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日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか…半数以上が「どうでもいい仕事」に押しつぶされる残念な現実

プレジデントオンライン / 2023年12月6日 9時15分

出所=『日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか』

なぜ日本の会社員は「やる気」を失ったのか。経済ジャーナリストの渋谷和宏さんは「『どうでもいい仕事』が蔓延しているからだ。それは経営陣や上司の属人的な欠陥や無能ぶりに起因するのではなく、誤ったマネジメントに深く根差している」という――。

※本稿は、渋谷和宏『日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか』(平凡社新書)の一部を再編集したものです。

■「どうでもいい仕事」に押しつぶされる会社

初めに独自アンケートの結果を紹介しましょう。社員のやる気をくじくような「無意味な仕事」「どうでもいい仕事」がどこまで日本企業にまん延しているのか、全国に住む20歳以上、49歳以下の会社員150人を対象にインターネットを使って調べた結果です。結論を言えば、「無意味な仕事」「どうでもいい仕事」のまん延ぶりは想像以上でした。(図表1)

まず「あなたの会社・職場には『無駄に思える仕事』『意味のない仕事』がありますか?」と質問したところ、「はい」と回答した人は79人で52.67%に達しました。過半数の会社員が「無意味な仕事」「どうでもいい仕事」があると答えているのです。それらはどんな仕事なのでしょうか。「あなたの会社・職場には『無駄に思える仕事』『意味の無い仕事』がありますか?」という質問に「はい」と答えた人たちに複数回答で聞いたところ、以下の結果になりました。(図表2)

【図表2】無駄な会議、書類提出が上位に
出所=『日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか』
「無駄な会議・打ち合わせ」 51人、64.56%
「無意味な書類提出」 35人、44.30%
「無意味な社内ルールの順守」 32人、40.51%
「意義が不明な慣例となっている業務」 24人、30.38%
「過剰な上司などへの報告」 23人、29.11%
「煩雑な手続き」 22人、27.85%
「直接関わりのない部署・役職への根回しや調整」 21人、26.58%
「上司や経営陣による思い付きの指示」 20人、25.32%

これらの項目を見て、「うちの会社にもあるな」と思い当たった読者は少なくないと思います。私自身、40年近い企業への取材経験を通して、上記のような事例を数多く見聞きしてきました。そもそも上記の無駄な仕事の内容は私がかつて取材した事例をもとにアンケートの選択肢として並べたものです。

■「会議の報告内容を検討する会議」も存在する

「無駄な会議・打ち合わせ」で言えば、中堅の専門商社で部長を務める社員の証言を思い出します。彼は毎週、5件ほどの会議に出席し、そのほとんどがダラダラ続く無駄な報告会だと苦笑していたのです。彼は言いました。

「なかには2時間近くかかる会議もあるんです。そこでは出席者各自が担当するプロジェクトの進捗(しんちょく)報告を行い、その場で質問や意見をやりとりするのですが、会議で決めることや相談・確認すべきことがあいまいで、いったい何のために開いているのか実はよくわかりません。おそらく担当役員が、所管するプロジェクトの進捗状況を知って安心したいだけなんだろうと思います。我々にとっては長時間会議が負担となり、本来の仕事に集中できなくさせてしまう非効率の根源でしかありません」

大手出版社の営業担当者が「毎週、会議でどのように報告するかを検討するための会議を開いている」と打ち明けてくれたこともありました。冗談みたいな話ですが、検討会議を毎週開催する上司は大真面目で、数人の部下たちと時にダメ出しを交えながら会議での報告内容をすり合わせるのだそうです。

費やされる時間は毎回およそ1時間だそうですから、仮に5人が参加すれば毎週5時間もの貴重な時間が奪われてしまう計算になります。それらの時間を本来の仕事に振り向ければ労働生産性は確実に上がるはずですが……。

■「無意味な社内ルール」に苦しめられる

「無意味な書類提出」「無意味な社内ルールの順守」「意義が不明な慣例となっている業務」などの項目にぴんと来た読者もいらっしゃるでしょう。

「毎日、営業日報を提出させられる。何のためなのかわからない」(機械部品メーカーの営業担当者)
「研修を受けたらその都度、学びや気づきについて記したレポートを提出させられる。忙しいので、そんなことに割く時間が本当にもったいないと思う」(中堅流通業の若手社員)
「管理部門が送りつけてくる『特集などの編集に使用した資料はいつまで保管しているのか』といったどうでもいいようなアンケートに毎週のように答えさせられ、肝心の雑誌編集に投入したい時間を奪われてしまう」(大手出版社の雑誌編集長)
「訪問先への直行、訪問先からの直帰は禁止、いったん出社・帰社しなければならないルールですが、正直、意味がわからない」(中堅の専門商社の営業担当者)

これらはすべて私の取材ノートからの抜粋です。

アンケートでは「あなたは『無駄・無意味な仕事』をやらされていますか?」とも尋ねてみました。結果は「はい」が66人で44%でした。5人に2人以上が「無駄・無意味な仕事」をやらされていると考えているのです。しかも20代の若手会社員に限ってみると、56%と割合は高くなります。(図表3)

【図表3】20代では過半数が「無駄な仕事をやらされている」と回答
出所=『日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか』

無駄・無意味な仕事は発言力に乏しい若手社員に押し付けられがちであるという実情がわかります。

■1日の4分の1が「無駄な仕事」になっている

さらに懸念されるのは、「無駄・無意味な仕事」に費やされる時間の長さです。「無駄・無意味な仕事」をやらされていると考える66人に、「あなたは『無駄・無意味な仕事』に、1日のうち何時間程度を費やさせられていると感じていますか?」と聞いたところ、回答は以下のとおりでした。(図表4)

【図表4】「無駄な仕事」1日1時間~2時間が5割弱
出所=『日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか』
「1時間未満」 24人、36.36%
「1時間以上、2時間未満」 31人、46.97%
「2時間以上、3時間未満」 6人、9.09%
「3時間以上、4時間未満」 1人、1.52%
「4時間以上、5時間未満」 1人、1.52%
「5時間以上」 1人、1.52%
「わからない」 3.03%

回答数が最も多かったのは「1時間以上、2時間未満」で31人、46.97%にのぼりました。1日に8時間働くとして、最大でその4分の1の仕事を「無駄・無意味」だと感じている社員が半数近くにのぼるのです。

深刻なのはそれだけではありません。「無駄・無意味な仕事」をやらされていると考える66人に「今後この問題は改善されると思いますか?」と尋ねたところ、「思わない」が38人で、57.58%に達しました。6割近くがこれからも「無駄・無意味な仕事」をやらされ続けるだろうと回答したのです。(図表5)

【図表5】無駄な仕事「改善されない」は6割近く
出所=『日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか』

■改善される兆しもなく、やる気を失う

一方、「今後この問題は改善されると思いますか?」との質問に対して「はい」と答えた人は10人で、15.15%に過ぎませんでした。経営陣や上司は、社員が「無駄・無意味だ」と思っている仕事を、必要で意味がある仕事だと考えているのでしょうか。それとも「無駄・無意味だ」とは考えていても、「これまでやってきたから」などの理由で続けているのでしょうか。

いずれにしても改善される予感を抱いている社員は少数派です。無駄で無意味な仕事のまん延がどれほど社員のやる気を失わせているのか、想像に難くありません。無駄で無意味な仕事は、つまるところ誰のためにもならない仕事です。

本人の成長にも、会社の業績向上にもつながらず、顧客や消費者に利益をもたらすわけでもありません。やらされる社員にとっては苦役に等しい仕事であり、納得感のかけらも得られません。そんな仕事を前向きにこなせる社員はきっとどこにもいないでしょう。それどころか無駄で無意味な仕事を毎日毎日、1時間から2時間も押し付けられていたら、だれだって意欲を蝕まれ、やる気を失っていきます。

■「無意味な仕事」がまん延した根本原因

加えて無駄で無意味な仕事は、本来やるべき仕事の能率を著しく下げ、成果を損ないます。成果が上がらなければ、人件費の削減を目的とする「成果主義賃金制度」によって、賃金を据え置かれるか、減らされてしまうでしょう。そうなればやる気はいっそうくじかれてしまいます。

頭を抱えているビジネスマン
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

さらに言えば、無駄で無意味な仕事が常態化している会社や職場では、日々の仕事に幸福や楽しさを感じることもないでしょう。これもまた日本企業の活力を削ぎ、社員のやる気を失わせる一因になっています。

ではなぜ社員のやる気をくじくような「無意味な仕事」「どうでもいい仕事」がここまで日本企業にまん延してしまったのでしょうか。なぜかくも改善の兆しが見えないのでしょうか。この問いについても、結論を先に言いましょう。原因はマネジメントに問題があるからです。「無意味な仕事」「どうでもいい仕事」のまん延は、経営陣や上司の属人的な欠陥や無能ぶりに起因するのではなく、誤ったマネジメントに深く根差しているのです。

■「マイクロマネジメント」の問題点

では誤ったマネジメントとは何でしょうか。

それは経営陣や上司が、社員に対してやることなすことに報告を求め、細かい指示を出す、過剰な社員管理です。マイクロマネジメントとも言います。大企業を中心に、多くの日本企業ではこれが組織的に行われているので、社員は些末な仕事の予定調和的な実行を指図され、行動を監視され、上司への確認や報告に忙殺されているのです。

私の取材ノートにはマイクロマネジメントの事例もいくつか記されています。消費財メーカーに勤める30代の社員は、商品の販促イベントを企画・展開するプロジェクトに加わった際、プロジェクトリーダーがことあるごとに上司から報告を求められ、企画についてダメ出しされたり、「こうしろ」「ああしろ」と細かく指示されたりするのをはたで見ていて暗い気持ちになったと話してくれました。

「プロジェクトリーダーは毎日のように部長に報告を求められ、会議室で1時間ほど部長との面談の時間を費やさせられていました。面談が終わるとプロジェクトリーダーは私たちを集めて、例えば『イベントを告知するチラシやポスターの文字色の赤みを少し強めろと言われた』などと部長の指示を伝達するんです。何のためのプロジェクトリーダーなのかわかりません。任せられないのなら、部長がすべて仕切ればいいと思うんですが、具体的な作業はあくまでプロジェクトリーダーにやらせるんですよね」

■「指示待ち族」を生んでしまう

先ほど、「毎週、会議でどのように報告するかを検討するための会議を開いている」という大手出版社の事例を紹介しました。話をしてくれた営業担当者はさらに、地方へ出張する際には訪問先や目的、交渉内容などについて営業担当役員に報告し、追加の訪問先や交渉内容などについて指示を受けると教えてくれました。

「子どものお使いのような話でしょう? でもそれで終わりではないんです。出張から戻ったら訪問先や交渉の内容、結果について営業担当役員に報告しなければならないんです。箸の上げ下ろしまで指示されていると仕事の流れが遅くなるだけでなく、仕事自体がだんだん嫌になってきますね」

営業担当者が言うようにマイクロマネジメントは無駄で無意味な仕事を増やし、本来やるべき仕事の能率を下げ、社員のやる気を蝕んでいきます。マイクロマネジメントの弊害はそれだけではありません。社員の行動を監視し、箸の上げ下ろしにまで指示を出すような過剰な管理は、社員の自主性を損ない、受け身にしてしまいます。

上司から細かく指示を出され、干渉されていると、部下はどうしても上司の顔色を窺いながら仕事をするようになります。それどころかやがて自分で考えることをやめて、上司の指示を待つようになってしまいます。自分たちからはアイデアを出さない、動こうとしない、言われたことしかやらない、やるべきことがわかっていても指示を待つ。そんな自主性、主体性を欠いた指示待ち族の誕生です。

■失敗はしないが成功もしない社員が増えるだけ

加えて上司の指示通りに仕事をしていると、大きな失敗を避けられるかもしれませんが、成功体験も得られないので、成長の機会を奪われてしまいます。自主性、主体性を欠いた指示待ち族は、独創的な機能や魅力的なデザイン、効果的なブランディングを生み出す社員とは正反対の存在です。指示待ち族の増加は日本企業の国際競争力をさらに損なってしまうでしょう。

渋谷和宏『日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか』(平凡社新書)
渋谷和宏『日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか』(平凡社新書)

この指摘に対して「経営陣や上司の指示が正しければ、指示待ち族でも独創的な機能や魅力的なデザイン、効果的なブランディングを打ち出せるのではないか」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。経営陣や上司は、管理のための管理で日々忙しく、常日ごろから顧客や消費者に接しているわけではありません。彼らが顧客や消費者に接していたのは昔の話です。彼らが知っている顧客や消費者のニーズは過去のものです。このため彼らの指示は、今の顧客や消費者のニーズとずれてしまいがちです。

やる気と能力のある社員はそんな指示を出す経営陣や上司に反発するでしょう。しかし反発しているうちはまだましです。やがて反発する気力も薄れ、経営陣や上司の的外れな指示に唯々諾々と従い、当然の帰結として成果が上がらなくなってしまう。そんな事例は枚挙に暇がありません。

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渋谷 和宏(しぶや・かずひろ)
経済ジャーナリスト、作家
大正大学表現学部客員教授。1959年横浜市生まれ。84年法政大学経済学部を卒業後、日経BP社入社。日経ビジネス副編集長などを経て2002年4月『日経ビジネスアソシエ』を創刊、編集長に。ビジネス局長(日経ビジネス発行人、日経ビジネスオンライン発行人)、日経BP net総編集長などを務めた後、14年3月末、日経BP社を退職し、独立。日本テレビ「シューイチ」、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」などに、コメンテーターとして出演中。著書に、『文章は読むだけで上手くなる』(PHPビジネス新書)、『「IR」はニッポンを救う! カジノ? それとも超大型リゾート?』(マガジンハウス)、『東京ランナーズ』(KADOKAWA)、『働き方は生き方 派遣技術者という選択』(幻冬舎文庫)、『日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか』(平凡社新書)などがある。

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(経済ジャーナリスト、作家 渋谷 和宏)

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