新NISAで資産を増やしたい人は必見…パックン&エミン考案「朝起きてから夜寝るまでの儲かる発想法」
プレジデントオンライン / 2023年11月23日 8時15分
■日本人の株式保有比率は20~30%に上がる
――新しいNISAが2024年1月からスタートします。どう活用すればいいですか。
【パトリック・ハーラン(以下パックン)】新しいNISAは評価できますね。
【エミン・ユルマズ(以下エミン)】私も評価していますよ。岸田政権では批判されている政策もあるけど、新しいNISAに関しては評価していいんじゃないかな。逆に、「こういう発想がよく出てきたな」と思う。岸田さんは、海外の投資家が日本に来やすくて、日本人もより資産運用しやすい国にしたいと言っているでしょ。だから新しいNISAは、国策として「みんな投資しなさい」と言っているようなものだよね。
日本の個人資産は2100兆円(2023年6月末)を超えているけど、株式の運用されているのは約13%。これから20%、30%に増えていくでしょう。それを増やす1つの起爆剤が新しいNISA制度。証券会社の取引手数料は無料化が進んでいるから、さまざまな面で追い風が吹いているよね。
【パックン】ただ、NISAは非累進課税制度でしょ。投資できるお金に余裕がある人のみが恩恵を受けられる。キャピタルゲイン(売買差益に対する)課税はそもそも税率が低いし、頑張って労働して稼ぐ労働収入に比べて、非労働収入が税制で恩恵を受けるのはおかしいと思う。
投資を促進するためには、この悪は少し許すしかないなと思うけど。日本人にもお金がお金を稼いでくれるという概念に慣れてほしい。西洋では古くから当たり前になっているからね。
その代わり低所得者に対する他のサービス、手当や福祉制度を強化してほしいと思いますね。
![【図表】家計の金融資産の内訳(2023年6月末)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/d/1200wm/img_ad82921e410170feaa9a6a44333d0c8d309484.jpg)
■キャピタルゲイン課税は下げるべきか
【エミン】私はキャピタルゲイン課税をゼロにしてほしいと思うよ。シンガポールみたいに。
【パックン】私は個人の税金を全部なくしてほしい(笑)けど、一生懸命働いて30%の所得税を支払っている人がいる一方で、キャピタルゲインが20%はちょっと納得いかないなあ。
【エミン】リスクをとって投資しているわけだから。20%でも高いんじゃないかな。資産規模で税率を変える方法はあると思うけど。
【パックン】その方法はあるかも。
【エミン】日本は米国のように金融資産が上位5%、1%の手に集まっているわけではないからね。
【パックン】米国は一部の人に集中しすぎているね。
【エミン】だから米国はキャピタルゲイン課税を重くしたほうがいいけど、日本は投資している人が少ないから、投資を促進する税制が必要。米国の状況と日本はまったく違う。米国には少し社会主義が必要で、日本には少し資本主義が必要じゃないかな。
■株式投資は難しくない。日常生活の延長線上でできる
【パックン】そうかもしれない。新しいNISAを評価した上でお勧めの投資法とか、お金の育て方は何でしょう。
【エミン】私は株式投資の基礎を教えているけど、やはり自分の日常生活の中で気になった企業、応援したい企業の株を買って長期で持つのがいいでしょうね。それが本来の株式投資です。その中で配当が得られればなおいいですしね。
【パックン】そうだね。
【エミン】日々の生活でお世話になっている企業は山ほどあるでしょ。人は朝起きてから夜寝るまでに、おそらく200社から300社の商品やサービスのお世話になっています。その中に自分が応援したい上場会社は必ずあるはずです。
みんな株式投資を難しく考えていますが、実際はきわめてシンプルです。いままで儲かった人はディズニーランドが好きだからオリエンタルランドを買った、武田薬品工業の薬で病気が治ったから買った人など、すごくシンプルに株式投資を実践した人です。
■ビジネスモデルの分かりやすい業種なら投資で成功しやすい
【パックン】そうですね。
【エミン】飲食業やアパレルでは、初期段階で店舗を増やすときに株価が伸びるケースは多くあります。飲食業などはビジネスモデルもわかりやすいので、個人投資家でもチャンスがあります。家の近くに新しいチェーン店ができたときに行ってみて、おいしかったらそれが投資の気づきになるよね。
![飲食業などはビジネスモデルもわかりやすいので「個人投資家でもチャンスがある」とエミンさん。](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/9/1200wm/img_79bdfbd01db05f043c80bdf0b72d1ecf454505.jpg)
【パックン】私が投資する場合は、ビジネスモデルが理解できる企業を大事にしていますね。たとえば、温暖化で自然災害が増えていて、その復興には建設が必要。だったら重機が売れるんじゃないかと発想します。
【エミン】それはとてもいい考え方ですね。「風が吹けば桶屋が儲かる」と言いますけど、そういう発想は必要ですね。
【パックン】あるいは市場の原理を把握していれば、市場全体に投資する選択肢もあると思います。ETFのインデックスファンドなどで。
■株式投資が難しければ「MSCIオール・カントリー」でもOK
【エミン】ETFは昔、コストが高かったけれど、いまは低いからいいですね。全世界の株式を対象とした指数「MSCIオール・カントリー」に連動するETFで世界に投資するのもいいし。選択肢が広がっているから、新しいNISAの成長投資枠で必ずしも個別銘柄に投資する必要はないですね。
【パックン】身近な企業に投資する方法以外にも、日ごろは関係のない欧州の企業やマーケットなどに投資する方法もありますね。日本にリスクが集中しないようにバランスをとる意味で。
【エミン】ありますね。米国の企業であれば、日本に来ていますしね。ちなみに今日の私の靴はスケッチャーズですけど上場会社です。
【パックン】私もスケッチャーズです(笑)。
【エミン】ものすごく履き心地がいいので、株式も買っています。
【パックン】株式と一緒に靴を買うんですか。
【エミン】そう(笑)。同じようにABCマートの株式も昔は買っていましたね。
【パックン】すごいですね。
![日本への投資はリスクの集中にもつながる。パックンさんは「バランスをとる意味で欧州の企業やマーケットへの投資もいい」という。](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/e/1200wm/img_ce48037268dd51a3707cbdf702cee51e484229.jpg)
■価格変動に一喜一憂しないために10年後を目指して投資すべき
【エミン】私が日本に来たときに「ここは安い」とABCマートを紹介されました。当時は上野のアメ横にあるスニーカー屋さんでした。そのとき5000円の靴を買ったのですが、後で上場したのを知って、株式を買ったことがあります。あとはメガネのJINS(ジンズホールディングス)、テープのニチバン。自分が使っていて、「これはいいな」というものを買っています。
【パックン】そうなんだ。私はインデックスファンドでマーケット全体に投資するのが中心です。おそらく資産の8割を占めていると思う。個別銘柄に投資するのは面倒だから。
いずれにしても長く持つのがいいと思います。短期で考えてしまうと、買った翌日に価格を確認して5%下がっていたら、売ってしまう人もいます。すると翌日には7%上がったりします。結果的に2日間で7%損したことになってしまう。
そうならないためには、いま買ったら「10年後にどうなっているのかを確認しよう」というくらい、余裕を持つことが大事だと思う。毎日チェックして一喜一憂しないスタンスがいいですよね。
【エミン】それは正しいと思う。
■インフレ時に投資すべきお勧め分野とは
【パックン】これからスタートする人は、インフレが気になると思いますが、その中でお勧めの分野はありますか。
【エミン】インフレは企業に悪い影響を及ぼします。たとえば、飲食業などは原材料が高くなるけど、簡単に値上げできない。でもさほど気にする必要はないね。インフレは全体として金融資産の価値を上げます。そのときに、キャッシュを何かしらの資産に換えておかないと価値が目減りしてしまう。株式ではなくゴールドでもいいけど。
【パックン】私はヘッジとして持ってもいいが、基本的にはゴールドには反対派です。企業は頑張って商品を開発するし、人材も育成して企業の価値を自ら増やしていこうとする、ゴールドはボーッとしているだけだからね。
【エミン】その通り。
【パックン】エミンさんがおっしゃるようにインフレ時はマーケット全体上がるし、いま苦しんでいる会社の株式は安いはずです。いま原材料高で苦しんでいる企業は、頑張って経費を減らしたり、サービスを向上させて、少し高い値段でも消費者が納得する商品やサービスを提供するようになるでしょう。だから、原材料高に終止符が打たれたら、利益が出ます。いま株式を買っておくと、数年後には恩恵を受けるんじゃないかな。
■不動産投資も有望。初心者にはREITがお勧め
【エミン】インフレ時には資産インフレが起きますけど、それはすでに始まっていますね。たとえば不動産価格は上がっています。
【パックン】不動産投資の選択肢もあるんですね。
【エミン】ありますね。
【パックン】初心者だったらREIT(上場不動産投信)がいいんじゃないかな。
【エミン】不動産投資はハードル高いからね。
【パックン】よくワンルームマンション投資のチラシがポストに入っていますが、注意したほうがいいですね。
【エミン】そうですね。
【パックン】まだ投資を始めていない人は、最初に何をすればいいですか。
【エミン】証券口座を開くことですね。銀行に預けておいてもお金は増えませんから、まずは証券口座を開いて入金することが大事。
【パックン】いまはスマホがあれば写真を撮って手続きできますから簡単ですね。
【エミン】そう、簡単です。
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お笑い芸人
芸名パックン。1970年、米・コロラド州出身。93年、ハーバード大学比較宗教学部卒業。同年来日。福井県で英語教師を務めた後、97年、吉田眞と「パックンマックン」を結成。著書に『逆境力』(SB新書)など。
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エコノミスト
トルコ・イスタンブール出身。2004年に東京大学工学部を卒業。2006年に同大学新領域創成科学研究科修士課程を修了し、生命科学修士を取得。2006年野村證券に入社。2016年から2024年まで複眼経済塾の取締役・塾頭を務めた。2024年にレディーバードキャピタルを設立。著書に『夢をお金で諦めたくないと思ったら 一生使える投資脳のつくり方』(扶桑社)、『世界インフレ時代の経済指標』(かんき出版)、『大インフレ時代! 日本株が強い』(ビジネス社)、『エブリシング・バブルの崩壊』(集英社)『米中新冷戦のはざまで日本経済は必ず浮上する 令和時代に日経平均は30万円になる!』(かや書房)などがある。
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(お笑い芸人 パトリック・ハーラン、エコノミスト エミン・ユルマズ スタイリング=末次秀彦(パックン) 構成=向山 勇)
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