「英語を話せるようになりたい」はなぜ実現しないのか…1年後に夢を叶えるために直近3カ月でやるべきこと
プレジデントオンライン / 2023年12月7日 10時15分
※本稿は、吉武麻子『目標や夢が達成できる 1年・1カ月・1週間・1日の時間術』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■目標を分解してスモールサイズにすると動きやすくなる
企業の事業計画や経営計画などは、企業存続のために、長期スパンでやるべきことを見ていく必要があります。そのため、5カ年、3カ年といった中長期単位で計画を立てていくのが基本です。
しかし、長期目標を立てても、いざ行動してみたら目標を変える必要が出てくることが多々あります。逆に、短期目標で計画を立てていくと、今やることが明確になるので、実際に行動に移しやすくなります。
いくら立派な目標を立てても「今すぐ」に行動の一歩が出なければ意味がありません。自分が行動しやすくなるように、目標もスモールサイズで見ていきましょう。
企業の場合でも、中長期目標から棚卸しをして、四半期ごとに目標を設定したり、四半期評価を取り入れたりします。
四半期ごとの振り返りで、業績アップや社員のモチベーションアップ、部署内での目標共有でチームパフォーマンスを上げるなど、さまざま効果が見込まれます。
なお、企業の場合、四半期ごとの目標は短期目標に当たりますが、個人においては中期目標に当たります。
■個人においても四半期ごとの中間目標が有効
個人でよく立てるのは、1日~1週間程度の短期目標と、1年~3年程度の長期目標ではないでしょうか? このどちらか、もしくは両方を立てている人は多いと思います。
ところが、この短期目標と長期目標だけでは、せっかく立てた目標も効果を出しきれずに計画倒れしてしまう可能性が高くなります。短期目標を立てて、目の前のことをこなすことだけに一生懸命になってしまったり、長期目標を立てて、未来のために今、何をするかがわからないまま時間が過ぎてしまったりという、もったいない事態が起こるのです。
また、短期と長期の両方の目標を立てていても、期間に距離がありすぎて、地に足ついた行動計画にできていないケースがほとんどです。
そのために、個人においても四半期ごと、つまりは3カ月の中間目標を立てることを私は強く勧めています。
■まずは1年を半分に割って目標を立ててみる
「分解が難しい」と感じている人もいるでしょう。そんな方に、タイプ別の目標設定法をお伝えします。
(1)1年→6カ月→3カ月の2段階分解法
1年から3カ月目標にいきなり分解することが難しい場合や、1年目標がそもそも想像できない場合は、6カ月目標の視点を入れてみてください。
1年よりは6カ月のほうが、ある程度具体的な目標を立てやすくなるはずです。
そもそも目標を分解する理由は、「ビジョン―長期目標―中期目標―短期目標―今日やること」、これが一貫性を持っているかを確認するためです。
そして、分解したそれぞれのゴールが、期間とマッチしているかを確認するためです。
必ず1年目標でなければいけないということでも、6カ月目標でなければいけないということでもありません。今あげた2点ができているかを確認するためにも、必要であれば「6カ月目標」という視点も入れて考えてみましょう。
■「いつかやりたい」夢が夢で終わってしまう人の特徴
(2)現実的な目標を設定するのが苦手な人の1年目標設定法
遠い未来をあれこれ想像するのが好きな人は、それを地に足ついた計画にしていくことができるようになると、夢の実現が高まります。ですから、やりたいことをやりたいままで終わらせないことが重要です。
知り合いのBさんが「いつか英語を話せるようになりたいんです」と打ち明けてくれたことがありました。英語を話せるようになったら、さまざまな可能性が広がりますから、ぜひ叶えたいですよね。
そのあとの私たちの会話です。
私「英語を話せるようになったら、何をしたいんですか?」
Bさん「自信を持ってネイティブと英語で会話ができるようになって、海外取引を任されるようになりたいんです」
私「素敵な夢ですね! 実現に向けて計画立てましょうよ!」
Bさん「実は、目標とか計画を立てるのが苦手で……」
Bさんは、想像では大きなことを描けても、現実化がどうしてもできないと考えていました。想像する分には自由だからいくらでも描けるけど、どこかで「どうせできない。無理だから」と思っている自分もいると言うのです。
実現できなかったときの不安から、現実を直視できないのが原因のようです。
しかし、失敗は失敗ではありません。発明家のトーマス・エジソンの有名な言葉があります。
「私は失敗したことがない。ただ、1万通りのうまくいかない方法を見つけただけだ」
そうです。やってみてうまくいかなかったことは失敗ではありません。むしろ、何もしないでいることが失敗です。なぜなら、試してもいないなら成功する可能性は0%だからです。
「必ず成功しなければ」ではなく、「試してみよう」というゲーム感覚で、計画を立てましょう。
■目標を分解すると達成率はアップする
ここでは、Bさんの「英語を話せるようになりたい」を例にして、目標設定をしていきます。
まずそもそも、「英語を話せるようになりたい」という「~たい」という表現は、願望であって、目標ではありません。実現するためには、この願望を目標にしていく必要があります。
Bさんの目標は、「自信を持ってネイティブと英語で会話ができるようになって、海外取引を任されるようになる」ということでした。
この目標を、例えば1年後までに達成していたい目標だとすると、その期間と目標が妥当なのかを確認していきます。
ちなみに、今回の目標「自信を持ってネイティブと英語で会話ができるようになって、海外取引を任されるようになる」には、大きく分けて3つの目標軸があることにお気づきでしょうか?
(1)ネイティブと英語で会話ができるようになる
(2)ネイティブとの会話に自信を持てるようになる
(3)まずは1社、海外の取引先を担当する
この3つです。多くの人が、複数の目標を組み合わせて1つの大きな目標にしがちです。
それ自体は悪いことではないですが、いざ目標に向けて行動するときは、目標を分解すると達成率がアップします。
では、分解した上で、これらの目標を達成するまでに1年という期間が妥当かどうかをチェックしていきましょう。
■具体的行動を洗い出すとやるべきことが見える
Bさんは、(1)・(2)は今の自分の英語の実力上、毎日ネイティブと会話する機会を作れば大丈夫であろうと予測。ただ、(3)は相当努力が必要だと言いました。
(3)を達成するためにBさんは何ができるのか、私は「具体的行動を思いつく限り、すべて出してください」と、伝えました。そして出てきた行動を分解して、整理したのがこれです。
・現地(海外)の商談会に参加する
・現地の商談会に参加できるよう、上司にプレゼンをする
・上司の承認を得るために企画書を作成する
・企画書を作成するために過去の商談会の資料を集める
・過去の商談会の資料をレポートとしてまとめる
・上司の承認を得るために、先輩にアドバイスをもらう
・戦略プランを社内でプレゼンテーションする
・商談会での交渉をシミュレーションする
・英語で交渉のデモンストレーションをする
このように行動で分解してみると、具体的にやることが見えてきます。
ここから、1年という期間の妥当性を2つのポイントから確認します。
1つは、自分の努力だけではどうしようもないもの。いわば、コントロールができない部分です。今回の例で言うと「商談会が1年以内に開催されるのか」などです。
そしてもう1つが、自分の努力次第で左右される自己責任のもの。ここは、逆にコントロールできる部分です。
まずは、自分ではコントロールできない点がクリアできるかどうかを確認します。
Bさんの場合は、商談会が8カ月後に開催されるとのことでクリアしました。
そうなると、Bさんが1年間という期間で進められるかどうかにかかっています。
もっと言えば、商談会に参加するために会社から承認を得たり、英語を上達させたりすることができるかどうかです。
■毎日英会話レッスンを重ねたこと自体が自信につながった
Bさんは「正直、かなり厳しいと思うけど、今動かなければ可能性はゼロ。今から動き始めたら、もしかしたら1年後は難しいかもしれないけど、可能性はゼロじゃない。何となく頭の中でやりたいと思っていたことが、現実的に進むと想像するとワクワクする!」と、いったん仮置きで、進めていくことになりました。
Bさんは、それから毎朝6時から30分のオンライン英会話レッスンを受けて、英語力のアップに努めました。ネイティブとの会話で英語に自信を持てるようになったのはもちろんですが、毎朝続けたこと自体がBさんにとっての自信となりました。そして、商談会ではメインとしての交渉は叶いませんでしたが、上司のサポートとして入ることができ、契約までの流れを経験することができたそうです。
素晴らしいですね。
■ひとつの夢が叶ったらもうひとつの目標が見つかった
実はこの結果、とてもおもしろいものとなりました。
目標の中であげていたのは「海外取引を任されるようになる」です。そこをより具体的に描いていなかったため、「上司のサポート役として海外取引の一部を担当した」という結果になりました。それも、もちろん十分素晴らしいことです。
ところが、Bさんは、「メインとしての交渉は叶いませんでしたが……」と振り返っています。実はBさんの中では「メインで担当したい」という気持ちがあったのです。
もしも、「メインで担当する」という目標もしっかり立てて、それに対しての行動計画を立てていたら、結果は変わっていたかもしれません。
■現実的な計画に落とし込めば実現が近づく
さらに、この話は続きがあります。実はその半年後、Bさんは商談会でメイン取引を任され、契約を結ぶことができたそうです。
1年目標を立てて動いたからこそ、また新たな目標が明確になり、それに対して行動をした結果、実現できたのです。
「何年も頭の中だけで『やってみたい』と思っていたことが、分解して書き出しただけで、夢のままで終わらずにこんなにも進むなんて驚きでした。時間管理という点では、見積もりが甘いところもありましたが、それより何より予定通りにはいかなかったけど、着実に進んでいることが実感できたので、焦りがなくなりました。自分がやろうとしていることに対して、ただ時間が足りなかっただけなんだと、冷静に計画を見直せたことが大きかったと思います」
もしも計画を立てなかったら、頭の中で想像だけして終わっていたでしょう。ビジョンを起点に分解していけば、ポジティブに実行していくことができます。
現実的な計画に落とし込んでいくことが苦手な方も、試してみてください。
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タイムコーディネーター
TIME COORDINATE代表取締役。大学卒業後、旅行会社勤務を経て、26歳で韓国留学。その後、現地法人でキャスティングディレクターとして働く。帰国後、「タイムコーディネート術」を考案し、「タイムコーディネート実践プログラム」や「タイムコーディネーター養成講座」を開講。監修を務める『時短・効率化の前に 今さら聞けない時間の超基本』(朝日新聞出版)はシリーズ100万部を突破。
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(タイムコーディネーター 吉武 麻子)
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