もらいモノのお菓子をお裾分けした人から高級チョコのお返し…職場の気を微妙にする残念な気遣い
プレジデントオンライン / 2023年12月5日 11時15分
※本稿は、山本衣奈子『「気がきく人」と「気がきかない人」の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■気がきく人は人のために情報を集め、気がきかない人はネタのために情報を集める
「持っていくと喜ばれるもの」と聞いて、あなたならどんなものを思い浮かべますか?
お菓子やお花、相手がほしがっていた物など、色々と浮かぶかと思いますが、実は「情報」も喜ばれるものの1つです。
情報を集めようと思ったとき、検索サイトにまずキーワードを入れる人が多いのではないかと思います。そのキーワードに関連した情報を集めることはもちろんできますが、頭に浮かんでもいないキーワードを検索することはできません。
つまり、自分の力だけでは、自分が知ろうと思った情報しか手に入れられないのです。
だからこそ、気がきく人は「情報」に敏感で、大事にしています。人に会うときには、ずと言っていいほどその人が喜ぶ情報を探して持っていきます。
とはいえ、情報なら何でもいいわけではありません。ポイントは“相手が喜ぶ情報である”ということです。
例えば、次のような2人だったら、どちらの人にまた会いたいと思いますか?
・いつも楽しい情報や知りたかったことを教えてくれる人
・いつも悲しい話や暗い話、嫌味や誰かの噂話などをする人
ほとんどの人が前者を選ぶのではないでしょうか。
知人に、とても多くの人に慕われている社長がいます。職種や立場、年齢や性別や国籍などの垣根がまったくなく、その場であった知らない人とも、すぐに仲よくなって打ち解けてしまうという不思議な魅力のある人です。仕事でも、彼を紹介したいという人が後を絶たず、ほぼ紹介のみでびっしりスケジュールが埋まっているような状態です。
彼と関わりのある人はみんなこう言います。
「あの人と話すと楽しい」「あの人は色んなことを教えてくれる」「困ったとき、あの人なら何か知っているんじゃないかと思って、一番に思い浮かぶ」
その社長は、自分の専門分野以外にも様々な情報を持っていて、知りたいことのヒントをもらえるだけではなく、話をするだけで視野が広がっていく気にさせてくれる人です。
どうやって情報を集めているのかと気になっていた折、行動を共にする機会があり、気づいたことがありました。誰かがふと口にした言葉などをとてもよく覚えているだけではなく、目や耳にする情報を、誰かにつなげられないかとつねに意識しているのです。
例えば、イベントの告知ポスターを見かけると、「○○さんが最近こういうのに興味あるって言ってたんだよね」と言いながら写真を撮ってすぐに送ります。美味しい料理を食べると、「この食材はこういう風にも使えるんだね」と言って、教えてもらえる範囲でお店の人にレシピを聞きます。「自分で作ってみるんですか?」と聞くと、「いや、知り合いにパーティーメニューのアイデアを聞かれていたから、今度教えてあげようかなと思って」と言いながらメモをしていました。
つねに頭のどこかに、「この情報は誰の役に立つかな」という意識があるのです。
つまり、誰かを思い浮かべてから情報を探すのではなく、情報を見つけてからそれにつながる誰かをイメージしています。
もっと言えば、その情報が誰かの「役に立つ」「喜ばれる」ことを目的として集めているので、誰かが少しでも「嫌な気持ちになる」情報は、あまり目に入っていないようでした。
喜ばしくない情報を嬉々として集めてネタにすることで、本人は楽しそうである一方、その人の周囲からはどんどん人が離れていってしまっているケースも残念ながらよく見かけます。
「情報」は適切に使えば人と人をつなぐ架け橋にもなるものです。「情報」の価値をもっと大事にして、“喜ばれる人”になることで、人づきあいは気持ちよくもっと広がっていきます。
■気がきく人は受けた恩を世の中に返し、気がきかない人は恩を与えてくれた人だけに返す
人に親切にされたとき、あなたはどうしていますか?
「ありがとう」と感謝を伝える、お礼の品を送る、労働や手伝いなど行動で返す、色々なケースがあると思います。
以前知人の間でこの話になったときに、「いただいたものは、2倍にしてお返しするようにしている」と言う人がいました。例えば100円の品をいただいたら、後日200円のものをお返しするのだそうです。
確かに、それだけ感謝している、という気持ちは伝わるでしょう。
けれども、このやり方は相手に意図せずしてプレッシャーや負い目を感じさせてしまうことがあります。自分自身にとっても、返すことが負担になって相手の親切を素直に受け取れなくなることがあるので、気をつけたいところです。
以前、派遣社員のSさんという人と、一緒に仕事をしていたことがありました。とても物腰が柔らかく優しい印象で、仕事は細かい作業までミスなく行う頼もしい方でした。
あるとき、友人から珍しいお菓子をもらったので、Sさんに「珍しいのでよかったら」と1つ渡しました。すると翌日、Sさんがきれいに包装された小箱を持ってやってきて、「昨日のお礼です」と手渡してきました。見ると、有名な高級チョコレートのロゴがついています。
ありがたい反面、「お礼にしてはもらいすぎだし、これをもらいっぱなしというのも……」という気持ちが湧き、その日の帰りにクッキーのプチギフトを買いました。翌日それを持って行くと、「わざわざすみません」と受け取ってくれたので、これでバランスが取れたかなと、内心ホッとしていました。
するとまたその翌日、今度は某有名フルーツ店のミニゼリーの詰め合わせを持った彼女がやって来ました。さすがにこれではエンドレスになってしまうと思い、ここは感謝を伝えるだけで止めておくことにしました。
しばらくして、先輩が私のところにやって来て、こうこぼしました。「Sさんなんだけど手伝うたびにお礼といって何か買ってきてくれるので、ちょっと申し訳なくて、何か手伝いづらいんだよね……」
そう感じていたのは先輩だけではなかったようで、結果的に何となく、Sさんからの頼み事は避けたがる人が増えていきました。
仕事に関しては、知識や技術を渡すことや、協力することも業務の1つです。
もちろん「教えてくれた」「手伝ってくれた」という行動に対して感謝をすることは大事ですが、過度なお返しは逆に業務をやりにくくしてしまうことがあります。
感謝の気持ちを持つのは素敵なことですが、その気持ちは、何かを与えてくれた人に返すことだけがすべてではありません。
同じ職場に、私がとても頼りにしていた先輩がいました。知識も経験も豊富で、彼に相談して助けてもらったことは数知れません。
その先輩は、食事をしながら話を聞いてもらったときなどには、いつも奢ってくれていました。込み入った問題を抱えていたときには、しょっちゅう話を聞いてもらっていたのですが、さすがに毎回となると負担だろうなと思い、「今日は私が」と言ったことがあります。すると先輩は、笑いながらこう言いました。
「山本がもっと成長して後輩の面倒を見るようになったら、そいつに奢ってやって。俺も先輩にそう言われてきたから、今こうしてもらった恩を返してるんだ」
気持ちが楽になっただけではなく、恩を次世代につないでいく、その考え方ってとてもいいなと思いました。「必ずそうします」と言い、それ以来、先輩に対して引け目を感じることなく安心して頼ることができました。
プレッシャーは、人づきあいの邪魔をすることがあります。恩を返すことにこだわるのではなく、恩を循環させて行くことを大事にしていくと、笑顔になる人がもっと増えるのではないでしょうか。
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産業カウンセラー、E-ComWorks代表
「伝わる伝え方」の研究を重ねながらサービス業、接客、受付、営業、クレーム応対等の業務にて30社以上に勤務。コミュニケーション術の講師として企業や官公庁を中心に、コミュニケーション研修、プレゼンテーション研修、セルフマネジメント研修、マナー研修等を実施。年間180回近い企業研修や講演を行う。
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(産業カウンセラー、E-ComWorks代表 山本 衣奈子)
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