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無料体験客20人中、入会0人…神トレーナーが自信満々で起業開店したジムの閑古鳥化を招いた"致命的な粗相"

プレジデントオンライン / 2023年11月22日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

独立起業を成功に導くにはどんな点に注力するといいのか。複数のスポーツジム経営者でスモールビジネス専門コンサルタントの日野原大輔さんは「起業で重要なのはリピーター客をつかむこと。そのためには集客より接客に軸足を置くといい。また、一人勝ちのブルーオーシャン戦略は目指さないほうがいい」という――。

※本稿は、日野原大輔『神・リピート集客術』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

■小手先の集客テクニックはお客さまに刺さらない

起業における「本当の壁」とは?

小さい資本でビジネスを始める場合、多くの起業家にとって最初にぶつかる壁は「集客」ではないでしょうか。

認知度が低いなかで、イチからお客さまを集めるためにどうすればいいか。いろいろ悩んだ末に、チラシやダイレクトメールを配ったり、ホームページを作成したり、ウェブ広告やSNS広告を活用したりすることもあるでしょう。業種によっては、無料のセミナーやイベントを開催することで、お客さまにとって有益な情報を開示し、認知度を高めようとするかもしれません。

手あたり次第に策を講じている段階においては、悩みはあっても、行動することで前に進んでいる実感があります。しかし、それは本物の壁ではありません。

本物の壁とは、たとえ集客できても、1回限りで誰もリピート客にならないことです。がんばって集客しても、集客しても、自分の商品やサービスに価値を感じてお金を払ってくれるリピート顧客を見つけられないことこそ、大きな痛手であり、絶望であると思います。

その理由は、毎回毎回、初回のお客さまばかりだと、永遠に新規開拓のために労力もお金も使わなくてはならないからです。実は、これこそが自分が成し遂げようと思っているビジネスの速度が落ち、経営者として心の安定がなくなる元凶なのです。

たとえば、あなたがある街で新規ビジネスを始めたとして、そこには住民が100人しか住んでいないとします。その100人にヨガの「無料体験キャンペーン」の案内を出し、全員が体験に来てくれたのに、次の来店が1人もいなかったとしたらどうなるでしょう。

街の住民は全員あなたのことを知っているのに、誰も顧客にならない……。これでは商売になりません。樹木を焼いた灰で農業をするように、別の耕作地に移っていくしかなくなるでしょう。

■「本当の壁」に当たって気づいたこと

私自身もこれに似た苦い経験があります。あるスポーツクラブのトレーナーを7年務めた後、私は14年前に初出店を果たしました。そして、地域の人に向けて無料体験キャンペーンを打ち、20人が来てくれました。

スポーツクラブ時代は、体験で来た方の9割9分がその場で入会されていたので、「自分が店を開けば、絶対、リピート客になってくれるだろう」と、私はタカをくくっていました。

ところが、いざふたを開けると、9割9分はおろか、次の予約をしてくれた人は1人もいませんでした。出店に向けて1年間入念に準備し、人生をかけて挑戦しようと起業したのにまさかこんな結果になるとは……。

世の中から自分が全否定されたようで、夜も眠れないほど落ち込みました。よく考えれば、以前は勤めていたスポーツクラブの「信用」という後ろ盾があったのです。さらには、トップトレーナーでしたから、「僕にはこの時間しか枠がないですよ」という希少性をアピールすることで、体験者のほとんどを獲得することができていました。

しかし、自分がお店を出したら、当然ですが、最初は顧客ゼロです。お客さまがいないのに、トップトレーナーも何もありません。希少価値も打ち出すことなどできません。

さらに、そのとき体験に来た40代とおぼしき女性のお客さまに言われたひと言は、生涯忘れられません。

体験レッスンが終わり、「ここのお店って、どういう人がターゲットなの?」と聞かれ、私は、「30代、40代の一般的な女性です」と答えました。すると、「だったら、トイレの便座ぐらい下ろしておいたほうがいいんじゃないの?」と。お恥ずかしい話ですが、それぐらいお客さま目線になることすらできていなかったのです。

ジム
写真=iStock.com/Kobus Louw
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kobus Louw

ではこのとき、私はどうするべきだったのでしょう? もちろん、店が認知されるためにも集客は必要です。しかし、無料や割引といった小手先だけの集客方法で、お客さまが「また来たい」と思ってくれるとしたら、答えはNOです。

それよりも、集客した大切なお客さまをどうやって次につなげていくか、「どんな接客をするか」、そこに注力すべきだったのです。

つまり、接客の仕方がスモールビジネスの運命を決めるわけです。本書でお伝えする「ボンディング接客術」(※)を事前に知っておくことで、あなたもリピート顧客を見つけ出すことができるはずです。当時の私より断然有利です。だって、「ボンディング接客術」を事前に知っているからです。

(※)接客の秘訣(ひけつ)は「顧客と確実に心の絆(きずな)をつくること」と考える著者が接着剤の「ボンド」にたとえた造語。

次の項目では、スモールビジネスにおいてとりわけ重要な「市場選び」について、話を続けます。

■今さらブルーオーシャンを狙ってはいけない

なぜ「ブルーオーシャン」参入は危険なのか?

あらためて言うまでもなく、スモールビジネスの魅力は、「自分がやりたいテーマでビジネスができる」ところです。しかし、スモールビジネスを立ち上げるに当たっては、もう1つ、大きな落とし穴があります。

それが市場選びです。これから起業しようと考えている、もしくは、起業してまもなく、集客に困っている皆さんのなかには、「自分はこれまで誰もやっていないサービスを高く売る自信がある」「世界でオンリーワンのお店にしてみせる」と思っている人がいるかもしれません。

それが実現すれば、本当にすばらしいことです。ブルーオーシャン(=競合のいない領域)に参入し、多くの人に求められれば、1人勝ちできる可能性もあります。

しかし、「こんな画期的なアイデアは、どこを探してもない!」と思い込んで漕(こ)ぎ出すのは少々危険です。特に小さい会社ほど、ブルーオーシャンを狙(ねら)ってはいけないのです。

その理由は、競合がいない領域とは、裏を返せば、これまで需要がなく、儲(もう)かった人がいない領域だからです。仮にそのサービスを支持する人がいても、市場規模を拡大するためには、莫大(ばくだい)な資金と時間がかかります。

ブルーオーシャンを狙うということは、それだけリスクが伴うのです。

ヨガ
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

■自分がやりたいことで、最小限のコストで集客する方法

それよりも、レッドオーシャン(=競合がひしめく領域)に目を向け、お客さまに目を止めてもらうことが大切です。競合がひしめく領域とは、先ほどの競合がいない領域の反対で、需要があり、市場規模が大きく、儲かる領域のことです。

まずは、お客さまが望むことに応え、そのなかで「自分がやりたいこと」を付け加えるのです。実はそれがお金も時間もかからず、最も少ない労力で人を集めることができる方法です。

たとえば、私が独立を考え始めたときは、30〜40代の働く女性の間で加圧トレーニングの人気が高まっていました。専用のベルトを脚や腕の付け根に巻き付けて圧力を加え、血液量を制限しながらトレーニングを行なうことで、一般的な筋トレと比べてより短い時間、軽い重量で筋肉に刺激を与え、脂肪が燃焼しやすい(太りにくい)体になる。

つまり、短期間でダイエット効果が期待できるというものでした。当時「タイパ(タイムパフォーマンス)」という言葉はありませんでしたが、まさに忙しい現代に合ったトレーニングだと確信しました。

そこであらたに加圧トレーナーの資格を取り、勤めていたスポーツクラブ内で加圧トレーニングのクラスを持たせてもらいながら、別の加圧トレーニングスタジオに修業に行き、スタジオ運営や予約システムの勉強もさせてもらいました。

あえてレッドオーシャンを「しっかり狙っていこう」と行動したのです。スタジオの名前も「日野原大輔スタジオ」では誰もわからないので「加圧スタジオLib(Life is beautiful)」とし、認知されやすいネーミングにこだわりました。

■対象客の望み&行動導線に、徹底的に合わせる

ここで私が実現したかったのは、「普通のジムに行っても長続きしないような、30代、40代の女性をキレイにする」ということでした。今では加圧トレーニングはメニューの1つになり、ヨガスタジオ、ピラティススタジオ、パーソナルトレーニングスタジオと3つのスタジオを経営していますが、このコンセプト(自分がやりたいこと)だけは14年前から少しもズレていません。

そして、「やせてきれいになりたいけれど、自分は三日坊主だ」と自覚している人に刺さるようにホームページのコピーや色合い、構成を組み立てました。

日野原大輔『神・リピート集客術』(フォレスト出版)
日野原大輔『神・リピート集客術』(フォレスト出版)

これもまた、レッドオーシャンであり、逆を言えば、多くのニーズが存在するテーマでした。私の場合はさらに、乗降客数が多く、駅周辺に娯楽施設が多い場所を選び、駅から徒歩5分の場所にスタジオを開きました。お客さま目線で考えれば、そのほうが定期的に通うのに利便性がいいからです。

その反対で、人気のない駅ほど、また駅から遠くなればなるほど、お客さまにとっては不便で、通うことが億劫(おっくう)になります。職人気質で自分の腕に自信がある人に限って、「駅から15分の立地でも、お客さまはリピートしてくれる」と思いがちですが、そんなことはありません。立地が悪ければ、お客さまの日常の行動導線から外れてしまい、人目にほとんど触れることなく閉店してしまう可能性だって十分ありえます。

場所に関してもブルーオーシャンを選択してはいけません。くれぐれも、お客さまの望みに応えることを忘れてはいけないのです。

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日野原 大輔(ひのはら・だいすけ)
ジム経営者、スモールビジネス専門集客コンサルタント
大卒後、アルバイトしたスポーツクラブで売れっ子のパーソナルトレーナーとなり、個人売上は平均月80万円以上、営業成績は120店舗中で全国3位内を8年キープ、店舗売上No.1を8年キープした。2009年に独立し、加圧スタジオ、ヨガスタジオ、ピラティススタジオを開設。また、ジム運営をする中で編み出した「ボンディング集客術」を軸に、パーソナルトレーナーやフィットネスインストラクターそしてスモールビジネスオーナーに向けた経営セミナーを実施。

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(ジム経営者、スモールビジネス専門集客コンサルタント 日野原 大輔)

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