1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「人脈づくりの悩み」はこれでなくなる…本当に役立つ人脈を作るために米心理学者が勧める「連絡の取り方」

プレジデントオンライン / 2023年12月5日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Edwin Tan

質の高い人脈を広げるには、どうすればいいのか。コロンビア大学ビジネススクールで人気講義「THINK BIGGER(発想をより大胆に)」を開くシーナ・アイエンガー教授は「私の授業では、ネットワーキングではなくアイデアワーキングという手法を勧めている。このやり方なら、会話のタネとしてずっと面白いし、普通のネットワーキングよりもよい人と知り合うことができる」という――。

※本稿は、シーナ・アイエンガー著・櫻井祐子訳『THINK BIGGER 「最高の発想」を生む方法』(NewsPicksパブリッシング)の一部を再編集したものです。

■相談相手の輪を大きく広げるためには

グーグル、図書館、その他の文献や資料の情報源。これらはどれも探索に欠かせない。だが本章でまず専門家へのインタビューの手法を説明したのは、人間が機械にはけっしてできない方法でものごとを理解しているからだ。

そこでここからは、専門家を通して戦術を探す方法をさらに紹介したい。相談相手の輪を大きく広げる手法だ。

グーグルや図書館などで得た情報に専門家の連絡先が載っていれば、直接コンタクトすることができる。また、すでに関連分野の専門家を知っている場合もあるだろう。

そこからさらに多くの専門家を探す手法として、「アイデアワーキング」をお勧めしたい。

あなたはこれまでネットワーキング(人脈づくり)の大切さを、耳にタコができるほど聞かされてきたはずだ。できるだけ多くの人と知り合うために、会議に参加し、委員会に名を連ね、イベントに出席し、趣味を始め、エレベーターで乗り合わせた人に話しかけよう。次に出会う人が、運命の人になるかもしれない、と。

■ネットワーキングではなくアイデアワーキング

この手法の背後にあるのは「数打ちゃ当たる」戦法、つまり多くの人に出会えば出会うほど、役に立つ人を見つけられる、という考え方だ。SNSを利用すれば、さらに簡単に知り合いを増やすことができる。ほとんどの人は、ネットワーキングを宝くじのようなものだと思っている。宝くじを買い続ければ、いつか大当たりするかもしれない。

ネットワーキングの目的は、ネットワークを広げることにある。これに対しアイデアワーキングは、アイデアを広げることをねらう。ネットワーキングのコツは、すばやく相手の人となりを知ることだが、アイデアワーキングでは、人となりを知る必要は一切ない。ずばり本題から始めて、あなたの課題に役立つことを聞き出したい。

これから出会う関係者全員を専門家とみなし、ここまで説明したルールに沿って話を聞こう。課題解決についての意見は求めない。あなたのサブ課題を過去に解決した戦術について尋ねよう。

■アイデアワーキングで少数の質の高い会話を交わす

アイデアワーキングのコツは、会話の締めくくり方にある。「大変助かりました。あまりお時間を取らせるのは申し訳ないので、私の課題について、ほかに話を聞かせて下さる方を紹介してもらえませんか?」と頼んでみよう。

10人紹介してもらえるかもしれないし、ゼロかもしれない。3人をめざそう。そしてそれらの人たちに連絡を取ろう。戦術について尋ね、同じ方法で会話を終え、さらに3人紹介してもらおう。3人が9人になり、9人が27人になる。そして戦術のリストもどんどん長くなっていく。

組織の人のつながりをイメージしたアイコン
写真=iStock.com/Vadim Sazhniev
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Vadim Sazhniev

ネットワーキングとアイデアワーキングの違いを理解できただろうか? ネットワーキングが、多数の質の低い会話を伴うのに対し、アイデアワーキングでは、少数の質の高い会話を交わす。1000人以上のネットワークを持っていると豪語する人もいるが、アイデアワーキングではどんなサブ課題についても27人を超える専門家に話を聞くことはほぼない。それ以上増えると、専門家が挙げる戦術が重複し始めるからだ。新しい戦術が得られなくなった時点が、アイデアワーキングのやめ時だ。

■ほとんどが「一度きり」だからこそいい

また、専門家と連絡を取り合う期間の違いにも注目してほしい。ネットワーキングでは、その期間は「無期限」だ。将来連絡を取る必要が生じるかもしれないから、できるだけ多くの相手をいつまでもリストにとどめておきたい。だがアイデアワーキングでは、専門家と話すのは一度きりだ。

もちろん例外はあって、専門家がとくに親身になってくれたり、あなたの課題に興味を持ってくれたりする場合は、あとで思いついたアイデアについて意見を求めてもかまわない。

たとえばサブ課題が5つある場合、それぞれのサブ課題のアイデアワーキングを並行して始めよう。サブ課題は互いに絡み合っているから、尋ねる内容が重複することもあるだろう。

それはまったく問題ない。専門家が時間の余裕があり、関連する知識を持っている場合は、同じ専門家に別のサブ課題に関する質問をしてもいいだろう。

■「人脈づくり」に罪悪感を感じることもなくなる

ネットワーキングとアイデアワーキングの違いは、もう1つある。あなたにとって、どちらがやりやすいだろう? ビジネススクールに行く目的によく挙げられるのが、人脈づくりだが、私の教え子の大半が、人脈づくりがうまくいっていないと感じている。

授業で「ネットワーキングが得意な人は?」と聞いても、ほとんど手が挙がらない。自分を売り込むのが苦痛で、人をだましているような気分になる、と悩んでいる。内向的な人はネットワーキングを拷問のように感じる。

授業でアイデアワーキングを説明すると、あちこちからホッとしたようなため息が漏れる。私がこれを説明するのは、選択マップの探索を開始する直前だ。そしてその後の数週間というもの、学生が引きも切らずに私のところにやってきて、アイデアワーキングを始めました、教えてくれてありがとう、と打ち明けてくれる。

学生は、普通のネットワーキングでもこの手法を使っているという。勤め先や出身大学、ペットなどのありきたりの雑談をする代わりに、自分の抱えている課題を簡単に説明し、何かうまい方法を知りませんかと尋ねるのだ。たとえ具体的な成果に結びつかなくても、会話のタネとしてずっと面白いし、普通のネットワーキングよりもよい人と知り合うことができる。

■「弱い紐帯」からはより価値の高い知識を得られる

ネットワークは社会科学の主要な研究分野になっている。ネットワークは、「強い紐帯」と「弱い紐帯」の2種類に区別できる。強い紐帯はしょっちゅう連絡を取り合う相手、弱い紐帯はめったに交流しない知り合いを指す。

アイデアワーキングは、弱い紐帯をつくる取り組みだ。社会学者マーク・グラノベッターの有名な研究によると、強い紐帯で結ばれた人々は環境が似通っているために、同じような知識を持っていることが多いのに対し、弱い紐帯からは、より目新しく価値の高い知識が得られるという。

■交流の浅い人と組むほうが創造性が高くなる

グラノベッター以降の多くの研究によって、弱い紐帯の強みが裏づけられている。2007年のリー・フレミング、サンチャゴ・ミンゴ、デビッド・チェンによる研究は、1人以上の人と共同で特許を取得した3万5000人の発明家のデータを収集して、強い紐帯(過去に共同で特許を取得したことのある集団)と弱い紐帯(初めて共同で特許を取得した集団)に分類し、弱い紐帯が生み出す特許の方が数が多く、創造性も高い(まったく、またはほとんど類がない)ことを示した。

シーナ・アイエンガー『THINK BIGGER 「最高の発想」を生む方法』(NewsPicksパブリッシング)
シーナ・アイエンガー『THINK BIGGER 「最高の発想」を生む方法』(NewsPicksパブリッシング)

弱い紐帯の例をもう1つ紹介しよう。ジュゼッペ・ベッペ・ソダ、ピア・ビットリオ・マヌッチ、ロナルド・S・バートは、イギリスの長寿SFテレビドラマ「ドクター・フー」の各エピソードの制作者と監督、脚本家のリストを分析した。制作者はエピソードの監督を連続して担当することが多かったが、監督と脚本家はそうではなかった。

ソダらは独自開発した指標を使って、各エピソードの創造性を評価し、それらを担当した制作者と監督、脚本家が過去に組んだことがあるかどうかを調べた。結果はどうだったか? 過去に組んだことのない、弱い紐帯のチームほど、創造性の高いエピソードを生み出していた。

これらを踏まえると、弱い紐帯が領域外の戦術を生み出しやすいことがわかる。

■「打ち解けられるか」を悩む必要はない

またこのことも、多様性を成果につなげるためのヒントになる。強い紐帯は、主に家族や友人、同僚などだから、一般に弱い紐帯よりも多様性に乏しい。アイデアワーキングは、多様性の高いつながりを求める理由となり、手段となる。人は生来、異質な相手とのコミュニケーションが苦手だが、アイデアワーキングをやればすぐに打ち解けられる。

見ず知らずの専門家に連絡を取る場合でも、課題の質問をすれば緊張がほぐれる。あなたは専門家と友だちになろうとしているのではないし、彼らを自分のネットワークに加えようとしているのでもない。彼らを課題の領域の専門家として仰ぎ、興味深い知的な質問をしているのだ。

ほとんどの人は気をよくして、喜んで話をしてくれるだろう。多様な専門家と話せば話すほど、領域外の戦術がたくさん見つかり、創造性の高い解決策を生み出せるようになる。

----------

シーナ・アイエンガー コロンビア大学ビジネススクール教授
心理学者。イノベーション、選択、リーダーシップ、創造性研究の世界的第一人者。彼女の選択理論(商品の種類は少ない方が売上が多い)はマーケティング業界で広く知られる。同理論を書籍化した『選択の科学』(文春文庫)は各国でベストセラーに。日本ではNHK「コロンビア白熱教室」として番組化もされた。 1969 年、インド移民の両親のもとカナダで生まれる。3 歳で眼の疾患を診断され、10 代後半で完全に視力を失う。にもかかわらず普通学校に進学することを選択し、大学進学後は「選択」を研究テーマとする。スタンフォード大学より博士号取得(社会心理学)。経営思想界のノーベル賞と称されるランキング「Thinkers50」に3 度にわたり選出。米大統領より卓越した若手研究者に贈られるPresidential Early Career Award も3 度受賞。現在はコロンビア大学ビジネススクールで人気講義「THINK BIGGER」を開講中。

----------

----------

櫻井 祐子(さくらい・ゆうこ)
翻訳家
京都大学経済学部卒。大手都市銀行在籍中にオックスフォード大学大学院で経営学修士号を取得。訳書にアイエンガー『選択の科学』(文春文庫)、ソニ『創始者たち』、シュミット他『1兆ドルコーチ』(以上ダイヤモンド社)、サンドバーグ&グラント『OPTION B』(日本経済新聞出版)、クリステンセン他『イノベーション・オブ・ライフ』(翔泳社)、『マイケル・ポーターの競争戦略』(早川書房)など多数。

----------

(コロンビア大学ビジネススクール教授 シーナ・アイエンガー、翻訳家 櫻井 祐子)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください