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60代からは野菜を最初に食べてはいけない…介護と無縁な人でい続けるための"効果的な食べ方"【2023編集部セレクション】

プレジデントオンライン / 2023年12月1日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

2023年上半期(1月~6月)にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2023年6月27日)
中高年の食生活は何に気をつければいいか。管理栄養士の森由香子さんは「60代がダイエットに挑むのは危険すぎる。特にたんぱく質不足には注意すべきだ。食べる順番も『野菜ファースト』でお腹を満たすのではなく、『肉・魚ファースト』に切り替えるといい」という――。

※本稿は、森由香子『60歳から食事を変えなさい』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

■“年をとったら食べる量を減らす”は大間違い

60歳を過ぎた方に栄養指導をしていると、「メタボなので、まずはやせないとだめですよね」とご自分からおっしゃる方が少なくありません。

確かに肥満はよくありません。内臓脂肪型肥満に加えて高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病がある人は、バランス良く食べながら減量したほうがよいです。

しかし、60歳を過ぎた方が若いときと同じような感覚で激しいダイエットに挑むのは、健康になるどころか、むしろ危険。体脂肪だけでなく筋肉も減ってしまい、からだが老いていく大きなきっかけになりかねません。

テレビやネット上には、小食や粗食をすすめる情報や、“○○だけダイエット”といった極端な偏食をすすめる情報があふれていますが、管理栄養士の視点からすると、おすすめできないものが非常に多いです。

ほとんどは若くて健康な人を想定しているもので、60歳以上の方が無理に行えば、たとえやせたとしても、栄養不足に陥ったり、病気の引き金になったり、疲れやすくなったりしてしまうでしょう。

それに、“年をとったら食べる量を減らす”という考え方も、根本的に間違いです。

望ましい栄養摂取量は、高齢者も若者もほとんど変わりません。

“年齢が上がるにつれて活動量が低下するし、太っているよりやせているほうがよいだろう”と、食べる回数や量を減らしてしまう人がいますが、年齢とともに栄養を消化吸収する機能が低下してくるため、しっかり食べて栄養補給することは、60歳以上の方が若さと健康を保つために、必要不可欠なのです。

■粗食やダイエットで不足させてはいけない栄養素

60歳前後になってくると、食が細くなってくるし、便秘や頻尿の問題で、食べる量や飲む量を意識的に減らしてしまっている人もいます。

こうなると、便の量が減り、腸の動きが弱くなって、さらに食べなくなるという、負のスパイラルに陥りかねません。

何より注意していただきたいのは、粗食や不適切なダイエットによる、たんぱく質不足です。

毎日の食事の中で、たんぱく質をしっかりとらないと加齢とともに筋肉量が減少し、かつ筋力が減少した状態である「サルコペニア」を招きやすくなってしまうからです。

サルコペニアになると、そこから「ロコモ」へ進んでしまう人が出てきます。ロコモとは、ロコモティブシンドロームの略で、運動器(骨、関節、筋肉)に障害があるために、歩行や筋力、バランスなどが低下し、日常生活に影響が出つつある状態、あるいはすでに影響が出ている状態のことで、ひとりで自由に移動することがままならなくなっていきます。

今現在、まだ介護とは無縁の方でも、60歳を過ぎたら1日でも早く予防に努めるにこしたことはありません。

要介護の最初のきっかけとなりやすいサルコペニアを防ぐためにも、食事からしっかりたんぱく質を摂取するよう、十分に注意してください。

日本人の食事摂取基準2020年版によると1日のたんぱく質推奨量は、15~64歳の男性が65g、65歳以上の男性が60g、18歳以上の女性が50gです。欲を言えば、毎食少なくとも20gずつとるのが理想です。

たとえば、以下のような食事です。

【朝食】 食パン8枚切り2枚/8.0g+卵1個50g/6.1g+牛乳(180ml)/6.1g=合計たんぱく質20.2g

【昼食】 ごはん軽く1杯(120g)/3.0g+鶏もも肉(80g)/15.2g+プロセスチーズ1個20g/4.5g=合計たんぱく質22.7g

【夕食】 ごはん軽く1杯(120g)/3.0g+さけ1切れ(80g)/17.8g+納豆小パック(20g)/3.3g=合計たんぱく質24.1g

毎食、しっかり食べてたんぱく質を補い、サルコペニアを予防していきましょう。

腎臓病や腎機能が低下している方は、進行度にあわせてたんぱく質を摂取する必要がありますので、医師あるいは管理栄養士にご相談ください。

たんぱく質の含まれる食材
写真=iStock.com/a_namenko
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/a_namenko

■60代からは、野菜ではなく「肉・魚ファースト」で

近年、「野菜ファースト」や「ベジファースト」という言葉が広がりました。これは、食事の際、野菜を先に食べることで、血糖値の上昇を穏やかにし、糖尿病などの生活習慣病を予防するという考え方です。

野菜に含まれる食物繊維には、糖質の消化吸収を遅らせるはたらきがあるため、「野菜ファースト」が健康的な食事法として推奨されるようになったのです。

最初に野菜をたっぷり食べると空腹も和らいでくるので、それ以外の食品の食べ過ぎ予防につながり、ダイエットによいと考えられていました。

確かにこうした理屈は、基本的に間違ってはいません。

しかし私は、60歳を過ぎた方には「野菜ファースト」は基本的におすすめできません。なぜなら、野菜を食べることでお腹がかなり満足してしまい、肉や卵といったたんぱく質が食べられなくなってしまう人が意外と多いからです。

先日も、70代の女性にもっとたんぱく質をとるようにと栄養指導をしたのですが、「いつも丼いっぱいの生野菜を食べてから、おかず、ごはんの順番で食べているけれど、野菜だけでお腹がいっぱいになって、おかずは残りがちで、結局ごはんは食べられなくなってしまうことが多いのです」とおっしゃっていました。

これでは、たんぱく質を中心に、栄養がまったく足りない状態です。野菜中心の食事を続けているぶんには問題ないだろうと思われていたようですが、とんでもありません。特に小食の方は、野菜でお腹いっぱいになりやすいので気をつけてほしいです。

■筋肉の量や質が低下すると「虚弱」を招く

日々の食事では、たんぱく質の摂取量をまず確保しないと、筋肉の量や質が低下し、「フレイル」を招きやすくなります。

フレイルとは、英語で「虚弱」を表す言葉です。

世界共通基準はまだないのですが、体重減少、筋力低下、疲労感、歩行速度の低下、身体活動の低下など、さまざまな症状がいくつも重なっているような状態のことをいいます。

森由香子『60歳から食事を変えなさい』(青春出版社)
森由香子『60歳から食事を変えなさい』(青春出版社)

サルコペニアのような身体的な問題に限らず、認知機能の衰えなど、精神的・心理的問題、一人暮らしや経済的困窮などの社会的問題なども含んだ考え方で、要介護状態の前段階と位置づけられています。

たんぱく質をはじめとした栄養不足と運動不足により、60歳を過ぎてサルコペニアが発生すると、やがてロコモに、さらにはフレイルへと進行してしまい、要介護の状態に近づいていく可能性があるわけです。

実際、日本人の食事摂取基準2020年版では、高齢者のフレイル及びサルコペニア発症予防の観点から、たんぱく質の目標量の下限値が、50~64歳で1日の総摂取エネルギー量の14%、65歳以上で15%と、それぞれ13%から引き上げられました。

60歳を過ぎた皆さんは「野菜ファースト」をやめて、肉や魚、卵、大豆・大豆製品から食べる、「たんぱく質ファースト」に切り替えましょう。それから野菜、最後にごはんという順序で、バランス良く召し上がることをおすすめします。

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森 由香子(もり・ゆかこ)
管理栄養士
日本抗加齢医学会指導士。東京農業大学農学部栄養学科卒業。大妻女子大学大学院(人間文化研究科人間生活科学専攻)修士課程修了。2005年より、東京・千代田区のクリニックにて、入院・外来患者の血液検査値の改善にともなう栄養指導、食事記録の栄養分析、ダイエット指導などに従事している。また、フランス料理の三國清三シェフとともに、病院食や院内レストラン「ミクニマンスール」のメニュー開発、料理本の制作などを行う。抗加齢指導士の立場からは、“食事からのアンチエイジング”を提唱している。『おやつを食べてやせ体質に! 間食ダイエット』(文藝春秋)、『1週間「買い物リスト」ダイエット』(青春出版社)など著書多数。

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(管理栄養士 森 由香子)

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