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「140字まで」という制限がちょうどよかった…日本人が世界一の「ツイッター好き」になった理由

プレジデントオンライン / 2023年12月1日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/HStocks

イーロン・マスク氏が2022年10月に買収して以来、X(旧Twitter)は世界的なユーザー離れに直面している。日本ではどうなっているのか。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「類似のSNSとして登場したThreadsやBlueskyを試してみても、結局多くの日本人は居心地の良いTwitterを使い続けている」という――。

■アメリカ人の半数以上がTwitterを「お休み」

マスク氏によるTwitter買収から1年。Twitterにはどんな変化があったのか。

社内では大規模なリストラが行われ、マスク氏は従業員数が約8000人から約1500人に減ったと明かしている。その影響もあってか、サービスが不安定となってデマやヘイトが急増し、巨大IT企業に違法なコンテンツの排除などを義務づける「デジタルサービス法(DSA)」を遵守できずにEU撤退も検討中と言われている。

マスク氏は、複数の機能やサービスを統合した「スーパーアプリ」を目指しているのだろうが、特に求められていない音声・ビデオ通話機能がつき、人気のハッシュタグ機能を廃止予定など、完全に迷走中だ。

Pew Research Centerによると、米国の成人Twitterユーザーの過半数が、マスク氏の買収後、Twitterでの活動を一時休止していたという。また、Twitterで最もアクティブなユーザーも、以前より投稿頻度が減っており、Twitter離れが進んでいる状態だ。

■パリ市長「巨大な世界の下水道と化した」

Similarwebによると、 2023年9月時点でのXのトラフィックは前年比で14%減少している。Xが広告主向けに提供しているポータルサイト「ads.twitter.com」のトラフィックも、前年比で16.5%減少している。

11月27日には、パリ市長のアンヌ・イダルゴ氏が「巨大な世界の下水道と化した」としてTwitterを退会すると投稿した。

投稿では「当初は多くの人が情報にアクセスできる画期的ツールだったが、今や民主主義の大量破壊兵器となった」とし、「このプラットフォームとその所有者は意図的に緊張と対立をあおっている」と批判している。

■頼みの綱である広告収入に大打撃

Twitterの主な収入源は広告だが、買収後、広告収入は半減した。デマやヘイトが増えたことで、米自動車会社ゼネラル・モーターズや米食品会社ゼネラル・ミルズ、独自動車会社フォルクスワーゲンなどさまざまな企業が広告出稿を停止したのだ。

さらに、マスク氏が反ユダヤ主義的投稿をしたことで、アップルやIBM、ディズニーなどもTwitterへの広告停止を決めている。

このように世界的には、ユーザーだけでなく広告主のTwitter離れも進んでおり、Twitterは苦境に陥っている状態だ。

■なぜか日本ではTwitter離れは起きていない

しかし日本に目を向けると、それが嘘のようにTwitterはにぎわっている。

アライドアーキテクツの「2023年最新版 X(Twitter)利用実態調査」(2023年7月)によると、Xへリブランディング後の2023年9月に同様の調査を実施したところ、Twitter離れは起こっていないことがわかった。前回調査時に比べて全体的に利用頻度はやや下がっているものの、1日に1回以上Xにアクセスしている人は75.8%、週1回に満たない人は7.5%と、引き続き高い頻度で利用するユーザーが多い状態が続いているのだ。

筆者の周りでも「Threads」「Bluesky」「Mastodon」など、Twitterの移行先が定期的に話題になる割に、結局、人は去っていない。ThreadsやBlueskyが一時的ににぎやかになることはあっても、Twitterの投稿をやめた人は少数派だったのだ。メディアでは日々ネガティブな情報が飛び交っているにもかかわらず、まるでそれが嘘のようにTwitterは相変わらずにぎわっている。

マスク氏によると、Twitterの利用時間は日本がダントツの1位であり、1人あたりの使用量は米国の3倍に上るという。

独調査会社スタティスタによるTwitterの国別ユーザー数(2023年1月時点)は米国が9540万人、日本が6745万人だった。「世界人口白書2023」によると、米国の人口は約3億4000万人で、日本の人口は約1億2330万人。人口に占めるユーザーの割合は、米国は28.0%であるのに対し、日本は54.7%と約2倍に当たる。

日本人は他の国より圧倒的にTwitterを好んでおり、長時間利用していることは明らかだ。

■3.11以降、災害時の情報収集インフラに

2011年の東日本大震災は、日本でTwitterユーザーが増える大きなきっかけとなった。輻輳(ふくそう)状態で電話がつながらなくなった中、Twitterなど一部のSNSでは連絡ができたことから、災害時の連絡用にアカウントを持つ人が増えたのだ。

その後、災害時の情報発信用として、多くの自治体が運用を開始。TwitterのAPI制限によって自治体が情報発信できずに困ったということが報じられたが、逆に言えば、Twitterそれだけ災害時の情報インフラとなっているということだ。その後Twitterは、公的機関の防災・災害情報に関してはAPIを無償提供している。

速報性、検索性、フォロー関係を超えた情報収集ができる点など、災害時の情報収集ツールとしてTwitter以上のものはない状態だ。

■日本語と相性がよく、安心できる居場所に

日本テレビの「金曜ロードショー」で『天空の城ラピュタ』放送時に、視聴者で一斉に「バルス!」とツイートする動きは「バルス祭り」と呼ばれている。2011年の放送時には、1秒間におけるツイート数で世界新記録を更新し、サーバーが落ちる騒ぎとなった。知らないだれかと同じ時間を共有する楽しさに興奮を覚えた人は、多かったはずだ。

サービス自体が日本語と相性が良かったこともよく指摘される。140文字までという文字数では、英語よりも日本語のほうがより多くの情報を伝達でき、日本語ではほぼ不自由なくコミュニケーションできた。文化的に、短歌や俳句などの短文コミュニケーションに慣れていたことも挙げられるだろう。

Twitterがローンチされたのは2006年7月であり、日本では2007年ごろから利用され始め、2009年ごろには広く普及している。つまり、すでに14~15年以上利用している人も少なくない。それだけの年月のツイートと、育てていったフォロー、フォロワー関係がある。Twitterへの愛着は、Twitterで過ごした年月や思い出、つながっている人間関係への愛着でもあるのだ。

匿名性が高く、Twitterが安心できる居場所となっているユーザーは多い。言いたいことを吐き出す場として、同じ趣味の人とつながれる場として、既に多くのユーザーにとって大切な居場所の一つとなっているのだ。

■「みんないる」が「みんないなくなった」になるのか

大切な場だからこそ、なくなったら困る――。しかし、サービス自体が終了したら居場所がなくなる。その思いで、「そろそろやばいかもしれない」「移行先を探さなきゃ」と移行を検討する人は多い。しかし、移行先として期待されたThreadsは、開始5日間で1億人が登録したものの、その時登録したユーザーの多くは新規投稿が数週間前、1カ月以上前で止まったままだ。

SNSは移行に大きなコストがかかる。われわれは、つながりたい人がおり、読みたい投稿があるからこそTwitterを利用し続けている。一斉に移るなら移るが、他のユーザーが残っているなら残るしかないのだ。

全員がスマホを手にグループで輪になっている
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

そんなわれわれが決定的にTwitterから去るのは、どんな時か。それは、Twitterからつながりたい人、読みたい投稿が消えた時だ。みんなが一斉に別のSNSに移った時だ。

現状は、人間関係や投稿が充実していることが、われわれをTwitterにとどめている。このバランスが崩れ、「みんながいなくなった」と感じた時がTwitterの終焉(しゅうえん)の時だ。

「有料となったらやめるかも」という声も聞かれる。いつ均衡が崩れてしまうのか、それとも復活はあるのか。今後に注目していきたい。

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高橋 暁子(たかはし・あきこ)
成蹊大学客員教授
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、webメディアなどの記事の執筆、講演などを手掛ける。SNSや情報リテラシー、ICT教育などに詳しい。著書に『ソーシャルメディア中毒』『できるゼロからはじめるLINE超入門』ほか多数。「あさイチ」「クローズアップ現代+」などテレビ出演多数。元小学校教員。

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(成蹊大学客員教授 高橋 暁子)

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