部下との1on1は「よろしくお願いします」で始めてはいけない…実験してわかった最も効果のある"最初のひと言"【2023編集部セレクション】
プレジデントオンライン / 2023年11月19日 7時15分
※本稿は、越川慎司『17万人をAI分析してわかった 最強チームの条件を1冊にまとめてみた』(大和書房)の一部を再編集したものです。
■1on1の対話は「よろしくお願いします」で始めるな
クライアント43社で「メンバーとどうやって対話をすれば成果を出し続けることができるのか」を見出すべく調査を実施しました。
2.4万人の一般社員の方の匿名アンケートでは、驚くべきことに「よろしくお願いします」で1on1の対話を始めるとメンバーのテンションが落ちることが分かったのです。
その後のヒアリング調査で「『よろしくお願いします』で始めてはいけない理由」が2つ判明しました。
1つ目は「面接・面談」になってしまうという理由です。
アンケートに答えてくれたメンバーに個別ヒアリングをしたところ、次のように発言していました。
「『よろしくお願いします』と上司が言って1on1がスタートすると、人事評価面談のように感じる」。また、20代前半の社員は、「まるで面接のようだ」と答えていました。
「面談・面接」になると、
「まずいことを言うとマイナス評価になるから、あまり話さないでおこう」
「今日は上司の話を聞くだけで守りに徹しよう」
となってしまうようで、対話が成立しにくいのです。
そもそも1on1というのは、部下であるメンバーが主役です。
上司から活力を高めてもらい、フィードバックによって気づきを得て、行動を変えるのはメンバーです。
だから、メンバーに7割以上発言させないといけないのです。
ですから、メンバーが話しづらくなってしまう開始時の「よろしくお願いします」はダメだということです。
■共感からスタートし、相手のテンションを上げる
2つ目の理由は、「よろしくお願いします」と言われると、何かを依頼されている感覚をおぼえるからです。
「何を“お願いします”なのか」困惑してしまうメンバーが多数いました。
また、個別ヒアリングでは次のような発言もありました。
「報告やプレゼンを依頼されているように受け止めてしまう」
「先週、週報を出したのに、また新たに報告をしないといけないのか」
「何か取り組みをプレゼンすることを求められているのか」
「ちょっと緊張してしまう。何を報告すればいいんだろう」
このように、戸惑っていました。
つまり、「よろしくお願いします」は、報告やプレゼンなど、何らかの行動を依頼されているかのように受け止められてしまうのです。
では、どういうスタートが良いのでしょうか。
43社で行った行動実験で効果があったのは、「感謝・ねぎらい」で始めることでした。
「よろしくお願いします」ではなくて、「今日は忙しいのに時間を取ってくれてありがとう」という「ありがとう」で始めるのです。
「先週金曜日にトラブル対応してくれてありがとう」「後輩の指導をしてくれてありがとう」という感謝やねぎらいから始めるのです。
![チームで働くビジネスウーマンたち](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/3/1200wm/img_f39376965ce72d6ff536b460d5602fe5436858.jpg)
「こういうふうに私を見てくれているんだ」「私に興味関心を持ってくれているんだな」「本当にありがたいな」といった声が上がり、共感からスタートすることができました。
感謝・ねぎらいで1on1をスタートすると、事後アンケートでメンバーたちの満足度が30%以上アップすることが分かりました。
また、メンバーのテンションが高まってから1on1をスタートすると、メンバーは自分から発言するようになるということも行動実験で分かりました。
こうした伝え方1つで相手のテンションを上げたり、活力を与えたりすることができるのです。
■できるリーダーは、「あれ、これ、それ」を使わない
「言葉を端折りすぎて相手に伝わらないことを避けたい」と考えるできるリーダーは、「丁寧な言語化」と「言葉選び」に細心の注意を払います。
会議の発言をAIで文字起こしして、テキストマイニングという分析手法で解析したところ、「あれ、これ、それ」といった指示代名詞を使うリーダーが多いことに気が付きました。
「あれ、うまくいかなかったのはなぜだ」
「これが分かっていないから達成できないんだ」
「それはそれとして、あれで言ってたのは……」
長年同じチームにいて状況を完全に理解し合っているメンバーであれば理解できることもあるかもしれません。
しかし、メンバーも状況も変わりますので、伝わらないケースが多いのが事実。自分は伝えたつもりでも、相手には伝わっていないのです。
指示代名詞を使った方が発言時間を短くできますが、伝えたいことが伝わらないと意味がありません。
この「伝える」と「伝わる」の差が、チームの成果に影響を与えるようです。
各社で成果を出し続ける優秀なリーダーは、「あれ・これ・それ」を使う頻度が、一般管理職よりも38%少なかったです。
![越川慎司『17万人をAI分析してわかった 最強チームの条件を1冊にまとめてみた』(大和書房)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/6/1200wm/img_461c2545cc7d49ee9cbce9a84bdbea2c232081.jpg)
優秀なリーダーは、メンバーが理解していなかったり、自分の思いが伝わっていなかったりすると、話し方を柔軟に変えていきます。
定例会議でメンバーたちに伝わっていないと感じ取ると、メンバーたちを責めるのではなく自分の説明の仕方を変えていました。
そういった柔軟な変更の結果、指示代名詞を使わなくなったと推察されます。
相手の反応を見ずに、いつまでも「あれ・これ・それ」を繰り返す人は、優秀なリーダーになりにくいのではないかと思います。
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株式会社クロスリバー代表
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。
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(株式会社クロスリバー代表 越川 慎司)
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