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まじめで誠実、気遣いができて働き者…外国人からベタ褒めされる日本人に共通する「唯一の残念な点」

プレジデントオンライン / 2023年11月27日 11時15分

オーストラリアの街並み。ワーキング・ホリデー制度を使って現地で働く日本人も多い - 筆者撮影

海外でも通じる英語を話せるようになるにはどうすればいいのか。ワーキング・ホリデー制度を利用して海外で働く日本人を取材したブックライターの上阪徹さんは「日本人は外国から『誠実で働き者』と高く評価されているが、一つだけ残念な点がある」という――。

※本稿は、上阪徹『安いニッポンからワーホリ! 最低時給2000円の国で夢を見つけた若者たち』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。

■頭で訳していると、いつまでたっても話せない

現地で使える英語の勉強法はあるか。たくさんの英語がうまく話せない日本人と接してきた、シドニーの語学学校「MIT」のスタッフ、KITさんがこんな話を聞かせてくれた。

「日本人がしゃべれないのは、文法や読み書きの勉強ばかりやってきたからです。頭がすぐに訳そうとしてしまう。それでも最初は聞き取れなかった英語も、毎日、学校にやってきて、英語の授業を受けているうちに、ずいぶん聞けるようになります。逆に言えば、リスニングだけ先に伸びてしまうんです」

暮らしているのは、英語が母国語のオーストラリア。日本人の友達がいたとしても、生活をしていれば、英語は日常的に入ってくる。そうすることで、言っていることはわかるようになっていく。

「でも、話せないんです。それは、頭で訳を考えてしまうからなんです」

そして日本人は、言っていることがわかったら、とりあえず何か返さねば、と態度で示してしまう。典型的なのが、ニコニコと笑ってしまうこと。

「加えて、ついつい“Yes ,Yes”と答えてしまう。あるいは、“Where are you from?”と聞かれたら、“Japan”と言ってしまう。“What time did you wake up this morning?”と聞かれたら、“Seven”で済ませてしまう。これでもコミュニケーションはできるんですよ」

■語学の練習は歌を覚えるのと同じ

しかし、英語を話せていることにはならない。また、当然のことだが、深いコミュニケーションはできない。日本に戻ったとしても、電話の一本も取れないという。

「だから、語学学校で最初によく言うんです。英語力を伸ばしたかったら、間違えてもいいし、単語を逆に並べてしまってもいいので、簡単なことでも文章で答えなさい、と」

Where are you from?”と聞かれたら、“I'm from Japan”と答える。

「そうやっていくうちに、リズムとして声が出てくるようになるんです。歌と同じです。歌は初めて聞いたときには、メロディを覚えられませんよね。でも、何度も聞いているうちに、自然に出てくるようになる。この感覚です。英語が早くしゃべれるようになる人と、そうでない人との違いは、そこだと思うんです」

普段、生活をしている中でも、アンテナを張るといいという。スーパーで買い物をしていると、レジ係と前のお客がどんな会話をしているか。それをしっかり聞く。

「そうしているうちに、同じようなことを話していることに気づくんです」

アメリカの大学に行ったKITさんも、当初は“Yes ,No”くらいしか言えなかったという。しかし、間違ってもいいから自分から文章として声に出すようになってから、話せるようになっていった。

■世界中の情報の7割は英語で書かれている

「いつまでも単語で生活をしていたらダメ。これでは話せません」

シドニーでワーホリをしている若者たちへの取材では、外国人の友達を作って積極的にコミュニケーションした、という人も多かったが、たしかに友達との会話では学べることは限られる。ましてやお互いに母国語が英語でない友達なら、なおさらだ。

日常生活でアンテナを立て、会話を学びつつ、自分も文章で話すことを意識する。いいアドバイスだと感じた。

この文章を書いている私は経営者はじめ、ビジネスパーソンなど数多くの人々に取材を日々、行っているが、英語に関しては強烈な印象に残るコメントをもらったことがある。

「世界の中で見てみれば、日本語で発信されている情報は実は極めて少ない。世界の人々が見ているのは、英語の情報だ。日本語の情報だけに頼っていたら、限られた内容のものだけになり、判断を間違えることが起こり得る」

インターネットで情報を集めるにしても、日本人は当たり前のように日本語で検索を行う。しかし、インターネット上の情報の7割は英語の情報だと言われている。また、世界中に流通している学術系の論文のほとんどは英語だ。

日本語の情報は、極めて限られた情報でしかない、ということだ。量、質ともに圧倒的なのは、英語の情報なのである。

シドニーのショッピングモール内
筆者撮影
「世界でもっとも美しいショッピングモール」といわれる、クイーン・ヴィクトリア・ビルディング - 筆者撮影

■AIへの質問も、日本語か英語かで大きく変わる

折しも拙著『安いニッポンからワーホリ! 最低時給2000円の国で夢を見つけた若者たち』(東洋経済新報社)を書いているタイミングで、生成AI「ChatGPT」に関して取材する機会があったが、識者からこんなコメントがあった。

「生成AIが取り出してくるのは、ネット上の情報です。日本語で出てくる生成AIのテキストは、日本語の情報から持ってきています。つまり、日本語という限られた情報の中から、回答を導き出しているということです。

したがって、日本人でも英語ができる人は、英語で出てくる生成AIを英語で使っています。そのほうが、圧倒的な質を確保できるからです」

今回ワーホリで、日本語サイトではなく、英語サイトにアクセスできたことで、すばやく仕事を見つけられた人がいた、というのも、まさにそういうことだろう。日本語では得られない情報が、英語なら手に入るわけだ。

そして事前準備をする際にも、できれば英語でやっておいたほうがいいのは、言うまでもない。例えば、オーストラリアが、あるいはシドニーがどんな状況にあるのか。ワーホリの滞在先としてどうか。英語で調べてみれば、日本語よりはるかに多くの情報が流通しているはずだ。

■どうすればいいですか? と聞く前に調べよう

日本語では手に入らないような情報が、発信されている可能性は大きい。そうした情報を入手してからワーホリに行くのと、知らずに行くのとでは、大きな違いになるだろう。

それこそ、「レストランで働こうと足を使ってお店を回るとき、履歴書を渡すのはスタッフではなくマネージャーへ」というコメントを今回してくれた人がいたが、こういうことは英語圏内では当たり前のことなのかもしれない。

今回の取材で、こんなコメントをしていた人もいた。

「マネージャーを見つけたら、どんな風に挨拶すればいいでしょうか、という投稿が、フェイスブックグループにあったんです。それは違うだろう、と。自分で英語で調べればいいわけです。そうした調べる力が足りない。ネットを活用して、英語で調べられる力をつけてから来たほうがいい」

一方で、日本語での事前の情報収集も重要だ。日本人ならではの課題にも気づけるからである。家探しのトラブルや詐欺の話もそう。ワーホリやオーストラリアに関するSNSをフォローしまくって情報収集をしたという女性がいたが、予備情報はあっただけいい。

シドニーの街並み
筆者撮影

■「わからない」と言えない日本人が多い

それこそ私も体感したが、現地ではランチのからあげ定食が2000円、夜ならラーメンに生ビールをつけると3000円を超える。これはまさに日本人の感覚でわかりやすいが、外食を繰り返していたら、あっという間にお金はなくなってしまうということだ。ブリスベンでワーホリ中のKさんは、こんなことを語っていた。

「そんなに貯金がなくて、最初の数カ月で大きく使ってしまい、今は苦しくて、なんとか家賃を減らし、どうにか生きている、という人もけっこう見ます。どんな状況になっても大丈夫なように備えておくことは大切です」

しっかり貯金をしてから向かわないと大変なことになる。そういうことも、肌感覚でわかるはずだ。

英語力という課題に加え、コミュニケーションで日本人が注意しなければいけないこととして指摘をしていたのは、日本食レストランのマネージャー・Sさんだ。

「日本人はシャイ、というか自分の思っていることを伝えない、という印象があります。わかった? と聞いても、うーんと言っていたりする。それで、やっぱりわかっていなかったりする。せっかく説明してもらったのに、わからないと言うのは申し訳ないという気持ちもあるようです。でも、そこではっきり意思表示をしないと、あとで困ることになるんです」

■「察する文化」が言葉の壁になっている

背景にあるのは、日本人独自の空気を読む文化のようだ。はっきり意思表示をしなくても、いわゆる「あ・うんの呼吸」で、「ああ、この人はおそらくこうなんだな」と相手が察してくれるのだ。

実はわかっていなかったとしたら、「うーん」とモジモジしている様子を見れば、「ああ、わかっていないな」と気づいてもらえる。それなりの対応をしてもらえる。日本人は、こうした文化に慣れているのである。しかし、海外ではそれはないのだ。

「あと、最近気になっているのは、自己中心的な若者が日本人に増えてきていることです。何の前触れもなくいきなり、辞めます、と連絡が来たりする。ちょっと相談してくれればいいのに、と思うんですが、それもない。中には、連絡を絶って来なくなってしまう人もいます」

このコメントが出るのは、かつてはこんな日本人はまずいなかったからだという。

そして裏を返せば、それは日本人が評価されていた点だったからだ。

「まじめですよね。そして、誠実。本当によく働く。何かあると気遣える。これは私だけではなく、他のブランチマネージャーや他の店の人たちにも聞いて、出てきた日本人に対するコメントでした」

ニューサウスウェールズ州立美術館
筆者撮影
ニューサウスウェールズ州立美術館 - 筆者撮影

■アニメは最強の「共通の話題」

日本人に英語が苦手な人がたくさんいることは、現地の人たちもよく知っている。また、経済が停滞していたり、賃金が上がっていなかったり、為替が弱くなっていることも明らかになってきている。ただ、それで日本や日本人が低く見られているのかというと、そんなことはないようである。語学学校「MIT」の校長YOSHIさんは言う。

「あまりイメージは変わっていないですね。今も、クリーンでお金持ちの国だと思われています。稼げる国ではないけれど、経済大国というイメージは強い。あとは、食べ物がおいしくて、街が美しくて、統率されている」

しっかり教育が行われていて、道徳的であるという印象も強いという。

「悪いことをする人は少ない、というイメージがありますね。最近では残念なことにちょっと変わってきていますけど。そもそも、安全、安心な国と思われています。あとは漫画やアニメなど、サブカルチャーも人気。アジアでは日本のアニメ映画が人気ですし、中南米では日本の古いアニメが放送されていたりしているので、世界の人たちと共通のテーマになります」

■日本人への信頼+英語力で稼げる

日本のイメージは決して悪くないのだ。英語でいいイメージを作ることができれば、さらに印象は高まる。それこそ日本人ならではのまじめさや丁寧さ、ホスピタリティに英語力が加われば、世界のどこにも負けない力にできる可能性だってある。

上阪徹『安いニッポンからワーホリ! 最低時給2000円の国で夢を見つけた若者たち』(東洋経済新報社)
上阪徹『安いニッポンからワーホリ! 最低時給2000円の国で夢を見つけた若者たち』(東洋経済新報社)

現地でIT企業を起業した、Sazae代表の溝尻歩さんもこんなことを言っていた。

「几帳面で丁寧、言ったことはちゃんとやるんです。だから、雇用主からすれば、やっぱり圧倒的に雇い甲斐がある。足りないのは、コミュニケーション力なんです」

自信を持って話したり、楽しそうに話したり、堂々と話したり。それができないだけで、仕事ができない人だと思われてしまいかねないのだという。

「人と関係を作れる英語力というか、社交性というか。英語でジョークを入れてユーモラスに話せるだけで、仕事ができそうに見えるんですよ。こういう日本人はあまりいないんです」

逆に、英語が流暢にできるようになれば、希少な評価が得られる人材になれるということだ。そして、世界のどこでも働ける。そうなれば、収入だって跳ね上がる。日本で給料が上がらないことに、嘆くような必要はもうなくなるのである。

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上阪 徹(うえさか・とおる)
ブックライター
1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。雑誌や書籍、Webメディアなどで執筆やインタビューを手がける。著者に代わって本を書くブックライターとして、担当した書籍は100冊超。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。著書に『マインド・リセット』(三笠書房)、『10倍速く書ける 超スピード文章術』(ダイヤモンド社)、『JALの心づかい』(河出書房新社)、『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』(あさ出版)など多数。またインタビュー集に、累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ(徳間書店)などがある。ブックライターを育てる「上阪徹のブックライター塾」を主宰。

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(ブックライター 上阪 徹)

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