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「就寝前のスマホは睡眠の質を下げる」は大誤解…これまで語られなかった眠気の発生する驚きのメカニズム

プレジデントオンライン / 2023年12月20日 20時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/simpson33

強い眠気に襲われたら、どう対応するべきか。ショートスリーパーで睡眠研究家の堀大輔さんは「さまざまな要因で誘発される眠気に対して、多くの人は『睡眠をとる』という行動をとりがちだ。しかし、眠気は一旦行動を起こせば何事もなかったかのように消えてなくなる。例えば、食後は両手の平を3回程度マッサージすると四肢の末端に血流が流れ、血圧や血流が改善して頭を覚醒させることで眠気がとれる」という――。

※本稿は、堀大輔『「眠りをコントロールする」24の方法 うまくいく人の睡眠の法則』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。

■締め切りが近いときに限って眠くなる理由

締め切りが差し迫っている仕事をしているとき、強い眠気に襲われることはありませんか?

締め切りが迫ったときに眠気が発生してしまう人は、その締め切りが近づけば近づくほど、どんどん眠気が発生する頻度が高くなります。

なぜこのような事態が起こるのでしょうか?

この理由は、仕事に対して受け身になっているためです。

「頭を働かせなければならない状況」は、「頭を働かせたくない状況」として体は認識しています。

「やらなければならない」という心理の根底にあるのは、「やりたくない」という気持ちです。

自分がやりたいことであれば、問題なく実行できます。そこに抵抗などはなく、「しなければならない」という感覚にはなりません。

どのようなことであったとしても、「しなければならない」とあなたが感じるものに対しては、「受け身」となってしまうのです。

「全く考えなくても気づけば行動している」や「したい」といった心理にならないと、受動や逃避による眠気が発生します。

逆に、納期が差し迫っているときに眠気が飛ぶ人もいます。

これは、「パーキンソンの法則」といって、多くの場合、時間内にしっかりと仕事を終らせる傾向のある人です。

■追われる人生のストレスから眠気が発生する

納期が迫ることで眠気がとれる場合は、納期までの間の刺激が少ないと考えられます。

仕事の刺激が少ないときは、他の誘惑や刺激に負けてしまうのです。SNSを見たり、むやみにメールを何度も確認したりといった行動です。

納期が近づくたびに、他の優先順位を下げて納期にフォーカスを当てられるようになり、集中力が上がった感覚となります。

納期は、認識していないときには影響はありませんが、一度認識しはじめると、徐々に迫ってくる・追い立てられる感覚に襲われます。

もし期限を守れなかったり、先延ばしたりするようなことが増えると、いつも納期や期限に“追われる人生”となってしまい、たちまちストレスを感じるようになります。

ストレスがかかりすぎると、眠気が起こります。

しかし、仕事がありますから眠くても眠ることができません。寝ることができないため集中力が下がり、さらに仕事が滞ってしまう……。

こうして悪循環が発生し、大きなストレスが発生します。アルコールに逃げることも増え、大きくなりすぎたストレスは、不眠症の併発に繋がる場合もあります。

このように追われる人生の結果、ストレスから発生する眠気は、人生の幸福度の大きな弊害となるのです。

暗いオフィスで残業をする女性
写真=iStock.com/Perawit Boonchu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Perawit Boonchu

■納期を勝手に設定し「自分との約束を守る」ことが解決策

納期前後のタイミングで眠気の発生を繰り返してしまうと、癖になってしまいます。

「納期が近いこと=眠るタイミング」と身体が認識し、逃避癖がついてしまうのです。

最も平和的な解決方法は、納期からの逆算で行動するのではなく、先手先手で行動し、納期に追われない生活を送ることです。

しかし、現代社会はかなりのスピード感で物事が進んでいます。ですから、納期に追われない生活は、非常に難しいのも事実です。

受け身にならないためにも、納期の少し前に仕事を終らせるようにし、自分との約束を守り続けることが一つの解決策となります。

他人に決められたものを守るという受動に対して、自分で決めたものを守ることで、能動性を発揮できるのです。

■「スマホを見ながら就寝」は睡眠に悪影響なのか

「眠気がなぜ発生するのか」について具体的に掘り下げ、メソッドにしたのは私しかいません。

突然ですが、皆さんはATPという物質をご存知でしょうか。

私たちの身体を動かすエネルギー源は、アデノシン三リン酸(ATP)が、リン酸と離れるときに大量に発生する物質です(ATP産生)。

このATP産生時に発生する残りカス(最終代謝物)が、脳内に溜まり眠気が発生することが、アメリカの睡眠医学の父といわれるウィリアム=C=デメント博士によって突き止められています。この残りカスが、アデノシンというものです。

ただ、眠気の発生要因はこれだけではなく、アデノシンはあくまで「眠気」が起きる原因の一つでしかありません。

眠気が発生する現象は、科学では収まりきれない広義的なものであり、20数個ほどの発生要因に伴って誘発されます。

もし科学的な論拠だけしか信じられない人は、普段自身が眠気に対して感じている感覚も信じられなくなってしまうでしょう。

例えば、ブルーライトや非常に明るい光を目に受けると、睡眠の質が悪くなるという話がありますが、強い光で発生するものはメラトニンであり、メラトニンの役割は、体内時計の修正です。

これは、睡眠の質に直接的に関係するものではありませんが、悪影響を及ぼす可能性も示唆されています。

メラトニンが発生するためには、2500ルクスという非常に強い光が必要です。

光の強さは、コンビニの照明で1000ルクス、部屋の照明で500ルクスほど。スマートフォンにいたっては、最高でも300ルクスに満たないのです。

しかもこの数字は、画面や照明など光源自体の数値で、光源から離れれば離れるほど数値は低くなります。30センチも離れれば、目に届く光の強さは30ルクス以下になるのです。

実際、スマートフォンを触っている途中で眠ってしまったり、テレビをつけっ放しで眠ってしまったりすることからも、ブルーライトや強い光がメラトニンを発生させ、睡眠に悪影響を与えるとは考えづらいのです。

映画館やレイトショーでは、非常に強い眠気が誘発されます。

この眠気は、テレビやスマートフォンを見ている状態で発生する眠気と同じタイプのものです。暗い空間で光を見ることが安心感に繋がり、眠気が誘発されて、気づけば眠ってしまっているのです。

また、眠気を除去するホルモン、オレキシンの減少が、眠気の発生の理由になっている場合もあります。

オレキシンは、眠気を除去する性質があり、空腹のときに最も発生します。

ですから、お腹を満たすたびにオレキシンの分泌量が下がるため、満腹になると極度の眠気が発生することに繋がるのです。

加えて、四肢の血液が胃や腸に巡ることも眠気の発生理由となります。

このように、睡眠不足だけでなく、さまざまな要因で眠気が発生するため、それぞれの眠気に合った対応が必要となります。

ベッドの上のスマホと、頭まで布団をかぶって寝ている人
写真=iStock.com/skynesher
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/skynesher

■「眠気があるのは睡眠不足だから」のウソ

「眠気」は、社会生活を送る上で致命的なエラーになりかねません。

しかし、多くの人が眠気に対する対処方法をほとんど持っていません。

この実情は、まさに裸で極寒の地に立っていることと同じではないでしょうか。

眠気に悩まされている時間は、刺激に対しても鈍感になり、感動も少なくなります。

恋人と一緒に何かをしていても、目の前のことにフォーカスを当てられないことから、どこか上の空という状態が続いてしまいます。

眠気が発生しているときは頭も回らず、会話の返事もそっけないものとなってしまいます。

これでは周囲の人から何も考えていない人だと思われたり、人間関係の構築に大きな悪影響を及ぼしたりしてしまいます。

眠気が発生すると、目の前の活動への集中力は下がります。

すると面白いように「睡眠をとる」という行動の自己正当化がはじまります。

例えば自分の成長のために決めていた勉強の時間や、ダイエットのための運動の時間なども全て破棄して、何としても眠りをとろうとするのです。

しかし、眠気は、睡眠以外の行動をとるときの大きな壁となりますが、一旦行動を起こせば、何事もなかったかのように、消えてなくなるものです。決して睡眠の必要性があるから発生するものではありません。

「なんとなく口さみしいから甘いものを食べたい」という欲求に似ています。

■眠気による経済損失は3兆4694億円

アメリカの推計によれば、ドライバーの31%が一生に一度は運転中に居眠りをするそうです。

アメリカの高速道路で起こった事故のうち約10万件が居眠りと関係があると言われています。眠気が発生していることで、重大な事故や信用問題となることも少なくありません。

日本大学医学部精神神経医学教授の内山真医師は、眠気による経済損失は3兆4694億円と述べています。目を見開いてしまうほどの数字ですね。

ただ、この数字を見て多くの人が睡眠時間の短さを想像しますが、ほとんどの論拠が睡眠時無呼吸症候群といった睡眠そのものの疾患から発生する眠気や問題を指摘しています。

世界中の睡眠における経済損失の論文や記事も同じような流れです。

眠気が起きている間、仕事の手は止まっていることになりますので、ビジネスパーソンの多くが日中の眠気で悩んでいるとしたなら、決して大げさな損害額ではないと考えられます。

また、この統計には感情的なものは入っていないため、経済損失だけでなく、人間関係の損失なども考えると、眠気がどれだけ自分の人生の足を引っ張っているかは容易に想像できるかと思います。

このように望まないときに発生する眠気は、社会性や自分の未来、周りの信用などを激減させ、誰も望んでいない事態を引き寄せることに繋がります。

そもそも眠気解消が睡眠をとること以外でも可能なのであれば、多くの人が睡眠時間を減らし、集中して活動できる時間を増やす選択をとるのではないでしょうか。

■食後の眠気に効くシンプルな方法

本稿では一例として、食後の眠気を解消する方法を解説しましょう。

食後に眠くなる要因はさまざまありますが、どんな食事だったとしても対応できる最も簡単な対処法として、カフェインの摂取があります。

食後にコーヒーや紅茶、緑茶を飲む習慣は、昔から受け継がれている文化です。

カップに入れられたコーヒー
写真=iStock.com/bm4221
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bm4221

学びや伝達方法が限られる古代の人達は自分たちの体感でもって、食後の眠気に効果的な方法を割り出したと考えられます。

食後の主な眠気の発生要因は、オレキシンという覚醒補助ホルモンの減衰(げんすい)(少しずつの減少)と、アデノシンという睡眠物質が脳脊髄液に蓄積すること、四肢の血流低下と体温の上昇、血糖値の乱高下による副腎疲労やストレス反応などが挙げられます。

アデノシンが蓄積することで機能しはじめたGABA(脳内にあるアミノ酸の一種)が、集中に必要なホルモンの邪魔をしてしまいます。

カフェインは、GABAが集中力を低下させ眠気を発生させるのを、ブロックする効果があるため、結果として眠気を抑えることができるのです。

■日光を浴びながらのウォーキングで眠気の発生を抑制

また、アデノシンが脳の側坐核(そくざかく)にあるA2受容体という部位に取り込まれることで睡魔が発生するのですが、カフェインはアデノシンと構造が非常に似ているため、A2受容体がアデノシンと間違ってカフェインを取り込みます。

アデノシンが取り込まれる前にカフェインを摂取することで、眠気を防ぐことができます。

予防という観点からも、お昼ごはんを食べる30分ほど前に、玉露や紅茶、コーヒーなどカフェインを含有している飲料を摂取することで、食事誘発性熱産生から発生するアデノシンの吸着を阻害することが可能となります。

これは、カフェインの効果が15~30分ほど経過したときに発生するためです。

食後にカフェインを摂取した場合は、カフェイン摂取直後に仮眠をとることで、寝起きの爽快感が向上します。

食後の眠気が発生するためには、食後に“生物的に眠っていてもいい環境”にいる必要があります。

“生物的に”とは、温かい空間で、全く動かずとも捕食される心配がほとんどない状態です。

この場合の“生物的に”と対義語になるのは、“社会的に”という言葉です。

重要な会議は社会的に非常に大切な時間ですが、生物的には危険がありません。そのため、食後の会議は特に強い眠気が発生したり、頭がボーッとしたりしやすいと言えます。

逆に外に出て、日光を浴びながらのウォーキングなど簡単な運動をすると、胃に集中しがちな血液を全身に巡らせることができ、眠気の発生を抑制できます。

また、運動によって代謝が向上することで睡眠物質の分解も期待できるのです。

■食後にマッサージを行うだけで、四肢の末端に血流を流せる

食後の3秒スイッチストレッチ

①手のひらの中央に、もう片方の手の親指を当て、1、2、3と圧をかけます

【図表1】食後の3秒スイッチストレッチ
出典=『「眠りをコントロールする」24の方法 うまくいく人の睡眠の法則』

食後のぼんやり頭をスッキリさせる、ごく簡単なストレッチです(同じストレッチを足の裏に行っても効果があります)。これによって血流が促進されます。

親指で手のひらに圧をかけつつ、さらに残りの指で、手の甲から中手骨(手の甲の骨)を揉むことで、さらに短期間で血流を促進し、眠気をとることができます。

堀大輔『「眠りをコントロールする」24の方法 うまくいく人の睡眠の法則』(総合法令出版)
堀大輔『「眠りをコントロールする」24の方法 うまくいく人の睡眠の法則』(総合法令出版)

本来食事の後は、四肢の末端には血液が流れにくくなり、手足が温かくなります。この眠気は健康にも悪影響がある場合があり、疲労が蓄積しているときなど、自律神経が乱れがちなときは、脳への血流低下など発生し、思考力の低下を招くだけでなく、脳の健康も阻害することがあります。

食後にマッサージを行うだけで、四肢の末端に血流を流すことができ、血圧や血流が改善して頭が覚醒します。特に年齢が高い人ほどこのマッサージの効果を体感しやすくなります。

ここで注意したいのは、このストレッチをあまりにたくさんやりすぎると、本来消化器系に流れるはずだった血液を四肢に流してしまうため、消化が若干滞る可能性が出るということです。食事の内容や量と相談しつつ、両手を3回程度マッサージすることが最適です。

カフェインの取り過ぎも同じですが、頭の覚醒と健康はバランスを取ることが非常に大切です。

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堀 大輔(ほり・だいすけ)
GAHAKU株式会社代表取締役、社団法人日本ショートスリーパー育成協会代表理事
1983年11月2日生まれ、兵庫県尼崎市出身。会社員時代、仕事をしながらさまざまな活動に携わることに加え、1日8時間睡眠をとっていたことから、時間がまったく足りない状況になる。18歳からはじめた睡眠の研究をもとに、25歳のときに短眠に挑戦。2カ月で1日45分以下睡眠のショートスリーパーになることに成功。現在までの14年間、1日平均1時間未満の睡眠時間で活動している。この短時間睡眠を含め独自に研究した睡眠の新理論を構築して短眠カリキュラム「Nature sleep」を開発。このカリキュラムによってショートスリーパーになったセミナー受講生は2200人以上、カリキュラム満足度は98.2%、睡眠の質改善率は92.7%(2023年8月時点調べ)となっている。また現在、短眠カリキュラムを伝えるスクールの代表のほか、経営者や医師、プロアスリートへの睡眠指導を行っている。著書に『できる人は超短眠!』『睡眠の常識はウソだらけ』(ともにフォレスト出版)他がある。

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(GAHAKU株式会社代表取締役、社団法人日本ショートスリーパー育成協会代表理事 堀 大輔)

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