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鳥取県民がうらやましい…鳥取名物「白バラ牛乳」が"全国1位の高品質ミルク"といえる客観的根拠

プレジデントオンライン / 2023年11月24日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazoka30

牛乳の品質は地域によって違う。ジャーナリストの笹井恵里子さんは「牛乳の栄養密度は、牛の健康状態で決まる。各都道府県では『牛の健康診断』が毎月行われているが、受診率の全国1位は鳥取県だ。このため鳥取県産の牛乳だけでつくられた『白バラ牛乳』は日本一の高品質といえる」という――。

※本稿は、笹井恵里子『老けない最強食』(文春新書)の第5章「老けない最強の乳製品」の一部を再編集したものです。

■牛乳のすごさはカルシウムだけではない

今回は「牛乳」を取り上げたい。乳製品の中でヨーグルトは、腸内環境を整える「乳酸菌」が含まれるのがメリットだが、牛乳の良さというと「飲みやすさ」が挙げられる。それに伴い、多くのカルシウムを摂取しやすいのだ。ヨーグルトは1カップ100g程度で、およそ120mgのカルシウムを含むが、牛乳の場合、コップ1杯(200ml)で、約230mgが取れる。

「牛乳はコストが低く、栄養密度が高い食品です」と、料理家で管理栄養士の小山浩子氏も言う。

「密度というのは100kcalベースで、そこからとれる栄養素という意味合いです。例えば油ならほとんどエネルギー(脂質)しかありませんが、牛乳の場合はさまざまな栄養素が含まれます」

牛乳にはよく知られるカルシウムだけでなく、必須アミノ酸のバランスがいいタンパク質、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンD、ビタミンEなども含まれる。

日本臨床栄養協会理事の大和田潔医師(あきはばら駅クリニック院長)は「牛乳は生活習慣病の予防にもなる」と説明する。

「乳タンパクがインスリン分泌を促すGLP-1の産生を高めるなど、血糖値と血圧に対して良い働きがあります。血管を含め、体を老けさせにくい食品といえますね」

■適量は、1日にコップ1~2杯程度

また尿酸値を下げる効果もあるという。尿酸とは、体の新陳代謝の過程で出る老廃物にあたるもの。何らかの原因で排泄が滞り、体内に尿酸が増える(高尿酸血症)状態は、体を老いに向かわせてしまう。

「牛乳はこの尿酸の排出を促す作用があるのです」と大和田医師。

食事が炭水化物中心であったり、夜食が必要な人は一部分を牛乳に置き換えることで、必要な栄養素を補給しつつ、糖尿病をはじめとした生活習慣病になりにくい体になるだろう。

脳の機能を維持する役割もある。「牛乳を毎日飲む」と、「認知症の発症率が低下する」という国内の報告が多数あるのだ。

代表的なものは、福岡県久山町に住む認知症でない住民(60歳以上)を対象に、1988年から17年間追跡した久山町研究。牛乳・乳製品の摂取量で住民を四つのグループに分けて比較したところ、アルツハイマー型認知症の発症率は「牛乳や乳製品の摂取量が増加するほど低下する」という結果になった。だが、これは「飲めば飲むほど認知症の予防効果が高まる」と示されたわけではない。

海外では牛乳に関して膨大な論文があり、乳製品の過度の摂取はがんを発症するリスクを上げるという見方が強い(国内では「牛乳摂取とがん発症リスク」との関係に対して「データ不十分」の扱い)。また毎日何杯も飲めば、脂質の取りすぎにもなってしまうため、大量摂取はお勧めしない。一日にコップ1~2杯程度にとどめるのがいいだろう。

■「低脂肪牛乳」はビタミンが減ってしまう

さて一口に牛乳といっても、市販されているものは大きく6種類──牛乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、加工乳、乳飲料──に分けられる。

【図表1】牛乳の分類
出所=『老けない最強食』

商品パッケージに記載される「種類別名称」で「牛乳」と記載されている商品が、生の乳(生乳)を加熱殺菌しただけのもので成分無調整。小山氏はこの搾ったままの「牛乳」を勧める。

「米なら精製されていない玄米、果物なら丸ごと食べるのがいいように、牛乳も成分無調整がいいと思います。牛乳をホールフードと捉えてください」

それに対し、生乳から水分、脂肪分などを除去して成分を調整したものを「成分調整牛乳」という。そのうち乳脂肪分を除去したものは、その除去割合により「低脂肪牛乳」「無脂肪牛乳」と表示される。脂肪が気になってこれらを選んでいる人も多いのではないだろうか。

「乳脂肪を除去するということは、若さや健康維持に必須の脂溶性ビタミンも少なくなってしまいます。乳脂肪には皮膚や粘膜の健康を保つビタミンA、抗酸化作用があって若返りビタミンと呼ばれるビタミンEが含まれるんですよ。できるだけ人の手を加えない生乳を選ぶことで、これらの栄養素がしっかり摂れます」(小山氏)

■「いい牛乳」を生む健康な牛が多いのは鳥取県

国内の牛乳の9割以上はホルスタイン種という牛の品種から作られている。殺菌温度などの製法に違いはあっても、成分無調整のタイプなら栄養成分は同じだ。

しかし、その品質は、牛の健康状態によって左右される。何が牛乳の質を決めるのかといえば、ひとつに「体細胞数」という数値がある。牛乳の中にこれが少なければ少ないほど“良質の乳”とされる。

日本ポリフェノール学会理事長の板倉弘重医師(東京アスボクリニック名誉理事長)は、「牛乳中の細胞数の増加は、牛の体内の炎症や老化が原因と考えられる」と解説する。

「搾られた生乳に体細胞数が多くなるほど味が悪くなる。細菌や炎症性成分の混入も予想されます。品質検査をクリアしたとしても、人の体に良いとはいえません」

各都道府県では“牛の健康診断”(牛群検定)が毎月行われている。健康診断の実施率が高い地域ほど、牛の健康状態を重視する酪農家が多いとも読み取れる。

義務ではないため都道府県によって実施率にバラつきがあるが、例年全国1位は、鳥取県。鳥取県ではほぼすべての牛の健康状態がチェックされているのだ。実際に鳥取県は、体細胞数をはじめとした検査数値が、全国平均よりはるかに優れている。

■「白バラ牛乳」は鳥取県外でも買える

鳥取県内で搾られた生乳は『白バラ牛乳』という商品として出荷されている。私も現地でその牛乳を飲んでみた。特徴的なコクがあるのにすっきりとした味わいだ。ちなみに『白バラ牛乳』は県外でも購入でき、東京の量販店に並ぶ『白バラ牛乳』を飲んでも、この印象は変わらなかった。

白バラ牛乳製造メーカーの今井瑞季氏は「鳥取県の酪農家のみなさんは『おいしい牛乳を飲んでもらいたい』という意識が高いと感じる」と説明する。

「暑さに弱い牛のために夏場は扇風機をまわしてあげたり、自家製の餌を与えたり、できるだけ牛がストレスのない環境で過ごせるようにも心がけています。牛を想い、飲んでくださる方を想って日々の作業に取り組んでいるんですよ。それが牛群検定の高い実施率にも表れているのかもしれません。健康診断の結果が悪ければ、獣医を派遣して対策を練ります」

【図表2】牛の健康診断受診率ベスト10
出所=『老けない最強食』

牛乳の商品名に「牛の健康診断受診率ベスト10」にランクインしている県名やその県が含まれる地域名があれば飲んでみてもいいだろう。地域によっては「県産生乳100%で製造された牛乳」と県が認定している牛乳もある。ランキングのうち5県は九州地方だ。南九州の自然の中で育った牛の生乳として親しまれている『デーリィ牛乳』も、他の地方でも入手できる。

牛
写真=iStock.com/ahavelaar
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ahavelaar

■魚を選ぶように「産地の近さ」で選ぶといい

また牛乳は、牛が快適かつ健康的に過ごせているかどうかと同様に、その鮮度も大切。だからランキング外であっても、できるだけ自分が住む地域に近いところが商品名に記載されている牛乳を選ぶのも一案。小山氏も「産地限定牛乳」という選択肢を提案する。

笹井恵里子『老けない最強食』(文春新書)
笹井恵里子『老けない最強食』(文春新書)

「魚や肉と同じように、牛乳も鮮度が命。乳を搾ってから時間が経つほど酸化が進みます。酸化したものを取り入れれば、その何割かは体の酸化にも影響し、老けることにつながるでしょう。酪農家さんは全都道府県にいますから、地元の直売所などでお住まいの地域密着の牛乳を飲んでみるのもお勧めです」

東京で買うなら、例えば『東京牛乳』(商品名)の鮮度が高いということだ。名が知られていない乳業会社でも、作り手を信頼できる牛乳が近くにあれば、あとは鮮度を重視すればいい。

また牛乳には熱に弱いビタミンCが含まれていないため、温めても栄養素が減ったり吸収が悪くなるようなことはない。殺菌方法によっても栄養素に違いが出ることはない。ただし生卵がゆで卵に変わるように、加熱殺菌によって牛乳に含まれるタンパク質が変性するため、殺菌方法によって風味が変わる。フレッシュで、お気に入りの味を見つけたい。

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笹井 恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)、プレジデントオンラインでの人気連載「こんな家に住んでいると人は死にます」に加筆した『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)など。新著に、『野良猫たちの命をつなぐ 獣医モコ先生の決意』(金の星社)と『老けない最強食』(文春新書)がある。ニッポン放送「ドクターズボイス 根拠ある健康医療情報に迫る」でパーソナリティを務める。 過去放送分は、番組HPより聴取可能。

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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)

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