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なぜ優秀な人は「新年の抱負」の前に「昨年の後悔」をSNSに書くのか…「失敗の履歴書」がもつ驚くべき効能

プレジデントオンライン / 2024年1月1日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/DragonImages

「新年の抱負」は、どのように立てるといいのか。米ベストセラー作家のダニエル・ピンクさんは「何も考えずにやりたいことを立てても意味がない。充実した1年を送るためには、まず『昨年の後悔』を洗い出すことが大切だ」という――。

※本稿は、ダニエル・ピンク『THE POWER OF REGRET 振り返るからこそ、前に進める』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■後悔を次の成功につなげる7つの方法

後悔の念を安定と達成と目的追求の強力な手立てに変えるために有効なアプローチはさまざまにある。前に進むためには、振り返るだけでなく、未来を予測することも有効だ。実際に後悔を経験する前に、それを先読みするのである。

本稿では、7つのアプローチを紹介する。

1.後悔サークルをつくる

後悔サークルとは、読書会のようなものと考えればいい。五、六人ほどの友人を集めて、コーヒーや紅茶、お酒を飲みながら話をする。参加者のうちの二人に、自分にとっての大きな後悔を披露する準備をしてきてもらい、その人たちの話をみんなで聞く。そして、みんなでその後悔を分析する。

まず、その後悔がどのタイプのものかを考えよう。それは、行動したことへの後悔か、行動しなかったことへの後悔か。四種類の深層レベルのカテゴリー(基盤に関わる後悔、勇気に関わる後悔、道徳に関わる後悔、つながりに関わる後悔)のどれかに分類できるか。

■失敗だけを書いた「失敗の履歴書」をつくる

それに続いて、みんなでセルフ・ディスクロージャー→セルフ・コンパッション→セルフ・ディスタンシングのプロセス(拙著『THE POWER OF REGRET 振り返るからこそ、前に進める』(かんき出版)にて詳述)を実践する。

最後に、後悔を披露した二人は、今後どのような行動を取るかをみんなの前で公約する(不愉快な上司に異を唱えるとか、意中の相手をデートに誘うとか)。

次回の会合では、二人がその公約を果たしたかどうかを問い、そのあと、また新しい二人のメンバーが後悔を披露する。

2.失敗の履歴書をつくる

ほとんどの人は、履歴書を書いたことがあるだろう。それまでの職歴やその他の経験、資格の概略を記したものだ。これにより、雇用主候補や顧客候補に対し、自分がいかに高い資質をもっていて、熟練していて、素晴らしい人材かを示す。

スタンフォード大学のティナ・シーリグ教授は、「失敗の履歴書」もつくるべきだと主張する。過去に犯した失敗を漏れなく詳細に記した文書をつくることが有益だというのだ。

これは、後悔に対処するための手立てにもなりうる。自分の失敗を事細かに記すこと自体がセルフ・ディスクロージャーの一形態と言える。また、「失敗の履歴書」を第三者の視点で見れば、失敗により自信を失うことなく、その経験から学ぶことができる。

■「自分が悪かった」と責めてもいい効果はない

数年前、私も「失敗の履歴書」をつくってみた。自分が犯してきた失敗の数々から教訓を引き出したいと考えたのだ(恥ずかしい失敗を自分自身に向けて開示するだけでも、十分に効果が期待できる。読者のみなさんにその中身を開示することは遠慮させていただく)。

この作業を通じてわかったのは、私が基本的に二種類の同じ失敗を繰り返してきたということだった。それが明らかになったおかげで、それ以降は同じ失敗を繰り返さずに済んでいる。

3.セルフ・コンパッションについて学ぶ

私が社会科学の文献を熱心に読むようになって二〇年ほどになるが、セルフ・コンパッション(自分自身を慈しむこと=編集部註)ほど、強烈な魅力を感じたテーマはあまりない。

私はセルフ・コンパッションを知って、過剰な自己批判を抑制できるようになった。自分を厳しく断罪すれば、マゾヒスティックな快感を味わえるかもしれないが、そうした思考には効果がないと理解できたのだ。また、自分の苦しみは多くの人が経験しているもので、その問題を解決することは可能だと思えるようになった。

みなさんも、このテーマをじっくり学ぶことをお勧めする。たとえば、クリスティン・ネフのウェブサイトから始めてもいいだろう。このサイトでは、自分のセルフ・コンパッションのレベルをチェックすることもできる。ネフの著書『セルフ・コンパッション』(邦訳・金剛出版)も素晴らしい。

■「新年の誓い」を立てる前に必ずやるべきこと

4.「新年の誓い」に合わせて、「旧年の後悔」もリストアップする

本稿の核を成すのは、過去を振り返ることにより、前に進むことができるという考え方だ。この考え方を根づかせるためには、それを習慣化することも有効だ。

一二月も終わりに差し掛かり、新年という時間的な節目が近づくと、私たちは「新年の誓い」を立てようと思い立つ。しかし、その誓いを立てる前に、「旧年の後悔」をはっきりさせよう。

幕を閉じつつある一年を振り返り、自分が後悔していることを三つ挙げる。親戚や昔の同僚と連絡を取らなかったことを後悔していないか。副業を始めなかったことを後悔していないか。自分の価値観に反するような嘘をついたことを後悔していないか。

そうした後悔を文章に記す。そして、行動したことへの後悔を取り消し、行動しなかったことへの後悔を変容させることを、新年の誓いにしよう。

5.ポジティブな経験を頭の中で「引き算」する

後悔による痛みを取り除くためには、ある心のトリックを実践するといい。これは、一九四六年の映画『素晴らしき哉、人生!』でよく知られるようになったアプローチである。

■脳内で「ポジティブな経験」を引き算する

ベッドフォールズという町で暮らすジョージ・ベイリーは、クリスマス・イブに自殺を図ろうとしていた。そこへ、天使のクラレンスがやって来る。クラレンスはジョージに、もしジョージが生まれていなければ、町がいかに悲惨な状態になっていたかを見せる。その結果、自分の人生がいかに素晴らしいものだったかを認識したジョージは、自殺を思いとどまる。

ダニエル・ピンク『THE POWER OF REGRET 振り返るからこそ、前に進める』(かんき出版)
ダニエル・ピンク『THE POWER OF REGRET 振り返るからこそ、前に進める』(かんき出版)

このときクラレンスが用いた手法は、ポジティブな経験を頭の中で「引き算」するものと言える。あなたの人生で好ましい要素――たとえば、親しい友人との関係や、キャリアにおける成功、かわいい子どもの存在など――を思い浮かべよう。

そして、その幸せな状況をもたらしたすべてのものごと、自分がおこなった意思決定、おこなわなかった意思決定、犯した失敗、手にした成功がなかったものと考えてみる。好ましい経験を脳内で「引き算」するのだ。

すると、人生は、悲惨で、暗澹たるものになる。けれども、ジョージ・ベイリーがそうだったように、それを通じて、いまの人生への感謝の気持ちが強まり、自分のいだいている後悔に新しい光を当てることができる。

窓のそばのソファに座って外を眺める女性
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

■ウェブサイトに投稿してみるのもいい

6.「ワールド後悔サーベイ」に参加する

まだの人は、「ワールド後悔サーベイ」というウェブサイトに回答しよう。自分の後悔を文章にすれば、その経験へのネガティブなイメージを取り除くことができる。そして、その経験と距離を置いて客観的に分析し、その後の行動を計画できるようになる。

また、ほかの人たちの回答を読めば、人は誰もが後悔と無縁でないとわかり、後悔と向き合う能力が高まる。世界中の人々が寄せた後悔の内容を読む際は、こう自分に問いかけよう。この人が述べている後悔は、どのタイプのものか。その人物が後悔をうまく生かせるように、自分ならどのようなアドバイスを送るだろうか。

7.「旅のマインドセット」を実践する

目標を達成すれば、後悔せずに済む。しかし、目標を達成したあとも行動を続けなければ――たとえば、エクササイズで体を動かすことを続けたり、プロジェクトが完了したあとも勤勉に働き続けたりしなければ――たちまち後悔の感情が生まれる。この問題を避けるための方法のひとつが、「旅のマインドセット」を実践することだ。

■やり遂げた事実よりも「そこへいたる旅路」を重視する

スタンフォード大学のシーチー・ホアンとジェニファー・アーカーの研究によれば、人は目的地に到達すると(つまり、難しくて重要な課題を完了すると)、これでもう仕事は終わったと思い込んで、努力を緩めてしまう場合がある。

しかし、たいてい、仕事は終わってなどいない。目的地に到達しただけで満足してはならない。目的達成にいたるまでのステップを振り返ることが重要だ。目的地への到達を祝福するよりも、そこへいたる旅路を振り返るようにしよう。

後悔しているのは、大学の就職カウンセラーの言葉を信じて、自分には医師になる資質がないと思い込んでしまったことです。もっと自分を信じて、せめて挑戦するだけでもすればよかったと思っています。
――五四歳女性、メリーランド州

子どもが生まれる前に、自由な時間を無駄にしすぎました。いまにして思えば、スペイン語を学んだり、運動をしたり、仕事のスキルを磨いたりするために費やす時間がないほど忙しいなどということは、ぜったいにありませんでした。
――二九歳男性、インディアナ州

性的な面でもっと活発に行動すればよかったと思います。
――七一歳女性、ミシガン州

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ダニエル・ピンク(だにえる・ぴんく)
作家
1964年生まれ。ノースウェスタン大学卒業、イェール大学ロースクール修了。米上院議員の補佐官、ロバート・ライシュ労働長官の補佐官兼スピーチライターを経て、1995~97年はアル・ゴア副大統領の首席スピーチライターを務めた。フリーエージェント宣言後は、ビジネス・経済・社会・テクノロジーをテーマに、記事や論文の執筆、講演などに従事。行動科学をテーマにしたテレビ番組の共同プロデューサーを務めたこともある。 過去の著書はこれまでに42カ国語に翻訳されており、すべての日本語版が出版されている。『フリーエージェント社会の到来』(ダイヤモンド社)、『ハイ・コンセプト』(三笠書房)、『ジョニー・ブンコの冒険』『モチベーション3.0』『人を動かす、新たな3原則』『When 完璧なタイミングを科学する』(以上、講談社)がある。世界のトップ経営思想家を選ぶ「Thinkers50」の常連で、2021年のランキングでは9位に選出。

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(作家 ダニエル・ピンク)

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