験する恥じる気持ちのなかには、外的要因によってもたらされるものがあります。この世界では、子どもは自分ではどうすることもできない特性や環境によって評価されるからです。クラスメイトから、体型や、経済格差のことで恥をかかされることは、現代の子どもが直面し得るつらい現実です。

ただし、よいニュースもあります。あなたが親として介入できるときに緩和しつながりを増やしておけば、子どもは親の影響力の外にある世界で恥じる気持ちに駆られても、対処できるようになります。なぜなら、恥をかかされる原因が何であれ、それを減らすのに最適な方法はいつも同じだからです。自分が内側ではよい人間だと知ること、愛されるにふさわしい人間だと知ること、そして価値ある人間だと知ることです。

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ベッキー・ケネディ 臨床心理学博士(クリニカルサイコロジスト)
3児の母。デューク大学で心理学を専攻し、コロンビア大学で臨床心理学の博士号を取得。育児指導を中心としたカウンセリング業を個人で営む。新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウン時のインスタグラム投稿が話題を呼び、200人だったフォロワーが急増(2023年9月現在197万フォロワー)。『タイム』誌に「The Millennial Parenting Whisperer(ミレニアル世代の子育て救世主)」と評されるほど話題に。子育てプラットフォーム「Good Inside」を立ち上げ、書籍、ポッドキャスト、ワークショップなど多方面で活動している。ニューヨーク在住。

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(臨床心理学博士(クリニカルサイコロジスト) ベッキー・ケネディ)

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