本当は"論破"なんてしないほうがいい…ひろゆきが考える「意見が対立する場面でやってはいけないこと」
プレジデントオンライン / 2023年12月15日 9時15分
※本稿は、ひろゆき『ひろゆきさん、そこまで強く出られない自分に負けない話し方を教えてください』(サンマーク出版)の一部を再編集してお届けします。
■相手の「判断の軸」をズラす
相手が自分で気づいたかのように話を持っていけると、物事がスムーズに動きます。勝ちにいく必要なんてまったくなくて、いかに「あなたの考えに乗ったほうが得だね」と相手に思わせるかが大事なんですよね。その方法の1つとして、相手が戸惑うような情報を提示してはどうでしょうか。
たとえば、不本意に「転勤しろ」と言われて、「嫌です!」と本音で断るよりも、「うちの妻が嫌がって、仕事をやめろと言われるかもしれません」と伝えたり、「その土地に詳しいBさんのほうが、会社にもメリットが大きいのではないでしょうか」などと提案してみる。
すると上司にしてみたら、「無理に命じて退職されるのと、代わりにBさんに転勤をお願いするのとどちらがいいのか?」といった想定外の選択肢が増えるわけです。要は、話の軸を「Aさんを転勤させるかさせないか」から、「Aさんを転勤させるか、Bさんを転勤させるか」、または「(転勤させて)Aさんがやめるか、(転勤させず)Aさんもやめないか」に、ズラしてしまうわけですね。
■大事なのは「得なほうを判断した」と思わせること
● 最初の判断軸
Aさんを転勤させるかorさせないか
↓
● その後の判断軸
Aさんを転勤させるかorBさんを転勤させるか
転勤させてAさんがやめるかor転勤させずAさんもやめないか
話の持っていき方にもよるんですが、「組織のために何がよいのか」という点でも、「AさんよりBさんを行かせたほうが、組織にとってよりいいことだよね」「Aさんがやめるよりやめないほうがありがたいよね」という話に持っていくことはできますよね。その提案がよければ、合理的な上司なら「確かにそっちのほうが得だね」となるはずです。
その時のコツとしては、「自分が転勤するかしないか」よりも、もっと上の目的を天秤にかけてしまいます。たとえば「そのほうが利益が出る」「物事がスムーズに進む」など、部署や会社にとって、もっといい手段・方法として提案すれば十分なんじゃないかなと思います。
大事なのは、その時相手に「自分は合理的に考えて得なほうを判断したな」と思ってもらうこと。「絶対行きたくないです」などと、自分の感情的・主観的な意見をぶつけても意味がありません。
■言い負かすことを目的にしてはいけない
勝つことを目的にしている限り、ポジションが高かったり味方が多くないと、なかなか勝てません。相手を言い負かして、それでうまくいく場合もあるにはありますが、日本ではそうしないほうがいいことのほうが多いと思います。
特に会社では、上司と論戦を繰り広げたところで、不利な戦いになるのは目に見えています。初めから上司のほうが立場が上で、会社のことを決めるのも上司です。議論そのものには勝てたとしても、かえって悪い結果になる可能性もあります。だからこそ、あくまで上司を、自分が思う流れに乗せていくという別の戦い方をすべきです。
一番よいのは、自分の考えを、さも相手自身が考えたことのように仕向けていく、ということです。
たとえば、会社で何か企画やプロジェクトを通したい時、「これをやりたいです。これがうまくいくと思うんです」と言い続けて説得を試みるより、決済者である上司自身がその案を思いついたかのように思い込ませたほうが、企画案やプロジェクト案が通る可能性は上がります。上司にとっては「自分の企画だから、ぜひとも進めたい!」という意識になり、サポートをしてくれるようになるんです。
■上司に「自分で選んだ」と思わせたらこっちのもの
そして、あなたはというと、「その上司の手を借りて企画を動かしている」ポジションで、問題なくそのプロジェクトを進めていけます。
ちなみにこれは、心理学的な裏付けがあります。
コロンビア大学の心理学博士であるハイディ・グラント・ハルバーソンの著書『やってのける 意志力を使わずに自分を動かす』(大和書房)によれば、自分で選んでやっていることにこそ、人間は高いモチベーションを発揮することが、さまざまな実験データから説明されています。なので、上司に決めさせるほうが思い通りになりやすいのです。
逆にへたに説得しようとすると、かえって相手はつむじを曲げてしまうこともあります。これは心理学で「ブーメラン効果」といい、わりと広く見られる話です。なので、説得せず、いかに思い通りに動いてもらえるかに取り組むほうがいいでしょう。
■新しいプロジェクトを上司にスマートに提案する方法
さて、実際にどのようにしたらよいのか、具体的にシミュレーションをしてみましょう。
会社で「ChatGPT」に関するプロジェクトを立ち上げたいとします。
まずは上司が何を望んでいるかを知りましょう。最も一般的なのは、「自分たちの部署の利益が上がる」ことですよね。
相手の望みがわかったら、そこから話を始めます。たとえば、「どんなプロジェクトだと利益が上がりますかね?」「3年後ぐらいに流行ってそうなのってなんだと思います?」みたいな世間話をしてみましょう。
そしてこの時、自分がやりたいネタを含めて話していきます。「今なら、ChatGPTあたりですよね」「ソーシャルゲームは、手堅いらしいですよ」「動画サービスが利益を出しているらしいですね」といったふうに。
で、これら3つの中で、自分がやりたいのがChatGPTだとしたら、続けて、
「そういえば、ChatGPTは、まだ日本だと競争相手がそんなにいないですから、今からでもスタートラインに立っておけば、5年ほどでいいポジションをとれるかもしれませんね」とか、「動画サービスだとYouTubeは飽和していますし、今からやっても、よっぽどでないと5年では追いつけなさそうですよね」みたいに話していく。
■上司の手柄になっても、それ以上のメリットがある
それでもって「今やるなら何がいいと思います?」と聞けば、おおかた「まぁ、今ならChatGPTだよね」となるんじゃないでしょうか。
後日、「部長、先日、ChatGPTの新規ビジネスがこれから来ると言われてましたよね。あれでヒントを得て、こんな企画を思いついたんですけど、どう思います?」とか、「先日、ChatGPTの話をした際、どうすればうまくいくのか、という話をしたじゃないですか。それで、こういうアプローチだったら、まだないんじゃないかなと思いまして……」と提案してみる。
すると、上司は、「俺が言った案を、具体的にしてくれたのか」「俺と話した案を、どうすればブレイクスルーするか、考えてくれたのか」と、話に乗ってくれる。
こんなふうにして、上司のモチベーションを、ChatGPTのプロジェクトを進める方向に向けていくんですね。
その際、実質的にうまくいく理由や判断材料を持っているのはあなたなので、あなた自身は企画を通すための情報を上司に提供する役回りになります。企画発案者が自分にはならず、上司に取られてしまうことにはなりますが、結果としてやりたいことができるし、活躍の機会が増えます。
また、上司からすれば、あなたは、お膳立てしてくれた部下となるわけですから、その後、いいポジションが得られる可能性が高いでしょう。
■まずは雑談で上司の考えを把握する
もちろん、ある程度関係が築けている場合は、多少の説得をすることもできると思います。でも、上司自身がやりたいと思ってくれたほうが、その後もラクなので、なるべくなら説得や議論という形にしないほうがいいんじゃないかと思います。
具体例をビフォーアフターで考えてみましょう。
〈Before:ここがダメ〉
【A】今度社長に提出する事業企画ですが、ChatGPTを使ったものにしたほうがいいのではないでしょうか?
【上司】うーん、今自社で対応が遅れている動画から始めようと思っているんだけど。
【A】でもChatGPTのほうが動画よりも今後伸びると思うんですよ。
【上司】どこにその根拠があるわけ?
(※根拠なく上司の意見を否定すると、その後うまく進みづらい)
〈After:こう変わった!〉
【A】今後5年でどんな事業が注目されると思いますか?
【上司】今なら、動画だろうね。
(※雑談的に始める)
【A】動画もいいですよね。ChatGPTなんかも、今からサービスを手がけるならまだ間に合いそうですね。他社の事例でこんなのがあって……。
■意見が対立しても負かそうとしてはいけない
【上司】ChatGPTもありかもな。
(※相手の考えを否定せず、自分の伝えたいことも伝える。事例やデータを添えるとよい)
【A】課長がそうおっしゃるなら、市場の状況や、コストの面など必要なデータを調べてみますね。
【上司】いい事例があったら、今度の社長提案で出してみようかな。ありがとう。
(※上司が自分で決めたかのように持っていこう)
大切なのは、相手を言い負かそうとしないことです。押しつけるのではなく、質問の形にしたり、相手の話に乗っかるように情報を出していきます。
たとえば、上司が「新事業をするとして、具体的に何をやればいいのかな?」と考えている時を見計らって、「最近は、こういうサービスが急速に伸びていて、主要になるサービスが今後○年以内に決まっていく、という話があるみたいですね」「なかでもChatGPTについては、その関連会社で日本国内の投資額が100億円超えたそうです」みたいな形で、あらかじめ持っている情報を出していくのです。
これが、上司に議論で勝とうなどという魂胆(こんたん)で強硬に主張でもして、へたに言い負かしたら、「もう動画もChatGPTサービスもやらないよ!」なんてキレ方をする人もたくさんいますから。
■一次情報を一緒に見ると説得力が増す
もっとわかりやすいやり方は、一次情報を一緒に見る、ということでしょうか。
たとえば、ある新商品の色を決める立場にいたとします。
そして街の定点観測ウェブカメラを見たり、新宿、原宿、渋谷などの街に出てチェックして、自分は「ピンクが増えているな。今年はピンクがいいな!」と思ったとします。
でもその時、そのまま「今年はピンクが多いので、それで決まりですね!」などと上司に主張することは避けます。「ピンクが流行っている」ことがわかるウェブカメラの映像をキャプチャーしておいたり、街全体の写真を撮っておいたりして、それらを上司にも見せるんです。最もピンクが多かった街を上司と一緒に見て回ってもよいでしょう。
そして、「ほら、あそこにもピンクの服を着た子がいます」「こっちにもいますよ」などと横で言って、上司に「ピンクが流行っている」という印象を植えつける。すると、上司は勝手に「今年の流行りはピンクだ!」と思い込んでくれるわけです。
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2ちゃんねる創設者
東京都北区赤羽出身。1999年、インターネットの匿名掲示板「2 ちゃんねる」を開設。2015年に英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。YouTubeチャンネルの登録者数は155万人。著書に『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』(プレジデント社)、『なまけもの時間術』(学研プラス)などがある。
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(2ちゃんねる創設者 ひろゆき)
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