「今年の目標」をあなたは覚えているか…新年に立てた目標を9割の人がすっかり忘れてしまうワケ
プレジデントオンライン / 2023年12月1日 10時15分
※本稿は、吉武麻子『目標や夢が達成できる 1年・1カ月・1週間・1日の時間術』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■新年の目標を年末まで覚えている人は1割に満たない
個人の長期的な目標を立てる際には、あまり長い期間を取らず、1年程度で考えることが大切です。
その5つの理由を解説します。
〈長期目標のワナ①〉新年の目標は9割忘れる
ある研究によると、新年に目標を立てて、その目標を年末まで覚えている人は1割に満たなかったそうです。
そもそも、どうして人は年間目標を忘れてしまうのでしょうか?
それは、目標を立てたとしても書き出していない、もしくは、書き出した目標を見返していないからです。立てただけで満足してしまう人もいるでしょう。
最初は意気揚々と目標達成に向かって取り組み始めたとしても、いずれ日々のやることに忙殺され、行動は止まり、結果的に目標すら忘れてしまいます。
また、目標を書き出して毎日目にしたとしても、実現不可能な目標を設定してしまっては、それこそ達成するはずはありません。
年間目標は、多くの人が新年や新年度のタイミングで立てるのではないでしょうか?
「年が明けて心機一転!」と、やる気に満ち溢れているときに立てる目標は、日々の延長線上ではなく、どちらかというと気持ちが高ぶっていて現状とかけ離れたものにしがちです。
現実的ではない目標を立ててしまうと、最初は勢いよく動きだしたとしても、途中で「やっぱり無理な設定だった」とあきらめ、目標のことを忘れ去ってしまうのです。
■人間は計画の達成にかかる時間を短く見積もる傾向がある
〈長期目標のワナ②〉1年でできることを過大評価しすぎる
1年でできることは限られています。
もともと人間は、かかる時間に関して楽観的に捉える傾向があります。
「5日あれば終わると思ったのに!」と、宿題の計画倒れによって最後に苦しむことになる、夏休みの風物詩がまさにそれです。
1979年に、行動経済学者であるダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが「計画錯誤(Planning Fallacy)」を提唱しました。これは、計画の達成にかかる時間を実際よりも短く見積もる傾向のことを言います。
それが1年ともなればどうでしょうか? 余計に、予測と現実に大きな隔たりができるのは当然でしょう。
また、世界的名コーチと称されるアンソニー・ロビンスの名言に「人は1年でできることを過大評価しすぎる。そして10年でできることを過小評価しすぎる」という言葉が、あります。
できれば楽な方法で、しかも早く結果を出したいと思うのが人間の性でしょう。「3カ月でマイナス10キロ!」「3カ月でTOEIC900点!」「3カ月で月商7桁!」なんて謳い文句があるのも、それを魅力的に感じる人が多いからです。
しかし、焦って結果を出そうとしても、現実はそんなに簡単ではありません。1年では難しいのです。でも、10年と続けていたら大きく変化できます。
■ネガティブな理由から生まれたモチベーションは続かない
また、人は今抱えている不満を解消しようと、あれもこれもと1年の目標に詰め込んでしまう傾向があります。不満を起点に目標を立ててしまうと、そのあれもこれもが、実は人生において重要度が高くない場合もあるのです。
例えば、残業が多い会社に不満があったので、「会社を辞めて週3日だけ働いて毎月100万円以上稼ぐようにする!」というような目標を立てて、実行したとします。
その結果、毎月100万円以上稼げることを優先したため、自分には向いていない仕事をしなければならなくなったり、残業が多くても人間関係は良好で助けられていたんだと後悔するようなことになります。
せっかく目標を立てても、本当に大事ではないことに追われてしまっては、時間がもったいないですよね。
しかも、ネガティブ起点の行動は、瞬発力があっても長くは続きません。だから結局は、何も達成することなく時間だけが過ぎていくという事態に陥りがちです。また、自分の人生(ビジョン)のために本当に達成すべきかどうか自分に問うてみたら、そうでもない場合もあるのです。だからこそ、あれもこれもと詰め込む前に「本当に必要か?」と自問してみてください。
■目標を途中で変えることに罪悪感を覚える必要はない
〈長期目標のワナ③〉行動すれば目標は変動する
目標を掲げて行動していくうちに、目標が途中で変わってしまった経験がある方もいるのではないでしょうか?
目標が途中で変わることは、実は当然のことです。なんでもやってみなければわかりません。
・自分が進みたい方向性と違った
・もっと優先順位が高い、やるべきことがあることに気づいた
・自分の本心ではなく「やらねば」で目標を設定していることに気づいた
これらは、動いてみたからこそ気づけたことです。
一方で、一度立てた計画に固執して、たとえ違和感を覚えたとしても、やりきりたいという性質が人間にはあります。その性質を「一貫性の原理」と言います。自分の行動に一貫性を持たせたいという考え方です。
目標をがちがちに固めて計画を立てて進めた結果、「これは失敗する」と感じているにもかかわらず、身動きが取れず、目標を立て直すことができない人もいます。
目標や計画を柔軟に修正して、着実に前へ進めるような余白を残しておくことも大事です。
目標の期間が長ければ長いほど、修正する機会は増えるので、長期目標はあくまで目安程度にしておきましょう。
■目の前の急ぎの仕事に対応していると大きな目標は後回しになる
〈長期目標のワナ④〉後回しにしてしまう
新年の目標を立てたとして、1月の時点でその目標を実現できそうなチャンスが訪れたとします。しかし、目の前には緊急性の高い、やるべきことが山積み。そうすると「今ではなくてもまだ時間はあるし……」と、せっかくのチャンスを先送りにし、目の前の緊急なことから取りかかります。
その後、どうなるでしょうか?
緊急なことへの対応が終わったと思ったら、また緊急性の高いことが目の前にやってきます。
もう皆さん、おわかりでしょう。
緊急なことが次々と目の前に現れて、いつの間にか新年の目標は頭の中から消え去ってしまうのです。
せっかく目標を立てても、後回しにしていては意味がありません。目標が大きいほど、後回しにする確率も高まります。
〈長期目標のワナ⑤〉時代は待ってくれない
時代の流れも無視してはいけません。
例えば、コミュニケーションツールは、1996年頃にポケベルの普及率がピークに達し、その後、PHS、携帯電話、スマートフォンと、約10年で急激に変化していきました。
そんな中、あなたはエンジニアで、年々加速している時代の流れを無視して、1990年代からコツコツとポケベルの改良に何年もかけていたとします。そして、ようやく納得のいくポケベルを開発できました。
しかし、時代はすでにスマホ時代。せっかく素晴らしいポケベルを作り上げても、利用する人は誰もいなかったなんてことが、極端な話、あるわけです。
■留学を先延ばしにしたら時代の流れが変わってしまった
実は私も時代の流れを無視して、チャンスを逃した経験があります。
2008年に私は韓国へ留学に行きましたが、その留学自体を決意したのは2006年11月です。
決意から留学までになぜ1年強の時間を要したかというと、留学資金を貯めたかったのと、韓国語の実力をある程度まで上げたかったという理由からでした。
ところが、2004年頃から『冬のソナタ』のヨン様をきっかけに、日本で韓流ブームが起こります。そして、そのブームは徐々にドラマからK-POPへ、中年女性から若い世代へ広がっていきました。
この韓流ブームとあいまって、私が留学したときには、韓国留学がとてもポピュラーなものになっていたのです。留学先の語学堂(韓国の国公立または私立の大学が運営する、留学生のための韓国語を学ぶ学校)でも、クラスの3分の1から2分の1は日本人といった具合でした。
■「いつか時間ができたら」の「いつか」は今でもいい
そのため、韓国語を使った仕事に就こうとするも、韓国語を話せる日本人が増えていたので、留学経験がある程度では就職が困難になっていたのです。留学を先延ばしにした1年間で、時代の流れが変わってしまいました。
結局、語学堂卒業後1年間は現地でアルバイト生活を送り、その後就職しました。
同じ時期に韓国語を使える職を探していた人たちより1年、先手を取ることができたであろう事実は無視できません。
結果的には、留学を1年先延ばししたからこそ、その会社に出会えたとも言えますが、「たられば」を言っていたらきりがありません。
時代の流れを見るというのは、自分の人生を考える上でとても大事なのです。
時間ができたら行こうと先送りにしていた海外旅行に、新型コロナウイルスの影響で行けなくなってしまったというのも、まさにその例です。
世の中は、自分中心に待ってはくれないということ。これを忘れないで欲しいです。
あなたが今やりたいと思っていることは、本当に、あとでないとできないことですか?
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タイムコーディネーター
TIME COORDINATE代表取締役。大学卒業後、旅行会社勤務を経て、26歳で韓国留学。その後、現地法人でキャスティングディレクターとして働く。帰国後、「タイムコーディネート術」を考案し、「タイムコーディネート実践プログラム」や「タイムコーディネーター養成講座」を開講。監修を務める『時短・効率化の前に 今さら聞けない時間の超基本』(朝日新聞出版)はシリーズ100万部を突破。
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(タイムコーディネーター 吉武 麻子)
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