こうすれば成果が上がるだけでなく仕事が面白くなる…キーエンス社員がやっている"すごい数値化"の中身
プレジデントオンライン / 2023年12月24日 9時15分
※本稿は、岩田圭弘『数値化の魔力』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■「自分の行動」を分解し、数値化する
“キーエンスの数値化”とは、いわば「プロセスの数値化」です。
たとえば、「受注件数○件」を目標とする営業であれば、受注(結果)に至るまでの「DM→電話→アポ→面談→商談化」の各プロセス(行動)を分解します。
「採用人数○人」を目標とする人事であれば、採用(結果)に至るまでの「応募→書類選考→一次面接→二次面接→最終面接→内定承諾」の各プロセス(行動)を分解します。
そして、それぞれのプロセス(行動)に数字的目標を立て、日々その実績を記録していきます。
こうして、結果に至るまでの自分の行動を分解し、数値化することで、自分の行動のどこにボトルネックがあるのかが見えてきます。そのボトルネックを解消していくことで、「仕事の結果」を最大化していきます。
これが“キーエンスの数値化”です。
この“キーエンスの数値化”が実現するのは、「再現性」です。
あなたが仮に今期は目標を達成したとしても、来期以降、継続的に達成できなければ、評価はされません。ですから、「仕事ができる人」になるためには、一時的ではなく、何度も高い成果が出せる「再現性」が重要になります。
実は、自分の仕事を数値化できることは、単に自分の仕事の成果を最大化できることを意味するだけではありません。数値化することは、自分の仕事の「再現性」を担保することでもあるのです。このことの価値について見ていきましょう。
■「結果」だけではなく、「再現性」も評価する
キーエンスには、「会社を永続させる」という経営理念があります。
ですから、会社が「一時的に利益を創出する」だけではダメで、「継続的に利益を創出する」ことを重視します。
そして、この理念は企業のみならず、各個人にも適用されます。つまり、キーエンスはただ単に社員の「結果」だけを評価するのではなく、そこに「再現性」があるかどうか、つまり、「今後も」同じ結果を出せるかどうかを、社員の評価として設けています。
これが、ビジネスパーソンが「自分」を永続させるということです。そのためには、「一時的にたまたま成果を出せた一発屋」では困ります。キーエンスに限らず、多くの企業においても、一発屋より安定的にヒットを打てる人材を評価しますし、求めています。
たとえば営業であれば、一発だけ200%の達成率を叩き出してその直後に息切れしてしまう人よりも、コンスタントに100%を維持している人のほうが価値があると評価されやすいのです。
■数値化が「再現性」を担保する
そしてその「再現性」を担保するのが、数値化になります。
営業:「今月の受注が少なかったのは、『電話』の件数が不足していたからだ」
人事:「一次面接から二次面接への転換率が落ちている。この段階での求職者へのアトラクトに問題があるんだ」
数値化できていれば、このように、「仕事の成果」と「プロセス(行動)」との間の因果関係を明らかにすることができます。因果関係を明らかにできている人であれば、短期的に結果が出ない場合でもすぐ行動変容をすることによって、改善できると予測することが可能です。
このように、数値化をして客観的に因果関係を把握できることから、すべての行動に根拠を持つことができます。この状態で行動していれば、たとえば不意に上司から「今、なぜその作業をしているのか?」と尋ねられても即答できます。
数値を示して回答すれば、説得力もあり、「仕事ができるな」と思わせることができます。このように、目標の達成に向けて、ロジックを持ち、行動変容をした結果、継続的に結果を出していく人こそが、本当の意味での「仕事ができる人」なのです。
■数値化したほうがストレスを軽減できる
一般的に、「数字」と聞くと、「ストレスがかかるもの」と認識されています。しかし、このように、「行動」を数値化し、因果関係を明らかにすることは、実は努力の仕方を明確にすることになりますから、仕事の無駄を削減して、逆にストレスを軽減することにつながります。
“キーエンスの数値化”では「行動」を数値化することで、仕事の成果が伸び悩む原因であるボトルネックを明らかにします。ボトルネックを明らかにすることで、努力すべきプロセスが明らかになり、努力目標が数値として明らかになります。
このことは、仕事をする上でメンタルにとっても、とても大きなメリットがあります。というのも、人というのは明確な目標がないままに漠然と量を増やすことには意欲を持ちにくいためです。
営業担当者に、「もっとアポを取りなさい」と漠然とした指導をしても、それは「頑張れ」といった無責任な根性論になってしまいます。自ら「もっとアポを増やさないといけないな」と思っても同様です。
■目標をクリアすることが面白くなってくる
たとえばダイエットしている人が、「もっと運動しなくちゃ」とか「もっと食べる量を減らさなくちゃ」と思ったとしても、そのような漠然とした努力は続かないでしょう。なぜなら、人の感情はいとも簡単に浮き沈みするからです。
人のモチベーションが落ちるのは、「ゴールが見えない」「ゴールまでの道筋が見えない」ときです。漠然とした努力目標は、「目標に向けて、何をどれくらいやればいいか」が不明確なため、ストレスを増やすだけなのです。
一方、数値化して目標を明確にさえすれば、努力の方向が定まります。「何をどれくらいやればいいか」、目標達成に向けてすべきことが明確になりますので、ストレスが軽減されます。その結果、自ら設定した目標をクリアすることが「ゲーム感覚」になり面白くなってきます。
感情の起伏がなくなり、前に進み続けることができるようになります。一度、目標を達成したら、次はさらに目標を高く持ちます。その高い目標についても、「キーエンスの数値化」によって達成をする。そして、さらに高い目標を設定して……と、日々、自分の成長を実感することができるのです。
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アスエネ共同創業者 兼 取締役COO
慶應義塾大学経済学部卒業後、2009年にキーエンスに新卒入社。マイクロスコープ事業部の営業を担当。2010年新人ランキング1位を獲得。その後、2012年下期から3期連続で全社営業ランキング1位を獲得し、マネージャーに就任。その後本社販売促進グループへ異動、営業戦略立案・販売促進業務を担当。2015年、三菱UFJリサーチ&コンサルティングに転職。小売、医薬、建設業界の戦略策定、新規事業戦略策定に従事。2016年にキーエンスに戻り新規事業の立上げに携わる。2020年アスエネに参画。
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(アスエネ共同創業者 兼 取締役COO 岩田 圭弘)
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