「大学時代に実践した基本ばかりで、私には無意味です」新入社員にそう言われたプレゼン講師が返した答え
プレジデントオンライン / 2023年12月13日 11時15分
※本稿は、伊藤誠一郎『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです 若手社員は「肯定」と「言語化」で自ら動き出す』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
■新人研修で理不尽に振舞う若手社員
冷静で丁寧な指導を実践していると、それをいいことに反抗してくる若手社員もいて、上司や先輩を悩ませています。もちろん、反抗的な若手はごく一部にかぎられた話ではありますが、恒例行事のように毎年1〜2人は必ず出てくるという話も聞きます。私も新入社員研修で何度か遭遇した経験があり、たとえば次のようなケースです。
②メールの文章のわかりづらさを指摘したところ「私はこれで十分伝わると判断しました。先輩の読解力が低いのではないですか?」
③プレゼンテーション研修の最中に突然「大学時代に実践してきた基本ばかりで、私には無意味ですから参加したくありません」
①と②は、若手社員のOJTの指導係になった方から聞いた現場での話です。若手社員に1日も早く活躍してほしいとの思いを踏みにじられるような突然の反抗に、みなさん返す言葉が見つからずにうろたえてしまったそうです。言うまでもなく、若手社員の発言に正当性は見当たらないです。だからこそ、指導係の方はどう指摘していいのかわからず、瞬時に返す言葉が見つからなかったのでしょう。
しかし、上司や先輩はうろたえたりせずに、そんなときこそ毅然(きぜん)とした態度と言語化力と説明力で若手に真意を伝えなければなりません。
■暴論を吐く若手には毅然とした態度を取るべき
先に③についてから。新入社員からの講師である私に対する反抗でしたが、次のように返答しました。
私は真顔で正面から向き合い、このように冷静に説明したところ、その新入社員は10秒ほどの沈黙があった後、おとなしく席に着きました。その後、新入社員は何ごともなかったように受講していましたので、私もとくに神経質にならずにほかの社員と同じようにおだやかに接するようにしました。
支離滅裂な暴論で反抗してくる若手社員には、毅然とした態度をとるのが効果的です。こういうタイプは、うろたえるなど感情の揺れを見せてしまうと、根拠のない自信に火がついて、ますます反抗的な態度を強くしてきます。したがって、言語化力と説明力で客観的に対応しなければなりません。
■若手全員に向けたメッセージにするべき
また、反抗してくる若手社員とは1対1のやりとりをしようとするのではなく、ほかの若手社員も含めた全員に対してメッセージを投げかけるイメージを持つようにします。
目の前の相手を何とか説き伏せようとすると、「わかる、わからない」「納得できる、できない」など、どうしても主観的な議論になってしまいがちです。最悪の場合は、水かけ論に発展して収拾がつかなくなります。そこで、ほかの若手社員も視野に入れながら、共通点を意識すると客観的な説明ができるようになります。③の私の例で言うと「仕事」「義務」「給料」「社会人」というキーワードに反映されています。同じように①の例でも対応を考えてみます。
このように毅然と全員に向けたメッセージを投げかけるように対応します。
■第三者に向けて説明すべき
②のメールの指摘に対する反抗の例でも、わかりやすい文章を書く目的、それを判断するのは「あなた」ではなく第三者であることを説明します。
こうしてみると、どんな場面でも「仕事」「目的」「品質」「義務」など論点が共通していることがおわかりいただけると思います。反抗的な若手社員への対応は、周りのほかの若手社員への影響も考慮してください。彼らは、上司や先輩がどのような対応をするのかを注意深く観察しています。
もし2年目や3年目にもなって反抗してくる社員がいた場合、その後輩も様子をしっかり見ていますから、上司や先輩が毅然とした態度をとれるかどうかは極めて重要となります。だからこそ、反抗してくる本人だけでなく、広い視野で仕事の本質を説明することが求められるのです。
ほかの若手社員や上司、先輩も視野に入れて毅然とした対応をする
■客観的に部下を評価できているか
あなたは、部下の仕事ぶりを適正に評価できているでしょうか?
厳しすぎたり、逆に甘すぎたりしていないでしょうか? 人が人に対する評価ですから、多少のブレが生じるのは当然と言えます。しかし、そのブレがあまりに大きくなりすぎると、部下のモチベーションの低下につながります。若手への評価が厳しすぎると、至らない点ばかりが指摘されることになり、厳しい叱責こそされなくても心が折れてしまいます。逆に、甘すぎると達成感や成長感を持つことができなくなります。
「自分なんかいつもダメ出ししかされないよ……」
こんな会話が、若手社員向け研修の休憩時間中によく聞かれます。上司によって部下への評価とその受けとめ方があまりに異なるのは、印象や好みで左右されやすく、主観が強すぎる可能性があります。厳しくされがちな部下が本当に至らない点が多いのであれば仕方がありませんが、同じような行動に対して評価が分かれるのは大問題です。
こうした適正を欠く評価は、若手社員の組織に対する不信感につながり、やがて早期離職の理由になることも少なくありません。そこで上司の評価が適正さを欠く場合、大きな原因があることを理解してください。
■相手に応じて「100点の基準」を変えるべき
その多くは、「今の自分の基準」で若手社員を評価してしまうことにあります。
とくに評価が厳しすぎる人に多い傾向として、自らの経験をもとにお客様への対応、コミュニケーション、資料作成、スケジュール管理などそれなりに高いレベルに基準を置いているという点が共通しています。しかし、その基準のまま若手社員の仕事ぶりを測ってしまうと、いろいろと至らないと感じてしまい、辛口な評価になります。
一方、甘すぎる評価の多くは、決して過大評価しているわけではありません。若手社員と今の自分とを比べて「どうせ、たいしたことはできないんだから」という発想から、「この程度で仕方ない」という、ゆるい評価を下しがちです。上司は、自らにこうした傾向がないかどうか、自分を客観的に評価してみてください。
1年目の新入社員には1年目としての100点満点があり、2年目の社員には2年目としての100点満点があります。それは上司の仕事のレベルからすると、場合によっては、わずか10点、20点くらいにすぎないかもしれません。しかし、若手の経験に合った適正な評価をするためには、若手社員の成長度合いを基準にしなければならないのです。
今の時代、今の世の中、今の仕事環境における彼らの100点満点を新たに設定し直さなければなりません。若手社員を適正に評価することで、それが若手にとっても納得感があるものならば、「今の自分には何が足りていなくて、ではどうすればいいか」と自ら考えるようになります。
年次ごとの100点満点を明確にして適正かつ客観的に評価する
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若手社員育成専門コンサルタント
株式会社ナレッジステーション代表取締役。若手社員育成研究所代表。総合型選抜指導塾リコット代表。1971年東京都出身。学習院大学法学部法学科卒業後、15年間にわたり医療情報システム、医療コンサルティング分野において提案営業、プロジェクトマネジメントの業務に従事。2009年に独立。著書に、『バスガイド流プレゼン術 天才ジョブズよりも身近な人に学べ』(CCCメディアハウス)、『出世する伝え方 「選ばれる人」のコミュニケーションの極意』(きずな出版)『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです 若手社員は「肯定」と「言語化」で自ら動き出す』(日本実業出版社)がある。
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(若手社員育成専門コンサルタント 伊藤 誠一郎)
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