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「優秀人材になる方法」をあなたはもう知っている…「研修の内容を実行した人は2割だけ」という残酷な事実

プレジデントオンライン / 2023年12月13日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

仕事ができる人にはどんな特徴があるか。経営コンサルタントの安達裕哉さんは「仕事の能力向上に近道はない。そして能力向上を実感しているほど、そのことを正しく理解して、日々研鑽を積んでいる」という――。(第2回)

※本稿は、安達裕哉『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

■「仕事ができる人」は普段なにをしているのか

優れた技能やスキルを習得できるかどうかの本質とは、なんだろうか?

あるところに技術者がいた。彼はトップクラスの腕前を持ち、社内外で尊敬を集めていた。そして、なぜあのように生産性の高い開発ができるのか、皆はその秘密を知りたがった。あるとき、若い技術者たちは彼のもとに行き、「あなたのように早く開発をするための秘訣(ひけつ)を教えてください」と頼み込んだ。彼は快く応じ、「勉強会を開く」と約束した。後日、開かれた勉強会には、新人や若手が数多く詰めかけた。皆、彼が「どんな優れたノウハウを用いているのか」と期待して集まっていた。

彼は、「自分がやっていること」をまとめた数枚の資料を参加者に渡し、皆に向かって言った。

【技術者】ここに書かれていることをできるようになるまで練習してください。

そこにはいくつかの基本的な処理、関数の使い方、設計のコツなどが書かれていたが、とくに目新しいものではなかった。皆は口々に言った。

【若手1】こんなこと知ってます。
【若手2】もっと、役に立つことを教えてください。
【若手3】前に習いました。

それを聞き、彼は言った。

【技術者】では、これ以上教えることはありません。結局のところ、スキルを上げたいならばたくさんつくるだけです。
【若手1】でも、できるだけ効率よく技能を身につけたいんです。
【技術者】たった3日で身につけたことは、皆が3日で身につけられる。技能の向上の方法は、人それぞれ、自分で見つけるしかない。結局のところ、人より絵がうまくなりたかったら人よりたくさん絵を描くしかない。

■習ったことを実行できる人はほとんどいない

【若手1】でも……。
【若手2】そうかもしれませんが……。
【技術者】いい曲をつくりたければ、人よりたくさん曲をつくるしかない。効率のいい方法はあるかもしれませんが、だからといって、技能の向上に必要な時間が3年から1年になることはない。

【若手1】……。
【若手2】……。
【若手3】……。
【技術者】今日から毎日1時間練習すれば、1年後には何もやっていない人よりも365時間分、高い技能を身につけられる。10年なら4000時間近く。これはもう絶対に追いつかれない。それが、「卓越する」ということです。

私は長らく、さまざまな企業向けに研修を提供していた。もちろん研修で提供したノウハウや考え方は、それなりに練られたものではあったので、研修の満足度も9割を超えることがふつうであった。しかし、仕事で実際に成果を出すことに貢献できているかどうかはまた別の問題である。

追跡調査をすると、「研修で習ったことを実行した人」は約2割。これが現実の数値である。だが、その2割の方々は、「技能の向上」を確実に実感していた。結局のところ、仕事の能力を向上させるには近道はなく、時間をかける他はない。それは、最近では嫌われがちな「下積み」がどうしても必要であるということを如実に示している。

【見えないところで必ずしていること】
「下積み」を嫌がらず、成果を出すために実践し、持続する

■「自分の手に負えない者」こそ採用すべき

人を採用することに関して、本田宗一郎の含蓄のある言葉がある。

「どうだね、君が手に負えないと思う者だけ、採用してみては」

「言うは易(やす)く行なうは難(かた)し」の見本のような言葉だ。本田宗一郎は「自分の手に負えない者」こそが、優秀で採用したい人物だと言っている。本田宗一郎の器の大きさが表れている。本田宗一郎のこの言葉は、採用の本質を突いているが、この採用方法はふつうの人には実行が難しい。ほとんどの会社は「手に負えない人」を採用しないため、社員以上のレベルの人は、その会社に来ない。能力の高い人物を採用できないのは、自分たちの器が小さいからだ。

だから、実際には「器の大きい人物」が面接官にならない限り、その会社の平均以上の人材すら、確保するのが難しいのである。さまざまな会社で採用活動を見てきたが、応募者を見極めてやろうと言っていた面接官が、その実、応募者に見切られているなんてことは枚挙にいとまがない。したがって、採用活動をうまくやろうと思えば、まず「面接官の人選」が一にも二にも大事である。

面接
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

では、「器の大きい人物」をどのように判定すべきだろうか?

■「良い人材」をどう見抜けばいいか

私が少し前にお手伝いした会社も、面接官の人選に苦労した会社のうちの1社だった。その会社では伝統的に、チームリーダーと役員が面接官をしていたが、私が見る限り、有能な人物はそのうちのよく言って半分程度、残りは年功序列で、能力にかかわらずその地位に就いた人物であった。そこで私はおせっかいとは思いながらも、社長に言った。

【安達裕哉】いまの面接官だと、なかなかいい人が採れないかもしれません。
【社長】うむ。それは知っている。今年は彼らの適性を確かめてから、面接官に登用する。
【安達】適性ですか? どのように確かめるのですか?
【社長】では一緒にお願いします。ちょうどこれから適性を確かめる面談だから。

そう言って私をその場に残した。10分後、1人の役員が入室した。

【社長】今日は、採用の面接官をやってもらうかどうか、少し考え方を聞きたくて来てもらった。いまからする質問に答えてほしい。
【役員】はい。なんなりと聞いてください。

私は、「どんな質問をするのだろう?」と、期待していたのだが、意に反して、社長は役員にあたりさわりのない、ごく当たり前の質問を投げかける。

【社長】どんな人を採りたいか? 応募者の何を見るか? どんな質問をするか?

■「自分より優秀だと思う人を挙げてみてくれ」

応募者もそういった質問は想定済みらしく、あたりさわりのない、模範的な回答をする。

私は「どうしてこれで適性がわかるのだろう……」と、不思議だった。そして、20分程度の時間が経ち、社長が言った。

【社長】では、最後の質問だ。誰を面接官にすべきかの参考にしたいので、身のまわりで、自分より優秀だと思う人を挙げてみてくれ。

役員は不思議そうな顔をしている。

【役員】自分より優秀……ですか?
【社長】そうだ。

役員は苦笑しながら答えた。

【役員】まあ、お世辞ではないですが、社長、あとは○○さんです。
【社長】○○さんか、なるほど。まあ、役員のなかではたしかに頭抜けて優秀かもしれないな。ちなみに理由を教えてくれないか?

役員が理由をひと通り述べると、社長は「……うん、ありがとう」と言い、面談は終了した。その後、2人ほどの役員とリーダーに同じような質問をし、4人目の面接となった。彼はリーダーであったが、次期役員候補と目される人物であった。最初の役員と同じような質問が社長から投げかけられたあと、最後のお決まりの質問となった。

会議で説明をするビジネスウーマンの手
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

■いい部分も悪い部分も見抜いていた

【社長】では、最後の質問をいいかな? 誰を面接官にすべきかの参考にしたいので、身のまわりで、自分より優秀だと思う人を挙げてみてくれ。

そのリーダーは、ちょっと考えていたが、やがて口を開いた。

安達裕哉『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』(日本実業出版社)
安達裕哉『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』(日本実業出版社)

【リーダー】まずAさん、洞察力と、営業力が素晴らしいです。続いて、Bさん、営業力はあまりないですが、人望があり、人をやる気にさせる力がずば抜けています。リーダーのCさん、現場を任せたら社長よりもうまいでしょう……すみません。そして、うちの部のDさん、新人なんですが、ハッキリ言って私よりも設計する力は上です。
【社長】ずいぶんと多いな。

社長はニコッと笑ってリーダーに言った。

【リーダー】当たり前です。皆私よりもいいところがあり、そして、私に劣るところがある。
【社長】わかった。ありがとう。

役員が退出し、私と2人きりになり、社長は誇らしげに言った。

■「自分よりも優れた人」を活かせるかどうか

【社長】というわけで、面接官はアイツに決定だな。
【安達】そういうことですか……。
【社長】彼は器が大きいんだ。私よりも上かもな。私はまだまだ変なプライドがあるからな。
【安達】たしかに、面接官に変なプライドは邪魔ですね。
【社長】そうだろう。「身のまわりで、自分より優秀な人間を挙げてみよ」と言われて、挙げることのできた人数が、その人間の器の大きさだよ。
【安達】なるほど……。
【社長】今年こそ、採用をきちんとやりたいな。まあ、彼に任せれば大丈夫だろう。

そして、社長の予想通り、そのリーダーは素晴らしい人物を数多く採用した。時には応募者に教えを請い、時には応募者を説得し、八面六臂(はちめんろっぴ)の素晴らしい活躍だったそうだ。ほんとうに優れた人物は、他の人の優れたところもよくわかるという。

世界の富を独占した鉄鋼王、アンドリュー・カーネギーの墓誌にはこう刻まれているそうだ。

「自分より優れた者に協力してもらえる技を知っている者、ここに眠る」

最高の大きさの器を持つ人物の言葉だ。

【見えないところで必ずしていること】
まわりの人の自分より優秀なところを挙げられる、器の大きさがある

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
経営コンサルタント
1975年東京都生まれ。筑波大学環境科学研究科修了。デロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)で12年間経営コンサルティングに従事し、社内ベンチャーの立ち上げにも参画。東京支社長、大阪支社長を歴任。その後独立し、オウンドメディア支援の「ティネクト株式会社」を設立。コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。著書に『仕事で必要な「本当のコミュニケーション能力」はどう身につければいいのか?』、『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』(ともに日本実業出版社)、『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)などがある。

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(経営コンサルタント 安達 裕哉)

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