これで期末に240万円の所得を一気に減らせる…元国税調査官も愛用の"最も優れた節税アイテム"とは
プレジデントオンライン / 2023年12月14日 18時15分
※本稿は、大村大次郎『正しい脱税 元国税調査官が教える税金を最小限に抑える技術』(彩図社)の一部を再編集したものです。
■会社も個人事業者も使える逃税アイテム
個人事業者と会社では、税金を逃れる方法は若干違う。
しかし、基本的な税務思想である「事業に関連する支出は経費として認められる」ということは同じである。
本稿では、会社でも個人事業者でも使えて、しかも非常に有効な逃税アイテムを紹介したい。
「こんなものまで経費で落とせるのか?」
と思われる方もいるはずだ。
具体的に言えば、旅費、高級車、共済などである。
旅費は、本書の「第5章」で福利厚生費として経費で落とす方法をご紹介したが、これは個人事業者ではほぼ使えない。しかし、「福利厚生」ではなく、事業の中で旅費を経費として落とすこともできるのだ。
これらのアイテムを使えば、驚くほど税金が安くなることもある。
■旅費を使えばかなりの節税になる
事業者の強力な節税方法に、「旅費」がある。
旅費というのは、仕事の関係で出張などをしたときの経費のことである。
旅費こそが、事業者の醍醐味(だいごみ)といえるだろう。
「旅費といっても、うちの仕事は出張なんてない」
と思った事業者の方もおられるかもしれない。
しかし、事業での旅費というのは、いわゆる“出張”のときだけに生じるものではない。個人的な旅行であっても、仕事関係の情報を仕入れる目的があれば、「視察旅行」として経費に計上することができる。
地方に旅行するとき、その地域で評判になっている同業者をいくつか見学したり、その地域のサービスの状況をチェックしたりすれば、立派な「視察旅行」ということになる。また従業員の慰安旅行などをした場合、これも経費に計上することができる。
■お金に余裕ができたら、節税をかねて視察旅行を
たとえば、地方でネット関連の仕事をしている人がいるとする。ネット関連の情報を集めるために、秋葉原に視察旅行をすることにする。つまり、事業の経費を落としながら、東京見物ができるのだ。
ビジネスが国際化している昨今、海外に行こうと思えばなんとでもこじつけられる。
「中国に進出したいので、その視察をした」
「東南アジアの市場を開拓したいので調査のために」
などということにすれば、それを覆すことはなかなかできない。
ただし、この場合、ただの「見物」ではダメである。「視察旅行」という建前があるのだから、視察や情報収集をしなければならない。もちろん、秋葉原に行くだけで十分に情報収集にはなると思われるが、税務署対策として、なんらかのレポートくらいは残しておいた方がいいかもしれない。
このようにして、工夫次第でいくらでも「旅費」は使うことができるのだ。
この手法は、政治家や官僚がよく使っているものである。税金を使って遊びに行きたいけれど、遊びでは予算が下りない、だから視察旅行と称して、税金を使って物見遊山に出かけるのだ。
こんな美味しい制度を政治家や官僚だけに使われるのはもったいない。自営業者、フリーランサーの方も、お金に余裕ができたときは、節税をかねてぜひ視察旅行をしよう。
税金を使って旅行に行く人たちに比べれば、自分が稼いだ金で旅行するのだから、全然、良心的な方だといえるのだ。
■中古高級外車で税金を逃れて蓄財する
税金を逃れるアイテムとして、中古高級外車というものもある。
車を買えば、耐用年数に応じて「減価償却」していかなければならない。
減価償却というのは、「何年にもわたって使う高額のもの(固定資産)」を購入した場合、買った年の費用として一括計上するのではなく、耐用年数に応じて費用化するというものだ。
たとえば5年の耐用年数がある100万円の電化製品を買った場合、1年間に20万円ずつ、5年間にわたって費用計上していくのだ。
この費用計上のことを減価償却費というのだ。本当はもっと複雑な計算を要するが、仕組みとしてはこういうことだ。
減価償却をする対象となる「固定資産」は取得価額が10万円以上のものである。10万円未満のものを購入した場合は、全額をその年の費用として計上していい。
減価償却の方法は、定額法と定率法というのがある。
定額法は耐用年数に応じて「毎年同じ額だけ」の減価償却費を計上していく。
一方、定率法というのは、資産の残存価額に一定の率をかけて、毎年の減価償却費を計上するという方法である。
定額法は、毎年同じ額の減価償却ができるのに対し、定率法は最初のうちは減価償却額が多く、だんだん少なくなってくるという特徴がある。だから、早く減価償却費を出したい場合は、定率法を選ぶべきだろう。
定率法にするか定額法にするかは事業者が自分で選択することができる(不動産の場合は定額法のみ)。定率法にしたい場合は、申告前までに税務署に届け出書を出さなくてはならない。もし定率法の届け出を出さなかった場合は、自動的に定額法になる。
■中古BMW、ベンツなら2年で600万円の「利益減らし」も
中古高級外車の話に戻ろう。
普通車の耐用年数は6年なので、車の購入費用を経費として全部計上するまで6年かかる。
もし、120万円の車を購入したならば、1年間に20万円ずつ経費に計上して、6年間かけて全額が経費で落ちることになる、そういうことである。
しかし、中古車の場合、経過分の期間を耐用年数から差し引くことができる。耐用年数が短くなるということは、それだけ早く減価償却してしまえるということ、つまり、1年間に経費として計上できる金額が多くなる、ということだ。
たとえば、2年経過した中古車ならば、耐用年数は4年になる。120万円で購入した場合は、1年間に30万円ずつ経費に計上できるのだ。新車よりも、年間10万円だけ経費計上額が大きくなるわけである。
中古車の耐用年数というのは、次のよう計算方法で算出される。
たとえば、5年落ち(5年経過)の中古車を買った場合、自動車の耐用年数6年から経過年数5年を引く。それに経過年数の20%、つまり1年を足す。計2年となり、この中古車の耐用年数は2年ということになる。
1年未満の端数が出た場合は切り捨てとなり、最短耐用年数は2年である(計算式で2年以下になった場合は2年が耐用年数となる)。
中古車の耐用年数を並べてみると図表1のようになる。
このように4年落ちの中古車になると、耐用年数が2年になり、中古車の耐用年数は、それ以上は短くならない。2年が最短なのである。耐用年数が2年というのは、わずか2年で車の購入費をすべて経費に計上できるということだ。
BMW、ベンツなどの高級車は、中古だといってもそれなりに高い。500万~600万円するものもザラにある。それらが、たった2年で経費化できるのだ。つまり、中古BMWを買えば、2年間にわたって500万、600万円の「利益減らし」ができるということなのである。
■2ドアのスポーツカーも事業の経費で落とせる
本書の前項では、中古高級外車がかなり有効な節税アイテムであることをご紹介した。
高級車の中には、2ドアのスポーツタイプの車もある。
2ドアのスポーツカーというと、男性にとってはロマンのあるものだが、趣味の世界のものでもある。これを事業の経費で落とせるなどということは、到底、思えないはずだ。
事実、税理士の多くも、「スポーツカーを事業の経費で落とせるか」と聞かれれば、ノーと答えるはずだ。
しかし、スポーツカーの購入費が事業の経費として認められた例が実際にあるのだ。
税務の世界では、こういう都市伝説がある。
「2ドアの車は会社の経費(社用車)にはできない」
と。これは実は誤解に過ぎない。
2ドアというと、スポーツタイプの車であり、「カッコいい車」であり、常識的に見れば事業に使えるものとは言えない。だから、こういう都市伝説が生まれたのである。
十数年前、『なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?』(フォレスト出版)というビジネス書が大ヒットしたが、実はこの本はこの誤解に基づいて書かれたものだったので、内容的にはウソだったのだ。
2ドアの車というのは、後部座席にお客さんを乗せることができない。事業用の車というものは、お客さんを乗せるためにあるのだから、2ドアの車は社用車にはできない、というのがこの都市伝説の根拠である。
■事業での使用を客観的に主張できるか
でも、裁判の判例で、この都市伝説は明確に覆されているのだ。
ある社長がスポーツタイプの2ドアの車を社用車とし、税務署はそれを否認したために、裁判となった。この社長は、2ドアの車を、出勤や出張の際に使っており、「会社の業務で使っているのだから社用車として認められるべきだ」と訴えたわけだ。
そして、判決ではこの社長の言い分が通った。この社長は、プライベート用に別の車を持っており、この2ドアの車は会社のために使っているということが、はっきりしたからだ。
税務署は、「2ドアの高級車を会社の業務で使っているわけはない」「ほとんどプライベートで使っているはずだから、会社の金で買うのはおかしい」という主張だったわけだ。
でも、この社長は、きちんと会社の業務で使っているということが客観的にわかったので、社長の言い分が認められたのだ。
つまりは、2ドアの車であっても、事業の業務で使用してさえいれば、立派に社用車として認められるわけだ。
だから車好きの事業者の方などは、事業で儲かったときには、2ドアの高級車を買ってみるのはアリなのだ。また実は高級車というのは、税金を逃れるための非常に有効なアイテムでもある。
■期末に240万円の利益を一気に減らす方法
「中小企業にとって、もっとも都合のいい節税方法はなんですか?」
と聞かれた場合、私は迷わずに「経営セーフティ共済」だと答える。私も一応、経営者だが、私自身もこの節税方法を使っている。
経営セーフティ共済は、いろんなところで紹介されているので、ご存知の方も多いと思われるが、この経営セーフティ共済の本当の威力は、あまりよく理解されていないらしく、これを活用している経営者の方は、まだまだ少ない。
経営セーフティ共済がどれほど威力があるかというと、期末ギリギリであっても、会社の利益を最高240万円も減らすことができる、ということである。
しかも、この240万円は、会社にとって“出ていく金”ではなく、蓄積される金なのだ。つまり、一銭も無駄金を使うことなく、利益を240万円も減らすことができるのだ。
中小企業にとって、240万円の利益を一気に、それも期末に減らせるというのは、非常にありがたいことのはずだ。
他にこんな効率的な節税方法はない。
夢のような節税方法だといえる。
もし「今期はちょっと利益が多かったので、税金が怖い」と思っているような経営者、経理担当者の方は、まず第一にこの経営セーフティ共済を導入してみてほしい。
■経費をたくさん計上し、資産として蓄財できる
では、経営セーフティ共済とは、具体的にはどんなものなのか、どうすれば導入できるのか、ということをご説明したい。
「経営セーフティ共済」というのは、取引先に不測の事態が起きたときの資金手当てをしてくれる共済である。
簡単に言えば、毎月いくらかのお金を積み立てておいて、もし取引先が倒産とか不渡りを出して、被害を被った場合に、積み立てたお金の10倍まで貸してくれる、という制度だ。
この制度のどこが節税になるか、というと、掛け金の全額が損金に計上できることである。掛け金の最高額は年240万円なので、年間240万円の利益を一気に減らすことができるのだ。
そして、この240万円というのは、掛け捨てではない。積み立てた金は、不測の事態が起こらなかった場合は、40カ月以上加入していれば全額解約金として返してもらうこともできる。40カ月未満の加入者は、若干返還率が悪くなる。
しかも、「経営セーフティ共済」は1年間の前払いもでき、前払いの全額が支払った期の損金に計上できる。だから、期末になって200万~300万円くらいの利益を急に減らしたいというときには、これに加入すれば、240万円の利益を削ることができるのだ。
もっともいい節税策というのは、「経費をたくさん計上できて、しかもそれを資産として蓄積できること」だといえる。経費を増やせば、税金が減るのは当たり前だ。しかし経費を増やせても、税金以上に会社の資産が減っていっては、意味がない。
「経費を増やすことができて、しかも資産も減らさない」
というものを見つけることができれば、それがもっともいい節税策なわけだ。経営セーフティ共済は、その条件にジャストミートするのだ。
特に忙しい経営者の方、日ごろ節税策をあまり講じてこなかった会社などには、最適の節税方法だといえる。
■元国税調査官が実感している「一番いい節税方法」
経営セーフティ共済は、節税面以外でもメリットが多々ある。
たとえば積立金の95%までは、不測の事態が起こらなくても借り入れることができる。この場合は利子がつくが、それでも0.9%という低率である(2023年6月現在)。なので、運転資金が足りないときには、この積立金を借りることができる。
つまり、「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)」というのは倒産防止保険がついた預金のようなものである。金融商品として見ても、非常に有利なものといえる。
儲かったときに、経営セーフティ共済にお金をプールしておけば、税金も取られないし、資金繰りにも役に立つのだ。
経営セーフティ共済は、国が全額出資している独立行政法人「中小企業基盤整備機構」が運営しており、ほぼ官製の共済だ。だからこの機関はつぶれる心配もない。
経営セーフティ共済は、掛け金の額を5000円から20万円まで自分で設定できる。最高額の掛け金にすれば、削減できる利益は「240万円」となる。
そして、掛け金の総額が800万円に達するまで掛け続けることができる。つまり、会社の利益を、毎年240万円まで、総額800万円まではプールしておくことができるということだ。
また掛け金は途中で増減することもできる。
だから初めの掛け金は、節税のために最高額にしておいて景気が悪くなったら減額する、という手も使える(減額するには若干の手続きが必要となる)。
筆者はいたるところで、この経営セーフティ共済がいい節税方法であることを宣伝しているが、もちろん、広告宣伝費をもらっているわけではない(経営セーフティ共済は公的機関なので、そんなことはできない)。
前にも述べたように、筆者もこの経営セーフティ共済に加入している。自分がやってみて一番いい節税方法だから、勧めているのだ。
加入手続きも非常に簡単なので、240万円程度の利益(所得)を減らしたいというような場合は打ってつけの節税策といえる。
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ビジネスライター
1960年生まれ。調査官として国税局に10年間勤務。退職後、出版社勤務などを経て執筆活動を始め、さまざまな媒体に寄稿。『脱税のススメ』『お金の流れでわかる世界の歴史』など著書多数。近著に『お金で読み解く世界のニュース』。
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(ビジネスライター 大村 大次郎)
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