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「この機能はほとんど意味がないんです」家電店でテレビをばんばん売る販売員が使う"暴露トーク"という裏技

プレジデントオンライン / 2023年12月23日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kwangmoozaa

顧客の心を掴むには、どんな言葉を選ぶべきか。営業コンサルタントの菊原智明さんは「良い面を強調するのではなく、むしろ悪い面を伝えたほうがいい。そうした『軽い暴露トーク』は、顧客との距離を一気に縮めることができる」という――。(第3回)

※本稿は、菊原智明『使ったその日から売上げが右肩上がり! 営業フレーズ言いかえ事典』(大和出版)の一部を再編集したものです。

■商品の“欠点”を語る営業テクニック

【“軽い暴露トーク”でお客様の心をつかむ】

×ありがちなフレーズ

この商品は最新型で高性能です

○心が動くフレーズ

じつは、この部分にはこういった欠点がありまして

初対面のお客様に対しては、商品のいいところや見ればわかることを伝えても、ほとんど響きません。そうではなくて、商品に関する“軽い暴露トーク”をしてみましょう。そうするだけで、お客様はいままでの何倍も話を聞いてくれるようになります。

一般的に営業パーソンの多くは、お客様に対して「これが最新型です」「こんな性能があります」など、「まあ、そりゃそうだろうね」といった、見ればわかるようなトークをする傾向があります。そんな中、「じつは、この部分にはこういった欠点がありまして」と言ってくる営業パーソンがいたら、どうでしょう? きっと、「この人は、他の人とはちょっと違う」という印象をもつはずです。

たった一言のトークで、「この人は信用できそうだ」と興味をもってもらえることもあるのです。

■「この機能はほとんど意味がないんですよ」

私が新しいテレビを購入しようと思ったときのことです。「ネットで買おう」とも考えましたが、せっかくなので接客も体験したいと思い、リアル店舗に行くことにしました。まずは、A電機に行くことに。店舗に入ってテレビコーナーに行くと、すぐに1人の店員さんが近づいてきます。

商品を見る人のイメージ
写真=iStock.com/Filipovic018
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Filipovic018

「40〜45インチくらいのテレビを買おうと思っている」と伝えると、「こちらのテレビは最新型で、画像がキレイでいいですよ」と説明してきます。薄型でなかなかよかったのですが、相応に高い金額です。私が難色を示すと、今度は「では、こちらがいいですよ。コスパもいいですし」と別の商品を勧めてきます。失礼な接客ではなかったものの、まったく買う気が起こらず、お店を出ました。

その帰りに、たまたま通ったB電機に入りました。私の心境としては、「とりあえず金額だけ見て帰ろう」と、ほとんど買う気はありませんでした。そこでお会いした店員さんは、素朴な雰囲気で、とくに売り込んではきません。

希望の大きさのテレビを見ていると、「じつは、この機能はほとんど意味がないんですよ」と言ってきます。さらには他の商品についても、「この機能は便利ですが、こんな欠点もあります」と教えてくれたのです。この一言二言で、私は「この店員さんは信用できるぞ」と判断しました。

■“軽い暴露ネタ”が客の心をつかむ

信用できる人からの「普通に使うのでしたら、このグレードくらいがベストです」という提案には説得力があります。はじめこそまったく買う気がなかったものの、結果として「この人からどうしても買いたい」と思い、即購入を決めたのです。

お客様に対して、「それは見ればわかるよ」といった説明をしていないでしょうか?

「先月出た最新モデルです」「高性能で、こんな機能があります」といった説明をしても、お客様にはまったく響きません。そうではなくて、「これは知らないだろうな」といった情報を提供するのです。あとで支障にならない程度の“軽い暴露ネタ”がベストです。ぜひ、こういった情報をうまく伝え、お客様の心をつかんでください。

・POINT
他の営業パーソンとは一味違ったトークでインパクトを与える

■「3つのメリットがあります」はNG

【メリットとデメリットのギャップを利用する】

×ありがちなフレーズ

この商品には3つのメリットがあります

○心が動くフレーズ

この部分は弱いですが、ここはとてもいいです

先ほどの項目では、「“軽い暴露トーク”でお客様の心をつかむ」という話をさせていただきました。この項目では、そのバージョンアップ編である“デメリット・メリットトーク”の活用法について紹介します。こちらも知っておくと便利です。

郵便局で学資保険の解約に行ったときのことです。「そのお金をすぐに使わないのであれば、利子がつく商品にお金を入れておいたほうがいいですよ」と提案されました。たしかに、それは納得できる提案です。私は、話を聞くことを承諾しました。

説明する人と聞く人のイメージ
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

すると、その窓口の人はパンフレットを出して、「この金融商品には3つのメリットがあります」と言ってきます。

「いまなら手数料が無料です」
「毎月引き落としにすると、金利が○%アップします」
「連動型なため、ローリスクでしっかり利益が出ます」

私はどんなトークをするのか興味があったので話を聞くことにしたのですが、つまらないメリットの羅列ばかりでした。ただ、すぐに話を遮(さえぎ)るのも気が引けたので、その後、話をもう少しだけ聞き、きっぱりとお断りしました。

■デメリットを伝えないと信頼されない

私は営業トークの研修で、「メリットを3つ以上続けて話してはなりません」とよく言っています。その理由は、メリットの話が3つ以上続けば、お客様も飽きてきますし、何より「本当にそんないいことばかりあるの?」と疑う気持ちが出てくるからです。

ふだんあなたがお客様にしているトークを思い出してください。もしかしたら、「この商品のいいところは○○です。また、最大のメリットは独自の製法により、○○できることです。さらには○○といういい面がありまして……」といったトークをしていませんか?

どんな商品でも、デメリットはありますし、お客様はそれを知っています。そこを1つも説明せずにメリットだけを羅列しても、いい結果にはつながりません。心理学の1つに“片面提示・両面提示”というものがあります。いい面だけを言う人はうさんくさく感じられ、いい面と悪い面の両方を言ってくれる人は信頼を得られるというものです。

先ほどの郵便局でのトークであれば、「こういったリスクがあるのですが、この部分はとてもいいです」という組み立てだったら、結果は違っていたと思います。メリットだけのトークと比べて、一気に信ぴょう性が高くなるのです。

私が推奨しているトークに“デメリット・メリットトーク”というものがあります。これは文字どおり、はじめにデメリットを言い、その後にメリットを言うというトークです。メリットを羅列する癖がある人は、この“デメリット・メリットトーク”を試してください。いままでになかったような、いい反応を得られるようになります人はいい面だけを伝えても信じません。やはりメリットとデメリットの両方を教えてくれる人を信用するのです。

・POINT
デメリット→メリットの順で伝えれば、信ぴょう性がグンと高まる

■いきなりのアンケート記入は気が引けるが…

【完全に引いているお客様への突破口を見出す】

×ありがちなフレーズ

アンケートにご記入ください

○心が動くフレーズ

“お客様”と呼びたくないので、お名前だけ教えていただけますか?

お客様が自ら要望をどんどん話してくれれば、接客はとてもラクです。しかし、そんなお客様はほとんどいません。ときには何を言っても無視するお客様もいます。そんなときの突破口の見つけ方についてお伝えします。

以前、健康器具の専門店に行ったときのことです。私はパソコンを使っての仕事が多いこともあり、常々「血流をよくしたいなぁ」と考えており、前から興味はありました。ただ、国道沿いにある単独店舗だったので入りにくく、「入ったらマンツーマンで店員につかれるのでは」と警戒していました。

案の定、店舗に入ると、すぐに若いスタッフが出てきます。そのスタッフは元気に挨拶をして、丁寧に名刺を差し出してきました。そして、名刺を受け取ると、すぐに「こちらのアンケートにご記入ください」と言ってきます。過去に私がやっていた住宅営業と同じようにマニュアル化されているのでしょう。しかし、いきなりのアンケートには、誰しもプレッシャーを感じるものです。

アンケートに記入するイメージ
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

■「お名前だけ教えていただけますか?」

そこで、そのスタッフに対し“迷惑ですよ”という雰囲気を出しながら、「アンケートの前に、ちょっとお店の中を見ていいですか?」と伝えました。そう言うと、スタッフはスッと離れていきました。数分、商品を見ていると、先ほどのスタッフが「お客様、ここにないデザインのものもありますから」などと再び声をかけてきます。

そして、しばらくやりとりをしたところで、「“お客様”と呼びたくないので、お名前だけ教えていただけますか?」と言ってきたのです。私は、名前くらいは教えてもいいと思い、「菊原と言います」とお伝えしました。

それからはポイントとなるところで「菊原さんはどう思いますか?」と聞いてきたり、「これは菊原さんのニーズに合っていますよ」と言ってきたりします。不思議なもので、名前を呼ばれるたびに、少しずつ距離が縮まった気になります。気づけば自らアンケートに記入し、購入を決めていました。名前を呼ばれる効果をお客様として実感したのです。

■名前を聞くことで突破口が見出せる

菊原智明『使ったその日から売上げが右肩上がり! 営業フレーズ言いかえ事典』(大和出版)
菊原智明『使ったその日から売上げが右肩上がり! 営業フレーズ言いかえ事典』(大和出版)

お客様の名前を呼ぶ方法は、さまざまなところで使われています。たとえば、飛行機のビジネスクラスの席に座るとCAさんがやってきて、「菊原様、ご利用ありがとうございます」と挨拶に来てくれます。“お客様”と呼ばれるのと“菊原様”と名前で呼ばれるのとでは、ずいぶん気分が違います。名前を呼ばれるだけでVIPになった気分になり、嬉しく感じるのです。

いまのお客様は警戒心が強く、なかなか個人情報を教えてくれません。会社のマニュアルどおりにいきなりアンケートの記入をお願いしても、了承してくれないことも多いでしょう。そんなときは、「“お客様”と呼びたくないので、お名前だけ教えていただけますか?」とお願いしてみましょう。そして、名前を教えてもらえたら、意識的に数回、名前を言ってみてください。名前を呼んでいるうちに距離が縮まるはずです。

アンケートの記入を断るお客様や話を聞いてくれないお客様に対しては、名前を聞くようにしましょう。そこから突破口が見出せることは、意外なほど多いのです。

・POINT
アンケートの記入を断られてもまだチャンスはある

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菊原 智明(きくはら・ともあき)
営業コンサルタント
営業サポート・コンサルティング代表取締役。関東学園大学経済学部講師。社団法人営業人材教育協会理事。1972年生まれ。群馬県高崎市出身。群馬大学工学部卒業後、トヨタホームに入社し、営業の世界へ。自分に合う営業方法が見つからず7年間、ダメ営業時代を過ごした後、手紙で情報を提供する営業に切り替えたことをきっかけに4年連続トップ営業に。2006年に独立し現職。主な著書に『訪問しなくても売れる!「営業レター」の教科書』(日本経済新聞出版社)、『売れる営業に変わる100の言葉』(ダイヤモンド社)、『面接ではウソをつけ』(星海社)、『トップ営業マンのルール』『「稼げる営業マン」と「ダメ営業マン」の習慣』『残業なしで成果をあげるトップ営業の鉄則』(明日香出版社)、『営業1年目の教科書』『営業の働き方大全』(大和書房)、『リモート営業で結果を出す人の48のルール』(河出書房新社)、『仕事ではウソをつけ』(光文社)、『使ったその日から売上げが右肩上がり!営業フレーズ言いかえ事典』(大和出版)などがる。

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(営業コンサルタント 菊原 智明)

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