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「お兄ちゃんだから我慢しなさい」は絶対言ってはいけない…自分で問題解決ができる子を育てる"親の声がけ"

プレジデントオンライン / 2023年11月19日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Zabavna

きょうだい喧嘩が起きた時、親は子供に何と声を掛ければいいのか。コロンビア大で博士号を取り、3児の母でもあるベッキー・ケネディ博士は「『お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから我慢しなさい』のようにどちらかを悪者扱いするようなことは言わないほうがいい」という。ニューヨーク・タイムズのベストセラー第1位となった著書『GOOD INSIDE 子どもにとってよい子育て』(東洋館出版社)より一部を紹介する――。

■きょうだいげんかは「子供の不安」の表れ

なぜきょうだいは、いつもけんかばかりしているのでしょうか。エレイン・マズリッシュとアデル・フェイバの共著で、わたしが愛読している『憎しみの残らないきょうだいゲンカの対処法:子どもを育てる心理学』(邦訳・騎虎書房)に、こんな例えがあります。

あなたのパートナーが、知らない人を家に連れて来て、これからは3人で仲よく暮らそうと言ったら、どう思いますか? きょうだいが増えた子どもは、それに近い感情を抱くそうです。

年長の子どもの場合、きょうだいができると、アタッチメント(愛着)の欲求と、捨てられることへの恐怖が活性化されます。アタッチメントのレンズを通して見たとき、子どもは常に、自分が安全かどうかを見極めようとしています。

「ぼくの欲求は満たされる? ぼくは見てもらっていて、ありのままの自分を愛してもらっていて、自分だけの特徴や興味や好きなことや自分らしさを受けいれてもらっている? ぼくは家族から、内側はよい子どもとして見られている?」

きょうだいとけんかするとき、子どもは親に、自分が不安なこと、家族の中で安心を感じたいという基本的欲求をきょうだいが脅かしていると感じていることを「伝えて」いるのです。

きょうだいがいる以上、親の関心を分け合うことは避けられません。分け合う難しさは消えませんが、「対処しやすくする」ことはできます。そのためには、子どもがきょうだいについてさまざまな感情を抱くことを、親が受けいれる必要があります。

■きょうだいの関係は思っている以上に複雑

多くの親は、よくある、しかし非現実的な言説にしがみつこうとします。「きょうだい仲よく!」とか、「きょうだいがいないと寂しいでしょう」などなど。ここでわたしは、2人以上の子どもを持つのはお勧めしないだとか、きょうだいは敵対するのがふつうだとか、お互いに意地悪するはずだと言っているのではありません。

わたしが言おうとしているのは、きょうだいの関係は複雑で、その複雑さをきちんと受けいれることで、わたしたちは子どもがさまざまな感情に耐えられるよう準備させることができ、子どもは感情をもっとうまく調整できるようになるということです。

それができるようになれば、感情が行動(悪口を言ったり、たたいたり、けなしたり)という形であふれることはなくなります。これこそ、わたしたちのゴールです。

■長子は「親を独り占めできる」と思い込んでいる

きょうだいの関係を考える上で、もう一つ考慮に入れるべき重要なポイントがあります。生まれた順番です。何番目の子どもかということは、それだけで1冊本が書けるくらい大きなテーマですが、ここでは1人目か否かという点についてだけ説明します。

長子は、自分が唯一の子どもであることに慣れています。親の注目を独り占めできる状態で、さまざまな回路が設定されています。ですから、新しいきょうだいを迎えるということは、世界の基礎が完全に揺るがされるのと同じことです。もちろん、やがて慣れていくことはできますが、わたしたち親は、子どもがとても大きな変化を経験していることを認識しなければなりません。

これまで、自分が家族の中で唯一の子どもだという前提で、世界と向き合ってきたのに、それが全部覆されてしまうのです。長子は、新しいきょうだいがやってきたとき、自己中心的に見えることが多くありますが、「妹なんてきらいだ、病院に返してきてよ!」という言葉や、「ぼくを見て!」という願いの裏には、回路の大規模な変化を経験している子どもがいます。

■次子は「自分ができないことができる兄/姉」に不安を覚える

2人目以降は、逆の設定を経験します。自分が(まだ)できないことができる兄/姉が常にいて、時間と注目を奪い合っている状態で回路が設定されます。この設定は、ストレスのたまることです。

ブロックでタワーを作ろうとすれば、いつも年上のきょうだいが自分よりうまくやってのけてしまうし、庭を走ろうとすれば、いつもきょうだいのほうが速く走れるし、文字を読む練習をしていると、いつも簡単に読めてしまうきょうだいがそばにいます。

このことは、修正すべき問題ではありません。ただ、そういう力学が存在することを理解する必要があるだけです。もちろん、お兄ちゃんやお姉ちゃんよりすらすら字が読めたり、運動神経が抜群でスポーツが得意だったりする子もいて、こうした状況には、また別の難しさがあります。ですが、生まれた順番の力学を頭に入れておくことは、自分の子どもにどのような不安が引き起こされているか、そして行動を通してどんな満たされない欲求を示しているかについて考える上で、非常に重要なことです。

■きょうだいを「公平」に扱ってはいけない

また、きょうだいについては、多くの家庭が、「公平」であることを目標にしているのを目にします。それによって問題を減らそうとしているわけですが、実際には、公平に物事を行うことは、問題を起こす最大の要因です。公平さを追求すればするほど、わたしたちは競争の機会を作りだします。

物事を公平に行おうとすることは、子どもの警戒心を刺激することだからです。それは、こう言っているようなものです。「きょうだいをしっかり見張っていなさい。きょうだいと同じものを自分も持っているか、いつも気をつけていなさい」

そして、もう一つ、家庭で「公平」を目標にしないほうがよい長期的な理由があります。子どもは、自分の欲求を知るにあたり、外側ではなく内側に目を向けるべきです。大人になったときに、「友達は何を持っている? どんな仕事をして、どんな家に住んで、どんな車に乗っている? 同じものを持たなきゃ」とは思ってほしくないからです。

■子供の内心を言語化し「個人の欲求」に目を向けさせる

公平さから抜け出すための方法をお教えしましょう。子どもが、「こんなの不公平だ!」と叫んだら、内側に目を向けさせてみてください。無理矢理ではなく、お手本を示します。同じものを探して張り合おうとするのではなく(「今度新しい靴を買ってあげるから!」)、子どもの内側で起きていることを言語化します。

「お兄ちゃんだけ新しい靴を持っているのはつらいね。あなたも新しいのが欲しいって? いまはだめだよ。この家では、子どもは自分にとって必要なものを買ってもらうの。あなたの靴は、まだまだきれいでしょう。怒ってもいいよ。気持ちはわかるから」

または、あなたの子どもがこう叫んだとします。「ずるいよ! ぼくがサッカーの練習に行っているあいだに、妹はアイスクリームを食べに連れていってもらったなんて! 明日はぼくを連れていって! ぼくだけ! 絶対だよ!」。ここで、「公平志向」の考え方をしたなら、あなたはこう言うことになるでしょう。「わかった、明日アイスクリームを食べに行こうね」。

すると、子どもは、自分の欲求を決めるにあたり、他人(ここではきょうだい)を参考にするようになります。そうではなく、「個人の欲求」に目を向けさせる対応の例をご紹介しましょう。

親「ママ/パパとアイスを食べに行きたかったの?」

子「うん、今度連れていって!」

親「わかった、じゃあ明日のPNP タイム(註)は、アイスを食べに行くのに使いたいってことね?」

(編註)PNP(プレイ・ノー・フォン)タイム:著者が提唱する、スマートフォンを使わないで子供と遊ぶ時間。

子どもの答えが、「うん」であればそのようにしますし、「どうしようかな」であれば「もちろん。考えてみて。それから、何があなたにとっていちばんいいか教えてね」と、自分の欲求を考えることを促します。

ソフトクリームを食べる親子
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yamasan

■親に感情をぶつけさせて発散させる

子どもは、きょうだいに対して感じていることを、親には正直に話してもいいのだと知ると、その感情をきょうだいにぶつけることが大幅に少なくなります。ですから、こう子どもに声をかけるようにしてみてください。

「お姉ちゃんがいるって大変だよね」
「弟ができて、いろんなことを感じていると思うけど、それでいいんだよ――うれしくて楽しいこともあるし、悲しかったり腹が立ったりすることもあるよね」

子どもが大きくなるにつれ、もっと直接的な言葉が役に立つようになるでしょう。

「今日はこれから、お姉ちゃんの体操の試合を見に行くよ。うん、お姉ちゃんばっかり注目されるのは、ちょっといやな気分だよね。そう思っていても、あなたがよい子であることにかわりはないよ」

思い出してください。わたしたちの感情はある意味で、物理的な力のようでもあり、その感情を持たないようにしようとすると、行動となって体の外側に飛びだしていきます。うらやましいと思ってもいいんだよと子どもに言ってやることで、嫉妬の感情が実際に生じたときに、問題を解決しやすくなります。

うらやましいと思うことを許さないと(「お姉ちゃんのことをそんなふうに言わないの!」)、子どもは感情に対処するスキルを身につけられなくなり、嫉妬が悪口(「お姉ちゃんの体操がいちばん下手だね!」)や行動(静かに観戦していなければならないときに騒ぐ、どこかへ走っていったり大声で叫んだりする)として外に出てくる可能性が高くなります。

スマートフォンを見ている4人家族
写真=iStock.com/miya227
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

■きょうだいをけなすことは絶対に許さない

発散させるにあたって、一つだけ譲れないことがあります。わたしは、子どもがきょうだいをけなしたり、悪口を言ったりすることは、絶対に許さない方針で対処することにしています。

わたしにとって、けなすことや悪口は、家庭の中でもきっちり線を引くべきことだと考えているからです。悪口や中傷は、無邪気なからかいではありません。それは、悪口を言われた子どもの自信を損なう行為であり、親が介入して止めないと、そのリスクはさらに高まります。だからこそ、きょうだいに対する怒りや嫉妬について話すのは、親と二人きりのときだけということを、子どもにきちんと理解させておくよう、お勧めしています。

そうすれば、子どもは気持ちを吐き出すための場所を持つことができます。

二人きりのときに、こう声をかけてもよいでしょう。

「きょうだいがいるって大変だよね。お姉ちゃんのことで、たくさん言いたいことがあるって、わかっているよ。ママ/パパと二人きりのときは、好きなだけ話していいからね。あなたの考えを変えようとはしないし、そんなふうに思っちゃだめとも言わない。それから……もう一つ、大切なことは、お姉ちゃんに直接、意地悪な言葉を言ったり、けなしたり、からかったりしちゃだめってこと。ママ/パパのいちばん大事な仕事は、家族のみんなに安全でいてもらうこと。お互いにかける言葉も、安全の一部だからね」

■どちらかを「悪者」扱いしていけない

子どもたちには、誰が正しいか/まちがっているか、誰が1番にやるか/2番にやるかを親に決めてもらうのではなく、きょうだい同士で問題を解決できるようになってほしいものです。そのためには、興奮したら、まず落ち着くことを教えなければなりません。調整できているときの子どもは、自然に問題解決できます。

子どもたちがけんかしていたり、興奮したりしていても、体に関して境界線を越える行動(たたく、蹴る)や言葉(脅し、悪口)がない場合、わたしたちがすべきことは、状況を落ち着かせることであって、問題を解決することではありません。子どもたちに調整を強要することなく、あなた自身が調整のお手本を見せてください(「深呼吸して!」ではなく、「深呼吸しなきゃ!」)。

そして、子どもたちそれぞれに、自分の考えを言葉で語らせてください。このとき、どちらかの味方をしたり、どちらかを「悪い子」または「よい子」扱いしたりしないようにしましょう。たとえば、子どもたちが、誰が消防車のおもちゃで遊ぶかでもめているとします。消防車はみんなのお気に入りで、子どもたちは2人とも、叫んで興奮しています。

■親は子供の「調整役」に徹する

ここで、問題を解決するなら、「ジェシーはまだ2歳なんだから、先に使わせてあげなさいよ!」とか、「ミカが先、ジェシーはあとにしなさい」と言うことになるでしょう。

ベッキー・ケネディ『GOOD INSIDE 子どもにとってよい子育て』(東洋館出版社)
ベッキー・ケネディ『GOOD INSIDE 子どもにとってよい子育て』(東洋館出版社)

そうではなく、落ち着かせるには、「ママ/パパにちょっとだけその消防車を貸して――はい、いまはママ/パパが持っているね。ふう、深呼吸しなきゃ」と言って、何度か深く息をして、子どもたちがあなたの調整を「借りる」ことができるようにします。それから、「うーん、子どもは2人いるのに、消防車は1台しかない! 困ったね。どうしようか? 問題を解決してくれる人はいないかな……」と言ってしばらく間を置きます。

このとき、あなたは子どもが問題解決に至るプロセスを学ぶ手伝いをしているのです。親が子どものために何でも解決してやると、子どもは親なしでは問題を解決できなくなります。そうなると、みんなにとってストレスがたまる状況になってしまうでしょう。

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ベッキー・ケネディ 臨床心理学博士(クリニカルサイコロジスト)
3児の母。デューク大学で心理学を専攻し、コロンビア大学で臨床心理学の博士号を取得。育児指導を中心としたカウンセリング業を個人で営む。新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウン時のインスタグラム投稿が話題を呼び、200人だったフォロワーが急増(2023年9月現在197万フォロワー)。『タイム』誌に「The Millennial Parenting Whisperer(ミレニアル世代の子育て救世主)」と評されるほど話題に。子育てプラットフォーム「Good Inside」を立ち上げ、書籍、ポッドキャスト、ワークショップなど多方面で活動している。ニューヨーク在住。

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(臨床心理学博士(クリニカルサイコロジスト) ベッキー・ケネディ)

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