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だから40代以上の未婚人口は史上最大に…昔は当たり前だった「年収300万円台の結婚」が成立しない本当の理由

プレジデントオンライン / 2023年11月29日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kasto80

■令和になっても「男の経済力」は欠かせない

日本は、収入格差が拡大しているといわれます。

失われた30年や昨今の円安の影響で、国際的にも日本の給料レベルは低いほうの部類に落ちてしまっていますが、国内だけで見ても東京と地方などで収入格差はあります。他にも、仕事の内容によっても、企業の規模の違いによっても、正規なのか非正規なのかという就業形態や労働時間によっても違います。

収入格差というと、よく男女格差が取り沙汰されますが、実は、ほとんど報道されませんが、男女格差より大きいのは配偶関係による格差です。

出生動向基本調査からもわかるように、女性が重視する結婚相手の条件に「男の経済力」は欠かせません。婚活の現場でも「年収いくら以上が条件」というものがついてまわります。実際、年収別の生涯未婚率を紐解けば、男性の場合は、年収が低ければ低いほど未婚率が高くなるという強い正の相関があることも事実です。

■フルタイムで働く妻の割合は40年近く変わっていない

よって「金がない男は結婚できない」と言われるわけですが、では、実際に未婚と既婚とでどれくらいの所得格差があるものでしょうか。2022年の就業構造基本調査より、各年代別の年収中央値を算出して比較したものが以下のグラフ(図表1)となります。

なお、有業者だけで比較すると実態と合わない部分もありますので、各年代の無業者(学生、専業主婦・主夫、無職)も収入ゼロ円と換算して含めて計算しています。

これによれば、どの年代においても圧倒的に年収中央値が高いのは既婚男性であり、未婚男女は多少男性のほうが高いですが、大きな差異はありません。一方、既婚女性は25~29歳を頂点としてそれ以降の年代は低空飛行になっています。

【図表】男女年齢配偶関係別年収中央値

これは、当然ながら、既婚女性は結婚や出産を機に退職して専業主婦になるパターンもあるためです。共働き世帯が専業主婦世帯を大幅に上回っているなどという説が流布されていますが、過去記事〈カネのない結婚は不幸になるだけ…「年収400万円」を最低条件にする婚活女性を笑えない理由〉でもすでにご紹介した通り、フルタイム就業の妻の割合は1985年から約40年間ずっと3割でかわっていません。

■既婚男女の収入格差を生む「130万円の壁」

専業主婦世帯が減少しているのはその通りですが、フルタイム就業妻世帯と専業主婦世帯の割合は2021年時点でほぼ同等です。共働き世帯が増えたのは、パート就業妻世帯だけが増えていることによります。

【図表】共働き世帯の推移(妻が64歳以下の世帯)
出所=男女共同参画局「『令和3年度 人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査』(内閣府男女共同参画局委託調査)」より引用

つまり、夫婦のうちフルタイムで働く妻の割合は長期的に3割であり、既婚男女間で収入格差がもっとも広がってしまうのは当然のことです。むしろ、注目すべきは、既婚女性のうち35歳以上はほぼ年収中央値が130万円近辺であることです。

これは、いわゆる「130万円の壁」といわれるもので、配偶者に扶養される人がパートなどで働く場合、年収が130万円以上になると扶養から外れて国民年金や国民健康保険の保険料を払う必要が出てくるためです。

平均値にしてしまうとここは曖昧になりますが、中央値にすると明確です。35歳以上の既婚女性の半分が年収130万円の壁を意識して就業していることになります。いってみれば、既婚男女間の収入格差はこうした扶養制度の問題であるといえるでしょう。

この「130万円の壁」が実質上、既婚女性の就業時間の制限になっているということで、政府は一時的にこれを超えたとしても、2年までは扶養内にとどめるという措置を行うようですが、だとしても抜本的な解決にはなりません。

■既婚と未婚で「男性格差」が広がっている

一方で、男性の未既婚の格差について見てみると、既婚男性が年齢とともに順調に収入増を実現しているのに対し、未婚男性は25歳以上54歳までほとんど年収中央値が変わりません。これだけを見ると、未婚男性は非正規が多いので年収があがらないのだろうと考えてしまいがちですが、決してそうではありません。

以下の、正規雇用就業者だけを抽出した年代別年収中央値グラフ(図表3)を参照ください。

既婚男性が25~29歳と55~59歳で年収中央値が424万円から667万円へと約1.6倍増になっているのに対し、未婚男性は、同366万円から458万円へと約1.2倍増にとどまります。

正規雇用という同条件で比べても、既婚男性は未婚男性よりすべての年代で年収が高いということになります。

【図表】男女年齢配偶関係別年収中央値(正規雇用のみ)

ちなみに、正規雇用者だけで比較すると、未婚男性と未婚女性も、既婚女性もほぼ年収の差はありません。正規雇用に限れば、男女の年収格差はなく、あるのは、既婚男性とそれ以外という格差があるだけということになります。

■「男性は家計を支えるべき」が40%以上

こうした現象は、日本だけの特殊なものではなく、アメリカでも同様です。経済学者のギヨーム・ヴァンデンブルック氏らのレポートにおいても、既婚男性だけが突出して年収が高く、未婚男女および既婚女性は同程度という結果を報告しています。

アメリカの場合、2016年のデータによれば、既婚男性は40代半ばで年9万ドルを稼ぐようになり、未婚男女と既婚女性は揃(そろ)って年5万ドルですから、既婚男性の年収はその他のグループの1.8倍になることが示されています。

そう考えると、逆になぜ既婚男性の年収だけが高いのか? という話になります。

「結婚できる男性は年収が高いから」という結婚の因果とからめて推論しがちですが、むしろ「結婚した男性は稼がざるを得なくなる」という見方もできるでしょう。

図表1に戻っていただければわかる通り、出産や子育てにおいて退職または仕事をセーブすることになる妻の分も稼がないといけないからです。

内閣府男女共同参画局による「令和4年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」の結果によれば、「男性は仕事をして家計を支えるべき」という項目に関し、男性は20代で44%、30代で43%、40代で44%と高い割合を示しています。

ミーティング中の3人のビジネスパーソン
写真=iStock.com/Yagi-Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yagi-Studio

■既婚男性ほど家庭よりも仕事を優先している

対して、20~30代女性は男性より少し低いものの40代女性では46%とむしろ男性より高い値となっています。これらは未婚者も含む数字なので、既婚者だけに限ればもっと高いかもしれません。要するに、男女ともに「男が家計を支えるべきだ」と考えている割合は少なくないわけです。

同じ男性でも、未婚と既婚の意識の違いでいえば、内閣府の「令和4年度 新しいライフスタイル、新しい働き方を踏まえた男女共同参画推進に関する調査報告書」に、仕事とプライベート・家庭生活のバランスの現実について配偶状況別に比較したものがあります。

それによれば、未婚(調査では独身)と既婚(調査では有配偶)の男性において、「仕事に専念」および「仕事を優先」する割合の合計は、独身男性が20代から50代まで36~37%であるのに対し、有配偶男性は30代で45%、40代でも42%と、プライベートや家庭生活より仕事を優先する傾向が高いのが特徴です。

実際に、労働時間を未婚男性と既婚男性で比較しても、既婚男性のほうが1.3~1.4倍ほど働く時間が長くなっています(2022年就業構造基本調査)。単純に若いうちから働く時間も長く、仕事に邁進することで、管理職や出世を遂げて、結果として未婚男性より大きく年収をあげることになっているのかもしれません。裏を返せば、夫や父である以上、稼がないといけないということです。

■就職氷河期世代より深刻な令和の20代

男女共同参画白書においては「固定的性別役割分担を前提とした昭和モデルから脱却し、令和モデルに切り替える時である」と勇ましい言葉が並びますが、現実的には、結婚や出産・子育てを契機に夫の一馬力にならざるを得ない若い夫婦は多い。「130万円の壁」も含めて扶養や税金控除や第3号被保険者制度もそうなっているのですから、それに合わせるしかありません。

だからこそ、そうした事態に備える意味でも、結婚を希望する女性は「男性の経済力」という条件を譲れないのであり、それは是非の問題ではなく、現実の適応力として当然の話なのです。中身のない令和モデルなどというもので家族は運営していけません。

結果的に、結婚できるのは、ある程度の年収以上の男性だけになり、低年収男性は未婚のまま取り残されます。低年収だけではなく、今やかつて結婚のボリューム層だった年収300万円台の中間層でさえ結婚できなくなっています。

こうした事態は、今40代にさしかかる層が20代だった頃の20年前から就職氷河期として始まっており、だからこそ40代以降の未婚人口が統計史上最大にまで膨らんでいるのでしょう。加えて、今の20代は、その20年前の20代より、より重い国民負担率が課せられ、可処分所得が大幅に減っています。

額面の収入格差以上に、手取り格差が広がり、結婚格差を生んでいるのです。

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荒川 和久(あらかわ・かずひさ)
コラムニスト・独身研究家
ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。海外からも注目を集めている。著書に『「居場所がない」人たち 超ソロ社会における幸福のコミュニティ論』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、『結婚しない男たち』(ディスカヴァー携書)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(中野信子共著・ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

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(コラムニスト・独身研究家 荒川 和久)

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