メールの文中に「私」と書く回数を減らせば減らすほどいい…コロンビア大教授が教える「人生を成功させる秘訣」
プレジデントオンライン / 2023年12月20日 8時15分
※本稿は、トマス・チャモロ=プリミュージク『「自信がない」という価値』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。
■自分が何をどう感じるか、興味があるのは自分だけ
自分が何を考え、どう感じているかについて、他の人も関心を持っていてくれたら嬉しいものだ。まるでリアリティ番組の登場人物のような気分になれる。だからこそ、あんなにたくさんの人が、ツイッター(現X)でつぶやいたりフェイスブックに投稿したりすることに多大な時間を費やしているのだろう。また、私たちは、自分以外の人も自分の感情や思考に同調してくれると思っている。自分が怒っているときは、他の人も怒って当然だと考える。
何かを確信しているときは、他の人も同じように確信していて、自分に同意してくれるものと考える。そして思い通りにならないと、その相手と口論することになる。
しかし現実は、あなたの考えや気持ちを本当に気にかけているのは、あなた自身しかいない。冷たいことを言うと思うかもしれないが、これは受け入れなければならない事実だ。実際、自分に興味があるのは自分だけだとわかっていたほうが、人付き合いにおいて大きな利点になる。なぜなら、いつでも「自分、自分」にならずにすむからだ。
■自分の心配ばかりしていると成長のチャンスを逃す
世の中には、2種類の戦いが存在する――他人を相手にする戦いと、自分を相手にする戦いだ。そして本当の意味で勝つことができるのは、前者の他人を相手にする戦いだけだ。自分との戦いは、結局は負けるだけでなく、心身ともに疲弊し、他人との戦いに使う力まで奪われる。
つまり私が言いたいのは、自分のことばかり考えるのはやめて、もっと他人のことを考えようということだ。なぜそんなことを言うかというと、理由は単純で、自信と実力の関係は次のような仕組みになっているからだ。
他者中心=自分の実力を心配する
今より向上するには、他の人から認められることも必要だ。実際、普段から自信の低い人なら、自分が自分にいちばん厳しいだろうから、他人に実力を認めてもらうのは思っているよりも簡単だろう。
私の知り合いの中にも、自信がなくて自分を卑下してばかりいるのに、実際は才能があって、魅力的で、成功している人はたくさんいる。それでも彼らは、他の人からどんなに褒められても、自分はダメだという考えに固執している。そうやって自分の考えばかりに凝り固まっていると、自信のなさのことばかりが気になって、実力を上げる努力のほうがおろそかになってしまうかもしれない。
■たいていの人は自分のことばかり考えている
自分のことばかり気にしていたら、他人を気にする時間がなくなってしまう。そこで、他人のことも考えるようにすると(「他人」の中には、必然的に「他人があなたについて考えていること」も含まれる)、人付き合いだけでなく、それ以外のことでも成功できるだろう。たいていの人は自分のことばかり考えているので、他人のことを考えられる人は、それだけで特別な存在になれる。
私は最近、ある銀行で就職の面接の手伝いをした。選考の責任者は、その銀行のCEOだ。彼はどこから見ても「自分中心」の人物だった。自信満々で、他人にはまったく興味がない。唯一興味を持つ他人は、自分に興味を持っている人だけだ。
候補者のうち、3人の面接はとてもうまくいった。彼らはみな、聡明で、話もわかりやすい。それに非の打ち所のない資格も持っている。しかし、この3人はCEOに興味を示さないという失敗を犯してしまった。自信家の彼らは、自分のことばかり話し、CEOに口を挟む隙をまったく与えなかった。
■興味があるふりをしているだけで相手からは好かれる
もう一人の候補者は、面接のできは散々だった。緊張して、おどおどしていて、どの質問にもまともに答えられなかった。彼がほとんど話さなかったので、CEOは自分の話をたくさんすることができた。自分の仕事、自分の評判、自分が世界に対していかに重要な貢献をしているかについて、思う存分語っていた。候補者は、それを聞いてただ頷いていた。
さあ、誰が採用されただろうか? そう、面接のできがいちばん悪かった候補者だ。彼はCEOにたっぷりと話す時間を与え、ずっと感心しながら聞いていたからだ。
19世紀に活躍した心理学者のウィリアム・ジェームズは、「人間の行動を司るもっとも基本的な原理は、他者の承認を切望する気持ちである」という有名な言葉を残している。だから、あなたも積極的に他人を認めよう。もし相手にまったく興味がないなら、興味のあるふりをすればいい。そうすれば、相手はあなたが好きになる。
■「最大にして唯一の成功の秘訣は、他人の立場でものを見ること」
史上最大の自己啓発作家であるデール・カーネギーは、著書の『人を動かす』の中でこう書いている。「もちろん、興味があるのは自分の欲しいものだ。(中略)あなた以外の人もそれは同じで、誰もが自分の欲しいものに興味を持っている。そのため、他人に影響を与えるには、相手が欲しいものについて語り、それを手に入れる方法を教えてあげるのが唯一の方法ということになる」。
ヘンリー・フォードも同じようなことを言っていて、彼はそれを、「最大にして唯一の成功の秘訣(ひけつ)は、他人の考え方を理解し、他人の立場でものを見ることだ」と表現した。
心理学者は、このような態度を「共感」と呼んでいる。これができている人がほとんどいないのは、みな自分のことばかり考えているからだ。自信のある人もない人も、その点は同じである。
自信が高すぎる人は、他人から見た自分はそれほどたいしたことはないという事実に気づいていない。そして自信が低すぎる人は、他人が自分を認めていることに気づいていない。どちらも自分の気持ちにしか目が行かず、他人が自分をどう見ているかということまで考える余裕がない。
■1通のメールに「私」と何回書いているか
ここで、これまでの議論を踏まえ、私にとって最高のアドバイスになった言葉をあなたにも送りたいと思う――「トマス、おまえの話じゃないんだよ」。
当時はひどいことを言うと思ったが(なぜなら、おまえはナルシシストだと言われたのと同じだからだ)、この言葉のおかげで、自分がいかに自分のことばかり話し、自分のことばかり考えていて、そのせいで他の人のことをほとんど考えていなかったということを自覚できた。自信の低い人も、同じような間違いをしがちだ。自分の自尊心のことばかり気になって、他の人の気持ちや考えまで思いがいたらない。
面と向かっての会話で、「自分、自分」の人だという印象を与えるのは、たいてい自信家で、自分の話ばかりする人だ。しかし、文字でのコミュニケーション(メール、手紙、メッセージなど)でも、内容を分析すれば、書き手が自分中心かどうかはすぐにわかる。ただ「私」という言葉を使う回数を数えればいいのだ(これは、自己愛の度合いを測るときによく使われるテクニックだ)。
■自分の話をするのをやめれば不安を克服できる
自分が書いたものを、この方法で分析してみてもいいだろう。今度メールを書くときに注意していれば、「私」という言葉を書かないのがどれほど大変かわかるはずだ――しかし、自分のことばかり書くのをやめれば、その見返りは十分にある。
ここでのいいニュースは、自分のことばかり話すのをやめれば、いやでも他人に注意が向き、彼らの視点で世界を眺められるようになり、その結果として自分の不安を克服できるということだ。不安が大きくなるのは、自分のことばかり考えているからだ。他者の視点に立てば、「自分が自分についてどう考えるか」なんて、思っていたほど重要でないことがわかる。
むしろ人生で大切なのは、「他人が自分をどう思うか」だ。そしてそれを決めるのは、あなたの自信ではなく、あなたの実力だ。
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社会心理学者。ロンドン大学教授、コロンビア大学教授。パーソナリティ分析、人材・組織分析、リーダーシップ開発の権威として知られる。J.P.モルガン、Yahoo、ユニリーバ、英国軍ほか組織コンサルタントとしても活躍。
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(社会心理学者 トマス・チャモロ=プリミュージク)
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