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子宮頸がんの原因ウイルス感染で男性が中咽頭・肛門がん発症リスク…女子医大生が男子校出張で警鐘鳴らす訳

プレジデントオンライン / 2023年11月30日 11時15分

中島花音さん[出所=『医学部進学大百科2024完全保存版』(プレジデントムック)]

子宮頸がんによって日本では年間に約3000人が亡くなっている。滋賀医科大学医学部4年生・中島花音さんは子宮頸がんの原因とされる、HPV(ヒトパピローマウイルス)のワクチンについて当事者である若い世代の多くが知らないことに問題意識を抱き、「予防手段を知らないまま、がんにならないでほしい」とメッセージを伝え続けている――。

※本稿は、『医学部進学大百科2024完全保存版』(プレジデントムック)の一部を再編集したものです。

■予防できるがんがあると同世代に伝えたい女子医大生

京都市立の名門・堀川高校から滋賀医科大学医学部に現役合格した中島花音さんだが、当初は医師になることにそれほど前向きではなかったという。その理由は、心臓外科医をしている父にあった。

「せっかくの家族旅行、車で移動中に父に緊急電話がかかってきて、『悪いけど、あとは電車で行ってくれ』と、そのまま仕事に舞い戻ったこともありました。そこまで仕事に熱意がある父に尊敬の念を持つと同時に、私のキャパシティーでは私生活が二の次になってしまいそうで。同じ道を歩んだら自分の世界が狭くなってしまうとも思いました」(中島さん、以下同)

日常的に多忙だった父の様子を目にしていたため「医師」という選択肢はなかった中島さんだが、その価値観が変わったのは高2の頃。通っていた塾の70代ベテラン女性講師が自己免疫疾患のひとつ関節リウマチに罹患(りかん)し、体調を崩したことがきっかけだった。

「長い期間、指や膝などの痛みに苦しんでいらっしゃいましたが、医療の力で寛解したのです。それまで私は医療ができる最大のことは救急で病院に運ばれ生死の境にいる患者さんの命を救うことだと思っていました。でも、本当はもっとたくさんの領域があり、患者さんのQOL(生活の質)を高め、その人らしさや生きやすさを手助けすることも医療の大きな役割なのだと気づくことができたんです」

現在、医学部4年生となり、産婦人科医を志している。妊娠・出産、がん、ホルモン異常への対応など、女性が一生の中で出合うさまざまな問題や疾患に向き合う、本人いわく「まさに生死の境に立つ仕事」だ。父親の診療科とは異なるが、緊急呼び出しも少なくない激務である。

■男子校へ出張してHPVウイルス感染リスクに警鐘鳴らす

そんな中島さんは今、大学での勉強以外の活動にも時間を費やしている。例えば、産婦人科に関わる先輩たちと連携することだ。

一人は男性医師で、産婦人科の診察のかたわら、病児保育のネット予約サービスを提供する会社を運営している。中島さんがその活動に賛同の意をメールで送るなどして交流が生まれ、現在はその会社でインターンをしている。

Vcanの仲間たちと。中央が中島さん。
Vcanの仲間たちと。中央が中島さん。[出所=『医学部進学大百科2024完全保存版』(プレジデントムック)]
【図表1】最も忙しかった1日
出所=『医学部進学大百科2024完全保存版』(プレジデントムック)

もう一人は徳島大学医学部6年生の男性。同じ産婦人科志望で、赤ちゃんの泣き声をAIによって分析するアプリの開発を主導している。泣き声の周波数や大きさなどにより、空腹、眠気、痛みなど「なぜ泣いているか」を推定するというもの。出産直後の母親のストレス軽減を目指す活動内容に中島さんは心打たれたという。

「私には3人のロールモデルがいます。医療現場から飛び出して、子育てしやすい環境づくりを通してメンタルヘルスの向上に挑戦する2人の先輩。そして、医師としての高度なスキルを持ち、患者さんや医療従事者の皆さんからも慕われている父。3人のように私も医師として、社会の中の“生きづらさ”を改善できるような仕事に真摯(しんし)に向き合いたいです」

中島さん自身、子宮頸(けい)がんの予防啓発を行う学生団体「Vcan」を立ち上げ、代表を務めた。特に、子宮頸がんの原因とされる、HPV(ヒトパピローマウイルス)のワクチンについて当事者世代の多くが知らないことに問題意識を抱き、「予防手段を知らないまま、がんにならないでほしい」というメッセージを伝え続けている。

「子宮頸がんによって、日本では1年間で約1万1000人が診断を受け、約3000人が亡くなっています。こうした現実などをSNSで発信するほか、当事者世代である中高生に直接メッセージを届けるために全国の学校で出張授業をしています。男子校にも行きます。男性がHPVに感染すると咽頭がんや肛門がんなどを発症しますが、ワクチン接種することで感染の予防効果があるんです。リスクとベネフィットを両方知ったうえで、ワクチンを接種するかどうかを判断できる社会にできたらと考えています。予防する手段を知らないまま接種しないのと、知ったうえで接種しないのとでは、同じ“接種しない”でも異なりますよね。私たちは当事者がそうした自分の命と健康を守る情報を知る機会をきちんと与えられる世界の実現を目指したいです。その結果、接種率向上につながればと思います」

学生団体内では定期的に勉強会をするほか、啓発につながるイベントなどを積極的に開催している。先日は、1人暮らしの大学生がどの自治体でもワクチン接種できるようにしてほしいといった趣旨の要望書を厚生労働省に提出した(今は住民票のある自治体のみでの接種となる自治体がある)。

■カフェでのバイト、当初はポンコツ店員だったが……

『医学部進学大百科2024完全保存版』(プレジデントムック)
『医学部進学大百科2024完全保存版』(プレジデントムック)

他方、大学生活を充実させるために学内のダンス・スノーボード・茶道といったサークル活動にも参加。社会人としての修業もすべく、家庭教師や京都市内のカフェのアルバイトにも積極的だ。

「カフェでの仕事、例えば、複数のお客さんのテーブルまでお水を運んで、注文を聞いて運んで……という一連の動きは、いわばマルチタスクで最初はなかなかうまくできませんでした。かなりポンコツ店員でしたね(笑)。それでも最近はだいぶ慣れて、いつの間にか後輩を指導する立場になりました。家庭教師もそうですが、社会での経験を積むことで、自分が生きている世界がいかに狭いかを実感します。全人的に患者さんを見るために必要な、幅広い視野を持つことを目標に、今後も精進したいと思っています」

(プロフィール)

中島(なかじま)花音(かのん)さん
滋賀医科大学医学部4年生 子宮頸がんの予防啓発をする学生団体「Vcan」創設者、前代表。京都市立堀川高等学校卒

(プレジデントFamily編集部)

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