「エアコン代は俺が払った」vs「旅行代は私が出した」30代共働き夫婦別財布問題で"離婚一直線"予備軍の罵り合い
プレジデントオンライン / 2023年11月30日 11時15分
■妻の稼ぎが増えたことで地味に深刻な悩みのタネが…
今回家計相談に見えたのは、小柳タカシさん(仮名・33歳・会社員)、ユリさん(同33歳・フリーランス)夫婦。ユリさんが主導で来られました。
夫のタカシさんは、手取り収入が37万円の会社員。一方、ユリさんは、フリーランスでウェブデザインを受注しています。最初はお小遣い程度の収入でしたが、子育てが落ち着いてきた頃から徐々に受注を増やし、今では月10万円台から40万円台、平均して月26万円程度に大幅UP。ただし、変動が大きいため、夫の収入で生活するスタイルは続けています。
「世帯収入でみれば金額は増えていますが、私自身の収入が不安定なため、安心できません。そんな中でも、子供(6歳長男、4歳次男)の教育費はどんどんかかってくるし、旅行などの特別支出も増えてきています。はたしてどこまでお金を使ったらよいのか、不安になってきたんです」(ユリさん)
家計簿を拝見すると、世帯の月平均手取りは63万円、支出額は48万3000円で、月平均14万7000円の黒字です。ただ、仕事発注元の事情などにより、ユリさんの収入はいつ途絶えるか分かりません。それだけに、夫の安定収入37万円を優に超える出費に不安な気持ちを抱く心境はよく理解できます。
■「そのお金、どっちが出す?」問題で一触即発
実際ユリさんは、少しでも不安を軽減するために、自分の分は臨時収入として、iDeCoを月6万8000円、つみたてNISAも始め、どんどん増額していったと説明します。さらには、私たちの目の前で、夫のタカシさんにも「将来に向けて投資を……」と勧めますが、タカシさんは「それどころではない」と首を横に振りました。
「僕は僕で自分の給料から住宅ローン(14万円)や水道光熱費(2万5000円)などの固定費が引き落とされ、さらに生活費(食費費8万1000円など)も払っている。現状、自分の収入の中では、つみたてNISAを月3万3000円積み立てるのが精いっぱい。むしろ、それだけ貯められているユリがうらやましいよ」
そして、次々と不満を口に出し始めました。
■「エアコン代は俺が払った」vs「旅行代は私が出した」
「本当は僕だってiDeCoもつみたてNISAも上限いっぱいやりたい。自分名義の資産が増えていくのをこの目で見てみたい。だけど今は普段の生活費に加えて、エアコンが壊れた時の買い替え代も全部僕の負担になっているから、身動きが取れないんだ。ユリばかり資産を増やしていって、不公平だよ」
iDeCoの名義が夫であろうが妻であろうが、結婚後に生じた資産は夫婦の共有財産とも言えますが、受け取りは名義人に限られます。離婚時の年金分割の対象でもありません。
離婚時のiDeCoの取り扱いは微妙なところがあり、小柳さんご夫婦の年齢では、財産分与の対象になりうるのは婚姻期間中の掛け金額で、もし、受給開始が近い年齢で、受給額が見えてくるなら、財産分与の対象になる可能性もあることとなります。それを知ってか知らずか、ユリさんが夫に反論しました。
「でもさ、この間の旅行代は私が出したよね? それに子供の冬服だって私の収入から出したよ。最近私の方が出すこと、増えてない? 私の収入は不安定なの。できれば使わず貯めていきたいの。どうしてわかってくれないの!」
夫婦は目の前で言い合いを始め、空気が悪くなりました。支出一つひとつに「どっちが出すか」問題が勃発していて、それが鬱積(うっせき)しているように映りました。実は、こうした問題を抱えている共稼ぎ夫婦は少なくありません。私の印象では、若いDINKs世帯ほどこのような傾向が強いのですが、多くは子供の出産、住宅購入などライフステージを経るごとに財布が一つになり「どっちが出すか」問題は収束していくものです。
一方、小柳家の場合、出産や住宅購入などの節目はあっても、そのタイミングでユリさんの収入がなかったために、財布を一つにする機会は持てませんでした。
また、二馬力になった時点、あるいはユリさんの収入が夫並みに増えてきたタイミングでも、一元管理に向けてひざを突き合わせて話し合うことはありませんでした。ユリさんは、時々夫の収入を超えてしまうことが、夫の気分を害するのではないかと変に遠慮して、収入を公開できなかったようです。タカシさんもユリさんがどれだけ稼いでいるのか気になりつつも口に出せなかった。互いに遠慮やうしろめたさを抱きながら、月日が流れ、いつ間にか「自分で稼いだお金は自分のもの」という意識が強くなっていったようです。
ただ、婚姻期間中に得た勤労収入はあくまでも夫婦の共有財産。まずは収入と支出を共有し、「家の支出は夫婦の収入から出す」という意識を育ててもらうことにしました。
■アプリを活用して夫婦で支出を見える化
さしあたっては、収入と支出も見える化したうえで、財布を一つにすることからスタート。
見える化には、アプリの活用を提案しました。夫婦で持てるチャージ型のプリペイドカードが増えてきていますが、その中でも「B/43ペアカード」というカードを使うことに。このカードの口座に各自収入の一部を入金し、生活費の支払いもここから行います。そうすると、連携しているアプリで、支出の明細が確認できるというものです。
小柳夫妻は、住宅ローンや水道光熱費などの固定費は引き続き夫の口座から引き落とし、「B/43ペアカード」の口座に入れたお金は、食費や日用品費、娯楽費など家のもので出ていくものと決めました。
これまでは、例えば夫が子供と二人で遊んでいるときに子供に買い与えるおやつ代は、いったん夫のポケットマネーから出して、その後家計として精算していました。それが、「B/43ペアカード」を使うようになってからは、子供に使うお金はこのカードで支払えば、夫婦間の精算の手間もなくなり、妻もアプリを見れば、今日はいくら使ったかが一目瞭然に分かるように。これで、「このお金はどっちが出すか?」問題は解決です。
その他、二人が管理できる銀行口座を新たに作り、ここにも各自収入の一部を入金。そこからローンや水道光熱費などの固定費を引き落とすことに決めました。
「B/43ペアカード」も、共有の銀行口座も、分かりやすく5:5でお金を入れているとのことです。
■共有口座&支出の見える化で、支出削減効果も
こうした仕組みづくりで、思わぬ効果も生まれました。
二人はもともと倹約思考だったため大きく削れる部分はありませんでしたが、通信費を格安スマホに替えて6000円削減できたり、支出の見える化で日用品の“重複買い”や子供服を買い過ぎていたりすることに気づき、その無駄をカットすることができたのです。
結果、合計1万6500円もカットでき、タカシさんの負担は大きく減りました。その余剰分で、タカシさんは念願のiDeCoを開設できました。
夫婦で財布を一つにし、支出を見える化することで、互いに変な腹の探り合いもなくなり関係性もよくなった。さらに夫は自分名義のiDeCoを開設することができ、妻の希望通り「世帯」としての積み立て額も増加。二人にとっては共有財産が増えただけでなく、夫婦の風通しもよくなり、いい循環ができているようです。
今回のように、たとえ夫婦の間柄であっても互いの収入を公開することに戸惑いがある人もいるかもしれません。そして、しばしば各支出項目を「どっちが出す問題」が持ち上がり、それがこじれて夫婦関係の険悪化し、最悪の場合は離婚にいたるケースさえあります。
しかし、「節約志向」や「家族全員の幸せのために家の資産を増やしたい」といった思いが夫婦で共通しているならば、絶対に財布を一つにした方がいい。そうすることで、配偶者はいい伴走者になり、資産の増え方も加速していくものです。
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家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万6000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は90万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は171冊、累計380万部となる。
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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)
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