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なぜ子供はすぐにバレるウソをつくのか…全米で人気の女性心理学者が教える「子供のウソ」の本当の理由

プレジデントオンライン / 2023年11月17日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

なぜ子供はすぐにバレてしまうウソをつくのか。コロンビア大で博士号を取り、3児の母でもあるベッキー・ケネディ博士は「親から愛される存在でありたいという願望や、自立したいという主張が、ウソという形で出てきている」という。ニューヨーク・タイムズのベストセラー第1位となった著書『GOOD INSIDE 子どもにとってよい子育て』(東洋館出版社)より一部を紹介する――。

■本当のことを白状させることに意味はない

子どもが嘘をつくとき、わたしたちはたいてい、反抗的だとか、ずるがしこいといった「悪い子になってしまった」解釈に飛びついてしまいます。でも、それでは大切なことを見逃がしてしまいます。子どもと敵対することになり、親子の権力争いに陥ってしまいます。この争いでは、誰も勝者にはなりません。

実際には、嘘をつくことは、反抗やずるがしこさとはまったく関係がありません。この本で取り上げているほかの行動と同様に、嘘をつくことは、子どもの基本的な欲求や、アタッチメントの意識と関係していて、誰かを思い通りに動かそうとしたり、だまそうとしたりしているわけではないことがほとんどです。

だからといって、嘘をついた子どもを見逃してやるべきだと言っているのではありません。わたしのアプローチは、嘘をつかせている中心的な動機は何かを探り、それに正面から対処して、本当のことを言いやすい環境を作ります。

理解できない行動を変えることはできません。また、罰、脅し、怒りは、理解や変化を促す環境とは相いれません。本当のことの告白を無理強いしても意味がないのです。

■子供が親にウソをつく理由

子どもが嘘をつく理由はいくつかあります。まず、大人とはちがって、子どもはまだ空想と現実の境目があいまいです。子どもはしょっちゅうごっこ遊びをしますが、そこでは現実の法則にしばられることなく、さまざまな世界に入りこみ、さまざまなキャラクターになりきります。たとえば、あなたが子どもに、ランプを割ったかどうかきいたとします。

子どもがランプにつまずいて倒したことを、あなたがよく知っていたとしても、子どもは「ううん、わたしは自分の部屋で遊んでいたよ」と答えます。このとき、子どもは罪悪感に立ち向かっているのかもしれないし、親をがっかりさせたり怒らせたりしたくないという思いから、空想の世界に逃げこんでいるのかもしれません。

ここで、2通りの見方ができます。一つは、子どもが「真実を伝えるのを避けている」とする見方。もう一つは、真実を伝えるのがとても難しくて怖いから、空想の世界に入っているという見方です。そこは自分で制御でき、自分にとってより心地よい結末を勝手に決められる世界です。

■「自分はよい子どもである」という思いがウソを呼ぶ

子どもの願い(制御を取り戻して結末を変えたい)という枠組みで嘘を見てみると、親にどのような影響を与えるかではなく、子どもが安心を感じて、自分が内側ではよい子どもだと思いたいというサインとして嘘を理解できるようになります。

この願いこそ、常に子どもを突き動かしている欲求です。子どもは、自分は親から愛すべき価値のある存在だと思われていないと考えると、自分がまだよい存在である空想の世界に逃げこみます。

親にランプを割ったかどうかきかれたとき、おそらく、子どもの頭に最初に浮かんだのは、こんなことでしょう。「ランプが割れなければよかった。ランプのそばで遊ばなければよかった。自分の部屋で遊んでいればよかった」。これらの願いが、「わたしは自分の部屋で遊んでいたよ」という言葉として表面に浮上します。

この言葉を「嘘」ととらえて、「嘘をつかないで!」と反応すると、表面下で起きている大切なことを見逃すことになります。

■ウソは子供にとって自己防衛の一種

子どもは、真実を言うことが親とのアタッチメントを脅かすと思ったときにも、嘘をつきます。アタッチメントとは、親密さのシステムです。文字通り、養育者の近くにいることであり、養育者が自分の近くにいたいと思っていると感じることです。子どもは、このことをふまえて、常に親との関係性をモニタリングしています。そして、こう考えます。

「これからママ/パパに言おうとしていることは、ママ/パパをわたしから遠ざける? それとも、近くにいてつながっていられるようにする?」。もし、親が子どもの行動を「悪い子になってしまった(=内側も悪い子)」というレンズを通して解釈しつづけると、子どもは親が自分を遠ざけると予想し、毎回嘘をつくでしょう。

公園のベンチに1人で座る少年
写真=iStock.com/BrianAJackson
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BrianAJackson

結局のところ、人間の体は、捨てられることから自分を守るようにできています。つまり、悪い子だと思われること(「いまはあなたと話したくない、部屋に行きなさい!」とか「親に面と向かって嘘をつくなんて、おかしいよ」)は、子どもにとって最大の脅威です。

わたしたちが嘘だと思い、嘘だとラベルを貼っている行為は、往々にして、子どもの体が自分を守ろうとしている行為であり、人を「思い通りに動かそう」とするどころか、自己防衛の一種にすぎないのです。

■子供も親から独立した人間でありたい

最後に、もう一つ理解しておく価値のある、子どもが嘘をつく三つ目の理由も解説しておきましょう。それは、自立性を主張するためです。

わたしたちは、子どもであれ大人であれ、自分の位置を把握し、自分が何者かを知り、自分が独立して存在できると感じたいという人間としての基本的な欲求を持っています。だからわたしたちは、誰かに支配されていると感じることをとてもきらいます。誰かに自分が独立した人間であることを否定されているような気がするからです。

このような状況に、人はさまざまなレベルで抵抗し、人生を思い通りにできているという感覚をほんのすこしでも得るために、自分に不利になるような方法をとることもあります。子どもは、どんな年齢であっても、多少は親から独立した時間や空間を持ち、自立心と自主性を感じることを必要としています。

一部の子どもにとって、嘘をつくことは、この人間として基本的な欲求を満たすために欠かせないツールになっています。お菓子を制限されて育った子どもがクッキーを親に内緒で食べるとき、その子は自分が一人の独立した人間であることを確信します。勉強のプレッシャーをたくさんかけられて育った思春期の子どもが、試験前に勉強を放棄するとき、その子どもは自分が親とはちがう独立した人間であることを確信します。

■子供に「いろんなことを許容してくれる安全な大人」だと思わせる

ですから、嘘をつくときには(「クッキーなんて食べてない!」とか「もう勉強したよ!」)、人生において、自意識と自立の感覚を持てる部分をなんとか維持しようとしているのです。もちろん、こうした状況で、親はさらに支配を強めようとしたくなりますが、それでは嘘をつく動機を強めるサイクルになるだけです。

ここでぜひ心に留めてほしいことは、サイクルは、「ネガティブ」なサイクルであっても、その成り立ちさえわかれば、変化させられるということです。「親の支配→子どもの嘘」というサイクルを断ち切るには、手始めに、このパターンについて子どもとつながる必要があります。親子とも落ち着いているときに、子どもにこんなふうに声をかけます。

「ねえ、あなたにもっと自立してもらおうと思うんだけど、どうかな? 子どものうちは、思い通りになることがほとんどなくて、つらいよね。何から始めようか。もっと自分で決めたいと思っていることは何?」

子どもの返事を聞いて、そこからスタートしましょう。

具体的な対応策に移る前に、もう一度、重要なことをお伝えしておきたいと思います。なぜなら、親は一つ一つの嘘を「修正する」または「指摘する」ことにこだわりがちだからです。

わたしのアプローチは、いま嘘をついたと「告白」させることではなく、将来本当のことを言えるようにすることを目的にしています。本書で紹介している対応策を実行しても、子どもが「いまのは嘘です!」と言ってくれるようにはならないでしょう。それは目標ではありません。

目標は、あなたの家庭環境を変えて、子どもがあなたのことを、さまざまな経験を許容してくれる安全な大人だとみなすようにすることです。そのためには、嘘をつかれたとき、深呼吸をしてプライドを飲みこまなければいけません。その場かぎりの告白を要求するのではなく、長期的な、より効果の高い目標に集中するためです。それだけの価値はあるとお約束します。

■子供のウソを願いだとみなす

嘘を願いとみなすことで、わたしたちは、自分の子どもを「内側ではよい子」として見つづけることができます。このことは、嘘に対応する上で非常に重要です。願いを前提にした表現で、子どもの嘘に返答することで、「真実を話す」と「嘘をつく」以外の選択肢が生まれ、会話の方向性を変えることができます。二項対立ではなく、そのあいだのグレーゾーンを理解し、言葉にすることにより、その瞬間の緊張をほぐし、新しい方法で子どもとつながることができます。

子どもが「わたしもフロリダに行ったことがある!」とありもしないことを言い出したら、あなたはこう言うことができるでしょう。

「うーん……フロリダに旅行したかったなあと思っているんだね。天気がよくて、あったかそうだもんね。行ったら何をしようか?」

子どもが「妹のタワーを倒してないよ、勝手に倒れたんだ!」と言ったら、あなたはこう言うことができるでしょう。

「タワーが倒れなかったらよかったと思っているんだね……」

または

「ママ/パパも、こんなことしなければよかったと思うことがあるよ。そういうときは、とてもつらいよね」

嘘を願いとみなすことで、わたしたちは子どもと敵同士ではなく、同じチームにいると感じられるようになります。こうして視点をシフトさせることにより、変化を起こすことができ、次に同じようなことがあったら、子どもは本当のことを言いたくなるかもしれません。

■ただうなずき、子供の行動の意味を振り返る

うちの子どもたちに対して(もちろん、ときどき嘘をつきます!)も、よく使う方法です。5歳の息子が相手のときは、たとえばこんな感じです。

息子「ママ、パズルを壊してソファの下にピースを隠したのは、ぼくじゃないよ! ぼくはやってない!」

わたし「ふうん……」

ほかには何も言わずに、ゆっくりうなずく。

息子「やってないもん!」

なぜ、わたしが何も言わないのかって? なぜなら、息子は明らかに自己防衛モードに入ってしまっていて、罪悪感、恥、またはその全部を抱いていて、そのせいでシャットダウンしているからです。

こうなってしまったら、言い合ってもむだだということをわかっていますし、権力争いには持ちこみたくないし、あとでよい変化を起こす余地を残すためには恥を軽減しなくてはならないことを知っているからです。数時間後、わたしは息子に、「悪い」行動のいちばん寛大な解釈(MGI)を伝えて、正直になるきっかけを与えます。

「ねえ、さっきママがお兄ちゃんと作っていたパズルのことだけど……リビングに来て、パズルを見たとき……んー……つい、さわりたくなったんだよね……わかるよ……」

正直に申し上げますと、この段階でも、息子はこう言うでしょう。

「やってない、やってない、やってない!」

そうしたら、わたしは何もせず次に進みます。でも同時に、自分自身で、さっきの出来事を振り返ってみます。この子の嘘の、本当の意味は何だったのだろうか。嘘を通して、もっと自主性が欲しいと「伝えて」いたのだろうか。上の子と一緒に遊んでいたからやきもちをやいたのだろうか。それとも、いい子でいることのプレッシャーで息苦しく感じていたのだろうか。

行動の意味を振り返るとき、わたしたちは、ほかの介入方法の基礎を見つけることができます。

■「宿題をした」と嘘をつかれたら

子どもが嘘を絶対に認めようとしないときは、本当のことを話していたとしたら親としてどんなふうに反応するか、仮定の話をするのが効果的です。

たとえば、娘の学校から電話があって、先週は作文の宿題をしてこなかったと報告を受けたとしましょう。帰宅してきいてみると、娘は何度も、「宿題はやったもん! やったってば! この話はしたくない!」と言ってゆずりません。

まず、すこし立ち止まります。そして、すこしでも話を聞いてもらえそうな雰囲気があれば、こう声をかけましょう。

「うん……わかったよ……あのね、ママ/パパが言いたかったのは、うちの子どもが何日間か宿題をしなかったとしたら、心から理解しようとするだろうなってことなの。なぜって、うちの子が宿題をしないってことは、何か必ず理由があるはずだから。ママ/パパも、7歳のとき、何日間も作文の宿題をしなかったことがあってね。作文がすごく難しく思えて、やる気になれなかったんだ。とにかく、もし宿題をしなかったんだとしたら、一緒に話し合うからね。怒ったりしないよ……」

そして、涼しい顔で待ちます。「で、ほんとは宿題さぼったんでしょ?」と言ったりはせず、ただ次に進みます。子どもがちゃんと受けとってくれたと信じてください。もちろん、もっと時間を置いてから、こう言うこともできるでしょう。

「ねえ、作文って難しいよね。少なくとも、ママ/パパは苦手だったな。宿題をしなくったって、あなたはいい子だよ。大好きだよ」

話に耳を傾けてくれている感じがあれば、さらにこう付け加えるとよいでしょう。

「もし、すごく難しくて、手をつけられないと思うことがあったら、どうしたらいいかな」

■正直になるために何が必要かを聞く

自分の考えを多少なりとも言語化できる年頃になってからの方法ではありますが、嘘をつくことで困っているなら、嘘とはまったく関係のないときに、正直になるために何が必要か、真剣に話し合ってみましょう。

ベッキー・ケネディ『GOOD INSIDE』(東洋館出版社)
ベッキー・ケネディ『GOOD INSIDE 子どもにとってよい子育て』(東洋館出版社)

「ねえ……ちょっと話したいことがあるんだけど、いいかな。怒ってるんじゃないよ」

このように話しはじめて、つづけてみましょう。

「親に本当のことを話すのって難しいだろうなって考えていたの。あなたを責めているわけじゃなくて、あなたが正直になるためには、もっとママ/パパにできることがあるんじゃないかって。本当のことを言うのが怖いとか、本当のことを言ったら面倒なことになるとか思ってるかな。ママ/パパがもっと変えたほうがいいことは何か、考えているんだ。なぜかというと、よくないことでも、あなたが本当のことを話せるような家族でいたいから」

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ベッキー・ケネディ 臨床心理学博士(クリニカルサイコロジスト)
3児の母。デューク大学で心理学を専攻し、コロンビア大学で臨床心理学の博士号を取得。育児指導を中心としたカウンセリング業を個人で営む。新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウン時のインスタグラム投稿が話題を呼び、200人だったフォロワーが急増(2023年9月現在197万フォロワー)。『タイム』誌に「The Millennial Parenting Whisperer(ミレニアル世代の子育て救世主)」と評されるほど話題に。子育てプラットフォーム「Good Inside」を立ち上げ、書籍、ポッドキャスト、ワークショップなど多方面で活動している。ニューヨーク在住。

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(臨床心理学博士(クリニカルサイコロジスト) ベッキー・ケネディ)

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