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「また拝見させて」→「まら拝見」「叡智がすごい」→「Hがすごい」「梅祭」→「埋め祭」…誤変換・入力ミス事件簿2023

プレジデントオンライン / 2023年12月18日 11時15分

イラスト=辛酸なめ子

スマホ・PCでの思わぬ誤変換やタイプミスで意味不明な文を送信してしまうことがある。コラムニストの辛酸なめ子さんは「『変換』は便利なテクノロジーですが、誤変換で人生が狂い、人間関係が破綻しかねない事態にもなります。AI進化により誤変換が人類の思考に影響を与える流れが加速しそうです」という。辛酸さんが数年前から2023年までに個人的に収集した誤変換・入力ミスの事例を紹介しよう――。

■思わず笑ってしまう、戦慄してしまう誤変換・入力ミス

スマホに頼りすぎる毎日、気付いたら誤変換のまま送信しそうになることがよくあります。誤変換にはいくつか原因があり、一つ目は自分自身のミス。加齢により目が悪くなるに従って、誤変換のまま気付かず、意味不明な文字を送ってしまうことがあります。

先日も、誤変換というか手が滑って、仕事関係の知人に「また拝見させてください」と送ったつもりが「まら拝見させてください」と書いていたことに気付いて赤面。あられもない要求が来たと思われたのか、それ以来知人とは音信が途絶えてしまいました。

このようなケアレスミスをしないために、送信前に一度気持ちを落ち着けて再確認するのが必要です。自分の間違いは恥ずかしいですが、友人知人の誤変換や誤字は日常にちょっとした笑いをもたらしてくれます。先日も、年上の女友達が「福袋」を「腹部」と書いて送ってきて、少し楽しい気分になりました。

誤変換の原因の2つ目は、その時の自分の状態を表す誤変換。オカルトっぽい話になりますが、自分がネガティブな波長になっていたり、運気が下がっていたりすると、誤変換にもそれが現れることがあります。スマホと現代人はほぼ一体化しているので、それだけバイオリズムが同期しやすいのでしょう。

過去にはこんな不吉な誤変換がありました。例えば「今日」と打ち込もうとしたら、なぜかまっさきに「凶」と変換される。「個人的に」と打ったらなぜか最初に「故人的」と出たことも。ちなみにその日はちょうど故人の話をしていたのでゾクッとしました。

「今朝」と打ったら「袈裟」と出て、しめやかな気持ちになったこともありました。「仮装大賞」と打ち込もうとしたら「火葬対象」と出てきて軽い恐怖を覚えたり、「視察したい」が「刺殺したい」になったり、「梅祭」と入力しようとしたら「埋め祭」になったりすると、自分の深層心理にある猟奇的な一面があぶり出されたのかもしれない、と思えてきます。何度変換しても「歴史」が「轢死」になった時は、霊的な存在に訴えかけられているのかと思いました。「車」と打とうとしたら最初に「陣」と出た時は、平安時代の雅なヴァイブスを感じました。「有限会社」が「幽玄会社」になったり、「入館」が「入棺」になったり、この手のオカルティックな誤変換はあとを絶ちません。

不吉なフラグ的な変換で、ちょっと怖かった体験もあります。「仕事」と打とうとして「死事」に変換された時。その直後に駅の階段で足を踏み外しそうになりました。見えない負のエネルギーが変換に影響を与えているのでしょうか。反対に、不穏な変換が出てきたら気を引き締めることで、大難を小難に抑えることができるかもしれません。

■「イベントご盛況のことと…」→「イベントご逝去」

逆に、運気やメンタルが上向いている時は、それが変換に出ることがあります。例えば、「事前」が「慈善」になったり、「口説く」が「功徳」になったりすると、ポジティブなスパイラルに入っていけそうです。募金した直後に「展開」と入力しようとしたら「天界」と変換された時は、神様の視線を感じました。

誤変換とはまた別に、予測変換候補というジャンルもあります。こちらは、自分がよく使う言葉が候補に入ってくるので、その人の思考や精神状態が見えてくることがあります。

以前,電車の中で女性のスマホがチラッと見えて、「フ」と入れたら「フィナンシェ」「フィアンセ」など幸せな単語が並んでいたので、きっとリア充な方なのだと想像しました。私の場合、以前、「しん」と入力しかけると、なぜか「死神」とか、聞いたことがない「死神待ち」という不気味な単語が候補に並ぶ時期があり、しばらく怯えて過ごしました。

スマホを使用する女性
写真=iStock.com/SetsukoN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SetsukoN

誤変換の要因、3つ目は、単に自分の力が足りず、パソコンやスマホで文字が欠けてしまったことによるもの。先日「イベントご盛況のことと思います」と書こうとして「イベントご逝去のことと思います」と打ってしまったことがありました。「う」と一文字さらに入れる力が足りなかったようです。

また、よくあるのが「請求書」と打とうとして「性器優所」「性休止」と意味不明な言葉になるパターン。小さい「ゅ」や「ょ」を入れるキーを押す力が弱かったようです。今後、年齢と共に押す力が弱くなっていって、この手の誤変換が増えそうです。

4つ目は、AIの暴走による誤変換。AIの暴走というのは、個人的な体感なのですが、ちゃんと合っている言葉を選択したはずなのに、直前ですり替わったことや、変な言葉になっていることが、ここ最近増えているようです。

例えば、よくあるのが勝手にカタカナになってしまうパターン。「それで」と打ったら「ソレで」になったり、「コトバ」「カラダ」「ワタシ」など、独特なセンスの表現になってしまい、あとから気付いてメッセージを取り消したりして二度手間です。「コノマエメールシタ」などと大部分がカタカナになって、電波系のような文体になっていることも。

■「叡智がすごいです」→「Hがすごいです」

わざとユーザーの生産性を下げたり、羞恥心を与えようとしたりするような、AIの意図的な操作を感じます。「叡智がすごいです」と打とうとしたら、また勝手に直前で変換がすり替わって、朝から「Hがすごいです」と送信しかけました。「小栗旬」と打とうとしたら「おぐり歯科医院」になったという誤変換もありました。「◯◯しがち」と打ったら勝手に「◯◯滋賀中央信用金庫」と入力されていたことも。文字入力システムが空回りしています。「◯◯さんの美しさが……」と入力したのになぜか「◯◯さんの美しさと哀しみと……」になっていて、ホメたつもりが貶めるメッセージになっていたこともありました。下手な誤変換で人間関係にヒビが入りかねないので要注意です。

でも、後日、実際その◯◯さんは幸せそうに見えて、実は闇も深いキャラだと伺いました。ときどき変換が予知しているのが不思議です。

「変換」は便利なテクノロジーですが、心にスキがあると、誤変換の言葉に人生をコントロールされかねない、危険な一面もあります。とくにAIが進化している今、誤変換で人類の思考に影響を与える流れが加速していきそうです。そう考えると安全なのは手書きの手紙……。でも気付いた時には、スマホ変換に慣れて漢字が全然書けない体になっているのです。これもAIによる支配の第一歩でしょうか……。

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辛酸 なめ子(しんさん・なめこ)
漫画家/コラムニスト
武蔵野美術大学短期大学部デザイン学科卒。雑誌連載、執筆活動の合間を縫ってテレビ出演も。

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(漫画家/コラムニスト 辛酸 なめ子)

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