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50歳からは「働かないおじさん」と呼ばれるくらいがいい…和田秀樹が教える"定年後が充実している人の条件"

プレジデントオンライン / 2023年12月7日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/LumiNola

定年後の人生を充実させるためにはどうすればいいのか。医師の和田秀樹さんは「50代になったら、残業も若手育成もしなくていい。“働かないおじさん”と言われても気にせず、定年後の20年間のための準備に時間を使うことが大切だ」という――。

※本稿は、和田秀樹『50歳からの脳老化を防ぐ脱マンネリ思考』(マガジンハウス新書)の一部を再編集したものです。

■「あと10年の我慢」と考えるのは止めよう

50代に残された会社人生はあと約10年です。再雇用で65歳まで働けたとしてもそうなります。

するとどうしても「あと10年の我慢」と考えたくなります。この発想はもう止めましょう。なぜならろくな答えは出てこないからです。

「いまから大きな成果や会社への貢献は望めない。せいぜい、失敗のないように、地味でも平常の業務を堅実にこなしていくしかない」
「体力も気力も落ちているから以前のような無理は利かない。でも最後の10年だから燃え尽きるつもりで頑張らなくちゃ」

どちらにしても辛くて味気ない10年になってしまいます。

数字に表れる成果だけでなく、日ごろの言動にも注意してハラスメントを疑われないように振る舞わなければなりません。部下を率いる立場の人はとくにそうでしょう。若手社員の仕事観や職場への帰属意識は50代とはずいぶん異なっていますから、自分たちの常識がまったく通用しない場面にしばしば遭遇します。

■定時になったらさっさと退社、若手育成もしなくていい

出世をあきらめることも選択肢のひとつ。自分の仕事だけなら50代ともなればベテランですからそつなくこなせます。それだけならお安い御用でしょう。若手社員のサポートをしたり、相談相手になる必要もありません。定時になったらさっさと退社しましょう。

若手の育成も御免こうむりましょう。そのようなことは40代のキャリア社員に任せればいいのです。

すると、50代社員の存在感はなくなります。それこそが狙いです。「働かないおじさん(おばさん)」と言われようが「給料だけは二人前」と白眼視されようが一切気にしないことです。20代からずっと会社が不況に喘いでいるときに支えてきたのです。古い仕事観を押しつける上司の横暴にも耐えてきたのです。

存在感がなくなるのはむしろ好都合です。いるのかいないのかわからないくらいに存在感がなくなれば、「休まず、遅れず、働かず」を堂々と実行できます。職場に居るのはあなたの抜け殻で、実体は別のところにいます。

その「別のところ」とはどこか――を、まず考えてみましょう。

■50代は「定年後の人生への助走期間」

わたしは「50代は定年後の人生への助走期間」だと思っています。

60歳や65歳にゴールがあるのでなく、そこから先の20年間をいかに楽しく、やりたいことをやり尽くして過ごせるか、そのための準備期間が残りの10年だと考えてください。

助走ですから、頑張って走る必要はありません。身体の半分はまだ会社に置いたままですから、あくまで気楽な準備です。

会社なんて退職金を払ってしまえば社員のそれからの人生には何の関心もありませんから、定年後の20年は自分で作っていくしかありません。

けれども残りの10年に力を使い果たしてしまうと、定年を迎えたときにはもう余力がなくなっています。「しばらくのんびり暮らそう」としか考えなくなります。

公園で犬の散歩をする老夫婦
写真=iStock.com/mykeyruna
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mykeyruna

すると、半年や1年はあっという間に過ぎてしまいます。家の中でうろうろして過ごす。近所をぶらぶら散歩する。それぐらいしかやることがありません。身体は休まるかもしれませんが、気持ちが沈んできます。体力だってどんどん落ちてきます。そして、脳の老化が加速してしまいます。

現役時代は「自分の時間が欲しい」とあんなに願っていたのに、その時間を持て余す……。すると、たちまち70歳です。

「もうこんな歳か⁉」と気がついても、意欲も好奇心も失われていますからいまさら何かを始めようとか、好きなことや新しい世界に踏み出してみようという気持ちにはなれません。

■退職後の5年、10年があれば何でもできる

こうなるともう、頭に浮かんでくるのは「病気にならないこと」と「つつましく暮らすこと」だけです。つまり、会社人生のゴールが人生そのもののゴールということになります。

こんなバカバカしいことはありません。我慢を強いられた30年の会社人生、「もっと違う生き方ができたかもしれない」と思いながらもしがみつくしかなかった目の前の仕事。そのすべてから解放されて、やっと待ち望んだ自由が手に入ったというのに、何の意欲も生まれてこないのです。

10年、いや5年の時間があれば、いまできないどんなことでも形になります。新しく何かを始めたとしても5年続ければ一定のレベルに届きます。

たとえば、カメラが好きで会社勤めのころに「時間があったらあちこち旅行して写真を撮りたいな」と願っていた人が、愛用のカメラを手に日本中を車で旅行し、気に入った写真を撮りまくってフェイスブックやインスタにアップするぐらいのことは簡単にできます。

フォロワーが増えて仲間ができれば写真展を開くことだってできます。とにかく、5年でも10年でも、やりたかったことを自分が楽しみながら続ければ新しい世界が開けてくるのです。

定年後の20年を、会社人生が終わった後の長い休息時間と受け止めずに、むしろいままでやりたくてもできなかったこと、我慢していたことを存分に楽しむための幸福な時間と受け止める気持ちをまず取り戻してください。

■定年後最大の不安は「仕事も収入もなくなること」

定年後の20年に対する何よりの不安は、「仕事も収入もなくなること」というのが50代の本音だと思います。

長く続いた不況の時代を、一度もいい思いをすることもなく耐え抜いてこれたのも、「とにかく正社員の職を放棄してはいけない」と身に染みて感じてきたからです。まして50代ともなれば身動きが取れませんから、辛くても職場にしがみつくしかありませんでした。

そして心の奥にはいつも、いまの仕事も収入も失ったらどうなるんだという不安が居座り続けてきました。

この不安が定年後の20年を考えるときにまず膨らんできます。

「好きなことができる」「望んでいた自由が手に入る」といった希望よりもまず、不安と向き合わざるを得ないのです。

■「医者の資格を失ったらタクシーの運転手」と考える理由

そこでこの不安をまず振り切ってしまいましょう。

わたしは医者ですから、はっきり言っておカネになる資格を持っています。

でも、わたしは業界の批判を続けているので「もし何かの大きなトラブルを起こして、医者の資格を失ったり、奪われたら……」と考えるときがあります。そのときいつも頭に浮かぶのは「タクシーの運転手ならできるかな」ということです。

運転にはそこそこ自信がありますし、道もよく知っています。それどころか自分がタクシーに乗ろうとしてもなかなか空車が来ないときは、「反対車線を空車が走っているけど、なぜこっちを流さないのだろう?」と不思議になるときがあります。

医者ですから病院のタクシー乗り場を見て、「いまの時間なら遠距離の客をいくらでも拾えるのに」と思うこともあります。退院する患者にしろ外来の患者にしろ、みなさんタクシーを利用することが多いのです。

そういう光景を見ていると、つい「わたしだったら」と思ってしまうことがあります。

駐車中のタクシーの後部
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

■今までよりも少ない労働時間でも食べていくには十分

タクシーに限らず、輸送業界全体で運転手の人手不足が深刻になっています。

和田秀樹『50歳からの脳老化を防ぐ脱マンネリ思考』(マガジンハウス新書)
和田秀樹『50歳からの脳老化を防ぐ脱マンネリ思考』(マガジンハウス新書)

言うまでもなく、いまの日本のあらゆる業種業界が人手不足です。たとえば介護の現場では60代であっても週に2,3日の勤務で働くことできます。肉体労働は体力的に自信がないという人でも、勤務日数や勤務時間の少ない働き方を選べるようになっています。

働くといっても、いままでのように平日のすべての時間が奪われるわけではありません。週に何日か、あるいは一日の中の短い時間を必要とされる場所に提供するだけのことです。もちろん収入は減りますが年金と合わせれば食べていくぐらいはできます。ボーナスもなくなりますが、そもそも家のローンや子どもの学費といった大きな支出もなくなっているのですからとくに困りません。

そのかわり、現役時代のように複雑な人間関係に悩まされたり、上司や部下からの評価を気にすることもありません。どういう仕事に就くにしろ、身分はアルバイトやパートの待遇なのですから、決められた時間を淡々と勤め上げればいいだけのことです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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