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入社3日で「転職ってどう思いますか?」と上司に聞く…新入社員の"ドキッとする質問"の読み解き方

プレジデントオンライン / 2023年12月12日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

若手社員の「非常識な発言」にはどう対応すべきか。若手社員育成専門コンサルタントの伊藤誠一郎さんは「最近の若手社員のなかには、入社してすぐに上司に対して転職についての質問をする人がいる。いままでの常識で考えればありえないことだが、『若手社員は会社を辞めたがっている』と考えるのは間違っている」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、伊藤誠一郎『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです 若手社員は「肯定」と「言語化」で自ら動き出す』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

■「動かない」のではなく「動けない」

「最近の若手は言われるまで何もしない」
「最近の若手は言われたことしかやらない」

日々の仕事のなかで、若手社員に対して、このような不満を持つことはありませんでしょうか。これらは、企業の管理職の方々に「最近の若手社員をどのように感じていますか?」と、答えの範囲が広めの質問をしたときに最も多く聞かれる声です。中には「言われたことしかやらない指示待ち人間」「自分からはまったく動かない」と、よりはっきりした言い方をする人もいます。

若手社員の立ち振る舞いに大きな不満を抱えている上司や先輩が多いことがわかります。しかし、最近の若手は「自ら動かない」などとネガティブな感情を抱いているかぎり、彼らとの距離が縮まるはずがありません。一刻も早くこの状態を解消して若手社員と良好な関係性を築くためにも、彼らの真の姿を理解する必要があります。

若手社員は「動かない」のではありません。「動けない」のです。この視点に立つと、だいぶ受けとめ方が変わってくるはずです。

■動かなくても情報が手に入るのが当たり前

若手社員が「動けない」ことには、明確な理由があります。

彼らが生まれた2000年前後からインターネットが急速に発達し、2010年以降はスマホが一気に普及しました。今や生活するうえでの情報の多くはスマホを使って検索します。電車やバスの中でも今日のニュースをチェックしたり、仕事や趣味に関する調べ物をしたり、他人の日常をSNSで確認したりするなど、それらすべてでスマホを使って行います。そこには膨大な情報があり、検索すると答えが見つかるのです。

スマートフォンを使うイメージ
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

上司世代は大学生や社会人になるまでネットもスマホもないアナログ時代を経験してきた人も多いですが、最近の若手社員は異なる環境で育ってきたのです。彼らは、相手の都合に気を揉みながら家の固定電話から連絡をしたり、時刻表や地図を手に旅行の行程を調べたり、1つの言葉の意味を調べるのに辞書を行ったり来たりした経験をせずに育ったのです。こうした背景を踏まえると、単純に今の若手を「自分から動かない」と批判できるでしょうか。

まず、最近の若手社員は「自分から動けない」のだと受けとめること。「自分から考えたり、動いたりする経験をしてこなかった」と思いを及ぼすと、若い世代が少々気の毒に思えてきます。そして、寄り添ってあげたい気持ちが湧き上がってきます。

■「自分から動く」ことの意味を教えてあげるべき

スマホの情報も有益で便利ではありますが、それだけに頼らずに自分の頭で考えること、自分の意志で動くことの必要性と大切さを教えようという意識も芽生えてきます。

こちらが支援する気持ちで歩み寄ると、素直さを持って耳を傾けてくるというのも今の若手社員の特徴です。したがって、上司は「与えられた情報だけでは仕事で一人前になれないこと」「自分で周囲の状況や相手の感情を読み取って、言われなくとも行動する必要があること」それ自体から教えてあげるのです。

もし、若手に「それ(言われなくとも行動する必要があるとき)って具体的にどんなときですか?」と質問されたら、仕事で起こり得ることを1つひとつ教えてあげるのです。そのうえで、若手の成長のタイミングを見て「自分から動く」という本来の意味が理解できたかどうかを確認していきます。そうすれば、指示出し上司と指示待ち部下の関係には陥りません。

時に、「そんなことまで教えないといけないのか」と上司や先輩は思うかもしれません。しかし、「最近の若手は自ら動かない」と不満を抱えたまま時間をすごすより、「そんなこと」から教えてしまったほうが早いのです。

【POINT】
ネット検索で育った世代には、「自分から動く必要性」そのものから教える

■いきなり上司に転職の質問をする若手社員

ある会社で新入社員の面白い話を耳にしました。

なんと入社したての新入社員が、社内で平然と転職の話題を持ち出しているというのです。それは休憩中に新入社員同士がこっそり転職の話をしていたというのではありません。2年目、3年目の年の近い先輩に話したというのでもありません。課長や部長といった配属先の管理職と営業の同行をしている最中やランチタイムに堂々と転職について質問してくるそうです。

「課長は転職についてどのようにお考えでしょうか?」
「部長は転職することをどう思われますか?」

こうした事態に「彼らはいったい何を考えているのか?」「その質問にどう答えたらいいのか?」と管理職の方々は一様にうろたえてしまったそうです。たしかにちょっと想像すれば、入社早々の社員に転職を積極的に推奨する上司はほとんどいませんし、仮にいずれ自分も転職する意志があっても新人に明言する上司もいないことぐらいわかりそうなものです。そこをあえて聞いてくるのですから、若手の意図がつかめないのも無理はありません。

背を向ける男性のイメージ
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

■辞めたいのではなく、情報が欲しいだけ

じつは、私も同じような経験をしたことがあります。入社直後の新入社員研修で、参加者から「先生は転職についてどう思いますか?」と質問されたのです。

この新入社員研修の参加者は、入社後わずか3日でした。しかも、その場には採用した人事担当者も同席していましたし、配属前ではありますが複数の部門の部長や課長も顔を出している場での出来事です。さすがに全員が目を丸くして「講師はいったい何と答えるのか?」と一斉に私に向けて視線が集中したのが印象的でした。

私は焦りも緊迫感もなく平然と答えました。

「みなさんもご存じの通り、今や終身雇用が崩壊したと言われています。したがって、転職の可能性は普通に誰にでもあり得るでしょう。一方で、キャリアには専門性も欠かせません。ですから、1つの分野を継続することも大切だと思います」

すると、その新入社員は「わかりました。貴重なご意見をありがとうございます」と納得した表情で答えていました。この若手の発言が良いか悪いかというより、これが今の若手社員のフィーリングなのです。彼らは単なる情報収集の一環として、まるで検索サイトで情報を得るのと同じような感覚でただ知りたい転職のことを質問しただけです。周囲の人が感じた焦りや緊迫感などは本人たちにはいっさいなく、極めてドライな感覚で聞いています。

■「常識がない」と決めつけてはいけない

おそらくこれまでの会社員としての普通の感覚からすると、入社直後に「転職」という言葉を口に出すのは、次のようなさまざまな裏の解釈を想起させることが考えられます。

「私は何かあったらいつでも転職するつもりでいます」
「私は最初から会社に期待していません(状況によっては、ほかに移るつもりです)」
伊藤誠一郎『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです 若手社員は「肯定」と「言語化」で自ら動き出す』(日本実業出版社)
伊藤誠一郎『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです 若手社員は「肯定」と「言語化」で自ら動き出す』(日本実業出版社)

以前でしたら、「転職の話イコールそのような姿勢を含んでいる」と周囲に解釈されてもおかしくはありませんでした。「今年の新人の中には、とんでもないヤツがいるぞ」と社内が騒然とすることも十分考えられました。しかし、転職のことも単なる情報収集の一環と考えている新入社員には、そうしたネガティブな思いはありません。

むしろ管理職や研修講師なら豊富な経験を持っているはずだろうから、実態を踏まえた有効な情報が得られそうだと、ポジティブな考えを持っているくらいです。ただし、これは最近の若手社員は「常識がない」「場の空気が読めない」ともとらえられる一方で、従来とは異なる意識と価値観を持っているともとらえられます。その現実をしっかりと受けとめることができれば、彼らに対して否定的な感情を抱くこともなくなります。

■気持ちがわからなければ、直接聞けばいい

さらに付け加えると、最近の若手社員は発せられた言葉の意味を表面的にとらえる傾向があり、二次的な意味を包括的に解釈することが難しいことも知っておいてください。

たとえば、言葉の意味の受けとめ方も、若手社員はストレートです。若手社員に対して「頑張って」という言葉をかけた場合、そのまま「まだまだ頑張りが足りない」という意味で受けとめます。たとえ上司が、その言葉の裏に「君には伸びしろがある」「大きな可能性を感じている」という思いを含めていたとしても、若手社員には伝わりづらいのが現実です。

上司世代にとって「頑張って」は、さらなる期待を込めた言葉ですが、最近の若手の受けとめ方を理解して発言する必要があります。この話をするたびに、私は上司、先輩たちが発する言葉を思い出します。

「若手社員が何を考えているのかわからない」
「若手社員の本心が見えない」
「若手社員にこちらの気持ちが伝わっていないように感じる」

こうした声は、若手社員への指導や教育に関する研修を実施するための事前のアンケートで必ずと言っていいほど、しかも多くの上司から寄せられます。では若手が何を考えているのか、本心ではどう思っているのか、こちらの気持ちが届いているのかを上司からストレートに質問してみたのかどうかを確かめると、それはしていないという場合がほとんどです。つまり、核心には触れずに若手の表面的な表情や態度から何とか探り出そうとしているわけです。

それでは、若手社員の本当の心の中はつかめません。「先輩の背中を見ろ」「先輩から盗め」という考え方はもはや通用しません。同様に若手社員にも、もっと直接的で具体的な言葉のやりとりで相互理解を図らなければならないのです。

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伊藤 誠一郎(いとう・せいいちろう)
若手社員育成専門コンサルタント
株式会社ナレッジステーション代表取締役。若手社員育成研究所代表。総合型選抜指導塾リコット代表。1971年東京都出身。学習院大学法学部法学科卒業後、15年間にわたり医療情報システム、医療コンサルティング分野において提案営業、プロジェクトマネジメントの業務に従事。2009年に独立。著書に、『バスガイド流プレゼン術 天才ジョブズよりも身近な人に学べ』(CCCメディアハウス)、『出世する伝え方 「選ばれる人」のコミュニケーションの極意』(きずな出版)『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです 若手社員は「肯定」と「言語化」で自ら動き出す』(日本実業出版社)がある。

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(若手社員育成専門コンサルタント 伊藤 誠一郎)

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