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「家が古くて心配」というお客に「まだ住めます。もったいない」と返す…新築住宅の営業マンが使う必殺フレーズ

プレジデントオンライン / 2023年12月22日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/erdikocak

カリスマ営業マンは、どんな手法を使っているのか。営業コンサルタントの菊原智明さんは「自分の利益ではなく、お客様の利益を最優先するというのが大前提。そう考えれば、『家を建て替えたい』というお客様に、『建て替えるのはまだもったいない』と話すこともある。私の場合、その結果、新築受注につながった」という――。(第2回)

※本稿は、菊原智明『使ったその日から売上げが右肩上がり! 営業フレーズ言いかえ事典』(大和出版)の一部を再編集したものです。

■客の多くは営業マンに対して“天邪鬼”

【天邪鬼(あまのじゃく)のお客様をその気にさせる】

×ありがちなフレーズ

ずいぶん使いましたね。買い替えどきですよ

○心が動くフレーズ

もったいないじゃないですか。まだ使えますよ

基本的にお客様というのは、売込みに対して拒絶します。その意味で、恋愛のテクニックの“押してダメなら引いてみろ”は営業でも効果的です。売らないようにすることで逆に売れるということもあります。天邪鬼のお客様にはとくに効果的な方法です。

お客様の多くは、営業パーソンに対して天邪鬼になるものです。たとえば、営業パーソンから「そろそろ取り替えどきですから」と言われれば、「いや、まだまだ使えますよ」と返す。逆に「もったいないじゃないですか、まだ使えますよ」と言うと、「いやぁ、きれいに見えますが、中身は限界でしてね」と本音を話したくなるものなのです。

これは、私が一営業だったときにもよく体験しました。家は建て替えの見極めどきが難しく、“建て替えるか? それともリフォームにするか?”と迷うお客様も少なくありません。とくに築20〜25年の家に住んでいるお客様は、たいてい迷います。

■建て替えを進めるほど否定されてしまう

あるお客様とのことです。当時、新築の営業をしていた私は、なんとか新築の方向に行くように誘導します。

私「こちらの床は沈みがあります。やはり建て替えどきだと思いますが」

お客様「そこは多少ありますが、直せば大丈夫でしょ」

私「リフォームをしていろいろ手をかけても結局、建て替えるというケースもありますし」

お客様「そうかもしれませんが、まだ十分住めますしね」

私が新築の話をすればするほど、お客様は頑かたくなに否定してきます。その後も新築の方向へもっていこうと頑張りましたが結局、話は消えてなくなったのです。その後のことです。また似たような“新築かリフォームかで迷っているお客様”と出会いました。

商談するイメージ
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

古い家ではありましたが、丁寧に住まれており、あまり問題を感じません。そのままでも、しばらくは住んでいける建物です。私は、このようにお客様に言いました。

私「つくりがしっかりしていますし、問題ないと思いますが」

お客様「リフォームか建て替えかで迷っていましてね」

私「建て替えなんてもったいないじゃないですか。まだ住めますよ」

お客様「そうなのですが、じつは中身はガタがきていましてね。手をかけても最後は建て替えになるのではないかと思っています」

このように自ら新築の方向で話を進めてきたのです。

■こちらから「もったいない」と言ったほうがいい

結局、新築の商談になり、無事に契約となりました。私は契約になった後、その理由を聞いてみました。すると、お客様は「他社の営業は最初から“建て替えたほうがいい”と言ってきましたが、菊原さんだけは“建て替えなんてもったいない”と言ってくれました。だから信用できました」と言ってくれたのです。

自分の所有物を否定されて気分のいい人はいません。買い替えどきの商品で購入を迷っているお客様に対しては、まずもっているものを褒めてあげてください。また、「もったいないじゃないですか」という言葉も効果的です。ただし、その根底には“自分の利益ではなく、お客様の利益を最優先する”という考えがあることを忘れないでください。

こういった話を聞くと、「せっかくのチャンスをフイにしてしまうのでは」と思うかもしれませんが、お客様はあなたの前にいる時点で「できれば購入したい」と考えているのです。そうでなければ、わざわざ貴重な時間を使って営業パーソンに会うことなどありませんからね。ですから、「まだまだ使えそうですが」と言っても、まったく問題ありません。

多くのお客様は、きっと「いやぁ、きれいに見えますが、中身はボロボロでしてね」と本音を話してくれるはずです。あなたは、それからじっくりと話を進めればいいのです。

・POINT
お客様は自分の所有物を褒められると嬉しく思う

■「まだ先の話なので」と言われたらどうするか

【「まだ先」と言われたときの上手な返し方】

×ありがちなフレーズ

なぜ、いま検討しないのですか?

○心が動くフレーズ

そういうお客様もいらっしゃいますから、ご安心ください

営業パーソンの一番の壁は、お客様からの「まだ先の話なので」という断り文句です。こう言われてしまうと、一気に営業へのモチベーションが下がります。この断り文句をサラッとかわし、商談のチャンスをつかみましょう。

営業活動をしていて最も嫌なのは、「お断りします」とスパッと断られることです。これはダメージを受けます。そして、その言葉に負けずとも劣らずに嫌なのが、「まだ先の話なので」という一言ではないでしょうか?

まだ先ということは「いまは契約しない」という意味です。これほど営業パーソンからやる気と元気を奪う言葉はありません。あなたも、お客様から「まだ先の話なので」と軽く断られた経験があることでしょう。だからといって、アッサリ引いてばかりもいられません。そんなことをしていれば、いつまでたってもチャンスをつかめませんからね。では、どうすればいいのでしょう?

■理由を聞けば聞くほど逃げていく

たとえば、あなたはその言葉を跳ね返そうと、「先延ばしをする理由が何かあるのでしょうか?」と質問してみたり、「では、いつごろ本格的に検討されるのでしょうか?」と言ったりしていませんか?

しかし、こうした質問をすればするほど、お客様は逃げてしまうのです。私がダメ営業だったときのことです。お客様が住宅展示場に来店します。お客様が自ら来店してくれているわけですから、飛び込みの新規開拓に比べれば、圧倒的にラクに思えます。しかし、これがなかなかうまくいきません。

考える人のイメージ
写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

お客様と一緒に歩きながら、ポイントとなる部分で「こちらが弊社の耐震システムになっております。重りをつけることによって揺れを軽減し~」といった説明を始めます。このトークもタイミングもマニュアルどおりです。ところが、説明し始めて3分もしないうちに、お客様の顔色が曇り出します。そして例の言葉、「まだ先の話ですから、説明はけっこうです」とバッサリやられるのです。

こうなると打つ手がありません。それからお客様は私の存在を無視するかのようにして勝手に見学し、そのまま帰っていきます。これでゲームオーバー。1つチャンスを潰したというわけです。

■最初の断りは“本当の断り”ではない

当時の私は、「トップの人はどんな状況でも切り返すマル秘トークがあるのだろうな」と思っていました。しかし、あるとき、トップ営業から「お客様のはじめの断りは“本当の断り”ではない」という話を聞いたのです。本当の断りではないということは、要するにウソということです。ウソに対して「どうしてでしょうか?」と理由を聞いたり、追及したりする必要はありません。ウソに対する理由を聞かれても、お客様は困るだけですからね。トップ営業は、私に言いました。

菊原智明『使ったその日から売上げが右肩上がり! 営業フレーズ言いかえ事典』(大和出版)
菊原智明『使ったその日から売上げが右肩上がり! 営業フレーズ言いかえ事典』(大和出版)

「だから、こんなときは理由を聞いたりせずに、サラッと流してしまえばいい」と。

それから私は、お客様からの「まだ先の話ですから」という断りに対して、「そういうお客様もいらっしゃいますから、ご安心ください」と言い方を変えました。するとどうでしょう。お客様が私を拒否することがなくなったのです。当然、それからはまた自然に話ができるようになります。結果として、そこからアポイントがとれ、契約に結びつく、というケースがたくさん出るようになりました。

苦戦している営業パーソンは、断りに関して「応酬話法でなんとか対抗しよう」などと思うもの。だから、つい「どうしてなのでしょうか?」と迫ってしまいます。残念ながら、これではお客様から嫌われ、チャンスを潰してしまうだけです。

そんなことをするより、お客様の断りをサラッと流したほうがいい結果につながります。たとえば、次のような感じです。

「ほとんどのお客様がそうですから、問題ありません」
「あせらないで、ゆっくり検討してください」
「今日、結論を出す必要はありませんからね」

自分の好きな言い方でかまいません。このようなトークでお客様を安心させることでチャンスを広げましょう。

・POINT
断り文句をサラッと流せば、次の展開が見えてくる

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菊原 智明(きくはら・ともあき)
営業コンサルタント
営業サポート・コンサルティング代表取締役。関東学園大学経済学部講師。社団法人営業人材教育協会理事。1972年生まれ。群馬県高崎市出身。群馬大学工学部卒業後、トヨタホームに入社し、営業の世界へ。自分に合う営業方法が見つからず7年間、ダメ営業時代を過ごした後、手紙で情報を提供する営業に切り替えたことをきっかけに4年連続トップ営業に。2006年に独立し現職。主な著書に『訪問しなくても売れる!「営業レター」の教科書』(日本経済新聞出版社)、『売れる営業に変わる100の言葉』(ダイヤモンド社)、『面接ではウソをつけ』(星海社)、『トップ営業マンのルール』『「稼げる営業マン」と「ダメ営業マン」の習慣』『残業なしで成果をあげるトップ営業の鉄則』(明日香出版社)、『営業1年目の教科書』『営業の働き方大全』(大和書房)、『リモート営業で結果を出す人の48のルール』(河出書房新社)、『仕事ではウソをつけ』(光文社)、『使ったその日から売上げが右肩上がり!営業フレーズ言いかえ事典』(大和出版)などがる。

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(営業コンサルタント 菊原 智明)

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